レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
2位
1回
2015/09訪問 2016/02/27
(平成27年2月)
今回も東京での滞在最終日にお邪魔する。いつものメニューを注文して,旨い鰻と至福のひとときを堪能する。東京へ行くたびに訪問する,東京でのマストアイテムの店である。
(平成26年12月)
この日も東京で3日に亘る仕事を終えた後,寛ぎたくて旨いものが食べたくて,こちらの店に来訪。昨年度来,何度か目の訪問である。やはり,この日もいつものように,鰻重上(3200円)を注文した。併せて,日本酒は吉乃川をお願いし,ひれ,向こう骨,骨,肝吸いも注文する。女将さんも覚えてくれたようで,「いつもありがとうございます。」とおっしゃってくれる。これはうれしい。
酒とアテをゆるゆるやりながら待つこと35分,鰻重が運ばれる。今回は肉厚のウナギ,脂も乗っている。こちらのたれ,繊細な鰻
だけでなく,脂の乗った鰻の身にもよく合う。そして,たれと鰻の脂の浸みたご飯が旨い。私にとって,静かにこちらの鰻を頂くときが,正に至福のひとときである。
今後も東京に行った際には,是非毎回訪れたい,そんな素敵な店である。
(平成25年11月)
東京出張で1日半みっちりと仕事をした後,旨いものが食いたくなる。鰻高騰の折り,今回は鰻を喰うことにして,こちらの店に予約の電話を入れる。空いているとのこと。メトロ有楽町線で,江戸川橋駅へ。午後4時30分の開店時間にきっちり入店した。
二人掛けのテーブルに案内される。上には「予約席」の札が置いてある。見回すと,4人掛けのテーブルが3つと2人掛けのテーブルが二つ。奥にもテーブルか小上がりがあり,2階にもお部屋があるよう。1階はたいていのテーブルが予約で埋まっているうようである。
お品書きを見ながら,あれこれ食べたいものを考える。鰻重は並と上の2種類。堪能したいと思い,鰻重上(3200円)を注文した。併せて,日本酒は吉乃川をお願いし,ひれ,向こう骨,骨,肝吸いも注文する。
吉乃川を小さな杯でゆるゆるやり始める。そのうちひれが,続いて向こう骨が運ばれてくる。ひれは正にひれを串に刺したもので香ばしく,向こう骨はひれ周りの身を串に巻くようにして焼いたもの。甘さを抑えたたれの風味豊かで,身の旨さも味わえ,酒の肴にぴったり。酒が進む。続いて骨が運ばれてくる。これは背骨を油で揚げたものである。味は悪くないが,少し生臭い油の臭いが気になった。ゆっくりと杯を進めて鰻の焼き上がりを待つ。贅沢で愉快なひととき。
注文して35,6分程待ったであろうか。いよいよ鰻重が供される。重を明けると湯気とともに甘辛い鰻のの香りがふぁっと広がる。思っていたより鰻の量も多い。
まずは,山椒をかけずにたれがまぶされたご飯と鰻を一口。蒸して脂が抜いて焼かれた鰻は,あまり肉厚のものではなく,脂の乗りも品がよく柔らかでとても繊細な旨さ。このような繊細な鰻には,この位甘くないたれの方が、鰻の旨さが十全に引き出され,堪能出来ると感じた。関西の鰻のように甘くはないが,ふくよかで豊かな味わい。本当に旨い。山椒をかけて食すと,きりりとした風味が加わり,味に奥行きが増す。
肝吸いは,出汁の香りと出汁の旨味に肝の旨味が三味一体となった素晴らしいもの。肝吸いを飲むのは野暮だなんて話も聞いたことはあるが,やはり鰻重にはよく合う。
残りの日本酒を飲みながら,一気に食べ進む。かなりの量ではあるが,あっという間に食べ終わってしまった。食べ終わった後の後口は,鰻の旨みが口に残っている一方,とても清々しい。誠に実利ある旨さの料理をいただいた,という満足感が味わえた。
レトロで落ち着いた内装は,これからもずっと変わらないような雰囲気を醸し出している。そして,これからも変わらずに居て欲しい,と願わずにはいられない。また仕事で東京に来るときには立ち寄りたい,そして疲れを癒やして旨い鰻を頬張りたい。 そうそう訪れることも叶わないが,贔屓にしたい店である。
3位
1回
2015/03訪問 2015/04/14
奈良に勤務してほぼ一年が経過した。色々なお店にお邪魔したが、ここらで一つ、思い出に残るようなところで食事がしたいと思い、食べログ等を参考にして選んだのが、こちらのお店。予約を入れようとするも、中々入らない。やっと3週間前に予約を入れることができた。
場所は新大宮駅から歩いて2、3分、住宅街の中にある。中に入るとカウンターとカーテンで仕切られた四人掛けのテーブルが四つ程。他にも座敷席があるとのこと。照明は明るく、柔らかな雰囲気。我々はテーブル席へ案内される。午後7時で店内は満員。
この日は、1番安い6000円のコースを予約しておいた。まずはビールで乾杯する。きめ細やかな泡が立つように丁寧に注がれたビールは、感動する位旨い。
料理だが、まずは先付八寸が用意される。丸い盆の上に緑と桜色と白ね紙が重ねて敷かれ、そこに蛤の器で胡麻豆腐、飯蛸含め煮、車海老、一寸豆、カステラ卵焼が、盃ほどの小さな器で貝の煮付けが、六角の器で明日葉の酢味噌和えが、それぞれ美しく設えられて供される。
胡麻豆腐は、葛餡がかかっており、出汁の風味と胡麻の香りがよく調和している。飯蛸や車海老は素材の甘味、旨みが引き立っている。一寸豆や春を感じさせ、カステラ卵焼は、力強い味の深さ。酢味噌和えも貝煮付けも風味豊か。どれも驚くほど日本酒によく合う。旨い。
煮物椀は、しんじょうと海老色の白玉、菜花。しんじょうは中にイタヤ貝が入っていて、柔らかなしんじょうとイタヤ貝の食感との調和が楽しい。菜花のほろ苦さもいい。何より出汁加減が素晴らしい。熱々の時には儚げなのに、食べ進むにしたがい、味も香りも立ち上がって来て、食べ終わった時には満足感に包まれる。懐石の花形と言われる椀が旨いととても嬉しい。
向付は、鮃、アオリ烏賊、本鮪赤味の三種。これに食用菊等があしらわれている。
鮃は脂の乗りも程よく白身の旨みが堪能することができた。また、アオリ烏賊も優しい甘さと儚げな歯触りが楽しい。鮪もきめ細やかな味わい。いずれもおいしく頂いた。
焼物は、真名鰹幽庵焼き。蕗の梅煮と辛子菜お浸しが添えられている。
真名鰹は皮目の飾り包丁仕事も美しい。その身はコックリした旨みに溢れ、少しだけ濃い目の味付けは、酒を楽しむのにもってこいである。また、添えの辛子菜や蕗梅煮はとても爽やかで、真名鰹とよく合う。
炊合せは、筍、南京,小芋。筍には山椒があしらわれている。
出汁が素材の味を引き立てる薄味の仕上げで,山椒の香りとともに筍を頂くと,その旨さに思わず顔がほころんでしまう。南京はその甘さが引き立ち,また小芋は中まで出汁が染み,ほっこりした味わい。最後は,行儀悪いが出汁まで飲んでしまった。
ここで,小鉢料理三種が運ばれる。あらかじめ,おから,セロリ酢の物,ポテトサラダ,ツブ貝酒煮,和牛肉ワイン煮,地鶏塩焼きの中から好きな三品を選ぶことができる私は,おから,和牛肉ワイン煮,地鶏塩焼きの三種を選んだ。同行者も銘々好きな物を選ぶ。
おからやポテトサラダ,セロリなどは皆で少しずつ交換して食べてみる。どれも,少し手の込んだ小料理屋のアテ,という味つけでホッとする旨さ。逆に和牛ワイン煮は洗練された香りと牛肉の甘みが素晴らしく,地鶏塩焼きはしっかりとした歯ごたえと濃厚な旨みが口の中で品よく広がる。どれも日本酒によく合う。この小鉢料理を選べてゆるゆると日本酒を飲める,というのが,この店の一つのウリなのかもしれない。とても楽しい心遣いである。
〆のご飯は,豌豆ご飯と山椒ちりめんご飯から選べる。それになめこの赤出しとこんぶと白菜の漬け物。豌豆ご飯には錦糸卵で覆われている。豌豆の春の香りと甘さ,これに錦糸卵の柔らかな風味が調和してとても旨い。淡泊なご飯には風味豊かななめこの赤出しやこんぶがよく合う。
お代わり自由ということで,次は山椒ちりめんご飯をお願いする。山椒を利かせて炊きあげたちりめんは,思いの外ふんわりと柔らかく,高貴な香りが立ち上がり,ご飯によく合う。これまた旨い。
最後の水菓子は,苺の寒天寄せ。赤の鮮やかな苺を透明の寒天を包み込んだ,目にも美しい出来映え。苺は爽やかな酸味と柔らかな甘さで,最後を飾るのにふさわしい一品。
料理は,どれも素材を活かした味付けと薬味を上手に用いて香りが楽しめるものが多かった。一番安いコースだったこともあり,とびきり高級な食材は使用されてないが,料理の基礎となる出汁が旨い。特に懐石料理の花である煮物椀は出汁の味や香りの加減が秀逸であった。また,選べる小鉢料理などの演出も楽しかった。
店内の雰囲気は,我々の席がテーブルだったこともあってか,さほど張り詰めた雰囲気ではなく,寛いで料理と酒,そして会話を楽しめるような空間だと感じた。
また,大将を初め女将や若い店員の方も過不足ないサービスで,帰りには大将らが店前まで出てきてくださり挨拶して頂くなど,最後まで気持ちよく過ごすことができた。
以上の料理を頂き,生ビール四杯と松の司あらばしり四合,久保田千寿二合を頂いて,合計3万5100円。料理内容やサービス,雰囲気等から考えると,とてもお値打ちである。また是非近いうちに訪れて,次はもう少し上のコースの料理をカウンターで頂きたいと思う。
4位
1回
2015/05訪問 2015/06/02
H27.5
今年3度目の来訪。やはり、料理も酒も旨い。これからも度々訪れよう。
H27.1
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
この日は仕事始め。休みに慣れた体をゆっくりと戻していくはずだったはずが、急を要する仕事がたくさん。とりあえず何とかその仕事だけ仕上げて街に出る。難波周辺をぶらぶらしていて見つけたのが、こちらの店。旨い酒が飲めそうな雰囲気の外装に引き寄せられ、来訪した。カウンター4席とテーブルが三つ程の小さなお店。ウッディな内装と流れるジャズが心地よい。1人なのでカウンターに案内される。
のどが渇いていたので、ビールを注文し、メニューを見る。色々旨そうなメニューの中でひときわ目を引くのが「おばんざい盛り合わせ」。これが400円とのこと。当然注文する。そして,大将おすすめの造り盛り合わせも注文した。
おばんざい盛り合わせは,クーブーイリチーという昆布の炒め煮,青椒肉絲,水菜と桜海老の含め煮の3種。三日月型の器で供される。これだけでお腹がいっぱいになるのでは,という位のボリュームに驚かされる。クーブーイリチーは,細切りの昆布が柔らかく,薄味で上品に仕上げられており,昆布の旨みたっぷりでいくらでも食べられる。青椒肉絲は,ピーマンの代わりに用いられているパプリカの色合いの美しさ,そしてパプリカの甘さが肉ともよく合い,とても旨い。含め煮は,水菜の爽やかな香りと桜エビの香ばしさが淡い出汁でまとめられており,酒によく合う。
ここで日本酒を注文する。大将曰く,日本酒は,決まった銘柄を用意するのではなく,その時々に応じて秀逸だと感じたものを置くようにしているので,どのような酒が飲みたいかを好みや個性で伝えてもらえれば,それに合ったお酒を見繕う,そのため常時10数種類を備えているとのこと。早速,造りに合う酒をお願いする。出されたのは,初亀本醸造生うすにごり。口に含むと,初春にふさわしいすがすがしい香りと引き締まった味わい。旨い。
造り盛り合わせは,鮃,寒鰤,油目そしてさごしの4品。薬味に山葵と生姜,紅葉卸しが添えられている。鮃はポン酢醤油と紅葉卸しで頂く。食べ頃を見計らってあり,熟成された旨みがあふれている。寒鰤は生姜を乗せて醤油で頂く。こちらはが脂の乗った身の旨さを生姜がさらに引き立てる。油目は,皮目を焙ってあり香ばしさが口の中に広がる。さごしも,同様に皮目を焙ってあり,皮の旨さと身の旨さの両方を味わうことができる。これらを交互に食べながら,日本酒をゆるゆると飲んでいく。嗚呼,なんと幸せなひとときであろうか。初亀の後は,紀土大吟醸や浅間山を頂く。こちらはいずれも華やかでフルーティーな味わい。造りにもよく合う。
この後,大将曰く,生でもいけるいい鱈白子が入っているとのこと。早速,お願いする。白子はポン酢醤油と葱,そして紅葉卸しで
頂く。ねっとりまったり,これはもう旨みの塊。本当に酒が進む。天狗舞純米をお代わりして,飲みかつ食べ進んでいく。
結局2時間近くいてお会計をお願いする。これだけ頂いて4200円。驚くほどのコストパフォーマンスのよさ。
料理は,他にも焼き物や油物等のオーソドックスなメニューはもちろん,にんじんのいぶりがっこやへしこなどの酒の肴も充実していた。加えて,沖縄そばやチャンプル,豆腐よう等,数々の沖縄料理も用意されていた。また,日本酒だけでなく焼酎や甕入りの泡盛,ワイン等も数多く揃えられており,酒飲みにはとてもうれしい品揃え。もちろん,食事だけでも満足できると思う。
そして,特筆すべきは,大将と女将の人柄である。20代中盤の若い大将は,料理や酒の説明も丁寧に行ってくれるだけでなく,こちらの話を上手に聞いてくださったり,興味深い話をされたりで,とても心が和む。また,女将はハキハキした応接でとても清々しい。もてなしの気持ちあふれる応対だった。ウッディな内装と流れるジャズとも相まってとても癒やされた。一人でもグループでも,そして女性一人でも心地よく過ごせるであろう。
年始からとてもいい店に出会うことができた。旨い料理と旨い酒,そして何より大将と女将のもてなしを味わいに,これからもちょくちょく訪れたく思う。
5位
1回
2015/10訪問 2015/12/29
グルメな先輩とこれまたグルメな後輩,今回はそこに美女が加わり,洋食を食べに行くことになった。前回,このメンバーで食事した後,次は洋食を食べたい,とリクエストを出したところ,なかなか予約のとれないこちらのお店を1ヶ月以上前から予約してくれていた。非常に評判の高い洋食屋さん。テーブル席に案内される。
料理は,4000円のコースにプラスしてビーフカツサンドを予約していた。まずは,小さなグラスビールで喉を潤し,食事をスタートする。
前菜はシラスとアボカドのタルタル、ガーリックバゲット添え。タルタルは,柔らかで風味豊かなしらすをたっぷりアボカドと混ぜ合わせ程よい味つけをしたもの。バゲットにたっぷり乗せて口いっぱい広げて頂くと,アボカドのまったりさにシラスの旨み,ガーリックの利いたバゲットの薫り高い風味が渾然一体となって広がり,思わず「旨いなあ。」と唸ってしまう。ここで赤ワインを頂いたが,濃厚な旨みによく合う。思わず,お代わりをお願いしたくなる。
続いてのスープは空豆のスープ。すっきりした中に空豆のこっくりとした旨みがスープの中に広がっていて,これまたとても美味しい。次の料理への期待が広がる。
3品目の料理は,サーモンのテリーヌ、蕪や人参のマリネ、マスタードソース。サーモンの風味にマスタードがよく合う.蕪や人参等の野菜も,それぞれの素材の旨みがしっかり味わえ,主役のサーモンに負けていない。
メインは,魚のパイ包み、クリームソース。マッシュポテトと無花果,グリーンリーフ添え。白身魚をパイで包み焼きにし,マッシュポテトや無花果などを添えたもの。魚にクリームソースを付けて頂くと,パイ生地のパリッとした食感に白身魚の奥深い旨みが濃厚なソースで引き立てられ,シンプルだけでとても実直な旨さを感じる一品。マッシュポテトを魚に添えて頂くと,どってりした旨みが広がる。ワインにもよく合う。
ここで追加注文したビーフカツサンドが用意される。ヒレ肉の赤がとても美しい。口に入れるとパンの香ばしさに,肉汁をたっぷり含んだヒレ肉の旨みが口の中に広がる。これは,文句なく旨い。これだけを食べに来てもいい,そう思わせる逸品である。
最後にオムライスが供される.4人で大きなオムライスをシェアする。こちらのオムライスは薄焼き卵で包まれたものでなく,オムレツのように焼いた卵をライスの上にのせてテーブルまで持ってこられ,そこで店員さんが軽く切り目を入れると,半熟の卵が全体を覆い尽くす。その美しい姿をしばし愛でた後,4人で取り分けて頂く。オムライスの御飯は若干堅めであり,そこにデミソースや各種具材が絡み合っており,少し濃いめの味つけとともに,その堅さ加減が素晴らしい。こんなに旨いオムライスはそうそう食べられない.正に洋食屋の王道たる風格を持つものだった。
オムライスを食べ終わり,しばし余韻に浸っていると,デザートにクリームブリュレが供される。カラメルのパリッとした食感とクリーミーなブリュレの味わいがとても甘くて切なく,今日の食事の満足感を更に高めてくれた。
最後は,銘々コーヒーや紅茶などを頂く。私はエスプレッソをデミカップで頂く。これはうれしい。濃厚なエスプレッソに砂糖を多めに入れ,ゆったりと飲むと,今日の料理は旨かったな,としみじみうれしく感じた。
ワインは,カベルネソーヴィニオンのチリ産の赤ワインと,メルローのフランス産の赤ワインを頂いた。どちらもフルボディの薫り高いものであった。グラスに注いで頂くだけでなく,それを店員の方がグラスを軽く回して香りがグラスの中に満たされた状態にしてから,我々の前に供される。素晴らしい心遣いである。旨い料理やワインだけでなく,我々はそのような心遣いに酔いしれた。料理だけでなく,サーブも素晴らしいものであった。また,機会を見つけて訪れ,旨い料理と素敵なもてなしを楽しみたいと思う。
6位
1回
2015/08訪問 2015/09/30
旨いものが好きな人と,久しぶりに和食を食べに行くことになった。前々から来訪してみたい,と思っていた谷九にある割烹料理屋。アラカルトで頂くのがいいのかもしれないが,電話で予約する際に相談したところ,4800円のコースがありますがいかがでしょうか,とのお勧めで,このコースを頂くことにした。
うだるような暑さもほんの少し和らいだ午後7時に来店。テーブル席に案内される。店はもう満員状態。先ずはビールを注文し,乾杯する。グラスに口をつけるときめ細やかな泡で逃げないようにされたビールの香りが心地よく立ち上る。旨く注がれたビールは香りも味も素晴らしい。
そこに付出しというか先付け八寸が運ばれる。角盆に小鉢が三つ,それとぎせい卵,鯖寿司が綺麗に盛りつけられている。3つの小鉢は帆立と木耳酢の物、煮こごり、松風焼き。煮こごりは,鯛皮と身そして山椒の葉を固めたもの。口に入れると出汁の風味と山椒の香りがまず広がり,その後,鯛の旨みが追いかけてくる。帆立と木耳の酢の物は,帆立のあっさりした中にも力強い旨みが加減酢により活性化され,木耳の食感との相性もいい。松風焼きは鶏肉の旨みを卵で閉じ込め,甘く仕上げてある。優しいおいしさ。また,ぎせい豆腐は,人参や椎茸等の野菜が豆腐の中に混ぜ込み固めたもの。柔らかな豆腐生地にそれぞれの野菜などの食感が心地よい刺激を与えてくれる。鯖寿司はややとんがった台形の上におぼろ昆布を乗せたもの。これまたとても旨い。
次に向付が来るだろうと思い,ここで日本酒のメニューをもらう。定番の日本酒の中から獺祭純米大吟醸を見つけ,注文する。一升瓶から目の前で片口に注いでくれる。いい香りがする。杯に注ぎ,香りと味を楽しんでいると向付が運ばれる
向付は、鯛、鱧とかます焼きの霜造り、真蛸、鰹の5種。大きな器に砕いた氷が敷かれ,その上に彩りよく盛りつけられて供せられる。そして,山葵卸しに少しだけすり下ろされた本山葵が一株添えられている。
鯛は食べ頃を見計らって供されており,旨いなあ,と唸ってしまう。酒にもよく合う。鱧とかますは焼き霜に仕上げられている。鱧は梅肉で頂く。落としで頂くよりも鱧の脂や皮目の旨みが感じられる。かますも香ばしい。鰹は淡い脂の乗り加減で優しい味わい。蛸は純粋な旨みの塊。これらの造りを獺祭を飲みながらゆるゆる頂く。至福の時間である。どれも満足いくものであった。
続く煮物椀は鱧と玉蜀黍豆腐,冬瓜、青柚子。蓋を開けると柚子と出汁の香りがふんわり立ち昇る。すぐに熱々のところを頂く。旬の鱧の力強い旨み,胡麻豆腐のような食感の玉蜀黍豆腐の優しい甘さ,冬瓜の素朴な味わい,吸い口の柚子の軽やかさ,これらが繊細な出汁に活かされ,素晴らしい一品に仕上げられている。いつも思うが,椀が旨いとうれしく感じる。
焼き物は鰆幽庵焼き。それに玉蜀黍の霰揚げと餅米が添えられている。鰆はほっこりした身で白身だけれど旨みがたっぷり。柚子の香りも優しく漂い,これまた素晴らしい一品。皮目の部分も旨い。酒が進む。ここで,飛露喜特別純米をお願いして,ゆるゆる飲みながら魚を頂く。また,玉蜀黍の霰揚げも,玉蜀黍の甘さと衣の霰の香ばしさがいい。
炊合せは松茸と赤ハタの蕪蒸し、雲丹乗せ。霰と山葵が添えられている。蓋を取ると,これまた品のいい出汁の香り,そして松茸の香りが一体になって立ち昇り,鼻腔をくすぐる。木製の匙で掬って頂くと,程よく脂の乗ったハタの旨さに蕪の風味,そして何より松茸の香りが移った出汁の旨みが口の中に広がる。しばし陶然となる。雲丹も旨い。これも酒によく合う。再び獺祭を注文し,ゆっくり飲みながら蕪蒸しを味わう。最後は器を手にとって出汁まで飲み干してしまう。
ここまで2時間弱。そろそろご飯をお出ししましょうか,との勧めに従い,お願いする。程なくして炊き込みご飯と赤出汁、香の物が供される。炊き込みご飯は,各種の茸や蒟蒻,牛蒡,人参等を細かく刻み,炊き込んだもので,何だか懐かしい素朴な味わい。赤出汁は蜆と三つ葉。濃厚な蜆の旨さ漂い,味噌の香りもいい。沢庵や柴漬け等の香の物も素朴な炊き込みご飯によく合う。
〆の水菓子は,マスカットと西瓜のジュレ寄せ。見た目も涼やかで夏の料理の最後に相応しい。マスカットの軽やかな酸味の爽やかさ,西瓜の瑞々しさがジュレの程よい甘さでまとめられ,甘いものがあまり得意でない私でも美味しく頂けた。
料理は全般的に出汁加減がよく,実直な味わいで,素直に旨かった,と感じるものばかりであった。また,定番の日本酒も,獺祭や飛露喜の他,松の司や黒龍,八海山等,いいお酒が揃えられており,そのほかにも季節の地酒が数多く揃えられている。
料理はおそらく大将が一人で作られているのであろうが,待たされることもなく,程よいタイミングで供されてくる。また,女将初め店員の方も柔和な応対であり,店を出るときには,岡宮大将も店外まで挨拶に出てきてくださり,心地よく過ごすことができた。また,是非再訪して,次はアラカルトで旨い料理と旨い酒を堪能したい。
7位
1回
2015/10訪問 2015/11/18
朝夕、少しずつ涼しくなってきた。何だかしっとりとした気分。真っ当な日本料理が食べたい。そう思ってお店を探していて見つけたのがこちらの店。奈良の「やすらぎの道」沿いにある日本料理屋さん。比較的安い金額で旨いものがいただける,という評判を聞き。予約をした上で訪れた。
予約していたのは,梅コースという3800円のコース。席に案内され,日本酒メニューを見せて頂く。奈良の地酒を中心にいいものが揃えられている。まずは,風の森純米吟醸をお願いする。
先附は胡麻豆腐。早生の蜜柑と柘榴、そして山葵が添えてあり、出汁がかかったもの。胡麻の風味がしっかりしており,底に出汁の旨みが利いていて,口に入れるとつるんと喉の奥に滑り落ちていき,胡麻の香りだけが口の中で広がる。
続いて煮物椀。赤いお椀で供される。帆立真丈と海老,大和菜に酢橘。出汁の馥郁とした香りと真丈の旨みに顔が綻ぶ想い。椀を食べる時が和食を頂く上で一番幸せを感じる。
向付は,鯛,縞鰺,鮪大トロの造り。風の森純米吟醸をゆるゆる飲みながら造りを頂くと,ああ旨いなあ,と感動する。どれも旨く食べ頃で供されており,白身,青身そして大トロそれぞれの個性を比べながら味わうことができた。
ここで,松の司純米吟醸に切り替えると,八寸が運ばれてくる。八寸には零余子蒲鉾,銀杏,鯖寿司,烏賊の鱈子和え,鱠いくら添えの五種。どれも酒肴としていいものばかりだが,零余子蒲鉾と鯖寿司は特に素晴らしい。日本酒も進む。
ひとしきり日本酒と八寸の料理を楽し後は,焼物が供される。焼き物は子持ち鮎と手長海老。枝豆が添えられている。初夏の子鮎とは違い,しっかりとした旨みを備え,また腹子の部分が旨い.中骨はさすがに無理だが頭まで頂いた。手長海老も香ばしくて,酒との相性抜群である。
次が冷し鉢ということで、小芋,茄子,生麩,棒鱈,しめじ,サヤエンドウなどの炊き合わせの冷やし蜂が供される。少し濃いめの出汁で炊き合わせられたため,力強いが素朴な味わいが楽しめた。
揚物は白狭海老と獅子唐,南京の天麩羅。塩で頂く。白狭海老天麩羅は車海老とは違った繊細かつ軽やかな旨みが広がる。南京も甘くて旨い。
最後の食事は,炊きたての御飯、香の物、そして赤だし。素朴だけどやっぱり最後に炊きたての御飯はしっくり来る。香の物や赤だしも旨い。満腹になった。
最後の御菓子は,葡萄と柿。季節の果物は切なく甘い。最後に暖かなお茶を頂いて,食事を終える。
安いコースであるにもかかわらず,料理は総じて旨い。値段に比していい素材が用いられているし,出汁加減もいい。料理にも酒にもそしてもてなしに誠実さが感じられた。近鉄奈良駅からも近く便利なところにあるが,観光客の方よりも地元の方が利用する店だと聞いた。地元の人に愛されるのは,誠実さの所以であろう。また,度々訪れたい。
その後,このレビューを書いている時に,こちらのお店がミシュラン2016年のビフミシュランに選ばれたことを知った。やはり料理の旨さや誠実さが評価されたのであろう。
8位
1回
2015/07訪問 2015/12/29
近鉄奈良駅の改札を出て西に長い通路を歩いていくと、高天交差点向こうのビル地下にたどり着く。そこは小さな飲み屋が4,5軒の飲み屋街が開けてる。その内の一軒がこちらのお店。魚と地酒の種類が多いのに惹かれて入店する。
カウンターとテーブルが4つ位の小さなお店だが、中にはたくさんのメニューが壁などに貼られている。テーブルに座って、まずは生中を注文し、メニューを眺める。魚のメニューも豊富だが、それ以外にも鳥や焼きそばなどなど、普通の居酒屋メニューも取り揃えている。中から、岩牡蠣、鰹のタタキ、岩魚の塩焼き、虹鱒塩焼きを注文する。
ビールと付き出しが運ばれてくる。付き出しは三種。栄螺壺焼き、海月の酢の物、鰯の辛煮。どれもかなりレベルが高いし、量も多い。早速日本酒を注文する。飲み比べ三種、というもので、三種の地酒が60CC位ずつグラスで供される。名前は忘れたが、辛口の純米吟醸、やや甘口の純米吟醸、極少しだけ発泡している純米吟醸の夏酒の三種。それぞれに個性があって旨い。
岩牡蠣は、大振りのものを6つ位に切ってあり、ポン酢で頂く。甘くてクリーミーだが磯の風味もあり、とても旨い。鰹は軽い脂で赤身の旨さがよくわかる。これらには、夏酒がよく合う。三種の地酒を飲み切り、夏酒を片口でお代わりする。
しばらくして、岩魚塩焼きと虹鱒塩焼きが運ばれてくる。頭からかぶりつく。虹鱒の方は硬くて食べられない部分もあるが岩魚の頭は香ばしい。身の方は、岩魚は思ったより淡白で品のいい味わい。虹鱒の方は岩魚より旨味が強い。同じ酒をお代わりし、酒を飲みながら、背骨以外、全て食べ尽くす。
ここで、松の司純米吟醸を注文し、セセリ塩焼きと焼きそばも追加する。
松の司をちびちび飲んでいるとセセリ塩焼きが供される。グリーンリーフのサラダがたっぷり盛られてあり、薬味として柚子胡椒も添えられている。柚子胡椒を付けて食べると、もも肉より濃厚な旨味と柚子胡椒の爽やかな辛味が広がる。これまた酒に合う。また松の司をお代わりする。
最後に焼きそばが出てくる。少し濃い味が食欲をそそるのか同行した若者があらかた食べてしまう。
確かに魚も酒も旨い。また、すぐに満員になった店内を若い大将1人で切り盛りしているのに、手際がいいのか、テキパキと料理や酒の注文に対応してくれている。値段は2名で13,700円。料理や酒を考えると、決して高くはない。たまの贅沢として、また小遣いが潤沢なときに訪れたいと思う。
9位
1回
2015/11訪問 2015/12/29
定例で開いている日本酒愛好会でこちらの店を訪れた。新しく参加いただいた会員の方が,日本酒好きの友人からのお勧めということで,こちらの店を予約してくださっていた。本町は船場センタービル10号館地下1階にある「船場女将小路」にある日本酒の旨い居酒屋。テーブル席に案内されて,メンバーが揃うまでなぜかビールをちびちびやりながらメニューを眺める。
メンバーが揃ったところで,料理と酒を注文する。最初に注文したのは,刺身5種盛り,鴨生ハム,出し巻き卵,鱚天麩羅,漬け物盛り合わせ,ししゃも,せせり塩焼き。日本酒は,松の司純米吟醸をお願いする。なんでも片口が2個しかなく,他のテーブルに出ている,ということで,2合徳利でお酒が用意される。まずは,乾杯。やっぱり旨い。テンションがあがる。すぐになくなり,次に花垣純米吟醸を頂く。
最初に刺身5種盛りが供される。日本酒は梅津純米を頼む。刺身は,鯛,鰆焼き霜,本鮪赤身,障泥烏賊,間八の5種。新鮮な刺身を食べながらゆるゆる日本酒を飲むのは大変な贅沢。どれも新鮮で美味しく頂けた。日本酒も進み,次に篠峯純米吟醸を頼んで,刺身を食べ尽くしてしまう。
出し巻き卵は,ふわふわで優しい出汁をたっぷり含んでおり,これも酒に合う。このあたりから,用意された日本酒を全種類制覇しようという野望が生まれる。開運を注文し,次の料理が来るまでの間,漬け物盛り合わせで日本酒を楽しむ。盛り合わせには胆振括弧もあり,これがほんとに日本酒によく合う。
続いて,鱚天麩羅,ししゃもが用意される。早速雁木純米吟醸をお願いし,料理と共に頂く。鱚の天麩羅は,天麩羅屋のそれとは違い,大ぶりのものを衣をたっぷり付けさっくりと仕上げてある。塩で頂くと白身の旨さが引き立つ。また,中骨や頭の部分も揚げてあり,これまた塩で頂くと非常に香ばしく,酒が進む。ししゃもは,スーパーのししゃもと違い,雄も雌もその身がほくほくしてやたら旨い。このあたりから日本酒を頼むペースが速くなる。十旭日,石鎚などをどんどん頼んでは飲み干していく。
鴨生ハムと鶏せせり塩焼きが出されると,日本酒友の会なのに赤ワインを頼む女性会員が出てくる。でも,少し味見させてもらったところ,ワインと鴨生ハムはものすごく相性がいい。むろん,日本酒にもよく合う。また鶏せせり焼きは,濃厚で歯応えもよく酒の友。銘柄は忘れたが,濁り酒を注文し,ワイルドに鶏と濁り酒を頂く。
ここで,注文した料理があらかた来たので,追加注文する。ジャガイモ饅頭,鯛酒盗クリームチーズ そしてまたもや鴨生ハムをお願いする。日本酒は, 奥播磨,ZOKU等を注文する。
ジャガイモ饅頭は,よくある蓮根饅頭とは少し違い,かすかにバターの風味がしてハイカラな味わいになっている。一口食べただけで後は女子チームが平らげてしまった。
鯛酒盗クリームチーズ は,三角形にカットしたクリームチーズの上に鯛の酒盗を乗せたもの。まったりしたクリームチーズに酒盗の鮮烈で慣れた味わいがとてもよく調和し,正に酒盗等名前のとおり,日本酒が進んでしょうがない。八海山を頂き,その後また,松の司と篠峯を頂く。
料理にも日本酒にもかなり満足したため,〆に女子チームは,たまご掛けごはんを,男子チームはおにぎりを頂く.たまご掛けごはんは,大分名産の地卵を使っているらしく,とてもおいしかった,とのこと。おにぎりは,大きな中に鮭や梅干しが入れられており,また日本酒が飲みたくなる。
結局,3時間半位居て日本酒だけで約3升。一人あたり4合以上を頂いた。でも誰も酔うことなく,最後まで料理と日本酒と会話を楽しむことができた。
料理は日本酒に合うだけでなく,日本酒を飲まなくても美味しく頂けるものばかりであった。また日本酒は銘柄自体はさほど多くないが,いいものを厳選して揃えており,またお値段も450円か500円と非常にリーズナブルである。ところで,こちらのお店,船場女将小路にあるのに,親切な大将初め店員さんは皆男ばっかりで美人女将は居なかったような気がする。女将という言葉にときめく私にはそこが少し残念かも。とはいえ,大将や店員さんの応接も過不足なく心地いい。また,機会を見つけて飲みに行き会いと思えるお店であった。
10位
1回
2015/04訪問 2015/05/24
祝い事があり,週末,家族で日本料理を食べに行くことにした。個室がいいと言うことで,選んだのがこちらのお店。当初の予約は月波別館に入れたところ,月波が平成27年2月新地永楽通りの元々は喜川有尾だった場所に出店したこちらの店へ行くよう案内された。
店内に入ると目の前には長いカウンター。そして,左右に個室がいくつかあるもよう。私たちは,4人用の尾室に案内された。個室は,広めのテーブルに,座りやすい椅子があり,程よい広さで落ち着いて過ごせそう。
個室使用の場合には,9500円以上のコースになる,ということで,この日は9500円のコースを予約しておいた。
瓶ビールと子供らのソフトドリンクを注文し,とりあえず祝いの乾杯をする。とにかくまあよかった,よかった,とみんなで話していると,先ず八寸が運ばれてくる。
八寸は,扇形の皿で供される。筍の皮と石蕗の葉で覆われている。その覆いを取ると,筍の山椒味噌添え,蛸柔らか煮,車海老淡煮,鮑の焼物,鴨ロース,鯖寿司,卵袱紗焼,黄身味噌漬け,鯛の酒粕漬,一寸豆等が,少しずつ美しく設えてある。これに続いて,胡麻豆腐土筆添えの小鉢が運ばれる。八寸はとにかく見ているだけで楽しい。
蛸は柔らかく,車海老はほっこり甘いし,鮑は香ばしく焼けた身と肝のほろ苦さ,鴨ロースの滋味深さ,袱紗焼きの甘い優しさと彩り,黄身味噌漬けのねっとりした舌触り,酒粕漬けの香り高さ,一寸豆の爽やかな青臭さ等,それぞれに個性的で美味しいし日本酒にもよく合うが,特に筍の山椒味噌添えは春の味と香りが口いっぱいに感じさせられ,また,鯖寿司も顔がほころぶような旨さであった。
続いて,煉瓦色の四角い大鉢の真ん中にこれまた大きな氷にガーゼをかぶせ,その上に鮑薄造りと雲丹,そして氷の周りにはガラスの小鉢が4つ置かれ,小鉢の仲には伊勢海老造りと唐墨が入れられたものが出される。氷の上の鮑は驚くほどの量。
伊勢海老は塩で頂く。プリッとして澄んだ身を口に入れると,身の甘みが一杯に広がる。鮑は,鮑の肝醤油で頂く。コリコリした歯応え。肝醤油の力強さによく合う。雲丹は山葵を少し乗せ,塩や醤油で頂く。これまた上質な甘み。どれもとても旨い。東一純米吟醸によく合う。すごい量だったが,食べきることができた。
ところが,次の皿も造り盛り合わせ。桜鯛,鮪大トロ,鰆,油目。桜鯛は,背の身を焼き霜に,腹の身はそのままに仕上げている。油目も焼き霜にしてある。
桜鯛は,熟成した旨みはないが身が活かっていて心地いい。同じ桜鯛でも焼き霜造りの方は、落ち着いた旨みを感じる。鮪は,山葵を多めに乗せて頂くと,口の中でジュワーと溶けていき,旨みだけが残る。油目は,皮目の香ばしさに加え,脂の乗った身がいい。鰆も旨い。
続いて煮物椀が供される。蓋を開けると出汁のいい香りが広がる。椀種は根曲がり筍と白くて大きな饅頭のよう。真丈か何かか。まずは出汁を一口。出汁加減はいいのだが,熱々ではない。というかぬるい。あれっと思い,椀種を箸で割って口に入れる。途端に中から韮の香りが漂ってくる。真丈ではなくおそらく鴨を骨ごと叩いたものと韮などを混ぜ合わせた種を小麦の生地で包んだ饅頭のようなものと思われる。
頃合いを見計らって、打出しの鍋が用意される。中には出汁が張ってあり、キャベツと玉ねぎが沢山入っている。しばらくして、鍋の具材が運ばれてきた。鱧をメインに、水菜、三つ葉、アスバラガス、野蒜、そして名前も知らない葉野菜が大量にある。加えて、豆腐と湯葉、椎茸。そして、梅肉に少し手を加えた薬味も用意された。
出汁が煮立ったところで、野菜を入れ、再び煮立ったところで鱧を入れ、鱧に火が通ったところで、出汁と鱧を小鉢に入れ、まずは出汁を飲む。鱧の骨から取った出汁で、淡い塩味がついている。そして鱧に少しだけ梅肉を乗せて頂く。脂が程よく落ちて淡白な味わい。続いて、野菜を頂く。鱧の出汁を纏った野菜はどれもうまい。また、豆腐や湯葉も旨かった。野菜が大量にあったが、何とか食べ切った。
鍋を頂いている途中で筍と蕗の炊き合わせが出される。これは、春を感じさせる一品。量も程よく、ほっとする。
鍋を食べ終わって、一息したところで、これまた朱色の大鉢が運ばれる。中を見ると、これまた物凄い量の何かの卵とじとその上に巨大な伊勢海老の尾の部分が乗っている。尾の部分を持ち上げると殻だけで身は入っていない。ただその尾の下には伊勢海老の頭から胴体の半ばまでの部分を二つに割ったものがあり、そこには身もミソもたっぷり詰まっている。
とりあえず、頭の部分を取って身やミソを頂く。甘みがあって旨い。そして、卵とじを掬ってみると、筍、京人参、椎茸、三つ葉等に混じって、大量の伊勢海老の身が入っている。味付け自体は淡く、海老の旨さがよくわかるが、やはり物凄い量。最後は飽きてきたものの、やはり何とか食べ切った。
卵とじを食べ切ったのを見計らって出されたのが、天魚の塩焼き。鮎ではないが蓼酢が添えられてくる。
頭からかぶりつく。焼きたてではなく、冷めているが、その分、味は落ち着いている。香ばしくて旨い。蓼酢にも合う。骨ごと頂いた。
焼き物も来たし、もう終わりかと思っていたら、大きな間違い。牛ヒレ肉のステーキが供される。もう腹十二分目といったところだが、食べてみると、やはり旨い。上手く肉汁が閉じ込められるような焼き方で、ミディアムレアに仕上げられている。結局、これも全部頂いた。
ここでやっと店員の方から、次は炊き込みご飯ですが、どの位食べますか、とのお尋ねが入る。大人は少しにして欲しいとお願いする。
炊き込みご飯は、筍と鶏。そして、香の物が出される。香の物はどれも旨い。
最後の水菓子は、蕨餅とマンゴー。蕨餅には黒豆が入っている。こちらは優しい甘さ。
鮑や上質の雲丹、鱧や伊勢海老等を惜しげも無くふんだんに用いて、ダイナミックかつボリュームのある料理をこれまた大胆な盛り付けで提供してくださる。その心意気はありがたいし、楽しく感じる。
懐石料理等が持つ、繊細な設え、研ぎ澄まされた旨み、洗練された味わいを楽しむ、というよりは、仲間と大いに食べ大いに語らい楽しいひとときを過ごすのに相応しい華やかな創作和食であろう。
この日の利用が祝い事だと予約の際に告げたところ、当日には、祝いのフラワーアレンジメントをプレゼントして下さった。このような心配りはとても嬉しい。
反面、煮物椀がぬるかったり、焼き物が冷たかったり、といった点は、残念である。料理の説明や食べ方についての説明は一切なく、店員の方に尋ねても的確に応答頂けなかったのも、少し残念である。祝い事の席なので、そのあたりの気配りはして頂きたく感じた。
とはいえ、個室でくつろぎながら食事が出来、楽しい家族とのひとときを過ごせた。上記の料理にビール、ソフトドリンク、東一に獺祭純米吟醸等を頂いて50800円と、コストパフォーマンスもいい。また、機会があれば訪れたい。
平成28年10月訪問
いつものように1ヶ月以上前に華やぎコースを予約して来訪。
先付は,栗豆腐と車海老,各種きのこの餡掛け。八寸は、鴨,衣かつぎ,銀杏,嫁菜と菊花のお浸し,海月と茸の霙和え,小柱の白和え,鯖寿司。次が椀代わりの玉地蒸し。向付は間八,鰈。障泥烏賊,鮪。焼物は,鱒の塩焼きイクラ添え。煮物鉢は,茄子饅頭。飯物が栗ご飯。赤出しと香の物。水菓子はカスタードプリンと葡萄、抹茶風味。
日本酒は,飛露喜 特別純米,新政純米にお勧めで冨近田純米吟醸を頂く。
やはり,何を食べても旨い。東京へ行くたびに必ず寄せて頂くなじみの店である.女将もとてもかわいい。これからも訪れたい。
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平成27年9月訪問
東京での仕事が入ったため,こちらのお店に1ヶ月前に華やぎコース(7000円)を予約して訪れた。前回の来訪時には,素晴らしい料理を堪能した。今回も期待一杯で訪れた。
先付は,雲丹と茸のジュレ和え。雲丹は甘いし,茸は旨み溢れ,ジュレは出汁の香りが素晴らしい。何より美しい。
次の八寸は,鯖寿司,丸中甘露煮,銀杏塩焼,子持ち鮎,アオサ半平いくら添え,鮟鱇肝,鱈白子,稲穂唐揚げ。やはり息を飲むほどの美しさ。また,どれも大変旨い。酒にも合う。
椀は定番の内子、雲丹、鱶鰭の玉地蒸し。これはやはり秀逸な一品。雲丹の甘さ,鱶鰭の丸み等,やはり驚くべき一品。
次いで,箸休めに戻り鰹。芥子で頂く。鮮烈な赤みに程よく乗った脂の旨さがとてもいい。
向付は,大トロ,墨烏賊,鰆焙り。どれもレベルが高い。日本酒によく合う。ここで特別に店主から鮪赤身を比べて食べてください,として赤身を出して頂いた.赤身の方は,爽やかな血の旨みと身の細やかさが素晴らしい。
焼き物は,鱧白焼きと焼き松茸,焼き舞茸。これは文句なく旨い。松茸の香り,鱧の品のいい味わい。松茸と違ったジューシーな舞茸の旨みが一体となって攻めてくる。これまた驚きの一品。
煮物鉢は,蓮根饅頭。むっちりとした饅頭に,鶏ミンチなどが入り出汁を利かした餡の旨みが絡まり,生姜の爽やかさが全体を包み込む。これまた旨い。
最後に,焼き松茸と焼き秋刀魚の土鍋御飯。かりかりの小梅を刻んだものが振りかけられ,貝割れが盛られている。松茸や秋刀魚,そしてそれらの味がしみこんだ濃厚な旨みたっぷりの御飯に,かりかりの小梅が爽やかなアクセントとしての役割を与えられており,これまた文句なく旨い。人参,胡瓜のぬか漬けや奈良漬け等の香の物も御飯によく合う。
水菓子はリンゴのコンポートとプリン。最後まで品よく楽しく頂けた。
今回の料理も,とても素晴らしいものばかりで,前回訪れた時と同じ,いやそれ以上の喜びと驚きを与えてくれた。日本酒も色々頂いたが,いいものが揃っている。コストパフォーマンスも素晴らしい。また,前回の来訪を覚えてくださっていたようで,それもうれしい。男前の大将もいい。何より,女将の美しさ,かわいらしさには,料理同様,驚きを禁じ得ない。また,東京に来る時には,必ず来訪したい。今回の訪問で点数を総合4.4に変更する。
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平成27年2月訪問
以前、東京に行った時に、この四谷三丁目界隈をぶらつき、細い路地がある落ち着いた街並みに魅せられた。今回、東京出張が決まった時、この界隈の店で是非食事したいと思い、食べログで検索して見つけたのが、こちらのお店。一ヶ月以上前に予約して訪れた。
地下鉄四谷三丁目駅から歩いて5分はかからないが、表通りから一本入った細い路地にある割烹。隠れ家のような落ち着いた雰囲気。
カウンターに案内される。午後7時に予約していた。入店した際には半分位の混み具合だったのか、5,6分もすると満員になった。
こちらのお店、ぐるなびで生ビール一杯無料のクーポンがあるので、まずはビールを注文する。きめ細やかな泡が立つよう丁寧に注がれたビールは、香りがくっきり立ち、とても旨い。これだけでこちらのお店の心配りの素晴らしさを感じる事が出来た。
料理は、まず先付けが蕗と白魚の炊合せ。蕗の苦みや香りをうまく残しながら、しっかりと出汁が染みている。白魚も、はかなげな旨みが出汁で更に引き立てられている。出汁加減がとてもいい。
八寸は、のれそれ、牛肉タタキとウルミの酢味噌、空豆、指大根、蛸柔らか煮、菜の花からすみまぶし、鯵棒鮨。息をのむほどの盛り付けの美しさ。思わす日本酒(八海山純米吟醸)を頼んでしまう。
のれそれは、清々しく、牛肉タタキは、とても香りがいいし、ウルミの食感も楽しい。蛸はとても柔らかく、旨みのかたまり。噛み締めながら唸ってしまう。菜の花の唐墨まぶしは、春を先どる苦みと唐墨の贅沢な旨みの調和が素晴らしい。棒鮨は、思わす笑ってしまった位、旨みたっぷり。大根はもろみ味噌で頂く。爽やか。いずれの料理も酒によく合う。
椀は内子、雲丹、鱶鰭の玉地蒸し。内子の濃厚な旨みを鱶鰭が吸い込み、また雲丹の甘さを茶碗蒸しの生地が包み込む。胡麻油が気持ち効いていて素材も中華を感じさせるが、やはり素材の持ち味が生きている事を考えると紛れなく和食。でも、驚きを禁じえない素晴らしい椀てあった。
向付は、墨烏賊、鮎並,初鰹、鮪、寒鰤。墨烏賊や鮎は酢橘と塩で頂く。墨烏賊はねっとりまったりした旨さ。鮎並は白身だけど程よく乗った脂の旨みが口の中に広がる。初鰹も生姜で頂くと優しい脂と清々しい香り。鮪は爽やかな香り。寒鰤も脂がたっぷり乗っていて蕩ける味わい。
焼き物は鰆の照焼き。蕗の薹と芥子菜のお浸し。粗挽きの唐辛子がアクセントで蒔かれている。鰆はほっこりした身と皮目の香ばしさに打たれる。蕗の薹の軽いえぐみや芥子菜の瑞々しさが素晴らしい。
煮物は、初掘りの筍、若芽しんじょう、京人参と独活の炊合せ。出汁が淡いなかにも滋味深く、また、しんじょうも若芽の香りと白身魚の旨みが出汁でまとめられて、さらに京人参と独活の土の香りが追いかけてくる完成度の高い一品。
ご飯は、シラスとえんどう豆の炊き込みご飯。1人なのに土鍋で炊いて下さった。
蓋を開けるとシラスの柔らかな風味清々しい生姜の香りが広がり、口に入れると力強い旨みが鼻腔に喉に駆け巡る。蜆の赤出汁も旨い。香の物は、キャベツ、胡瓜、人参。どれも軽やかでご飯によく合う。
最後の水菓子は赤白の苺。柔らかな甘さが嬉しい。
料理はどれも素晴らしい。ことに出汁加減がいい。また,椀などは気持ちいい驚きを与えられた。これぞ割烹料理である。また,コストパフォーマンスも素晴らしい。お料理とビールに八海山純米吟醸、石川の黒帯悠々 特別純米で1万円でおつりが来る安さ。さらに過不足のない気持ちいいもてなしや,料理のサーブのタイミングなど二も感動した。店を出るときには、女将と大将が雨降りにもかかわらず挨拶して下さった。とてもうれしい接遇出会った。なにより女将がとても可愛くて、よく気働きされていた。料理、サービスともにとても満足した。また東京に来るときにば是非訪れて旨い料理と旨い酒。素晴らしいもてなしを味わいたい。