5回
2023/02 訪問
底冷えする日に心が暖まる
今年に入り、大変な仕事があったことや、インフルエンザにかかったこともあってか、なかなか旨いものを食べに行くことが出来なかったか、2月に入り、体調もだいぶん良くなったこともあり、京都で行きつけにさせていただいているこちらのお店に予約して訪れた。
カウンターに座り、まずは、八海山純米吟醸をお願いする。片口で用意され、大将に一杯目を注いで頂く。さっぱりした綺麗な味わいのする日本酒である。
また、名物の釜飯は、今回鯛の釜飯をお願いした。
先付として、氷魚釜揚げと大根おろしのポン酢が出される。氷魚とは、鮎の稚魚で今の時期だけ頂ける琵琶湖の名産。それを釜揚げにし、ポン酢と大根おろしで頂く。しっとりとして滑らかな舌触りの中、微かに鮎の風味を感じる。とても旨い。季節を感じさせてくれる。
向付は鯛と横輪。鯛は、活かっているが旨味もしっかり感じるもの。横輪は程よく脂が乗っており、しかもその脂がサラッとしてしつこさが全くない。今季頂いた中で抜群の旨さ。また、横輪の皮を炙ったものも絶品であり、この向付には驚かされた。
続いての焼き物は、焼き河豚。これに葱が添えられてある。醤油と味醂に微かに山椒の風味のするたれを付けて焼かれている。しっかりとした身質で、淡白な中に旨さを備え、そこに醤油の旨味も加わり、これまた抜群の旨さ。また、添えられた焼き葱の甘いこと。日本酒も進み、続いて雪の茅舎純米吟醸をお願いする。香りもよく、きめ細かな味わいで、美味い酒である。
新たな酒を飲み、河豚を堪能する。あまりの旨さに、行儀悪いが、骨に付いた微かな身までほじくるようにして食べた。
留めの料理は、蛤酒蒸し。大きな蛤二個を酒蒸しにし、湯葉と菜の花を添えたもの。底冷えする京都の夜に心温まる一品。蛤は柔らかく旨味たっぷり。また、湯葉の歯触りや、菜の花のほろ苦さも素敵だと感じる。季節感あふれる料理である。
ここて、鯛釜飯、赤出しに香の物が用意される。釜の蓋を開けると、鯛の旨そうな香りに山椒の香りがふうわりと立ち昇る。早速茶碗によそい頂く。鯛の旨味が口の中に広がる。安定した美味しさ。蜆の赤出しや香の物にもよく合う。また、お焦げも香ばしいし、歯触りも楽しい。かなりの量だが、結局全部頂いた。
最後のお菓子は、前回と同様、生麩のあべかわ。生麩のモチモチした食感がいい。甘さも程よく、最後まで美味しく頂けた。
この日の料理はどれも旨いし、特に氷魚と向付には驚かされた。また大将や美人の店員さんのもてなしも素晴らしく、楽しいひとときが過ごせた。この4月から大阪に転勤するため、なかなか店には通えないかもしれないが、折を見て季節ごとにぜひ伺いたい。
2023/02/28 更新
2022/12 訪問
今年の最後の和食に堪能した。
年の瀬を迎え、最後に旨いものが食べたいと思い、なんとか予約が入る日を見つけ、コースを予約して、こちらの店に伺うことが出来た。
まずは、日本酒をお願いする。最初の一杯は大将自ら片口から盃に注いでくれる。銘柄は忘れたが、比較的香り高く、飲み口のいい純米吟醸。あゝ旨いと小声で独り言つ。
先付は、汲み上げ湯葉と雲丹。海苔と山葵があしらわれている。雲丹の甘さが湯葉にまとわり、素直に美味しい。
向付は鯛と横輪。横輪は海苔で巻いている。鯛の身は活かっているのに、旨味か十分に引き出されている。また、横輪は、若々しい味わいに海苔の香ばしさがうまく調和していて、少し背伸びした少女のような美しさを感じる。日本酒ともよく合う。
続く焼き物は、琵琶湖で取れた本諸子塩焼きのしょうが酢添え。香ばしく焼かれた諸子に、同じく椎茸と葱の焼いたものが添えられている。酢に付けて頂く。淡白だけど、しっかりとした旨味があり、香ばしさも感じられる。本当に旨い。いくらでも食べたく思う。焼き葱や椎茸も甘味と旨味が強い。
ここで、日本酒をおかわりする。頼んだのは、桃の滴特別純米。滑らかな口当たりで、広がりを感じる優しい味わいのお酒。料理によく合う。
次は小蕪の蟹餡掛け。出汁を含ませて炊いた小蕪に、蟹の身をほぐし入れた餡をかけて、小蕪の間引き菜を添えたもの。木の匙で頂く。旨味たっぷりの餡が絡んだ小蕪は、熱々で蕪の甘味が引き立ち、とても美味しい。餡が残らないよう、最後まで丁寧に頂いた。
御飯は、蟹釜飯に蜆の赤出しと香の物。釜飯は、蟹の力強い旨味が米一粒一粒に染み渡っている。旨いなと素直に感じる。また、蜆の赤出しも釜飯の力強さに負けてはいない。漬物を口直しにして、最後まで美味しく頂けた。
〆の水菓子は、生麩あべかわ。茹でた生麩にきな粉をまぶしたもの。もちっとした食感がとても楽しい。
今回も季節感溢れる料理と大将との楽しい会話を十分に楽しむことができた。これからも季節毎に訪れたい。
2023/01/11 更新
2022/09 訪問
松茸の釜飯を頂く
秋の訪れとともに少しずつ暑さが和らいできたが、それでも日によっては、猛暑日となることもある。そんな中、旨いものが食べたくなり、久しぶりにこちらのお店を訪れた。あらかじめ、コースを予約しておいた。
カウンターに案内され、まずは豊盃純米吟醸ひやおろしを注文する。片口に入れて供され、一献目は店員の方が注いでくださった。すっきりとした中に、米の旨味と酸味のバランスがよく取れており、まだまだ暑い日にぴったりの日本酒だと思う。
前菜が用意される。小鉢でイチジクの胡麻餡掛けが供される。イチジクの優しい甘味と胡麻餡のまったりとした味わいが上手く調和し、暑さに疲れた身体を優しく癒やしてくれる。
次の向付は、鱧焼き霜と鯛。鱧は梅肉で頂く。ちょうどいい加減に脂が乗った鱧を焼き霜にしてあり、香ばしさと濃厚な旨味が素晴らしい。また、鯛も食べ頃のものでとても旨い。日本酒が進む。
続いて、焼き物は鱒。これにつぶ貝と山葵茎の和え物が添えられている。鱒は琵琶鱒ではなく、川に遡上する前に海で捕らえたもの。一口頂くと、酒粕に漬けてあるのか、かすかに酒粕の風味が立ち昇り、その後に濃厚な鱒の旨味が追いかけてくる。ご飯にも酒にもよく合う。
また、つぶ貝と山葵茎の和え物は、山葵の軽やかな辛味と貝のこりこりした食感と旨味がよく合い、いくらでも日本酒が飲める。ここて、豊盃がなくなり、菊姫純米ひやおろしを注文した。こちらは旨味が強いのに、口当たりもいい、酒飲みが好きな酒である。鱒とつぶ貝と日本酒とを楽しみながら、素敵なひとときを過ごす。
次の料理は、鰻の蒸し物。器の底に茶そばを敷き、その上に鰻を乗せ、裏漉しした豆腐などで包み、山葵を乗せて、餡を掛けたもの。かなり淡い味わいだけど、その分、鰻の旨味が引き立ち、また、蒸してあるため、鰻のふんわりした口当たりも心地よい。こちらも美味しい一品であった。
しばらくして、釜飯が炊き上がり、蜆の赤出し、香の物と共に供された。釜の蓋を開けると、松茸の香りが立ち昇ってくる。食欲がそそられる。茶碗によそい、まずは一口。松茸のいい香りが広がる。続いて松茸や出汁の旨味をまとった米の美味しさが追いかけてくる。箸が止まらない。一膳目を食べ、お代わりしてやっと落ち着く。ここで、蜆の赤だしを頂く。蜆は赤だしととても相性が良く、松茸ご飯の旨味を活かしつつも、それに負けない旨味を備えている。後はゆったりと松茸ご飯、赤だし、香の物を余すことなく、美味しく頂いた。
最後の水菓子は、今年初めて頂く梨。みずみずしく品のよい軽やかな甘さで、最後まで満足した。
こちらのお料理は、どれも実直で気を衒わないものばかりであり、素直に美味しく頂ける。コスパも非常に良く、日本酒も安い。また、お人柄のいい大将の話も料理に負けないくらい面白い。また、季節毎に訪れて、その時々の美味しい料理と酒、大将の話を楽しみたい。
2022/09/16 更新
2022/05 訪問
美味しい和食
何か旨いものを食べたいと思い、職場から少しだけ離れたところにあるこちらのお店を予約して訪れた。前から気になっていた、釜飯が美味いという割烹。紅華というコースをお願いしておいた。
押小路通沿いには、昔ながらの町屋があったり、隠れ家のような割烹が幾つもあり、風情たっぷり。その押小路通の二条城に一番近いところにこちらのお店があった。暖簾をくくり、入店する。
こちらのお店はカウンター6,7席のかわいいお店。大将と可愛い学生さんの二人で切り盛りされている。
まず、日本酒として、臥龍梅純米吟醸をお願いする。片口と小さな足付きのグラスが用意され、一献目は、可愛い学生さんがついでくれる。うれしい。さっぱりしていて料理に合う味わい。
先付小鉢として、魚そうめんの山芋すりおろしが供される。山芋を絡めて頂く。出汁の香りの中に微かな柚子と生姜の風味を感じる。魚そうめん自体は弾力もあり、魚の旨味も引き立ったおり、美味しいものである。
向付は、初鰹と鱧焼き霜。醤油と梅肉が用意される。まずは焼き霜を梅肉で頂く。口に入れるとほの温かく、続いて、鱧の旨味が口いっぱいに広がる。最近、こんなに旨い鱧は食べていない。顔が綻ぶ。
また、初鰹は、色も綺麗な上、モチモチした食感に脂の旨味ではない鰹本来の旨味に血の爽やかな酸味を感じる。南紀白浜の銘々居酒屋で頂ける特上の餅鰹そのもので、とても旨い。向付の旨さに感動した。無論日本酒に合う。
焼物は、桜鱒の木の芽焼。運ばれて来た時に、山椒のいい香りが漂ってくる。蚕豆とはじかみ生姜が添えられている。醤油と酒と味醂で味付けされており、脂が乗っているのに脂っこくなく、品のいい旨味が素晴らしい。木の芽の香りもいいアクセントになり、桜鱒の旨味が引き立っている。
また、付け合わせの蚕豆も茹で加減、塩加減がちょうどよく、これだけて日本酒がいくらでも飲めそうである。
続いて、蒸し物として、丸茄子海老餡かけが運ばれてくる。蓋付きの器で供され、小さなレンゲが添えられている。
蓋を開けると、ふうわりとした出汁の香りが漂う。器には、丸茄子、里芋、生湯葉に粗めに切った海老の身をたっぷり入れた餡がたっぷりかけられ、刻み海苔と葱があしらわれている。
レンゲの丸茄子を掬い、餡と共に口に入れる。熱々で出汁染み込んだ丸茄子の旨いこと。また、里芋はほっくりしていて、素材の味わいをしっかり感じられる。湯葉も、海老のプリッとした食感に滑らかなのに大豆の旨味が詰まっていて美味しい。
蒸し物を食べ終わった頃を見計らって、鮎の釜飯が用意される。これに、蜆の赤出しと、胡瓜糠漬け、沢庵、桜柴漬けの香の物が運ばれて来た。
釜飯は一人用の釜で炊かれており、自分で蓋を開ける。そこには頭と中骨を抜いて焼いた鮎に、里芋、そしてたっぷりの実山椒が入っている。出汁の柔らかな香り、鮎の旨味溢れる匂い、実山椒の鮮烈な香りが立ち昇る。軽く混ぜて、自分で茶碗によそう。お焦げもちょうどいい具合に取れる。
まずは一口。出汁の風味に鮎の旨味と実山椒の香りを纏って、丹精に炊き上がった飯は、とても旨い。お焦げは香ばしく、実山椒の香りは飯だけでなく、赤出しまで美味くしてくれている。また、軽く出汁を吸った里芋は、ほっくりねっとりして、これまた旨い。胡瓜糠漬けや桜柴漬けも爽やかで、釜飯によく合う。
一膳食べ終わり、釜飯は半分くらいに。お腹はかなりいっぱい。持ち帰りをお願いしようかとも思ったが、まだまだ食欲はある。結局、全部残すことなく、美味しく頂いた。
最後の水菓子は、メロンを出して頂いた。大将との話に熱中したため、写真に撮るのは忘れたが、美味しかったのは覚えている。
コースで5800円と非常に安いが、料理は釜飯だけでなく、どれも美味しく頂けた。椀物がないのは少し淋しいが、向付も焼き物も蒸し物もレベルが高く、かつ基本に忠実な調理と味付けで安定した旨さを感じた。また、非常にコスパがいい。この日はあまり飲まなかったが、日本酒も総じて安い。店は清潔だし、大将も若くて気さくない方、また、給仕された学生さんも可愛い方だった(サービス点が高めなのは、これが原因かも)。アラカルトも豊富そうだし、是非度々伺って、色々なものを食べてみたい。
2022/05/30 更新
京都勤務の時によく訪れたこちらの店に再訪したくなり、久しぶりに、コース料理を予約をして伺った。
カウンターに案内される。まずは、日本酒を注文する。この日の限定酒である「悦 凱陣 純米吟醸亅をお願いした。
片口に入れられ、店員の方が一献目を注いでくれる。まずは一口。爽やかな中にふくらみを感じる旨い酒である。
ます、魚素麺のとろろがけ。暑い日に京都では馴染みの一品。喉ごしもよくさっぱりした旨味がうれしい。
ここで、〆の釜飯を何にするか問われる。五目か鯛にしようか迷っていたが、名残りの鮎があるようで、鮎の釜飯をお願いする。
向付は、鯛と縞鯵。こちらは安定の旨さ。京都で鯛を頂くと何故か期待値が上がるが、こちらの鯛は美味しく頂けた。日本酒が進む。
焼き物は、鮎の風干し、万願寺とうがらしの海老真薯詰め、薑生姜。小振りの鮎を干したもの。それに海老真薯を半分に切った万願寺とうがらしに詰めたもの。
鮎は頭から頂く。程よく水分が抜けて旨味が凝縮されており、頭から障るところなく美味しく頂ける。また、真薯は、海老の旨味、甘味に、万願寺のほろ苦さが、うまく調和して、これまた美味しい。日本酒が旨い。
ここで、雪の茅舎純米吟醸をお願いする。甘味と酸味が程よく効いていて、でも意外と辛口で料理に合うお酒だと思う。香りもいい。
煮物は、かぼちゃの餡掛け饅頭。蓋を開けると出汁と山椒のいい香りが立ち昇る。まずは木の匙で一口。饅頭のむっちりした食感と南京の甘さがふわっと香るところに、豚挽肉を軽く味噌で味付けたものが入れられており、肉の旨味が口いっぱいに広がる。そこに出汁の効いた餡が掛けられており、出汁の良い香りが追いかけてくる。蓮根饅頭が大好きだが、初めて食べたこのかぼちゃ饅頭も本当に旨い。思わず、顔がほころんでしまう。ゆっくりと日本酒を飲みながら、熱いところを最後まで楽しんだ。
かぼちゃ饅頭を食べ終わって、しばらくすると、鮎の釜飯が炊き上がってきた。まずは香の物が用意されついて釜飯と茶碗、そして赤出しが供される。
釜飯の蓋を開けると、鮎の半身と、少し大振りに切った小芋、そして山椒と出汁の香りが広がってくる。鮎の身をほぐすようにかきませて、鮎の身、小芋、おこげを含んだご飯を茶碗によそう。
まずは1口。出汁の旨味に鮎の旨味が米や小芋に染み込んで、とても美味しい。おこげも旨いが、意外と小芋がむっちり、ねっとりして、とてもいいアクセントになっている。香の物やしじみの赤出しをいただきながら、食べ進む。たちまち茶碗が空になり、おかわりをする。そしてまた食べ進む。かなりお腹いっぱいだったが、旨いので3杯目をおかわりして、赤出しや香の物とともに釜飯を全部美味しくいただいた。
水菓子は梨。最後にまた季節を感じさせてくれる。ひんやりとしてとてもみずみずしく、残暑厳しい日の夕食の最後をきれいに締めくくってもらった感じがする。
この日は、お客さんもたくさんいて、大将とたくさん話をする事は叶わなかったが、それでも要所要所で気配りをしていただいて、とても心地よく過ごせた。料理も実直に旨いものばかりで、日本酒とともに、久しぶりに京都の夜を楽しむことができた。またしばしば訪れたい。