みちのく五郎さんが投稿した玄(奈良/近鉄奈良)の口コミ詳細

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グルメハイになれるお店を中心に紹介します。

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みちのく五郎 (50代後半・男性・京都府) 認証済

この口コミは、みちのく五郎さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

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近鉄奈良/そば、日本料理

1

  • 夜の点数:5.0

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 5.0
      • |CP 4.5
      • |酒・ドリンク 5.0
1回目

2013/06 訪問

  • 夜の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気5.0
    • | CP4.5
    • | 酒・ドリンク5.0
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人

只々、おいしくて、ため息が出ます。

<まえがき>

膨大な書き溜めレビューを抱えつつも、最近お伺いしたお店でどうしても、印象が残っている内に先に書きたいお店として、こちらの玄のレビューをアップさせて頂きます。
玄は、奈良県の食べログ評価でもダントツのトップを行く蕎麦屋であるが、総合評価のみでなく、信頼を置く多くのレビュアーさんが高評価を付けておられる。
これだけでも、かなりお伺いしたいお店であったのですが、それに加えて、私の音楽関係の仕事でお世話になっているY氏が、こちらの玄の主と親しく、是非夜の蕎麦懐石に行こうと誘いを受けていたのでありました。
実は、こちらの玄のご主人も音楽家で、オーボエ奏者でもあり、奈良県トップを行く高校吹奏楽部でオーボエの指導をしている程であります。以前からオーボエのリード(金管楽器でいうマウスピースの部分)を自作されるのだが、そのこだわり方も半端ないもので有名な方であるが、そのこだわりが蕎麦にどのように表れているのが、それがとても楽しみであります。
この日は、北海道からスカイマークで神戸空港に降り立ち、そこから京都で仕事の準備をして車をピックアップして、奈良に入るという強行軍であったのであるが、ここで、大いなる勘違いでお店での集合時間が午後6時30分であるにも関わらず、午後7時と思い込み、更に交通渋滞にも遭い、最終的に45分近い大遅刻をしてお伺いすることに。こちらのお店、本当に住宅街の中に佇む、何とも分かりにくい場所にあり、駐車場も無いことから、車で行くことはおすすめできません。
今回、ご一緒に同席したのは、Y氏の他、サクソフォン奏者の西田歩美さん(名前公表承諾済)、同じくサクスフォン奏者で、ギター工房を持たれ、ギター制作を手掛ける丸山利仁さん(名前公表承諾済)の3人である。私以外の3人の共通点はお酒に強いということ。特に西田さんと丸山さんは、大のお酒好きということで、今回の蕎麦懐石は、日本酒を堪能できるということで、かなり楽しみにされてこられたようである。
残念ながら、こちらのお店を紹介して下さった、Y氏は、前日に胃腸炎になられたようで、2日間何も口にしておられないという。もちろんお酒もダメ(笑)。何とも残念なのですが、Y氏は、こちらの玄の蕎麦懐石は3度ほど頂いておられるようであり、今回は全ての料理は半分ずついただければいいとのこと。

<こだわり抜かれた日本酒のストック>

お料理の前に、ご主人から料理とお酒の説明がございます。私はお酒がダメなので、うまく説明ができないのだが、こちらのお店は蕎麦と同等に、お酒のこだわりがすごい。日本酒のストックは100種類以上であり、それぞれのお酒のもつ特性を完全に理解されており、懐石コースで出て参ります、お料理1つ1つの相性を絶妙に使い分けておられ、お酒好きのお二人からは、「これは凄い」「この相性は絶妙」と感嘆する言葉が次々と出て参ります。お酒が飲めない人が可哀想と憐れんで頂くほどであります(笑)。

<蕎麦豆腐>

主のご説明が終わり、ほどなく最初に出て参りましたのが、蕎麦豆腐であります。蕎麦がきはよく頂きますが、蕎麦豆腐というのは、結構めずらしいです。見た目はとても美しく、果たしてお味の方は。
真っ白なのは、更科粉を使っておられるということで、更科らしい優しく、クセのない、優しい優しい風味が楽しめます。一緒に添えられているウニと茄子にも絶妙にマッチしており、ウニの自然な甘みが、更科の風味に彩りと、奥深さを与えます。
最初のお料理から、ヒットでありますね。

<蕎麦がき>

次に出て参りましたのは、定番の蕎麦がきであります。蕎麦がきと共に、お酒の種類も変わります。ご主人のいわれるようにお酒を味わうお二人でありましたが、またまた感嘆の声が。
こちらのお店は、お酒が飲めない人は、少しもったいないと思うくらいに、酒と蕎麦料理の相性が研究されておりますね。市場では入手困難な美酒ばかりをそろえられているようであり、お酒の飲めるお二人の表情は、幸せそのものであります。
さて、肝心の蕎麦がきの方でありますが、全体的な色調は少し緑がかっており、お味の方が気になりますが・・・。
これは、本当においしいです。蕎麦がきがおいしいお店は、蕎麦そのものもおいしいことが多く、これまで、米子の大吉さんや、北海道のなかむらなど、名店中の名店のそばがきというのは、実においしいものだ。
粒子感は全く無いですが、かといって柔らか過ぎず、硬すぎず。。。蕎麦の何とも美味しい風味が口の中一杯に広がります。塩と刺身醤油の両方で味わえますが、私は半分以上何も付けずに味わい、最後は刺身醤油でしめます。

<蕎麦スープ>

もう、既に最初の2つのお料理で、私はグルメハイ状態となっており、お酒で気持ちよく和われているお二人以上に料理に酔っている感じであります。テンションもかなり高くなって参りましたが、そのテンションを、良い意味で沈め、次に出てくる本命のせいろに繋ぐために、とっても優しい蕎麦スープの登場であります。
塩気のものはほとんど入っておらず、蕎麦そのものの、風味が、お腹の奥底までじわじわと伝わっていくのが理解できます。こちらの蕎麦スープ、胃腸炎で2日間何も食べられなかったY氏には、特に好評だったようで、静かに、優しく、おおらかに、私たちの胃袋を癒すように、包み込んでくれました。

<せいろ蕎麦>

お腹と舌を整えた後は、本命のせいろ蕎麦が参ります。
今回は、なんと水蕎麦で頂くことに。水蕎麦は、関西では珍しく、私自身、水蕎麦が盛んな福島県は会津で頂いた「桐屋夢見亭」さんの水蕎麦以来であります。何でも、会津の方には、水蕎麦の協会のようなものがあり、そちらの協会の皆さんも、こちらの水蕎麦を食べにこられたそうであります。
ただ、いくら蕎麦そのもののおいしさを堪能するといっても、やはり水だけで最初から最後まで楽しむというのは、少々無理があるもの。ということで、こちらは、自家製の梅肉ソースで、水そばが飽きたら、梅でアクセントを楽しむことができるのですが、こちらの梅肉ソースが何とも美味しい。ご主人さんが、あまり酸っぱい梅肉は苦手ということで、結構甘味のある梅肉なのですが、その甘さが、くどい甘さでなく、何ともさわやかで自然な甘みなんです。それが、蕎麦と絡んで、どこか心が洗われるような、新鮮で優しい味。
最高です。
もちろん、蕎麦そのものも素晴らしい!つなぎを一切入れておられないにもかかわらず、このつなぎを入れた以上のなめらかな食感。のど越しも素晴らしい。十割で、この細さというのも凄いですが、同じ食感を維持して、これよりも、はるかに細く切ることができるといわれる。ただ、細さに関しては、細ければいいというものでなく、その日のそば粉の状態を観て、最も適度な細さに調整されると言われる。
全くもってすごいです。良く考えれば、今は蕎麦的には、あまりいいシーズンでなく、新蕎麦が出てくるまでの6~8月は最も蕎麦にとって過酷な時期だと言われるが、新蕎麦か、それ以上に、蕎麦の香りを楽しむことができます。
この点、ご主人にお伺いすると、新蕎麦だから美味しいということではなく、古い蕎麦でも、保存の仕方次第では、新そばより、程よく熟成し、おいしくなるという。温度、湿度を完全に把握し、蕎麦の熟成度合を見事に制御されておられますね。本当にあっぱれであります。

<田舎蕎麦>

もはや、ここまでのお料理で、自身の満足度合のメーターを振り切ってしまい、グルメハイ状態も通り越してしまう。次に来るのは、深い深いため息であります。普段はため息というのは、残念の時や、落ち込んだ際に出るものだが、ある一定以上の満足な状態が継続すると、もはや、笑顔やハイな状態は通り過ぎ、感心と、未知なるものに遭遇した人間の心理的な自然なレスポンスなのかもしれませんが、言葉が出ず、ただただ、深いため息が出てくるのであります。
田舎蕎麦という言葉のイメージは、粒子感があり、粗挽きされた蕎麦殻の猛々しいインパクトさがあり、蕎麦自体も、少し太めという先入観があります。
ところが、こちらの田舎蕎麦は、確かに蕎麦殻を彷彿させる黒々とした色彩があるものの、粒子感はなく、蕎麦の何とも香しい風味を堪能することができます。また、こちらもつなぎは一切入れておらず、立派な十割であります。そして、この細さ・・・・。
ほよど、石臼で、これでもかという程に丁寧に挽いておられるのだろうが、この食感、この香り、細さといい、全てが私にとっては新鮮でありました。
つけ汁も、私のストライクゾーンど真ん中の味でありました。江戸前がお好きな方には、少しソフトに感じられるかもしれませんが、私はこのくらいが丁度良いですね。
これまた私の大好きな千歳の「手打そば 梅乃家」の塩うどんのごとく、節や魚の出汁を煮詰めることなく、お吸い物の延長として、ソフトに一番出汁だけを使用する。このクラスの蕎麦屋だと、当たり前かもしれないが、本当に見事なお出汁でありますね。
また、この汁に辛み大根が何ともマッチする。このつけ汁のために生まれてきたのではないかと思う程のそのマッチングの良さに、またまた深いため息が出ます。

<蕎麦の実入り鰻の蓮むし>

既にメインのせいろと田舎蕎麦で、クライマックスを迎えていた私は、そのままお勘定をしてもいいくらいに満足をしていたのであるが、ここからはオーケストラでいうと、全く別のピアノ協奏曲が始まるというイメージだろうか。イメージ的には、ラフマニノフのパガニーニ狂詩曲といったところだろうか。もちろん、オーケストラはお料理、お酒はピアノといったところだろうか。
二幕のトップが、こちらの蕎麦の実入り鰻の蓮むし。既に満腹中枢は満たされているものの、おいしいものは、別腹でいくらでも入る。鰻もおいしいが、全体の優しくも、主張のある、完成度の高い味付けが、またまた私のストライクゾーンど真ん中をとらえた。
この味付け、私の大好きな京都の「旬菜食房栖玄」さんの味の方向性と、とても似ている。いわゆる、雅な味のベクトルでなく、あくまでも「わびさび」を見事に表現している。蕎麦をこんな風にアレンジできるものなんですね。

<鯛とホタテの粗挽き蕎麦粉焼き>

もう、ここまで来ると、次も美味しいものが出てくるに違いないという予想が簡単にできます。これらの予想と期待に応えるべく、主は、好みを超えた、普遍的においしい一品を、「これでもか!」と出してきます。
「何なんだ、この甘味のある絶妙なホタテは・・・」
粗挽きされた蕎麦粉が、小麦粉の代わりに使われ、軽く揚げられているのか、いや、これはソテーのような気もする・・。もはや、料理のジャンルさえ分からないくらいに、創意工夫がなされている。鯛も身がしっかりつまっていて、これまた何ともうまい。思い出しただけでも、唾液の分泌が盛んになります。
いやはや、まさに狂詩曲でありますね(笑)。

<蕎麦米入りじゃこご飯>

もはや、ホタテと鯛で、第2曲も終演し、ここからはアンコールであります。これも、珍しい蕎麦入りのじゃこご飯。もう、メインの蕎麦で十分満足していた私たちは、アンコールである、このじゃこご飯を、ただただ、楽しみました。イメージ的には、ラデツキーマーチでしょうか(笑)。

<蕎麦団子他>

アンコール2曲目は、こちらの蕎麦団子とメロン、それに蕎麦煎餅であります。もともと、これまでの料理で十分後味も良く、口の中も、胃袋の中も、とても心地よい状態になっているのだが、これまた、スイーツまで、ここまでこだわるのかという程に、こだわりを見せる。
今回の料理で、唯一蕎麦が使われていないと言われるメロンのデザートでありますが、これが、最近頂いたどのスイーツよりも美味しいかもしれません。片栗粉や、その他、様々な隠し技が投入されているであろう、メロンのスイーツ。ここまで、蕎麦にこだわってきて、あえて蕎麦抜きの一品を出してまで満足感を上げるこのにくにくしい心配りが、もうたまりませんね。
もちろん、蕎麦団子も超一級品であります。更科粉を使用したこの食感。同じ更科粉であっても、一番最初に頂いた、蕎麦豆腐とは、全くことなる食感であり、プルンとした、独特でさっぱりした食感は、最後をしめるのに、まさしくふさわしい存在感でありますね。

<総括>

いや~最後まで読んで下さった方、本当に有り難うございます。ここまで長いレビューは久しぶりでありましたが、それ程までに今回の料理の数々には、感銘を受け、レビューを書かずにはおれませんでした。
こちらのご主人は、蕎麦屋で修業を積まれた訳ではなく、独学で30年近く蕎麦を挽いてこられました。蕎麦に関しては、異業種からの転業者が多く、ある意味、料理人の持つ、人格や個性、人柄、人生哲学的なものまでが、蕎麦に表れてくるように感じます。
そして、何より大切なのは、作り手のセンスなんでしょうね。いくら修行を積まれても、このセンスの部分だけは、克服し得ない天性の壁のようなものがあり、それが、物事にこだわり抜くというアーティスト的な要素が磨きをかけ、このようなため息のつくような、素晴らしい作品に仕上がるのでしょうね。

音楽も蕎麦も同じなんだな~と実感した晩餐でありました。食材と食材のハーモニー、それに、それぞれの食材の個性や特性を熟知したからこそ出せるアンサンブルの素晴らしさ。食の名指揮者であり、名演出家といったところでしょうか。

店舗は小さく、お部屋は2つのみであり、夜は、2組しか接待できない。本来、時間差で、上手に回していくはずが、私の大遅刻。大変ご迷惑をお掛け致しましたが、愚痴1つ言われず、1つ1つの料理を真剣勝負で挑んで頂きました。
「プレッシャーは感じるが、ストレスは感じたことがない」という主の言葉、こちらが全てを物語っているように思います。究極な道楽の延長線に全ての料理があるのでしょうね。本当に圧巻でありました。有り難うございました。

(余談1)

こちらのお店、国内の芸能人はもとより、海外からも多くの食通の方が参られます。最近では、プライベートジェットで、この蕎麦を食べるためだけに来日したという、映画監督のシャラマン監督。映画シックスセンスなどで有名な方だが、私は個人的にこちらのシャラマン監督の出身であるフィラデルフィアの大学に勤務していたこともあり、とても尊敬している映画監督のお一人であります。次回来日される際には、是非ご一緒させて頂きたいものであります。

(余談2)

今回は、音楽にかかわるメンバーとご一緒しましたが、ご主人いわく、蕎麦を作ることと、オーボエのリードを作ることと、どちらが難しいかと言えば、圧倒的にオーボエのリードを作ることだそうです。一度、店主のオーボエを聴いてみたいものです。

そして、宣伝になりますが、今回ご一緒致しました、サクソフォン奏者の西田歩美さんのコンサートが滋賀県でございます。まだまだ先でありますが、サクソフォンがお好きな方、音楽がお好きな方は、是非いらしてみて下さい(アップした写真をご参照ください)。玄の話で盛り上がることでしょう(笑)。

  • 宣伝です!

2013/06/25 更新

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