『ゾランバリーのアート・ギャッベ』takaboさんの日記

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ギャッベ(GABBEH)は、イランの遊牧民が作る手織りの草木染め絨毯です。絨毯と言えば同じくイランのペルシャ絨毯が真っ先に思い浮かびますが、ギャッベというこの聞き慣れない絨毯は、今日世界中で人気の絨毯となっています。ペルシャ絨毯は色や柄のムラを良しとしませんが、ギャッベは逆にそれらを美点とします。昔から遊牧民の間で受け継がれてきたギャッベの品質を、「アート」と呼ばれるまでに高め、世界中に流通させたのがイランの絨毯商人ゴラムレザ・ゾランバリー氏です。

ギャッベの歴史のなかで、一時期化学染料を使う時期もあったそうですが、ゾランバリー氏は市場に流通させるギャッベを天然染料のみに変えました。手間も掛からず費用も安い化学染料は色鮮やかな仕上がりです。対して天然染料は、手間も費用も掛かりますが、落ち着いた深みのある色合い、敢えてムラのある自然な仕上がりになります。この草木染めの復活によりギャッベの人気は高まりました。例えば代表的な赤色はローナス(茜)という植物の根を石臼で粉に挽いたものを使用します。これをカシュガイ族などの女性は、大地に敷かれた織機の上で、大自然から受けるインスピレーションに従って、何年もの年月をかけて織り上げます。若い女性達ならば、3枚ほどの絨毯を織り上げて嫁入りをするのだと言われます。そう考えると1枚のギャッベを織り上げるのに3-4年はかかるということになるでしょう。織り上げられたギャッベは更に何種類もの工程ー洗い、バーナーによるむだ毛の焼き、天日干し、バリカンによる刈り取りなどを経て完成します。1枚1枚が世界に一つしかない一点物です。

我が家ではリビングに白いラグを敷いていましたが、かねてより赤色のラグなどに新調したいと思っておりました。馴染みのインテリアショップで半年に1度、アート・ギャッベ展をしていますので見に行っていたのですが、すべてが1点もので、高額な品でもあり迷ってしまうとなかなか購入には到りません。今回、閉店後に数点を自宅に持って来てくれるサービスがあるとのことで、利用してみました。やはり店頭で見るのと、実際部屋に敷いてみるのとでは印象が異なります。気に入ったものが見つかったので購入しました(約70万円)。大きさは約3x2m、赤とオレンジのグラデーションになっています。毛の立ち方によって一方からは濃い色に、他方からは明るい色に見えます。非常に密度が濃く織られており丈夫そうで、さすがに過酷な自然の中で土足で使用することを想定した絨毯です。毛足は比較的短く、しかしふんわりとした肌触りです。羊毛の自然な油が少し残っているそうで、素肌に良いようですが、もちろん衣服にシミができるような油分ではありません。広い店頭では分からなかったのですが、かすかに動物のような臭いがあります。消臭剤の使用などは問題ないそうなのでファブリーズしてみました。その後は気になりません。使い込むほどに味わいが深まり、世代を超えて使い続けられる物とのこと。暖かく自然な風合いで、まるで自宅にパワースポットができたかのようです。
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