2回
2014/08 訪問
世界3位の期待を裏切らない感動的に美しい料理
お盆休みにユカワタンに行くために軽井沢に行くことを思い立った吉日は、まだイタリア旅行前の4月のある日。まずは目的であるところのユカワタンに電話して予約確保。次に宿を決めるに当たって、同じ星野リゾート内の「星のや」はすでに経験済みなので、ユカワタンがメインレストランのホテル「ブレストンコート」の、どうせなら一番良い部屋をネット予約。せっかく軽井沢に行くので1泊ではもったいないと、次の日はどうせなら超有名な「万平ホテル」に電話して、どうせならもっとも歴史の古いアルプス館の部屋を予約確保。前日がフレンチなので万平では鉄板焼きステーキの店を予約。後はお盆休みを待つだけでしたが台風11号などでどうなることかと。
ユカワタンはフレンチレストランです。湯川というのは軽井沢を流れる川で星野リゾートエリアを流れています。タンというのはフランス語で時間のこと。「湯川を流れる時間」という意味らしいです。ユカワタンのシェフ、浜田統之さんは2013年ボキューズ・ドール国際料理コンクール世界大会で銅メダルを確保しました。これは凄いことだったようです。ボキューズドールというのはフランス料理で最も権威ある賞であり、各国の大会からアジアなど地方大会を勝ち抜いた、世界で24人の料理人が出場するサッカーのワールドカップのようなものです。歴代の受賞者はフランスやスカンジナビア勢などヨーロッパ勢ばかりで、日本がメダルを確保したのは浜田シェフが初の快挙でした。
「水のジビエ」というのがユカワタンのテーマ。これは欧米には存在しない概念のようですが、魚の豊富な日本では珍しくない発想のように思います。湯川など地元で取れる魚などを生かしたフランス料理。その自信は本物で、先のボキューズドールでも魚部門の採点では世界最高点だったようです。またFoodie Top 100レストランの日本国内部門で紹介されている100店舗の中で、フレンチはユカワタンを含めて8店舗のみです。
フォト1)ブレストンコートの部屋はコテージなので、ユカワタンの予約に間に合うように、フロントに電話して部屋まで車で迎えに来てもらいました。リゾートの敷地内、森の小道の奥にひっそりと建つ一軒家レストランです。
フォト2)ボキューズドールの賞状
フォト3)高い屋根、広い窓からの景色はライトアップされた庭に茂る木々、落ち着いた装飾の9テーブル24席のゆったりとした店内。
フォト4)ディナーのみの営業。15,000円と18,000円のコースから前者を選択。いずれもスペシャリテのアミューズは付いています。私はシャンパン・グラン・クリュのChinchilla、家内はブドウジュースで乾杯です。
フォト5)まずはお口取りの一品。開いた魚のフリッターが切れ目の入った岩石に刺さって出てきます。見せ方が異色ですし、海老せんべいの様な食感と塩加減がとても良い。
フォト6)そして登場! ユカワタンのスペシャリテ。丸い石の上に乗った小さな料理たち。手で取って一口で食べていきます。左から順に、アミューズ、前菜、スープ、魚料理、肉料理、デザートの6品。つまりこの6個を食べることで小さなフルコースを食べることになるのです。それぞれの料理に合わせて台となる石の温度が違っているという徹底ぶり。スープなどは膜で包まれているので口の中でスープとなります。見た目も素晴らしく味も美味しい。まさに芸術的で感動します。「サンパウ」のミクロメニューを超えました。
フォト7)食べてしまうのがもったいないです。
フォト8)続いて前菜。鮎と茄子。皿の空白を生かした盛りつけ方は珍しくありませんが、より洗練されたセンスを感じます。
フォト9)さてスープです。これは何でしょう? かぼちゃの様ですが…
フォト10)かぼちゃです。蓋を開けるとくり抜かれた部分を使った膜に包まれたかぼちゃの冷製スープです。乗っているのはかぼちゃの種でしょう。このアイデアも見事。実に面白いし、味も良いです。
フォト11)魚料理。これも水のジビエですね。中央の円は皿の柄ではなくソースです。美味しいです。
フォト12)ところで、パンに付けるものとして、これは豆腐とクリームチーズで作られたもの
フォト13)バターとワサビバターの形もユニーク。
フォト14)赤ワインをグラスで注文。BEAU PAYSAGE “TSUGANE” la montagne 2010が供されました。日本のワインですがとても美味しい。
フォト15)メインの料理は、私は魚料理。野菜に包まれています。見た目はやはりユニークで、美味しいです。
フォト16)家内は肉料理。串刺しになった3種類の味が楽しめます。
フォト17)さてこれは、食後のコーヒー紅茶です。コーヒーを選択。まるでワインのように瓶詰めになったグランクリュの豆で、ユカワタンのために作られた逸品です。
フォト18)家内のデザート。メロンとジェラート。そもそもメロンはそのまんまで美味いので。
フォト19)私のはブルーベリーがふんだんに入ったサングリアのシャーベットです。爽やか。
フォト20)そして最後に登場! これがまたびっくりのプチフール(小菓子)です。テーブルを埋め尽くされたお菓子の森の景色に圧倒されます。実に一人分11種類ものお菓子。手前の葉っぱもチョコレート菓子です。フレンチコースでは、ほぼ満腹状態でのプチフールは私たちの間では「嫌がらせ」という名前で呼ばれていますが、こんな嫌がらせなら楽しいです。手前の大人用キャンディーは持ち帰りましたが、他は完食しました。
フォト21)帰りはライトアップされた森の中をコテージまで歩きました。 世界3位の期待を裏切らない感動的に美しい料理。ユカワタンに来るためにまたいつか軽井沢を再訪しようと思います。
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2014/08/16 更新
娘たち夫婦を連れて総勢6人で星のや軽井沢へ。ディナーはユカワタン。私たち夫婦には11年ぶりの星のや軽井沢。さらに私たちは4年前にブレストンコートに宿泊してそこのメインレストランであるユカワタンに来ています。当時は浜田シェフがおられましたが、浜田シェフは現在は星のや東京に移転されました。ということで浜田シェフご自慢のアミューズのスペシャリテが現在はユカワタンで食べることができません。それがとても残念なのですが、さて新しいシェフになってユカワタンはどうなったでしょう。結論から言えば、シェフが替わってもやはりユカワタンは最高でした。
星のやからは5分の距離ですが車で送迎されます。森への小径を進むとギャルソンがお出迎え。「まずはアペリティフと共にいくつかのお料理を外でいかがでしょう」。これは粋な演出。「今日は最高の日ですよ。雨は降っていなく、涼しく、虫がいない」。日本列島の猛暑が嘘のように涼しい軽井沢。外にもうけられたステージの脇には薪がくべられていて暖かい。飲めない人は桃のノンアルコールカクテル、飲める人は桃のシャンパンカクテルで乾杯。それから始まるアミューズの驚くべき10品。まさにモダンフレンチ。
小一時間ほどして、日も暮れてから店内へ。ここから改めてグラスワインなどで乾杯。メニューは18,000円のお任せコースのみ。
鯉のマリネとその燻製をラディッシュとハーブの香りと合わせて;鯉もうまいんだ……
里山の恵み;驚くべき約60種類の野菜をすべて違う調理法で。このときばかりはベジタリアンになったかと思いました。しかしこの野菜の酵素が効いてきてフィニッシュまで行けました。図らずもそういう効果が。
桜鱒;立派な桜鱒が2匹。その良いところだけを切り分けて6人で。ソースが見事。
仔鳩のベッシー包み。ルッコラとサマートリュフのリゾットを添えて;これも見た目のインパクト大! 何と豚の膀胱に鳩を入れて調理している! でも豚の膀胱は調理器具としての役目だけでほっとしました。
チーズ各種
さくらんぼのコンポジション
ショコラのグラスを杏のロースト、コンポートと合わせて
森のお菓子;鳥の巣箱をイメージしたようなシェフオリジナルのからくり箱に詰め込まれた小菓子の数々。箱が開かれていく度に驚きがあります。食べきれないので一部お持ち帰り可能。外から中へ、実に4時間に及ぶ華麗なるディナーでした。
新しい松本シェフは、銀座のシェ・トモを経てユカワタンに来られたようです。オリジナリティ溢れる料理とその見せ方。さらにギャルソンやソムリエなど給仕の方々の紳士的な振る舞いや会話、軽井沢のロケーションを生かした演出など文句の付けようがありません。それを踏まえてのコスパの高さ。評価としては満点とさせて頂きます。
P.S. )ギャルソンの方から「以前おいでになった時には……」という台詞があり「どうしてそれを」と尋ねると「苦手な料理などございませんように記録してありますので」と。さすがです。星のやでもそうです。ユカワタンで話した内容が星のやでも共有されているし、どうして分かるのか初めて見るスタッフが私を名前で呼ぶのです。「アマンかよ」と思いましたね。