先日、敬愛するレビュアー様のおひと方である「ガスコーニュ青年隊」様の日記を拝読し、氏が自身の「食を考える」というタイトルの日記で「どうせ食べるなら、美味しく、賢く、出来るだけ奇麗に食べたいなぁ」とおっしゃっていたことに関して、「ナルホド、その通りだよな~」と深く共感致しました。
ワタシは最近、仕事や遊びで韓国や中国に旅行することが多いのですが、そこで感じる事は「日本の食は退化している」という事です。
以前、別のとあるレビュアー様と食事した際に「韓国なんかに旨い物はなにもないジャン」って言われました。確かに、高級な料理に関して、日本で食べる鮨や懐石料理等に匹敵する食べ物は無いかも知れません。そういった食べ物では日本料理の方がよっぽど旨い。しかし、庶民が日常的に普通に食べる食事に関しては、韓国の方がよっぽど旨いと感じます。
何より、韓国料理って「野菜の料理」だと思います。主役は肉や魚だけど、同時に使われて出される野菜は多種多様で量も多い。キムチ等も含め、一回の食事で摂る野菜の量は、普段我々日本人の食事の2~3倍かそれ以上に及ぶのではないでしょうか。
そして、何よりその野菜の味が濃いことに驚かされます。
人参、ニラ、ゴボウ、ニンニク、サンチュ、エゴマの葉など、色や香りの濃い野菜はモチロンのこと、白菜なども味がハッキリしているんです。強い味付けが多い韓国料理に使われても、野菜も決して負けていない、野菜自体が旨いんです。
同時に、牛肉、ブタ肉、鶏肉も同じく味が濃い。霜降り信仰が強い日本では、高級な肉ほど脂の含有量が多く、肉の味というより脂の味でその評価が決まります。それはそれで好きなのですが、肉自体が旨いのは明らかに韓牛です。柔らかい赤身の肉、日本ではあまりお目に掛かれません。
日本でも、こういった野菜等は食べられます。しかし、とても希少でその値段はかなり高いです。京都は嵯峨野によく行く料亭で、旬の「グリーンピースご飯」を出して頂いた事があるのですが、このグリーンピースの旨さ、甘さ、香りの良さにビックリしたことがあります。聞けば、グリーンピースが本当に旨いのは旬の2週間だけなんだそうです。それも超一流の料亭が信頼する農家から仕入れたグリーンピースだからこそですな。
食の欧米化は、生産者にも効率化を求め、同時に質の低下をもたらしたようです。
旬を無視した野菜や果物の栽培、土地の広さに対して過剰な栽培、虫1匹いない畑、市場に安定供給出来るようになった半面、味は低下してしまいました。
牛肉も同様です。腸管出血性大腸菌「O-157」が社会問題となり、昔は普通に食べられたレバ刺しが、いまでは幻の高級品になりつつあり、7月からは正式に禁止になることが決まりました。
狭い牛舎に押し込められ、効率を重視してコーンや牛骨粉などを食べさせられて太らされる牛。
ですが、牛とは本来草食です。なので牛の内臓はコーンや牛骨粉などを消化するようには出来ていない。だから特異な大腸菌が大量発生してしまい、それを食べた人に影響を及ぼしてしまうそうです。
アメリカでは、低所得者層ほど肥満が多いのだそうです。スーパーでブロッコリーをひと束買おうとすると2ドル以上しますが、ファストフード店でデッカイハンバーガーと山盛りポテトとバケツのようなドリンクのセットを買っても2ドルしません。なので自然と栄養バランスを考えた手作り料理よりもバリューセットになってしまうそうです。そして、それに使われている食材は、不健康な牛や鶏や野菜です。徐々に人間の健康を蝕んで行くというコトです。
食の欧米化は、肉食中心という事だけではなく、こういった不健康な肉や野菜を食べても、その味のマズさや味の薄さに対して違和感を覚えないという事ではないでしょうか。
ちょっと前に、この食べログで人気の三田にある日本料理店で食事しました。やはり野菜自体に味が無い。調味料や出汁の味はするのですが、それだけです。それを皆が「旨い旨い」といって食べているコトにとても大きな違和感を覚えました。流行りのラーメン店もそうです。やたら濃いスープ、背脂タップリでその上に山のような野菜が乗っているのですが、その野菜がゼンゼン旨くない、味がしないのです。「今後、本当に旨いモノを知らない世代が増えてくると、日本は近い将来アメリカのようになってしまうのではないか?」
「どうせ食べるなら、美味しく、賢く、出来るだけ奇麗に食べたいなぁ」、本当に大切な事ですが、日々困難になっているのが日本の現状です。しかし、食材の安定供給を考えるとある程度は効率化も受け入れざるを得ません。大切なのは、その食材が本来持っている自然の旨さを知っておくことで、そうすれば歯止めが掛けられます。
大手チェーン店のハンバーガーやフライドチキンを食べて素材の味を感じたこと、ワタシはありません。