『
同潤会アパート』ってご存知ですか?
これは大正末期から昭和初期に財団法人同潤会によって建てられた集合住宅の総称で、東京から神奈川にかけて16のアパートが建てられました。
そもそもは大正12年に起きた関東大震災の復興支援であり、当時としてはとても斬新な鉄筋コンクリート構造で建設されてます。
1番有名なのは
同潤会青山アパートでしょうかね〜。
ワタシが学生時代、ちょうど今の表参道ヒルズがある場所に、なんともレトロなアパートがありました。逆にオシャレでいいカンジだった覚えがあります。今も表参道ヒルズの一部にテナントビルとして再現されてます。
そんな同潤会アパートも、老朽化や再開発のために次々と姿を消し、今現在当時のままで残っているのはこの『
上野下アパート』だけとなりましたが、ココも今年取り壊される予定です。
場所は銀座線の「
稲荷町」駅がある交差点を、少し入谷方面に向った清洲橋通り沿いです。
ココは同潤会アパートの中ではワリと新しい方ですが、それでも竣工は昭和4年です。
このアパートの一階の大通り沿いにはテナントが入っていたのですが、もうどの店も他所へ移ってしまってます。浅草で人気の蕎麦屋
おざわも以前はココにあったんですよ〜。ワタシが行きつけのクリーニング屋さんもココだったのですが、先ごろこの近所に移転しました。このアパートの向いには「寿湯」という銭湯があって湯上りに生ビールが飲めるのでタマに行きますし、「稲荷町の師匠」と呼ばれた「林家彦六」(8代目林家正蔵)さんが住んでいた長屋もこの向いで、今もその一部が残ってます。
アパートの入口には「壁などが剥離して危険なので立ち入らないで下さい」という注意書きがあります。
建ってから80年以上ですから外も中もかなりボロボロです。
でも、この雰囲気、好きだな〜。「千と千尋の神隠し」に出て来そうな雰囲気です。
こーゆー「古き良き」って建物や文化を残すのって、日本は下手ですよね〜。
戦前からの建物、当時の日本の建築界の結集でもある同潤会アパートですから、上手く補修して残す事は出来なかったのかなぁ。
東京駅の駅舎はエラい金かけて上手くリニューアルしたのに、やっぱしこの辺りでは金かけても利益にはなりませんし、仕方無いかな〜。跡には14階建てのマンションが建てられるそうです。この辺りはもうビルやマンションばっかしですから、また一つ稲荷町の名物が失くなってしまうのですね。
共同トイレ、共同浴場、共同流し、確かに住むには不便でしょうかね〜。耐震強化費用もバカにならないだろうし、ヒビ割れや剥離の補修費用も古くなればなるほどかさんでくるのでしょう。でもやっぱし淋しいですな。
浅草も同じです。再開発によって六区の古い商業施設が取り壊されて新しいビルの建設ラッシュです。
そこに入るのは御多分に洩れず都内のいろんな地区で見かける大手チェーン店、なんかガッカリです。
ワタシがよく行きつけの飲み屋なんかで話す「浅草再開発計画」の目玉は「吉原遊郭」の大復活です。
遊郭と言っても、モチロン売春なんかはナシですよ。デモ、あの雰囲気をそっくり再現した建物を「ド〜ン」と建てるんです。
木造の大建築で、外観は全て真っ赤に塗って、荘厳で煌びやかな建物の中には、大浴場アリ宴会場アリ芸者アリ、落語や歌舞伎や能などのアトラクションを何時もやっていて、出来れば丁半や双六の博打場なんかあればいいな〜。要はラスベガスやマカオの日本版ってところでしょうかね〜。
飲食施設は入れずに、それらは全て浅草の飲食店を利用してもらう。宴会には仕出しでいいし、お金を弾めば宴会場でお座敷寿司やお座敷天婦羅なんかも楽しめる。子供には花やしきがあるし、家族や団体には屋形舟もアリです。
今や海外のカジノは「IR」です。つまり大規模複合リゾートです。国のランドマーク的な役割をカジノが果たしています。そこでこの「吉原遊郭」大復活計画、いいと思いませんか?海外からの観光客もバッチリ呼び込めると思うんですけどね〜。
宮崎のフェニックスが日本のカジノ第一号になりそうですが、そんなラスベガスやマカオのコピーのようなカジノよりも、日本情緒と言うより江戸情緒タップリのIRの方が素敵だとは思いませんか?
そんなハナシをよく飲みながらしています。
う〜ん、ハナシが思いっきりそれちゃいましたが、「古き良き」が失われる度にそんな事を考えざるを得ません。
ヨーロッパなどでは、ホントに古いものが大切にされています。何百年も何千年も前の建物や、あるいは街ごと今もそのままの外観で使われています。同じく長い歴史を持つ日本は?一部の文化財以外殆ど残っていません。
今日も余命僅かな同潤会アパートは何かを言いたげにそこに佇んでいました。