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■ オマージュ(浅草・フレンチ)について/24.9.17
浅草にあるフレンチレストラン「オマージュ」
「オマージュ」とは、フランス語で「敬意」若しくは「尊敬」の意味を持ち、生産者・スタッフ・お客様など、料理の道を進ませてくれる全ての方々に敬意を評したいという、オーナーシェフの想いから命名されたとのこと。(お店HPより引用)
昨年11月末に発売された「ミシュランガイド2012 東京・横浜・湘南」において新規に1つ星を獲得され、ミシュランに掲載される以前からも評価が高かったことから、新規に掲載されたレストランの中でも1番訪問したいお店でした。
ただ、スカイツリー人気で、人ごみが凄い浅草駅が最寄り駅ということもあり、人ごみを掻き分けてフレンチを食べに行く気にもなれず、敬遠していたのですが、たまたま上野の国立西洋美術館で見たい展覧会があり、セットで訪問してみました。
場所は、地下鉄銀座線「浅草駅」から徒歩10分強。
近くには、浅草寺・花やしき等の観光スポットがあり、予想通り人を掻き分け訪問となりました。
日曜日の13時に訪問したのですが、席は全て満席。
ミシュランを獲得してから1年近く経ちますが、人気は衰えることを知らないようです。
1.雰囲気について
打ちっぱなしのコンクリートで作られたお店はクール!の一言で、20代の自分だったら、おそらく入店するのに躊躇したでしょう。
ほんの少しの緊張感を抱きつつ、店のドアを開けると、笑顔で女性が出迎えてくれ一安心。
店内は1階が受付とトイレ、2階が20席程度のダイニングフロアとなっています。
スタッフに案内され2Fに登ると、木の温もりが感じられる空間が現れ、クールな外観とは対照的な暖かい雰囲気です。
また、供される料理や使用されている食器、和服を着られたマダムなど、日本若しくは下町を連想させ、高級感はあるのですが、庶民的で親しみを感じる一面も持ち合わせる雰囲気です。
2.料理について
料理のコンセプトは、「素材の良さを引き立てるだけにとどまらず、その素材の内側にある、もうひとつの表情を引き出せるように心がけること。」
「日本ならでは、東京ならではの料理を発信すること」とのこと。
休日のランチは下記の3種類のコースが用意され、一番軽い3,800円のコースをオーダーしました。
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□ アミューズ+前菜+メイン+デザート+コーヒー(\2,900)※平日のみ
■ アミューズ+前菜2皿+メイン+デザート+コーヒー(\3,800)
□ アミューズ+前菜2皿+魚料理+肉料理+デザート+コーヒー(\6,300)
□ シェフ荒井によるお任せコース(\9,450)
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料理の総じた印象としては、「和」の要素を巧みに取り入れているのが最も印象的でした。
日本の食材を使用することがウリのフレンチレストランにこれまで、幾度となく訪問してきましたが、いかにも奇をてらった感のある料理が供され、肯定的なイメージはありませんでした。
ただ、この店のフレンチは、和の食材を使いながらも素直に美味しいと思える料理が多く、巷の和フレンチとはクオリティーが異なります。
また、非常に考えて作られた料理が多く、料理を通じて何かを訴えかけられるものを感じました。
ボリュームに関しては、一番軽いコースでも前菜が2皿提供されるので、完食できるか不安でしたが、比較的ポーションは小さく、量より種類を重視する傾向に感じましたので、女性の方が好むフレンチかもしれません。
個々の料理の感想は下記のとおりです。
(1)アミューズ・ブーシュその1
アペリティフがサーヴされた直後にグリーンのオリーブと甘い味付けのナッツが運ばれてきました。
なお、このセットは、お店の定番のアミューズとのことです。
味わいについては特質すべきものはありませんが、オリーブに刺してある楊枝?竹串?の様なものがオシャレで、思わずアップで写真をとってしまいました。
(2)アミューズ・ブーシュその2
食前酒を飲んでいる最中に運ばれてきたのが、フォアグラのフランに山葡萄のコンフィチュールをのせたものと、ヴィシソワーズのアイス。
フォアグラに杏やベリー系のフルーツを合わせて食すのは良く見かけますが、山葡萄は初めてで、これは和を意識したものでしょう。
そのコンフィチュールを味わうと、オブラートに包んだような、間接的でまろやかな酸味が面白い。
フォアグラも、フランにすることによって、フォアグラらしさが中和され、まろやかなコンフィチュールと調和がとれていました。
あっさりデザート感覚でいただけるので、フォアグラが苦手な方でもOKです。
ヴィシソワーズのアイスは、下にコンソメのジュレが敷かれ、枝豆、アサツキが添えられています。
ヴィシソワーズのアイスは、それ自体が味の主張をするものではなく、コンソメジュレの旨み、あさつきの風味を引き立てる媒介的な役割を担っているように感じました。
当初は、シャンパン+2杯のワインコースで押さえるつもりでしたが、アミューズの作り込みように敬意を表し、3杯のコースに変更させていただきました。
(3)前菜1:1ヶ月熟成させた南瓜の冷製ヴルーテ コーヒーのクリーム添え
前菜の1皿目は、カボチャのヴルーテにコーヒークリームをのせ、クルミが散らしたという一品。
かぼちゃのヴルーテは甘みが強く、滑らかな舌触りでそれだけでも十分イケルもの。
そこにほろ苦いコーヒー味のクリームを投入することにより、カボチャの甘みが引き立ち、コーヒー豆の香ばしい香りもプラスされていました。
この料理に和は見出せなかったのですが、非常に美味しく、この料理に合わせてサーヴされた「ピュイ・ヒュメ」ともよく合っていました。
(4)前菜2:モッツアレラのバヴァロワ チェリートマトとイベリコ豚の生ハム
前菜の2皿目は、下記の4択で、モッツアレラのバヴァロワをオーダー。
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□ 和歌山県産太刀魚のマリネ 無花果と茄子と共に
■ モッツアレラのバヴァロワ チェリートマトとイベリコ豚の生ハム
□ 冬瓜のコンポート 房州産鮑と共に(+\1,575)
□ 本日のフォアグラ料理(\840)
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運ばれてたものは、バニラビーンズの効いたモッツアレラチーズに、鮮やかな色のチェリートマトと、分厚く切られた生ハムがのせられたもの。
この料理の主役は、生ハムのような気がしました。
鮮やかで瑞々しいトマトやバニラが効いたエレガントなモッツアレラチーズは、ともに美味しいのですが、強く塩気を欲する食材。
そこへ分厚い生ハムを投入することによって、効果的に生ハムの旨さが引き出されている感じがしました。
普段は好んで、生ハムは食べないのですが、この日はもっと食べたいと感じ、提供の仕方によって、こうも食材が変化するんだなと関心してしまいました。
(5)メイン:3週間熟成させた石田さんのフォゲット ボルケッタ仕立て
メインは下記の2択で、肉料理をオーダー。
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□ 本日の鮮魚料理
■ 3週間熟成させた石田さんのフォゲット ポルケッタ仕立て
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フォゲットとは、生後1年未満(ラム)、2年以上(マトン)の中間期の羊のことで、そのお肉をボルケッタ風に焼き上げたもの。
ソースはジュのソースで、付け合せにイカのソテーとレモンのコンフィチュール、アクセントとして岩塩にゆかりをまぶしたものと、ニンニクとアーモンドのピュレでいただくという料理。
初めて食べたフォゲットは、ラムより食べる部分が大きく、マトンより臭みがなく、牛肉っぽい感じもありました。
ラム、マトンそれぞれのいいとこ取りのような気がしますが、何だか中途半端だなーというのが正直な感想。
ポルケッタには、本来豚肉を使用しますが、フォゲットを使用する意図が分からず、素材の目新しさだけが印象に残りました。
(6)デザート:マルキーズショコラ キャラメルのアイスクリームとピスタチオのスープ
デザートは3択で、マルキーズショコラをオーダー。
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□ 東浦産巨峰のマリネとスムージー パン・デビス風味のミルリトン添え
■ マルキーズショコラ キャラメルのアイスクリームとピスタチオのスープ
□ 浅間白桃のデクリネゾン タイム風味
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このお店のマルキーズショコラは、お皿にタップリ敷かれたピスタチオのソースの上に、サクサク軽いマルキーズショコラを置き、苦味のあるキャラメルアイスをのせたもの。
デザートは、甘く濃厚なものが好みなので、このデザートは個人的にはパーフェクトな一品。
特にタップリ注がれたピスタチオのソースが濃厚でたまらなく、至福の一時でした。
(7)食後の飲み物&小菓子
食後の飲み物は、コーヒー・紅茶・エスプレッソ・ハーブティからの4択で、コーヒーをオーダー。
味わいについては、至って普通で、これまでのクオリティーが高かっただけに、その普通さが目立つ印象。
小菓子は、人形焼をかたどったフィナンシェと梅とシソの味のパート・ド・フリュイ、カリントウの3種が供されました。
人形焼のフィナンシェは、下町っぽさを自然に出すのにとても良いアイディアだと思いました。
3.ワインについて
ワインは、アペリティフにシャンパーニュをオーダーし、料理に合わせて3種のデギュスタシオンコース(\3,500)をオーダーしました。
(1)シャンパーニュ:ヴィンテージ等不明(\1,500)
普段はスパークリングワインで抑えるのですが、いいお店に訪問すると、ついついシャンパーニュをオーダーしてしまいます。
サーヴされたのは、淡い黄色のシャンパーニュで、グラスの底から優美にゆっくり泡が立つのは、見ているだけで幸せな気分。
味わいは、ミネラルが強く、アフターにハチミツのニュアンスが感じ取れるもので、まさに私の大好きなシャンパーニュでした。
(2)Domaine Alexandre Bain(ロワール) Pouilly-Fumé 2010
まったりとした見た目の印象どおりの味わいのワインで、果実味が強く、杏のニュアンスを感じるワインで、デザートワインに近いものもあります。
比較的甘みの強い、アミューズの山葡萄のコンフィチュール、1皿目の前菜のカボチャのヴルーデに合わせてセレクトされたものと思われますが、非常によく合っており、この日のマリアージュ度No.1でした。
(3)ピュイ・ヒュッセ:ヴィンテージ等不明
2皿目の前菜に合わせて供されたのが、ピュイ・フュッセで、ピュイ・ヒュメよりは、重めで樽を効かせた白ワイン。
ピュイ・ピュメ程のマリアージュ度はなかったものの、モッツアレラのババロアと良く合っていました。
(4)Chateau Villa Bel-Air Rouge 2007
肉料理に合わせて供されたのが、クラーヴ地区の赤ワイン。
ぶどう品種は、メルロー 50%、カベルネ・ソーヴィニョン 40%、カベルネ・フラン 10%の配合。
エレガントな舌触りで、タンニンの力強さがあり、バランスが良く、複雑さも兼ね備えた秀逸ワイン。
個人的に牛肉っぽく感じたフォゲットとの相性もバッチリでした。
4.サービスについて
満席で賑やかな店内を良くオペレーションされていたと思います。
私の場合、食事のスピードが平均的な方より1.3倍遅いため、火入れを行う料理は若干冷めたものが出されることが多々あるのですが、オマージュでは最適な状態の料理が供されました。
しかも、必要以上に待たされることなく、あたりまえのように提供するのは、客への観察力が成せる業。
接客も、やや機械的ではありますが、笑顔を絶やさない対応は好印象。
ただ、唯一気になったのがマダムの和服。
シャンパーニュは、マダムに注いでもらったのですが、グラスに袖がひっかからないか正直心配でした。(ありえないとは思いますが。。。)
見た目の雰囲気は面白いかも知れませんが、キビキビと動ける服で接客をされた方がよいと思うのは私だけでしょうか?
5.コストパフォーマンスについて
アミューズが2種、前菜も2種、小菓子がついて、3,800円(税込)は安価。
しかも創造性あふれる料理が、次々と提供されるので、満足度も大。
また、このお店は料理と同等にワインが美味しく、デギュスタシオンコースは2杯で2,500円、3杯で3,500円、4杯で4,500円と一般的な価格帯ながら、そのクオリティーは素晴らしい。
是非ソムリエ推奨のデギュスタシオンコースをお薦めします。
トータルで、9,000円近く使いましたが、満足感だけが残りました。
いいお店では、しっかりお金を使うべきだと実感です。
6.総評
和の食材を自然にフレンチに融合させ、奇をてらったものではなく、自然な美味しさを感じる料理を提供されているのには驚き。
また、食材の使い方など、熟考されて調理されており、シェフが何を表現したかったのか考えながら料理を食すのも楽しかったです。
今回いただいたコースは、一番お安いコースであり、シェフの表現力に多少の縛りをかけるもだったかもしれませんが、それでも満足。
季節によっても、料理が大きく変化するものと思われるので、次回はジビエの季節にディナーで訪問したいですね。