2回
2017/06 訪問
最高峰が織りなす超一流の味 粋を利かせたさりげなさと共に
神楽坂の毘沙門天の裏手、黒色の板塀の中にある別世界。創業は2003年。老舗の名店が立ち並ぶ神楽坂の中では新しいお店の一つだが、洗練された空間と創意あふれるその料理に魅せられ、違いの分かる通なお客の多くが訪れている。そして、今や8年連続でミシュラン三つ星を獲得する名店の地位を獲得。
数ヶ月前に予約をしてやっと憧れの別世界を味わうことが出来た。
飾らない性格、温かく覇気のある石川シェフは日本料理店の大将というよりはクリエイティブなアーティストのよう。その創作に見られるこだわりを彼の人柄とともに感じると、感心と尊敬の念が自然と湧き上がる。
上品な和服を着た女性のスタッフは知的で洗練されている。料理やお酒の説明も丁寧で適格だ。聞く者を楽しませ、興味をそそるような説明は丸暗記では出来ない、基礎知識に裏付けられたものだと直ぐに解る。
店舗のデザインは素材感豊かなモダニズムを追求する、広谷純弘氏によるもの。デザインのボキャブラリーは決して多くない。一つ一つの形、プロポーションがキチッと決まっていて隙がない。そんな中に余裕と優雅さを感じるのはその素材の操り方と照明の調和のせいなのか。
全てに一流を求めつつ、それに疲れを感じさせない余裕を見せる。そんな世界だろうか。こりゃたまらん。
■ズワイガニと夏野菜
酸味のあるジュレとともに口にするとズワイガニのミソや身の深みのある味が表に出て来る。オクラとホワイトアスパラは心地よい歯ごたえ。
■スッポンのかき揚げ/コーンとアスパラのフライ
■鱧とじゅん菜の椀
鱧の出汁は上品で上質。梅肉は旨味のある出汁と練られたものか。普通のそれとは格段に違う調味役。じゅん菜は芽ではなく茎の部分。これもこだわりか。
■真子鰈のお造り
コリコリとした新鮮な食感と甘み。
■北海道の北紫ウニ
贅沢な大振り。身はしっかりとしていて適度なコク。濃厚すぎないところが超一流。
■アナゴの握り
気分転換。
■アワビの蒸し物 肝のたれに付けて
絶妙な柔らかさ。乾燥させた生海苔を振りかけた肝だれは最高の珍味。残ったところに小さなパンのかけらを持って来てくれる。嬉しい気遣い。
■甘鯛の酒盗焼き
自家製の酒盗を刷毛で塗りながら炭火で炙ったもの。芳醇。
■蔵王の鴨と京都の加茂茄子
■ノドグロ炭焼きの鍋
■桜鱒と山椒の炊き込みご飯/味噌汁/香の物
土鍋の中に敷き詰められた桜鱒。山椒の香り。大葉の茎を細かく刻んだ薬味がたっぷり。ご飯はやや柔らかめ。目の前で混ぜて取り分けてくれる。香り高くサッパリ、そして、とても深みのある。素材たちの総力を結集した珠玉のご飯だ。
■宮崎マンゴーと小豆 クリームチーズにラム酒のジュレを添えて
□十四代 中取り(山形)純米/無濾過
□冩楽(福島)純米
□会津娘(福島)特別本醸造
□初亀 亀(新潟)純米大吟醸
料理全てに言えること。奇をてらったようなことはしない。派手な演出もない。洗練されているが普通に見えて全く普通じゃない美味さと驚きを与えてくれる。そこには紳士的な粋があった。
2017/06/17 更新
花街の歴史が残る神楽坂。そこで日本料理のトップを行く石かわグループ。
半年先まで予約が取れないその名店を訪れることが出来た。
天然木を洗練させた和の建築を創り出す建築家、広谷純弘氏が手掛けたインテリアは日本の建築工芸の文化や技術をとてもスマートに表現している。3度目の訪問となるが内装の色の変わり具合、艶ので具合、摩擦の跡さえも美しく感じさせる。
そして、和の食の真髄を極めた石川英樹氏の珠玉の料理。最上質の季節の素材を妥協なく下拵えし、美しい器に盛り付ける。その様相は決して威張ったりせず、あくまで上品に大人らしい。料理の流れにはお客の身体や精神の状況変化に沿うような優しさを感じつつ、所々で深い感心を伴った驚きを与えてくれる。
和装の女性スタッフは品よく愛想良く。料理やお酒の知識もあってストレスを感じさせない。むしろ会食を楽しむ場の雰囲気を上手に支えてくれてさているようだった。
個室には水琴窟の音が流れる。微かな音量で永遠に。
何次元も重なるこの相乗こそが、このお店にしかない絶対の空気なのだろう。
また、いつか。
[先付]白子かゆ せり煮浸し
[椀物]蔵王鴨 白味噌仕立て
[造り]鯛 生雲丹 海鼠このわた和え
[焼物]鰆 ちぢみほうれん草
[中皿]ふく焼き白子 香菜
[煮物]くえ 京小かぶ
[蒸物]早掘り筍 津合かに
[食事]生からすみと菜の花の素麺、根菜の釜炊きご飯 猪汁
[季節の果物]いちご 金柑
[水菓子]黒豆アイスクリーム