『★『 理力の暗黒面 』』50オヤジさんの日記

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キャバクラ噺を一席。
以前の俺は仕事の鬼で真面目一徹。

「風俗なんて時間と金の無駄!」

な~んて思ってた。
しかし40代中頃に差し掛かったある日、可愛がって頂いていた御客様のK社長に

「50オヤジちゃん、仕事ばっかじゃダメだよ~。
最近君のデザインなんか固いんだよね~。
たまにはパーっと風俗なんかで遊ばないとイイ仕事できないよ~。」

「そ、そうスかね。実は最近ちと煮詰まってるんですよ。
でも風俗なんか行ったコトないしな…」

「マ、マジ?それは由々しき事態だよ。
風俗行ったコトないなんて、それじゃ立派な大人とは言えないよ~。
分かった、それなら《夜の水先案内人》と自他共に認める僕が人肌脱ごうじゃないか。
先ずは入門編のキャバクラ辺りから行ってみよ~!ほら、早く行くよ~!」

「エッ、今からスか…?」

その日からK社長の《キャバクラに於ける傾向と対策》の集中講座が始まった。
業態の沿革・地域性の違い・料金システム・キャバ嬢に対する話術や駆け引き・同伴出勤の仕組み等、まさに実践向きの内容だった。
渋谷・新宿のキャバから始まり、六本木や銀座の高級クラブまで、はたまた地方出張の際には、北は北海道から南は沖縄まで、各主要都市のキャバ巡りのフィールドワークをこなした。
ただ、そのキャバ料金は全てK社長の驕りで、俺からの支払いは一切受け付けようとはしなかった。
当時、六本木や銀座の高級クラブだったら、一人6~10万取られたからね。
奢ってもらった金額は合計すると、100万は遥かに超えていたんじゃなかろーか?

「いやK社長、こんなに奢ってもらっては申し訳ないです。
私にも払わさせて下さいよ。」

「いやいや、ナニ言ってるの50オヤジちゃん。
僕も楽しいんだから気にしないでよ~。
それより最近君のデザイン、イイカンジにこなれて来たの分かってる?
キャバ通いの成果が出て来たよね~。
50オヤジちゃんが良いデザインしてくれれば、僕の会社の売上げも上がるから、先行投資と思えば安いものよ~。」

K社長ノリは軽いが、会社では仕事優先の真面目社長。
女性社員が多い社内や、得意先の前では決して羽目を外さない。
歳も近いし、妙に気が合う外部の俺と遊ぶのが楽しいみたい。
それにしても、いつかお返ししないとイケナイって思っていた。
どうお返ししようかな…

なーんてコトを思い悩むある日、例によってK社長に連れられて行った六本木のキャバで、俺に付いたキャバ嬢は超綺麗な娘だった。

キャバ嬢には稀な薄化粧に黒髪ストレートヘア、愁いを秘めた瞳はなんだか吸い込まれそう…
これは綺麗な娘だけど、ココはK社長に譲るべきだな。

「君、K社長についてくれる?」

気を利かせたつもりの俺が言うと、K社長はジッとその娘を見つめ

「大丈夫、僕はいいから50オヤジちゃんお相手してよ。」

エッ?メチャK社長のタイプなのに?どうしたんやろ…
なーんて訝ったけど、ある意味ラッキーかも~。
鼻の下を伸ばした俺は早速彼女に話しかける。
アレ?この娘なんだかノリが悪いな。
色んな話題を振っても、一言二言で会話が途切れてしまう。
なんだよ~この娘機嫌が悪いんか?
ほとほと困っていると、脇で観ていたK社長が突然彼女を指さし

「お前、チェーンジ!
キャバ嬢は客と会話してナンボだろ?
お前が気ぃ使わなくて、客に気ぃ使わせてどうすんだ~!」

普段は温厚なK社長の突然の怒りに俺は驚いたが、その娘も泣き出すわ、店長まで出てきて謝り出すわで大騒ぎ。
すっかり興覚めした俺達は早々に店を後にした。
その帰り道K社長がポツリと言い出した。

「ごめんね50オヤジちゃん。
あーいうプロ意識が無い娘って許せないんだよね。
最初見た時からイヤな感じしてたんだけどね。」

「エ~なんでわかったんですか?」

「フォースだよ。」

「フ、フォースですか…」

「そうだスカイウォーカーよ。
僕くらいのジェダイマスターになると、女の子の良し悪しは一瞥すればピンと来るのよ。なんちゃって~。」

スゲーなK社長。
俺もジェダイマスターになりたいぜ!
いい機会だから、俺はかねてからの懸案を切り出した。

「K社長、いつも奢って貰いありがとうございます。
前から考えていたんですが、今度堀之内の《琥珀》に行きませんか。
私が御招待致します。」

「エッ《琥珀》って、あの有名な10万〇―プの?いゃあ嬉しいなぁ。
僕も前から行きたかったんだよ~。でもイイの?」

「なにを仰いますやら、これまで散々奢って貰ったせめてもの恩返しです。
それに、私もキャバクラの向こう側を見てみたいんです~。」

「フフッ、もう50オヤジちゃんはキャバクラは卒業だね。
でも、こっから先は風俗フォースの暗黒面だよ。その覚悟は出来てる?」

「勿論ですとも、ワクワクしています。」

「よーし、そうと決まれば善は急げだ。これから行こう!」

「エッ、今からスか…?」

「川崎なんて、タクシー乗ればすぐだよ~。」

こうしてジェダイマスターに導かれたルーク50オヤジは、風俗フォースの暗黒面に向かい新たな冒険に旅立って行くのであった…







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