1回
2022/03 訪問
常陸国の地元食材にこだわるフレンチ
今回のシェフお任せコースのヴィアンドは、地元の誇る常陸牛。最上級の常陸牛から、シェフが選び抜いたシャトーブリアン。刺しの細やかさ、赤身の凝縮された味わいが文句なし。じっくり時間を掛けて火入したローストの、満遍のない柔らかさ、舌の上での蕩け具合も素晴らしい。表面だけカリッとした食感にも技術を感じる。常陸牛のフォンと赤ワインのソースも、シェフ独特の味わい。シャトーブリアンを引き立てる軽さが完璧と言える。
お任せコースは3種類のアミューズから始まる。生ハムのクロケットがバスク名物。タピオカのフリットにはサワラのタルタルが乗っている。キャラメリゼされたフォアグラも美味しい。食材が地の野菜、魚、肉であることに、徹底的にこだわっていること以外は、バスク料理やクラシックをベースとしたモダンフレンチとして完成されている。
オードブルは5品。大津港からのスルメイカには、地元産のポロネギのムース、菜の花を合わせる。同じ大津港の大ダコ、アマダコには、地元産のシャドークイーンと赤パプリカ。竜ヶ崎産の甘いトマトはテリーヌにしている。地の鮎を使ったバスクソースが面白い。地元名物として脚光を集め始めた江戸野菜、赤ネギはパイ包み焼き。これが美味しい。
ポアソンは大津港からのサワラ。バスク地方の名物料理、ピルピルの常陸サワラ版。タラではなくサワラのピルピルソースがオリジナル。あっさりとした食べやすさと、柔らかな火入れが合っている。ソパデペスカドはアンキモにイカ墨を使った大洗産アンコウのスープ。北茨城の味わい。バケットはシェフオリジナルとなる、地元産ナツハゼ入り。オリーブオイルはスペイン産。
蔓防期間中にアルコールの提供はない。通常は、乾杯の泡にはボワゼルのシャンパーニュが、フル、ハーフのボトルで用意されている。ワインもスペイン、フランスが1通り。マダムによるオリジナルのカクテルがお勧めになっている。料理に合わせるワインペアリングや、この時期はノンアルコールペアリングもある。
常陸国の田園風景に溶け込む、築100年の邸宅と、四季折々が楽しめる庭園が素晴らしい1戸建フレンチ。地元の食材に徹底的にこだわった、地元を愛する、地元出身のオーナーシェフによる、バスク地方料理を取り入れたフレンチでもある。常陸国と、バスク地方、フランスを融合する料理の数々は、それを味わうために、わざわざ小旅行をする価値のある店と言えるのではないだろうか。
2022/03/03 更新
水郡線常陸大宮駅からタクシーで10分。田園風景の中に佇む、築100年となる邸宅。かつての地主の家をリノベーションして、今は1軒家フレンチレストランとなっている。先代オーナーシェフのもとで腕を磨いた2代目オーナーシェフは、この店のスーシェフを経て、スペインバスク地方のミシュラン店で修行した後、この店のオーナーシェフとして帰国。地元出身のシェフが、地元の食材に徹底的にこだわり、そのパフォーマンスを最大限に引き出した上で、バスク料理のエッセンスを加えたフレンチに仕上げている。常陸国とバスクとフランスを融合するシェフのオリジナリティ豊かな料理に、都内からのファンも足を運ぶ店となっている。
2022/02/27 更新