1回
2025/07 訪問
五行に降り注ぐ光
2025.7. 荒間鶏 & ブータンノワール
2025.7. ボタンエビのカクテル、夏野菜
2025.7. トマト
2025.7. キャレドブール
2025.7. キャレドブール
2025.7. とうもろこしのカルテット
2025.7. パンデロロメインのグラデーション
2025.7. パン・オ・レ
2025.7. ヴェルデ エスメラルダ ハポン
2025.7. キスのクレープ 黒トリュフとバニラ
2025.7. アワビとウニのイヴレス
2025.7. チャイロマルハタのマリニエール
2025.7. ゴールドクレスト
2025.7. 銀の鴨
2025.7. 森緑
2025.7. 禁断の果実
2025.7. 古谷宣幸さん作の「油滴天目茶碗」
2025.7. プティフール
2025.7. 個室
記事URL:http://lovehappydays.blog54.fc2.com/blog-entry-3281.html
2025/07/28 更新
2025.7.
五行に降り注ぐ光
東京・南青山に未来の三ツ星グランメゾンが誕生しました。
その名は、「mærge」。
この店名は、フランス語の「marge(余白・額縁)」と、英語の「merge(融合)」を掛け合わせた造語だそう。「まだ名前を持たない食材にも額縁をかけるようにスポットを当て、食材と食べ手の新しい関係を結ぶ」という思いが込められているそうです。そこに立つのは、元「La Clairière」オーナーシェフ・柴田 秀之さん。柴田さんを支えるスタッフも厨房には「BEIGE ALAIN DUCASSE TOKYO」の上岡 彰彦さんがスーシェフとして、パティシエには「Q.E.D.CLUB」の奥村 充也さん、ダイニングには「Chez Inno」ご出身の高橋 淳一さん、ソムリエには「乃木坂 しん」において2022年ベストソムリエ賞に輝いた飛田 泰秀さんと錚々たるメンバーを揃えています。
店内は入口が「土」、ダイニングが「木」、厨房にある竈が「火」、ガラスの器が「水」、個室が「岩(金)」で、中国の古代思想である「五行」を表現しているそうで、そこに「La Clairière」の名残りのような柔らかな「光」が降り注いでいます。
料理は日本や世界各地から柴田さんが自身の目と舌で厳選した食材を使った11品のおまかせコースのみ。
荒間鶏 & ブータンノワール♡
クルトンで挟んでいるのは、荒間鶏。茨城県つくば市の「ごきげんファーム」で育ち、卵を産み終えた老鶏で、「LaClairière」から引き続き使用している食材。
ふわりとハーブの香りが鼻から抜け、荒間鶏の超濃厚な旨味が溢れ出します。個人的に鶏好きで、旨味の強い固い鶏が好みなので、この荒間鶏はどストライクな味わいです。柴田シェフのアミューズといえば、このブータンノワール。まるでゼリーのような食感のブータンノワールは口の中の熱で一気に溶け、キレのある旨味が口いっぱいに広がります。
ボタンエビのカクテル、夏野菜♡
グラスの中にはウイキョウのスープ・蟹のフラン・牡丹海老・胡瓜・じゅんさいが入っており、ひと口毎に変わる食感とそれに伴う食感の変化が素晴らしい。
トマト
トマトのシュー生地の中にはカボチャとブロッコリーとハーブ。トマトの酸味と旨味が華やぎ、中に詰められたカボチャの甘味が映えます。
キャレドブール♡♡
シルバーのアントレディッシュに入れられているのは、シェフパティシエ・奥村充也さんが作る自家製ブリオッシュ。「どうですか?この香り」と近づけられると、焼きたてのバターの甘い香りが素晴らしい。それにキャビア・チョリソー・鶏のパテ・酢漬けオニオン・サワークリーム・コンテチーズの中から好きなものをカスタマイズして乗せて食べるアミューズ。
初めてなので、メートルドテル・高橋淳一さんお勧めの仕立てにしていただきました。本来ならば、1人1/2個だそうですが、お一人様なので独り占めです。基本的に全部入りですが、1つ目はチョリソー入りで、2つ目はパテ入り。キャビアの塩味、チョリソーやパテの旨味、酢漬けオニオンの酸味、コンテチーズのコク、そしてそれらを受け止めても負けないブリオッシュ。「mærge」でのアミューズのスペシャリテの誕生を感じます。
とうもろこしのカルテット♡♡
とうもろこしの全てが詰められている五重奏のひと品。とうもろこしのムース、芯とヒゲのジュレ、焼いたとうもろこしのキャラメルがグラスにあり、目の前でとうもろこしのウルーデを注ぎ、最後にとうもろこしの黄色い皮のパウダーをかけられます。そして、食べる前にミストを空間にひと吹き。これはとうもろこしをもいだ時の香りだそうで、味わいだけでなく、香りをも表現するという柴田シェフのヘンタイさに脱帽でしかありません。
パンデロロメインのグラデーション♡
北海道産のパンデロロメインというロメインレタスを薪焼きし、ホヤのリゾットにパッションフルーツソースを添えて。
まず穂先から食べ始めることで、パンデロロメインの苦味が確りと感じられます。そして、茎の部位になるにつれて甘味と旨味が感じられ、添えてあるホヤのリゾットがいいアクセント。パッションフルーツの酸味が甘味をより際立たせ、どこか爽やかで磯の香りがするホヤのリゾットが味わいに奥行きを与えているかのよう。
パン・オ・レ♡
奥村さんが作ったミルクパン。単体でほんのりと甘く美味しいですが、北大路魯山人作の醤油差しに入れられたスペイン産のオリーブオイル「ヴェルデ エスメラルダ ハポン」をつけると、激ウマ。バターは「オーム乳業」の発酵バターで、これまた激ウマ。
キスのクレープ 黒トリュフとバニラ♡♡
「La Clairière」から続く夏の定番料理。供されると、ふわりと香る黒トリュフの蠱惑的な香り。その中でも負けないホクホクとしたキスの旨味とジャガイモの甘味があります。鼻からは黒トリュフ、口の中からはバニラの香りが立ち上り、まさに五感で味わえるひと品。
アワビとウニのイヴレス♡♡
長崎県産の素麺「白瀧」を敷き、シェリー酒に漬けた酔っ払いアワビとウニ、液体窒素で凍らせたシェリー酒のシャーベットを乗せて。
なんとアワビ好きな私の来店に間に合わせてくれたという料理。切り方を変えているアワビは香りと食感が活かされており、ウニの甘味に長崎県産の素麺「白瀧」のプツプツした食感が映えます。食べ進めていると、底にあるアワビの肝が溶け、より味わいは濃厚になり且つ、香りがブワッと広がります。
チャイロマルハタのマリニエール♡♡
チャイロマルハタの火入れはちょっと変わっており、ココットの中にハーブな海藻などを敷き、その上に熱々の備長炭を乗せます。そして、その炭にベルモットをかけることで出る蒸気で蒸し焼きするというヘンタイさ。
ヘンタイ火入れをされたチャイロマルハタはムッチリとし、マリニエールソースの中でも確りと本来の旨味と甘味を感じられます。素材の旨味がソースの旨味で倍加・累乗するかのようで、まさに重厚なフレンチといった素晴らしいひと皿。
ゴールドクレスト
グースベリー、木の芽、黒文字の葉、モミ、スギ、ダンコウバイ、マリーゴールド、ベルガモットの花、メキシカンマリーゴールド、ゴールドクレストが盛られた器を見せられ、「コレが使う食材です」と紹介されます。…食材なのか?…と思いつつ、供された料理を目の前にすると、更に驚きます。
白樺の枝を挿していた器にはグースベリーとトマトのスープが入れられており、それをかけることで酸味がありつつも、ゴールドクレストのバヴァロアのコクもあり、とても不思議な口直し。
銀の鴨♡
青森県のブランド鴨「銀の鴨」を使ったひと皿。咀嚼する度に溢れる鴨本来の旨味と香りも素晴らしいですが、やはりソースが実に美味しい。添えられている人参のピュレ、パン粉と桑の実、ほんのりと苺の香りを付けた泡状のソースをそれぞれつけることで、また違った鴨一面が見られて美味しい。欲を言えば、もっともっと食べたかった…。
森緑♡
ガラスの器にはマスカットやメロンを入れたモヒートをイメージしたもの、蓮の葉には赤蝦夷末の香りつけたアイスクリームにミントのエスプーマをかけたもの。
『森緑』とはよく言ったもので、食べ進めていると、まさに森の中で深呼吸をしているかのような爽やかな気持ちにさせてくれます。味わいよりもリフレッシュ感が素晴らしい。
禁断の果実♡♡
真黒な林檎は竹炭を入れた飴細工で、中にはタルトタタン、カルヴァドス、イチジクの葉のオイルを入れ、赤スグリとカシスのソースを添えた奥村さんのスペシャリテという。
神話のアダムとイブから得た料理の着想、それを顕現化させる技量、そしてタルトタタンをより研ぎ澄ましたような心打つ味わい。惚れる美味しさ。
旅茶碗
食後のティータイムには、なんと抹茶茶碗を選びます。今回は見る度に表情が変わるような古谷宣幸さん作の「油滴天目茶碗」。
プティフール♡
カヌレ・ウィークエンドベルモット・白樺で香りつけた燻製ガナッシュ・マンゴーとジャスミンとココナッツのタルト。
中でもカヌレがお気に入り。焼きたてのまだ温い温度で表面はバリバリ、中身はトロトロ。私の好みのコントラストがあるカヌレ。
…食べ終えて、個室やまだ稼働していないシェフズテーブルなどを見学。そこで柴田さんとちょっとお話しさせていただいたのですが…
やっぱり、熱い!!この男!!
「La Clairière」の時も感じていましたが、新しい舞台となる「mærge」の空間がよりそうさせるのか、今は更に熱い。
三ツ星を獲る
その想いはそう遠くない未来に実現すると確信できる味わい・ホスピタリティ・料理へ情熱の体験でした。次回は晩秋〜初冬、新潟県燕三条産の鴨を食べたいです。