5回
2025/02 訪問
研ぎ澄まされた感性と技が織りなす美食世界
「馳走 西健一」は、焼津市西小川に位置する、魚介を極めたフレンチの名店。普段はバイクで訪れることが多かったが、今回はJR焼津駅前からバスでアクセス。焼津市内をゆっくり見渡しながら移動し、最寄りのバス停から数分で到着。
静かな住宅街にひっそり佇む店内は、洗練された空間が広がり、カウンター越しにシェフの手捌きを眺めながら、一皿ごとの情熱を感じることができる。
魚介の魅力を最大限に引き出す技法と独創的なアプローチが光り、まさに唯一無二のガストロノミー。食材選定から調理技術、そして食の芸術性に至るまで、毎回訪問の度に感動を提供してくれる。
「馳走 西健一」の最大の特徴は、全国的にも有名な焼津の「サスエ前田魚店」から届く極上の魚介を使用し、火入れ、香り、ソースの調和を徹底的に追求している点。食べるたびに魚の概念が覆る、驚きと感動が詰まった「馳走 西健一」の世界。
今回は料理とのペアリングでワイン&日本酒を交えたコースを愉しませていただきました。
【本日の御料理】
⚫︎泳がせのエボ鯛フリット
300g超の活けエボ鯛を神経締めし、極薄の衣で包み込むんでサクサクとした軽快な食感の奥に、ふんわりと広がる繊細な白身。
ソースは掛川産トマト(糖度14度)を使い、酸味と甘みのバランスを絶妙に整えペコロスの酢漬けがアクセント。
⚫︎泳がせ鯵のマリネ
泳がせの鯵を神経〆し、山椒オイルとビネガーでマリネ。締まりのある身質に、酸と辛味がじんわりと染み込み、菜の花が春の香りを添える。レッドオニオンと紫キャベツの酢漬けがソースとなり、香りと食感に奥行きを生む。神経〆ならではの反発力の強い嚙み心地、ひと嚙みごとに広がる驚きの美味しさ。そのひと皿が、魚の概念を覆していく。
⚫︎泳がせ鰆のコンフィ
ふっくらとした鰆をヒッコリーで燻製し、薫りをまとわせながら蒸し焼きに仕立てた一皿。スモーキーな香ばしさが口の中で広がり、鼻からそっと抜ける上品な香り。富士宮産の縮み法蓮草のほろ苦さが、深みのある余韻を残す。ほうれん草のソースと蕪のマリネが鮮やかな緑のグラデーションを描き、味の輪郭を際立たせる。仕上げに散らされた大蒜の炭パウダーが仄かな苦みを添え、香りの層が幾重にも折り重なる。噛むたびに新たな表情を見せる、まさに計算された一皿。
⚫︎駿河湾産 活アカザエビのソテー
漁期限定のアカザエビを、3日間水槽で泳がせた後に調理。ぷりっとした食感の奥から、凝縮された甘みと旨みがあふれ出す。海老味噌とアメリケーヌソースの濃厚な二重奏。ビーツのパウダーが仄かに甘さを添え、焼き込まれたトマトが酸味と奥行きを加える。
⚫︎金目鯛のブイヤベース煮
ピカピカに赤く輝く金目鯛を塩水でじっくり火入れし、ふっくらとなめらかに仕立てる艶ある魚。魚介のエッセンスを凝縮したブイヤベースのスープが、金目鯛の甘みをさらに引き立てる。下に敷かれた「きたあかり」のピューレが、仄かな甘みを添え、芽キャベツが春の香りを運ぶ。
⚫︎白甘鯛の鱗焼き
白甘鯛ならではの細やかな鱗が、パリッとした食感を生む。香ばしく、力強い旨み。2種の榎、うすい豆が、瑞々しいアクセントに。香草バターソースの芳醇な香りが、余韻にまで残る。
⚫︎太刀魚のパイ包み焼き
西健一のスペシャリテ。じっくり炒めた玉葱と大葉の香りを、太刀魚とともにパイで包み込む。バターと黒胡椒の香りがふわりと立ち上る。継ぎ足しで作り続けられるクリームソースが、コクと深みを加える。焼きたてのパイの香ばしさとともに、熱々を頬張る幸福。
⚫︎鮑のもち麦リゾット
鮑の肝が染み込んだ餅麦と玄米のリゾット。噛むたびに、磯の香りと旨みが広がる。サッとソテーした巨大な鮑の弾力、素揚げしたケールのほろ苦さ、フリーズドライの梅干の酸味が、複雑に絡み合う。口の中で変化する味の層。食べるごとに、新たな発見。
⚫︎桃薫苺とフロマージュブラン
淡いピンクの果肉から立ち上る、甘く華やかな香り。苺のやさしい酸味と自家製フロマージュブランのなめらかなコクが溶け合い、シンプルながらも奥行きのある味わいに。ひと口ごとに、春の訪れを感じる一皿。
⚫︎ 無農薬ほうじ茶のアイス
ふわりと立ち上る焙煎香。濃厚な茶のコクと、ひんやりとした口溶けが生む絶妙なコントラスト。甘さは控えめ、余韻はすっきりと洗練された味わい。
⚫︎ バレンタイン特製チョコレートムース
バレンタイン直後の訪問ということで、シェフからの粋なサービス。ビターで濃密なチョコレートムースは、舌に絡みつくようななめらかさ。深みのあるカカオの香りがほのかな甘さとともにゆっくりと溶けていく、余韻まで贅沢なひと口。
⚫︎食後のコーヒー
魚を知り尽くし、魚を極めるあ「馳走 西健一」。
一皿ごとに新たな感動が生まれ、食べるたびに未知の美味へと誘われる。「次に出会うのはどんな料理なのか?」その期待すら、味わいの余韻となる。
「The Tabelog Award 2025」Gold受賞。
その称号にふさわしい、卓越した料理と心震える体験がここにある。
ご馳走様でした‼︎‼︎
それではまた次回まで「ご機嫌よう♪」
2025/03/04 更新
2024/05 訪問
駿河湾からの贈り物をフレンチ技法でキュイジーヌ
静岡県焼津市て人気のイノベーティブ・フレンチ「馳走 西 健一」は、駿河湾で獲れる新鮮な魚介類を駆使し、フレンチと日本料理の技法を巧みに融合させた革新的な料理を提供するレストラン。
オーナーシェフの西 健一さんは、駿河湾の豊かな海の恵みを最大限に引き出すことを目指した食文化のスタイル「駿河キュイジーヌ」を提唱されています。
毎日その日ベストな食材を厳選利用して、食材の特性を最大限に活かす料理に仕上げる事に全力を注いでいます。料理に使用される魚介類は、焼津市にある老舗「サスエ前田魚店」から仕入れられます。この鮮魚店は、駿河湾で獲れたばかりの新鮮な魚を厳選して提供することで知られており、その質の高さから、多くの料理人や食通から信頼を得ています。
「サスエ前田魚店」から運ばれる魚は、驚くべき鮮度を誇ります。そのため、「馳走 西 健一」で供される鮮魚は、まさに駿河湾の息吹を感じさせる逸品であり、一口食べるごとにその鮮度の高さと素材の良さに感嘆せずにはいられません。広島で料理店を営んでいた西さんが、この魚の質に惚れ込み、焼津に移住してまでこの食材を使った料理を提供することを決意したというエピソードは、彼の食材への情熱を物語っています。
【本日の御料理】
●蓴菜(東広島産)、トマト(掛川産)のジュレ
東広島産の蓴菜は、5月から7月の短い期間にしか収穫できない貴重な食材で、そのため「幻の蓴菜」とも呼ばれています。プルプルとしたゼラチン質が非常に強く、独特のシャキシャキとした食感と、ほのかに青臭さがあるのが特徴です。味付けにはトマトのほのかな酸味が効いたジュレを使用し、口の中に広がるひんやりとした清涼感を愉しむことができます。
●えぼだいのフリット
サクッとした衣の中に、ふんわりとした白身が閉じ込められたえぼだいのフリット。ひと口かじると、衣の軽やかな食感とともに、えぼだい特有の繊細な甘みとほのかな旨味が口いっぱいに広がります。白身は驚くほどジューシーで、口の中でほろっと崩れ、まるで海の恵みをそのまま味わっているかのようです。素材の持つ自然な風味が引き立つ一品です。
●アオリイカ、カリフラワーピューレ、イカ墨ソース
アオリイカは程よい弾力があり、噛むほどに甘みと新鮮な海の風味が広がります。カリフラワーピューレは滑らかでクリーミーな口当たりで、優しい甘さとバターのようなコクが感じられます。アオリイカのゲソのイカ墨ソースは、ほろ苦く深みのある濃厚な味わいが特徴で、ニンニクパウダーが全体を包み込み、上品な風味を引き立てます。
●泳がせの鯵
今朝獲れの鯵を生き〆にした鯵。食感を楽しむように大きめのカットで噛み心地と鯵の風味を愉しめる逸品。サスエ前田魚店の魚の美味しさに毎回感動する瞬間。柑橘のビネガー、マイクロリーフのサラダ、蕪のマリネ添え。
●金目鯛
神経〆した金目鯛は鮮度が高く、しっとりと柔らかな身に豊かな旨味が広がります。下の春キャベツは柔らかく甘みがあり、軽いシャキシャキ感が特徴。じっくり焼かれたトマトは甘みと酸味が凝縮され、中はジューシーで熱々です。ブイヤベース仕立てのソースは海の幸が詰まった濃厚な味わいです。
●太刀魚のパイ包み
西健一シェフのスペシャリティ、パイ包みが今回は生き〆の太刀魚で登場。炒めた玉ねぎと大葉で風味を引き立て、サクサクのパイ生地で包んだ逸品です。クリーミーなブルーブランソースがさらに贅沢な味わいを加え、一口ごとに至福を感じます。
●鹿肉のグリル、北あかりのピューレ
炭火で焼き上げた鹿肉は、臭みが一切なく、力強い旨味が広がる極上のジビエ。北あかりのピューレがその豊かな風味をまろやかに包み込み、醤油漬け胡椒がアクセントとなって、味覚をさらに引き立てます。
●伊勢海老のリゾット
もち麦と玄米で作られたリゾットは、ヘルシーでありながら贅沢な一皿。伊勢海老の濃厚な旨味が、もち麦と玄米にじっくりと染み渡り、一口ごとに深い満足感を味わえます。
●苺(桃薫)、白ワインのジュレ、ヨーグルトシャーベット
桃のような香りと淡いピンク色が特徴の苺(桃薫)、優しい甘さと爽やかな酸味が口の中で広がります。繊細な白ワインの風味が生きたジュレで、フルーティーな香りとともに爽やかな酸味が、デザート全体を引き締めます。滑らかでさっぱりとしたヨーグルトシャーベットは、爽やかな酸味とほんのり甘みがあり、苺と白ワインジュレの味わいを引き立てます。
●番茶のアイスクリーム
香ばしい番茶の風味が凝縮されたアイスクリームです。ほのかな苦味とやさしい甘さが絶妙に調和し、口の中で豊かな香りが広がります。さっぱりとした後味で、食後のデザートにもぴったりです。
駿河湾とフレンチ、日本料理が織りなす特別な体験を提供する場所「西健一」は、静岡の豊かな食文化を背景に、オーナーシェフの西 健一さんのこだわりと技術が織りなす料理は、訪れる人々に深い感動を与え、静岡の食の魅力を再発見させてくれます。
ご馳走様でした‼︎‼︎
それではまた次回まで「ご機嫌好う♪」
2024/08/12 更新
2023/11 訪問
「駿河キュイジーヌ」を焼津から世界へ
静岡県焼津市の超有名鮮魚店「サスエ前田魚店 西小川店」のすぐ近くに、イノベーティブ・フレンチレストラン「馳走 西健一」があります。
広島出身の西シェフは、サスエさんの魚に惚れ込み、もともと広島でサスエさんの魚を使用していましたが、より鮮度の高い魚を求めて焼津への移転。
店内はカウンター8席と中庭のある贅沢な空間で、ブルーの天井に白い壁、カウンター正面には印象的な世界地図が掲げられて、独自が提唱する「駿河キュイジーヌ」を焼津から世界へ発信したいとの熱い情熱を持ちながら、日々美味しい料理を提供されている。
2023年春に初訪問して、魚の鮮度がズバ抜けてどの料理も感動させられる強烈なインパクトに次回訪問を予約、永らく待ち侘びての再訪となる。
今回も「馳走 西健一」が手掛ける素晴らしい「駿河キュイジーヌ」を堪能して行きたいと思います。
【本日の御料理】
●玉取茸と魚介コンソメ
藤枝市岡部町の北部(玉取地区)の山中で栽培された椎茸は肉厚でボリューム感ある椎茸。椎茸の芳醇な薫りと魚介のコンソメが優しくカラダに染み入る温かみに包まれた一品。
●えぼ鯛
薄めの衣でサクッとした仕上がりにしたえぼ鯛のフリット。淡白な白身のえぼ鯛はフリットにされて蒸された状態で身がほわっと柔らかく身離れが良い食感。淡白な魚にカラスミを纏わせることでギュッとしまった濃厚さを纏わせて、食べた時の薫りの良さに風味も加わり軽い食べ応えを感じる。
●鯵、金時草
朝11時迄に水揚げされる泳がせの鯵は身の反発力と噛み締めた時に溢れ出す旨みの強さが素晴らしい。レッドオニオンを酸味の強いビネガードレッシングでさっと酢〆感覚に戴くスペシャリティ的存在の一皿。
●メジマグロ
柵の状態で「この魚何かわかりますか?」と聞かれて鰹だと思ってしまった活け〆のメジマグロ。海底の深い場所で獲れるイメージのまぐろを活〆で戴く事が出来るのは漁場からの近さと仕入れルートの凄さの証し。極みの食材が物語る西健一の世界観!メジマグロはモチッとした舌触りで歯切れの良い身の弾力。
●鯖
大振りの鯖は1kg超えの王様サイズ。炭火ブースで焔を上げながら皮面をさっと芳ばしく炙り、炭火の薫りを軽くスモーク状に纏わせながら、中はもっちりとレアな仕上がりは絶妙の技を感じる。焼き茄子が豊かな風味で鯖の旨みに変化をもたらす。
●白甘鯛のビスク風ソース
しろあま鯛は鱗焼きに仕上げてサクサク感が楽しめる。強めの塩味で下味をつけられてビスク風ソースがフレンチらしさを醸し出すクリーミーな口当たり。
●太刀魚のパイ包み
西健一スペシャリテはなんと言ってもパイ包み。春はしらすのパイ包みだったが今回のメイン食材は太刀魚。パサつき感が出やすい太刀魚も炒めた玉ねぎと大葉で包んで蒸し焼き状態に仕立てる。クリーミーのソースがパイ生地との相性抜群で、太刀魚の美味しさも際立たせる。
●沼本カットのお肉料理
山口県東部・岩国市周東町の自然豊かな山間部の牧場で育てられた黒毛和種を沼本氏が創り出した独自技術で筋繊維を傷つけることなく、筋膜だけを取り除くカットにより長時間経っても肉のドリップが出ず、旨味も増し、変色も少なくなる肉を、和牛が育つ時に食べていた飼育用グラスを炭火台で燻しながら焼き上げたステーキ。ステーキらしくマッシュポテトとソースをふんだんに塗りつけて戴くき、塩漬け胡椒もアクセントで戴けば感動の美味しさ。
●伊勢海老のリゾット
伊勢海老(焼津産)をソテー、海老味噌は裏漉してソースにし、もち麦と玄米をリゾットに仕上げた逸品。
伊勢海老の風味が怒濤のように口の中で暴れ出す力強いリゾット。
●無花果のコンポート
無花果を赤ワインでコンポート状に仕上げ、上からミルクシャーベットを掛けたデザート。酸味とクリーミーさが融合しながらさっぱりとした味。
●栗のアイス
栗のまったりした味が非常に美味しい秋を感じる栗のアイス。
素材に拘り、それぞれの特徴を究極に引き出すために考えられた料理方法や調理の仕方は唸るほど美味しかった。魚は冬になれば脂を蓄えて旬を迎えるものが多くなるため、冬の「馳走 西健一」の方が印象に残る料理が多かった気がする。
ご馳走様でした‼︎‼︎
それではまた次回まで「ご機嫌好う♪」
2023/12/03 更新
2023/04 訪問
焼津の鮮魚を至高の料理に昇華させる最高レストラン
焼津市に凄いレストランがあると周囲からの評判を聞いていた。皆が絶賛するのでいつか訪問したいと憧れていた「馳走 西健一」
念願叶って初訪問する事が出来ました。
日本家屋の中に入れば幻想的な空間に引き込まれます。
木の温もりを感じ、天井は神秘的なトルコブルー、目の前の壁は真っ白な世界地図を配した壁が凛とした荘厳な空間を醸し出している。
内装は海底深くに居るイメージ、天井の陰影は魚の影をイメージしているそうだ。焼津の鮮魚を「西健一」さんの魔法で最高の料理に昇華させる世界観は先鋭的で非日常感が居心地良くさせてくれる。
【本日のコース】
⚫︎鰆の切身(味見)
2時間前迄泳いでいた朝採れの鰆の切身を味見で戴く。
モチモチした身の弾力と脂溶けの良さは今まで食べてきた刺身との違いが歴然に違う。
⚫︎花鯛のフリット
活かしの花鯛を生地で揚げたフリット(ベニエ)。
自家製カラスミを振りかけて薫りと塩味を纏わせた仕上げ。淡雪塩を添えて、カラスミのほんのり塩味を調整。身にはたっぷりエキスを蓄えてふわっと仕上げられた極上な逸品。
⚫︎榊山牛の生ハム
榊山牛は広島県で飼育され ているブランド牛。まだ5年程前から始まって月に10頭程しか流通していない希少な牛。32ヶ月長期熟成肥育牛で通常の牛より1年弱は長く育てられる。脂溶けの融点が16.4度で国内トップレベル。
口に入れた時に薫る生ハムの薫りが非常に豊かで融点の低い脂はスーッと溶け出して甘味と生ハムの塩気が口内を拡がり至福の感動をもたらす。
⚫︎鯵のカルパッチョ
朝採れの新鮮な鯵。レッドオニオンのマリネソースと蕪のマリネを付け合わせで戴く。新鮮な鯵の刺身は敢えて大きな切り身にして、ナイフとフォークで好みのサイズに切り分けて身の弾力感と食べ応えを愉しむ。
⚫︎鰆のコンフィ
活かし鰆を30度のオイルでじっくりと火入れしてコンフィに仕上げる。添え合わせは芽キャベツ&トマトのオーブン焼き。荏胡麻マスタードソースにニンニクのパウダーを掛けて仕上げる。
生で味見をした鰆からコンフィにされたことで半生仕立ての身はもっちりした舌触りは保ちながら脂の甘さが更に際立たされている。
⚫︎自家製パン
焼きたて熱々のフランスパンと海藻を練り込んだフランス産バター。外カリカリの仕上がりがとても美味しい。
備長炭で敢えて燻しながら焼き上げたクロムツ。クロムツの燻された芳ばしい薫りに、身のぷりぷり感、そして、キャベツのシャキシャキ食感とが食べているうちに色々な出来事が口の中で通り過ぎる愉しさ。
春キャベツを添えてシェリービネガーソースの酸味と春キャベツの甘みがクロムツの脂の乗った身をさっぱりさせてくれる。
⚫︎生しらすのパイ包み焼き
「馳走西健一」のスペシャリティはパイ包み。朝採れ生のしらすと玉ねぎのソテーを饅頭のように塊にして大葉で包んでパイ包みに仕上げる調理工程は、見ているだけで楽しい料理。
ブールブランに鰯の魚醤をアクセントで垂らしたクリームソースで濃厚なクリームソースとほっこり蒸し焼き状態になったしらすとパイ生地が絡んでとても美味しい逸品。
⚫︎榊山牛のサーロイン
赤身が綺麗なサーロインステーキは、脂の重さを感じる事なく肉質の柔らかさも素晴らしい。ソースも上品な仕上げでサラッとしたソースなのが榊山牛のステーキに非常にマッチしていた。
⚫︎桜海老のリゾット
もち麦と玄米のリゾットに新鮮な桜海老を素揚げにして振りかけられた一品。桜海老の芳ばしい薫りが春らしい磯の息吹を連れてくる一皿。カリカリ食感の桜海老と玄米を噛み締めながら味が増幅するリゾット。
❶デザート
パッションフルーツ、せとか、あま夏、
❷デザート
ピスタチオのジェラート
広島で「馳走2924」として営業されていた頃から、焼津市のサスエ前田魚店の魚に惚れ込んで焼津へ移転しての営業との由来を聞き、魚の質の良さとその料理を更に昇華させる技とセンスの良さに感動。
予約困難な理由が十二分に解る素晴らしいレストラン。
また来たいと食べている時からジワジワ感じる心地良さ。
ご馳走様でした‼︎‼︎
それではまた次回まで「ご機嫌好う♪」
2023/05/22 更新
静岡県焼津市、西小川の静かな住宅街にそっと灯る 「馳走 西健一」。
鮮魚を主役に据えたフレンチのコース。
全国でも数少ない存在で、季節がめぐるたびに自然と足が向いてしまう、そんな特別なお店に、冬の気配が深まる頃に再訪。
西健一シェフは広島の名店 「馳走 啐啄一十」 の出身。その名に息づく【馳走】の精神。
「素材への深い敬意、魚の命の余白までも活かす姿勢、そしてお客様に誠実に向き合う心」そのすべてが、この店名に静かに宿っている。
そして、この店の物語に欠かせないのが 【サスエ前田魚店 】との強い結びつき。
広島時代から前田魚店の魚に魅せられ、わざわざ焼津から取り寄せていたシェフが「魚の潜在力を最上の状態で表現したい」と願いついに焼津へ移住。
「漁師 → サスエ前田魚店 → 西シェフ」この三者の信頼のリレーがあるからこそ、「締め・温度・処理」が隙なく整い、魚が皿の上でひとつの物語を語りはじめるのです。
扉を開けると、外の住宅街とはまったく別の静けさが流れはじめる。
檜の一枚板カウンターを中心に据えた全8席。
青みを帯びた壁には、やわらかな光で世界地図が浮かびあがり、まるで深海に差し込む光を見上げているような、穏やかで深い時間が広がる。
カウンター越しには、魚を扱う手さばき、火の入り方、ソースの仕上げのそれぞれが短い劇の一場面のように美しく、静かな緊張感と心地いい臨場感が同居する。ここでしか味わえない愉しみのひとつ。
【本日の御料理】
◆ 椎茸と魚介のコンソメスープ/メイゴ
藤枝市の椎茸と魚介の旨みを丁寧に重ねた澄んだ一杯。活〆メイゴを一度茹で、スープで柔らかく火入れした優しさが、胃の腑までじんわり沁みてくる。
◆ エボダイのフリット
極薄の衣の中で、エボダイの甘い身がほろりとほどける幸福感。マヨネーズ不使用のタルタル、紅はるか、カラスミパウダー。それぞれの香りが重なり、口の中に繊細な変化が訪れる。
◆ 泳がせの鯵
葱油・梅・レッドオニオンを合わせた軽やかなドレッシング。肉厚で弾力ある鯵は、噛むほどに旨みがほどけ、「鮮魚でつくるフレンチ」の輪郭がはっきりと伝わってくる。
◆ 伊勢海老(焼津)
炭火で香ばしく炙った伊勢海老に、
3年熟成の北あかりと海老味噌の濃密なピュレ。
フィンガーライムが爽やかに弾け、奥行きを描く。
◆ いとより鯛/キノコと銀杏のソース
塩水火入れによるふっくらした身。
椎茸・なめこ・銀杏の香りが秋を静かに運んでくる。
◆ 白甘鯛の鱗焼き/蕪のピューレ
逆立てた鱗がパリッと弾け、炭火の香ばしさがふんわりと重なる。しっとり繊細な身を蕪ピュレが柔らかく包み込む。
◆ 太刀魚と玉葱のパイ包み
スペシャリテ。
太刀魚、飴色玉葱、大葉を閉じ込めたパイは、香りが静かに広がる。継ぎ足し続けて育ったクリームソースの深みは、心をほどくような温かさ。
◆ 桜海老と浜名湖あおさ海苔のリゾット
もち麦と玄米の食感に、素揚げケールと乾燥梅の酸が寄り添う。焼津という土地の豊かさがぎゅっと凝縮されたような一皿。
◆ 次郎がきのコンポート&シャーベット
温と冷。柔らかさと清涼感。
赤ワインの香りがふわりと残り、余韻の美しさに思わず息をつく。
◆ 塩アイスクリーム
焼津の深層水が生む澄んだ塩気。
途中で深層水スプレーをひと吹きすると、味がすっと引き締まる心地よさ。
静かなリズムで心に触れ、食べ終える頃には背中の力がふっと抜けるような、優しい夜。
まさに魚の物語をコースで味わうガストロノミー。
焼津には深く、美しく、静かな時間がある。
ご馳走様でした。
それではまた次回まで「ご機嫌よう♪」