3回
2025/02 訪問
日本の伝統的な発酵技術を駆使したオーベルジュ。
滋賀県琵琶湖の北側、長浜市余呉町にある発酵料理とジビエで有名な「徳山鮓」。
日本の伝統的な発酵技術を駆使した料理を提供するオーベルジュで、余呉湖畔を望むの美しい自然の中で特別な食体験を楽しめる癒しの場所。
オーナー・料理長:徳山浩明さんは滋賀県に生まれ、高校卒業後に京都の老舗料亭で修業を積み、その後、地元に戻り余呉湖畔の国民宿舎で料理長を務めた際、発酵学の権威・小泉武夫氏との出会いをきっかけに発酵料理に興味を持ち、2004年に「徳山鮓」を開業し、日本の伝統的な発酵技術を活かした独自の料理を提供する日本中のグルマンを虜にしています。
徳山鮓の発酵料理で特に「熟鮓(なれずし)」が名物です。近江の伝統料理である「鮒鮓(ふなずし)」を現代風にアレンジし、余呉湖の魚を蒸した米とともに数ヶ月発酵させたもので、チーズのような濃厚な風味が特徴です。
また、四季折々の食材を活かしたコース料理も魅力で、春は山菜、夏は鮎、秋はキノコ、冬はジビエなどが楽しめます。
【本日の御料理】
⚫︎茶碗蒸し
余呉のスッポン、ビワマスの卵
滑らかな舌触りの茶碗蒸しは、スッポンの凝縮された旨みがじんわりと広がり、ビワマスの卵のプチプチとした食感がアクセント。滋味深い味わいが序盤からテンションを上げさせてくれます。
⚫︎猪、鹿のハム
余呉湖を模した皿に猪のハムとローストした鹿肉の胡麻和え&野菜添え。猪のハムは熟成されたナッティな香りがあり、しっとりとした食感。鹿肉は繊細な火入れで、口の中でふわりとほどける。胡麻のコクと香りが絡み、野菜の瑞々しさが後味を軽やかにする。
⚫︎鯉のお造り
鯉のお造りにフナの玉子を纏わせた、淡水魚らしい優しい甘みを感じる鯉の身は、舌触りが滑らか。
フナの玉子のほのかな塩味とコクが加わり、シンプルながらも奥深い一品。
⚫︎鯖のなれ寿司
鯖を一匹ごと麹と米で漬け込んだ 「鯖のなれ寿し」。薄くスライスされたなれ寿司は、鯖の熟成された旨みと発酵の酸味が一体となり、まるで熟成チーズのようなコク。ふんわり削られたチーズを巻いて食べると、乳酸発酵の奥深さが増し心地よい余韻に浸れます。
⚫︎熊肉のパイ包み
パイの香ばしさの中から顔を出す熊肉は、驚くほど上品な味わい。発酵カラスミの凝縮された旨みが熊肉の野性味を包み込み、柿と文旦のフルーティーな甘みと酸味が後味を引き締める。
⚫︎熊鍋
滋賀県のツキノワグマの薄切り肉。熊のロース肉とバラ肉をさっと出汁にくぐらせると、脂がとろけて極上の口当たりに。出汁には味噌を使わず、熊肉そのものの旨みを最大限に引き出した、シンプルながら奥深い味わい。
⚫︎鮒寿司
クセのあるイメージを持たれがちな鮒寿司だが、発酵のバランスが絶妙で、爽やかな酸味と奥深い旨みが楽しめる。
⚫︎発酵カラスミ
薄めにカットされた発酵カラスミを焼き海苔でサンド。発酵カラスミの濃厚な塩味と海苔の香ばしさが一体となり、噛むほどに旨みが広がる。
⚫︎炊き込みご飯と香物
舞茸の炊き込みご飯に熊肉とビワマスの卵、薬味添え。舞茸の芳醇な香りが広がるご飯の上に、熊肉の甘みとビワマスの卵の濃厚な味わいが重なり、深みのある一口に。
⚫︎熊鍋のスープのそば
熊の旨みが染み渡るスープに、しなやかな蕎麦が絡む。シンプルながら奥行きのある味わい。
⚫︎アイスクリーム
鮒ずしの飯を使用し、特許取得の製造方法。まるで熟成チーズのような芳醇なコクと、発酵ならではの塩味が感じられる唯一無二のアイスクリーム。酢橘ジャムのほのかな酸味が全体を引き締め、胡麻と米の焼き菓子が香ばしさを添える。
⚫︎ホットコーヒー
深みのあるコーヒーが発酵料理の余韻を締めくくる。
徳山鮓は、日本の伝統技術を活かしながらも、発酵の魅力を現代的に再解釈した唯一無二の食体験を提供している。食材の持ち味を最大限に引き出す技術と、余呉湖の自然が生み出す美しい景色が、ここでしか味わえない贅沢な時間を作り上げている。発酵文化に触れながら、五感で味わう食の芸術を楽しめる名店です。
ご馳走様でした‼︎‼︎
それではまた次回まで「ご機嫌好う♪」
2025/03/31 更新
2024/05 訪問
余呉湖の美景と伝統の味を贅沢に堪能
2024年のゴールデンウィークに、長年憧れていた滋賀県長浜市の名店「徳山鮓」を訪問。
発酵料理とジビエを堪能でき、訪れる人々を地元の新鮮な食材でもてなして戴けます。
「徳山鮓」は、余呉湖畔に静かに佇み、滋賀県の伝統料理である「なれずし」をはじめとする発酵料理で知られています。以前「情熱大陸」で紹介された発酵の名人が営む超人気店であり、私にとっては憧れのお店
まず「徳山鮓」の魅力は抜群のロケーションにあります。余呉湖を眺める客室は、開放感溢れるウッドテラスに直結しており、湖面に映る自然の風景と野鳥のさえずりが心を落ち着かせてくれます。自然と調和したこの特別な空間は、他では味わえない贅沢なひとときを約束してくれます。
「徳山鮓」の代表的なメニューのひとつ、「なれずし」は琵琶湖産の鮒を使い、伝統的な発酵技術で作られた逸品です。独特の風味とともに、健康にも良いとされる発酵食品の恩恵を味わうことができます。この「なれずし」はまさに「徳山鮓」の象徴であり、一口で心を奪われる味わいです。
季節ごとに変わる料理もまた絶品です。旬の野菜や魚介類をふんだんに使ったコース料理は、感動を与え四季折々の恵みを存分に楽しめます。
【本日の御料理】
●山菜(コシアブラ、ウルイ、カンゾウ)、筍、イノシシハム、飯蒸しソース、花山椒
地元でとれた山菜(コシアブラ、ウルイ、カンゾウ)、筍、イノシシのハムが盛り付けられた器に高級出汁の銀餡が注がれ、仕上げに花山椒を散りばめたた温かい先付け。山椒と筍、イノシシハムの間には鮒寿司の飯(いい)ソースが掛けられており豊かな風味を演出。序盤から素晴らしいスタート
●鹿肉胡麻和え、コシアブラ、えんどう豆のパウダー
しっとり食感の鹿肉を胡麻和えにした噛み締めると旨味が溢れ出す一品。コシアブラの仄かな苦味と甘みがアクセント。
●鯉の洗い、鮒の卵、千切りレタス、ボリシ
鯉の洗いに鮒の卵をまぶした料理は全く臭みを感ず、鯉の身の歯切れ良さと鮒の卵のつぶつぶ食感が豊かな湖の恵みを感じさせる一品です。繊細な風味と絶妙に調和し、口の中に広がる旨みは深く、鯉の洗いでこんなに美味しいのは初体験。
●山菜天ぷら(コシアブラ、わらび、虎杖)、イノシシハムのパウダー
山菜の風味と天ぷらのサクサク食感の調和を楽しむ山里で新春に愉しむ恵みの味わい。イノシシハムのパウダーが加わり深みあるコクと香りがアクセントとなる。
●猪煮込み、菊芋すり流し、スッポンコンソメ、葱
猪の煮込みは、濃厚でありながら繊細な風味を持つ一品です。スッポン特有の上品な風味が効いた滋養豊かなスープでじっくり煮込まれた肉は、口の中でほろほろと崩れる柔らかさです。野性味を残しつつ、調理によって引き出された深い旨みが堪能できます。
菊芋のすり流しは、滑らかな口当たりとほのかな甘みが特徴で、菊芋の自然な風味がしっかりと感じられ、わずかに土の香りが漂います。葱のシャキシャキとした食感と爽やかな香りが、猪肉とスッポンコンソメの全体のバランスを整えています。
●鯖なれずし、カチョカバロ
鯖なれずしは、発酵による独特な風味がありながらも上品で深みのある味わいが楽しめます。鯖の旨みがしっかりと引き出され、酸味と塩味のバランスが絶妙です。上に被さるように掛けられたカチョカバロパウダーはクリーミーで滑らかな口当たりが特徴です。まろやかなコクとほのかな甘みが広がり、後味には優雅な風味が残ります。両者が組み合わさることで、発酵の豊かな味わいとクリーミーなテクスチャーが絶妙に調和し、口の中で上品なハーモニーを奏でます。
●名物熊鍋
門外不出の名物熊鍋は、その独自の味わいが格別です。最初に味噌ベースの出汁と花山椒でいただくしゃぶしゃぶは、香り高い出汁が熊肉の旨味を引き立て、花山椒のピリッとしたアクセントが絶妙なバランスを作り出します。薄切りの熊肉がしゃぶしゃぶされることで、柔らかさとジューシーさが際立ち、一口ごとに豊かな風味が広がります。
その後、野性味あふれる新鮮なセリなどの野菜と共に煮込まれる熊鍋は、さらに深い味わいを楽しめます。熊肉の濃厚な旨味と野菜の爽やかさが絶妙に融合し、味噌ベースの出汁が全体をまとめ上げます。熊肉のジューシーさと野菜のシャキシャキ感が相まって、一口ごとに異なる食感と風味が楽しめる、贅沢な一品です。
●発酵からすみ海苔巻き
からすみの発酵によって引き出された濃厚な旨みが口いっぱいに広がります。からすみの塩味とコクが絶妙に絡み合い、発酵による独特の深みが加わりからすみ特有の豊かな香りが食欲をそそります。海苔の香ばしさと、ほのかな海の風味が加わることで、全体の味わいに奥行きが生まれます。
●鮒寿司、葡萄ジュレ
鮒寿司と葡萄ジュレの組み合わせは、独特の風味と上品さが光る一品です。鮒寿司の濃厚な旨みと発酵による深いコクが、葡萄ジュレのさっぱりとした酸味で軽やかに引き立ちます。濃厚な鮒寿司の味わいに、葡萄ジュレの爽やかな甘酸っぱさが加わり、絶妙なハーモニー。全体として上品で洗練された味わいが感じられ贅沢。
●熊肉の丼、舞茸
肉の丼は、熊の脂の旨味と舞茸の風味が絶妙に調和しています。ご飯には舞茸の芳醇な旨味がしっかりと染み込み、熊肉のジューシーな脂が全体に広がり、深い味わいを生み出しています。シンプルながらも、噛むたびに素材の美味しさが口いっぱいに広がり、地味ながらも忘れられない美味しさが楽しめる一品です。
●鍋の〆の熊ラーメン
鍋の〆のラーメンは、味噌ベースの出汁にたっぷりと熊の旨味が溶け込んだ心地よい味わいです。喉ごしも良く、食べやすく、口の中で心地よく通り抜けます。
●鮒ずしアイス
酢橘ソースのアイス お米の焼き菓子 胡麻チップ
鮒ずしアイスは、酢橘ソースが効いたアイスクリームに麹の香りが感じられる独特の風味が特徴です。さらに、お米の焼き菓子と胡麻チップが加わり、食感も豊かな一品です。
スタッフのみなさまとても温かく丁寧なおもてなしで、料理の背景や食材について親切に説明してくれました。そのおかげで料理への理解が深まり、さらに楽しむことができました。心温まるおもてなしにお店の魅力が一層際立ちました。
「徳山鮓」は自然の美しさと伝統の味を同時に楽しめる場所であり、2024年のゴールデンウィークを心豊かな時間として過ごすことができました。
ご馳走様でした‼︎‼︎
それではまた次回まで「ご機嫌好う♪」
2024/07/13 更新
春の風がやさしく吹き、山々が芽吹くゴールデンウィーク。滋賀県長浜市の北、静かな湖「余呉湖」の近くにある「徳山鮓」に今年も訪問。
ここは、日本でも数少ない「発酵料理」と「ジビエ」を本格的に楽しめる和風オーベルジュ。
発酵料理の魅力は、火でも水でもなく、「発酵」という目に見えない力を使って、食材に命を吹き込む不思議な力です。
自然に囲まれたこの地で、旬の食材と発酵の知恵を生かした料理を心ゆくまで愉しみたいと思います。
【本日の御料理】
■ 前菜(鹿肉の胡麻和え、蕨、菜の花、蕪)
やわらかく熟成された鹿肉に香ばしい胡麻が絡み、春の山菜(蕨、菜の花、蕪)が色とりどりに添えられていました。
自然の香りがいっぱいの、優しさあふれる一皿です。
■ 琵琶マスのお刺身
琵琶湖だけに生息する「琵琶マス」。今年は非常に獲れにくかったそうで、わずか2日しか出せなかったという貴重な一品です。
脂がのってやわらかく、淡水魚とは思えないほど上品な旨みが広がります。
■ 山菜の天ぷら(タラの芽、こごみ、こしあぶら)
春の山菜を軽やかな衣で揚げた天ぷら。
そこに猪の粉(パウダー)がふりかけられ、野山の香りがさらに引き立ちます。
■ 熊の足と鮒ずしの飯の銀餡仕立て
透明な出汁でとろみのある餡(あん)の中に、熊の足の煮込みと鮒ずしを作る際に出る「飯」を使った不思議な料理。
とろとろの熊肉と山菜、山椒の香りが調和し、驚くほど上品な味わいに仕上がっています。
■ 熊しゃぶ鍋(雌と雄の肉の食べ比べ)
徳山鮓名物の「熊しゃぶ」。特製のだしで食べる熊肉の鍋です。
臭みはまったくなく、むしろ上品でやさしい味。
今回は、雌と雄の熊肉を食べ比べさせてもらいました。
雌は脂がまろやかで柔らかく、雄は赤身がしっかりしていて力強い味わい。
セリや山椒といった春の香りと一緒に食べることで、熊肉の奥深さが際立ちます。
■ 鯖のなれずし、発酵カラスミ、鮒ずし
どれもこの土地ならではの「発酵の宝物」たち。
特に鯖のなれずしと、チーズのようなコクを持つ発酵カラスミの組み合わせは、驚きの一品。
発酵の文化を料理で楽しむ、そんな貴重な経験です。
■ 締めのご飯と蕎麦
・マス子ご飯:舞茸を炊き込んだご飯の上に、やわらかなマスの卵(マス子)をたっぷりのせた一品。
・熊しゃぶの出汁でいただく蕎麦:熊鍋のだしに、細い蕎麦をくぐらせて食べます。山椒の香りとだしの旨みが体にしみわたる、まさに絶品の締めです。
■ 甘味(アイス・焼き菓子)
最後は、「発酵米」を使ったアイスと、香ばしい米を使った焼き菓子。
甘さ控えめで、食後にぴったりの締めくくりです。
すべての料理に、季節の恵みと発酵の力が込められていました。
「食べることは命をいただくこと」
「発酵は、時間の中で命を育むこと」
そんな店主の思いが、ひと皿ひと皿に感じられました。
今年も本当に美しかった。
夏や秋、冬はまた違う表情を見せてくれる「徳山鮓」。季節ごとにまた訪れてみたくなる、そんな特別な場所。