2回
2013/09 訪問
迷わず行けよ イケバワカルサ!
【2013/9 新そば巡り】
簡単にはたどり着かない坂道の住宅街の奥、古民家改装で趣味性のある空間、そしてその雰囲気にぴったりと合う、物事の侘寂を知り尽くしたような、まるで「長老」のような風貌の蕎麦が楽しめる静かな店、それが「利めい庵」。季節営業という点も、この店のカリスマ性に一役買っている。
「鱧天せいろ 1,550円」
やはり私はこのメニュー。蕎麦屋では珍しい「鱧」が頂けるセット、もちろん蕎麦は冷たい「もり」だ。
サクリ・フワリ・キュっと締まった身は、塩で良し、天つゆで良し、尚且つ蕎麦の風味を邪魔しない淡白さ。ゴロっとしたポーションでボリューム感も十分だ。
蕎麦は新そばの淡く爽やかな風味を身にまとう。基本はしっとりモチッと、きっちりと冷やされた蕎麦は喉越しもよく、噛み締めると甘味がジワリと口の中に広がる、蕎麦の良いところ取りのような味わい。但し地鶏膳等、温かいつゆと合わせる場合でも、同様に冷たいのはNG。つゆがすぐにぬるくなってしまう。ここまでこだわる店ならば、蕎麦の〆具合にもひと工夫あっても良いのではないだろうか。そのほうが、比較的炒め油がまったりで強めの地鶏汁にも、蕎麦がよりいっそう負けないはずだ。
「水菓子 蕎香 280円」
普段はあまり食べない甘味にも今回はトライ。しっかりとした粒感が印象的でやや甘めの小豆と、しっとりと柔らかくあっさりの練り物との相性・バランス感が良い。お向かいの蕎麦喰いさんも「おいしー☆」との事なので、甘いもの好きにはオススメ出来るメニューだ。このあっさり感は、蕎麦の余韻を邪魔する事はないだろう。
・・・雪が降る頃、この店がまた静かな眠りに入る前に、色彩豊かな紅葉を感じながら蕎麦を頂いてみて欲しい。
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【2011/11再訪】
「地鶏膳 1,550円」を頂く。地鶏せいろに麦とろ飯がセットになった内容だ。
つゆはどちらかと言うと優しい味わい。程よく煮込まれたような柔らかい地鶏、長葱、そして鶏出汁の加わったつゆが「一体感」を醸し出している。
そして今回は蕎麦が更にキリリと冷やされていたが、これは冷え過ぎのような気もした。温かいつゆで冷たい蕎麦を味わう「せいろもの」では、もう少し穏やかな冷やし具合のほうが、ここの蕎麦の風味や魅力、そしてつゆとの一体感を感じ易くて良いかも知れない。
麦とろ飯も美味い。良い長芋、そして良い出汁、良い具合に炊き上がった麦飯・・・自宅以外では蕎麦屋か牛タン屋位でしか「麦とろ飯」を頂く機会は無いが、ここの麦とろ飯は一体感が素晴らしく、蕎麦との相性も抜群。
今回頂いた「地鶏膳」は蕎麦・麦とろ飯・付け合せ含め「滋味感溢れる一膳」という感じで大変満足出来た。接客も相変わらずソフトで丁寧、好印象。今回も美味しい蕎麦と、心地良い時間と空間をありがとうございました。
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長い長い坂道を「この道で良いのか?」と不安に思いながらも車を走らせる・・・あった〜!左手に。何とも嬉しい瞬間だ。
「利めい庵」・・金土日のみの営業、尚且つ冬期間は休業。現れては消える・・まるで蜃気楼のような蕎麦店だ。古民家を改装した店舗は入り口からオーラ満点。暖簾をくぐり、靴を脱いで店内へ上がる。和装の女将が丁寧に、そして笑顔で迎えてくれた。そしてご主人も腰が低くとても感じが良い。
一人なので大テーブルの掘りごたつ席の片隅に座る。見渡すと座敷やテーブル席もあり・・・外観から想像したよりもキャパのある店内。数々の装飾やレイアウトにはご主人のこだわりとセンスが垣間見れるような気がした。
今回の訪問では、先輩蕎麦レビュアー「くのっちょさん」「かつろさん」のレビューをじっくり拝見し、あらかじめ注文は決めていた。
「鱧天せいろ 1,550円」
まずは天ぷら、当日は鱧天3ケ、大葉、アスパラ、おくらの組み合わせ。塩で鱧天をサクッと・・・淡白な鱧の味わいがじわりと口の中に広がる。やや硬めに揚げられた衣の食感も抜群で美味い。続いて天つゆで・・・鱧の味わいに穏やかな味わいのつゆが絡んでこれまた美味い。野菜を含め、天ぷらは満足度が高い。
そして蕎麦・・・これが素晴らしい!赤い星、白い星・・・三番粉までを上手にブレンドしたような、そして粒子の異なる蕎麦粉の割合を工夫したような・・・ザクリ感も心地良い蕎麦は、しっかりとした力強いコシ、そして口の中に広がる豊かな蕎麦の風味が秀逸。
更には「水切り具合」が絶妙。キリっと冷やされ、つゆを甘やかさない程度に、尚且つ喉越しをも重視したような水切り具合・・・さりげなくアピールする「氷」にも計算されたようなこだわりが感じられ、実際蕎麦にも良い効果を与えていると思った。どんな蕎麦でも冷たければベストだとは思わないが、ここの蕎麦にはこの冷たさがピッタリと合っているような気がした。・・・ありそうで中々出会えないタイプの蕎麦にはとても満足出来た。
つゆは鰹風味が前面に出たタイプの中口〜やや辛口スッキリ系で、ここの蕎麦との相性はピッタリ。更に薬味も繊細で良し。蕎麦湯は白濁サラっと系で本格派で旨みあリ。
何だろう・・・おぼん全体が味わいを含め、とてもバランス良くまとまっており・・・価格は少し高いが、それを補う以上の満足感が得られたような気がした。
この店は「蕎麦・店舗・人」それぞれの要素で「生命感」がヒシヒシと伝わってくるようで・・個人的にはとてもオススメであり、「決して外す事」が無いだろうとも思える蕎麦屋さんだ。
「迷わず行けよ 行けば解るさ!」
2013 新そばです
鱧天御膳 1,550円
サクリ ホクホク 旨みあり
水菓子 蕎香 280円
店外の東屋で一服
秋になりました
アップ
地鶏膳1,550円
鱧天せいろ1,550円
そば
そば(アップ)
鱧天
蕎麦湯は白濁サラっと
デザイン性あり
落ち着ける店内
掘りごたつ風
テーブル席もあり
雰囲気あり!
蕎麦喰い処 利めい庵
2013/11/26
いつもご来店ありがとうございます、ご指摘の地鶏せいろの件大将も思案中です。器の形状や素材、複数注文時の締め具合など。
今後も鋭意努力したいと思います、貴重なご意見有難うございました。
2013/10/07 更新
「踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ」
高らかにそう豪語していたが、八年振りの利めい庵、少し迷ってしまった…消沈。気を取り直し車を停め、靴を脱ぎ店内へ。
まとまりのある趣味の空間は落ち着いて静か。庵に籠る感覚がありながらも居心地は良い。変わらないのはご夫妻の朗らかな接客も同様だった。
■ふぐ天せいろ
そう言えば、私のレビュー(意見)に最初に耳を傾けてくれたのはこの店だったな…と回想しながら蕎麦をヒョイと手繰る。
粗挽きで基本は変わらないが八年間の熟練か、よりまとまった印象だ。当時も先鋭的かつキンキンに冷やした蕎麦が素晴らしかったが、今はしっかりと冷たいながらも少し穏やかとなり、ゆえに蕎麦の穀物味と甘味が穏やかに花開くよう。
汁の味わいは、つい語りに夢中となり失念してしまった。そしてふぐ天、サクリ軽やかで淡白な味わいは蕎麦に華やかさを与えつつも邪魔はせず。但し庵での天ぷらは鱧か海老と確信。
うん、やはり美味しかった。
マヨワズイケヨ、イケバワカルサ
八年後に何が解ったか?
それは私はこの庵と蕎麦が大好きだと言う事さ。
それでいいじゃないか。
いち、にい、さんっ……