5回
2021/12 訪問
孤高の粗挽き細切り蕎麦。
大好きな蕎麦であり、最も注目している店の一つ。晩秋は臨時休業などに当たり、私としては今季最も遅い新そば訪問店となってしまった。
11時半、愛想の良いご主人が暖簾を掛け店内に促されると、はんなりとした女将が出迎えてくれる安心感で期待はいつも高まる。
ザラつきのある「粗挽きの細切り蕎麦」は、キリリと冷〆されてしっとりモッチリの食感とのど越し。黒松内産完全無農薬の奈川在来種で打つ蕎麦は熟成に向かい、放つ香りは香ばしく、後味に淡く深い甘味は「大地のエネルギー」であり、甘さを抑えた上品でドライな汁とのマッチングも良し。
この日の薬味は山わさび、もちろんスカッと辛い。箸でつまみながら蕎麦湯で割ったつゆを嗜みつつほっこり。
会計時には女将自筆の名物「すいめい庵だより」を頂き笑顔で挨拶。この店との波長はいつも合う。
また来年。
2021/12/26 更新
2021/08 訪問
「彩食兼備」夏色の爽やか冷かけ蕎麦。
蕎麦が良いのは勿論、こちらでは種物のセンスにも期待出来るのでは…という直感と期待から、東京オリンピック閉会式のある暑いこの日、天せいろのつもりで入店するも、「冷かけ」の文字につい反応してしまう。
■彩(いろどり) 1,300円
えび天と夏野菜の素揚げに大根おろしをたっぷりの冷や汁と共に。えび天は小ぶりながら質の良さを感じる美味さ。夏野菜もカラフルで楽しく、食べて塩梅の良い加減。そのままスイスイ飲める汁は、昆布出汁にウェイトを置いた、かなり穏やか型で蕎麦をしっかりと引き立てる。そして翠明庵と言えばの奈川在来を粗挽き寄りに打った、細切りでザラつきのある蕎麦は、もっちりとした存在感のあるコシを身に纏い、その風味と共に心地良い喉ごしも演出する。大根おろしもスッキリで無くてはならない存在感。
うん…美味い。
個人的には、汁に鰹の顔がもうほんの少しでも欲しい事と、夏野菜の種にもう少しダイナミックな存在感が欲しいと感じるが、とても満足出来る蕎麦である事は間違いない。暑いうちに是非食べておきたい一品であり、蕎麦は札幌屈指の上位店。
‥‥8月で15周年、おめでとうございます。
初訪問から10年かあ、私も歳をとったな。
2021/08/09 更新
2021/04 訪問
素晴らしいの一言。
確か東北移住で一度閉店。その後「春風にのって帰って来ました」と再びの営業…あれから7年、ようやくの再訪問となった。この店は何故か春が良く似合う。
印象的だった女将さんも7年も経てば「時が経つのは当然で…」等と書かざるを得ないかと思っていたが、変わらずの和服姿で柔らかいオーラ、あの頃と同じ過ぎて驚いた。やはりここの女将さんの存在は蕎麦と共に二枚看板なのだと実感。
前置きが長過ぎたが、伝えたい事…それは蕎麦が素晴らしかった事。
無農薬の黒松内産奈川在来種を十割で打つ、細く美しい少し粗挽き寄りの蕎麦は、手繰ると口の中に強く広がる、この品種らしい「大地の甘味」が特に印象的だ。そして以前、ここの蕎麦が粗挽きに変化した頃の頼りないマッティ食感は、適正な工程で作られた蕎麦ならではの弾力が心地良い「コシ」が表現され、汁が良く絡む「適度なザラつき」が備わっていた。そしてキリッと冷〆されており、喉ごしだって爽快なのだ。
7年ほど前、確か一切の甘さを取り除いた汁にも印象の変化が感じられた。甘味がほぼ抑えられている事自体は変わらないが、妙に辛口が出しゃばる事も、塩分が角張る事も無く、良く馴染みどっしりとした存在感で蕎麦の味わいを好アシスト。言わば蕎麦とのマリアージュに注力したような、下支えもある存在感だ。
薬味にも手を抜かない。切れ味美しい葱は勿論の事、ポテンシャルをマックスまで引き出したような辛さと滋味の山わさびも素晴らしかった。
美味い… 肩の力が抜けたような余裕と、懐の深さも感じさせられるような秀逸な蕎麦、私自身の再訪問まで7年の期間が空いてしまった事が実に悔やまれる。…今から今年の新蕎麦が楽しみだ。
2021/04/04 更新
2014/04 訪問
春風にのって、もどってまいりました
【2014/04】
惜しくも閉店してしまったはず…だったが、春風に乗って帰ってきたとの事。風味豊かな極細系粗挽き蕎麦は健在だった。但し、つゆの印象がかなり変わった。華やかに香る鰹風味の後は、割りとシャープな味わいが口の中に広がる辛口基調。よりスパルタンで男性的な味わいになった。私としては以前のつゆのほうが好みだったが、蕎麦との相性はgood。春らしい組合せの天ぷらも雰囲気は良し。
…春風よありがとう。
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【2013GW 釣り食べ一人旅〜1軒目】
GW後半は「釣り食べ一人旅」。渡島半島をぐるり一周しようとだけ決めて、後は行き当たりばったり
の無責任な旅。一人でぼんやり、通ったことの無い道や、見たことの無い景色/風景を眺める事が
大好きなのだ。そしてその合間には趣味の釣りを楽しんで「一石二鳥」。
5月3日寒さの中、とりあえず高速道路で「黒松内」へ。
休憩に立ち寄った「道の駅」の入り口には「そば」と・・。「あれ?何か見たことのある筆文字と女性・・・」
そう、何度か訪問した事のある札幌「翠明庵」さんだ。
いつも和服姿が印象的な女将、今回は洋服で寒いながらも頑張っていました。蕎麦や蕎麦のお菓子
等を販売・・・この店の蕎麦は黒松内産の奈川在来種を使用しているので、そのつながりで出店
していたのだろうか。
蕎麦のお菓子を・・・と思ったが、タイミング悪く品切れだったようだ。
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【2012/10〜新そば再訪】
「もり」
黒松内産奈川在来種を使用した新そば。こちらの特徴とも言える、細切りで粗挽き感のある蕎麦は健在。
やや粘土質のような食感でコシはやや強め。水切り具合絶妙で喉越しも良く、何より「新そば」らしい風味が
引き出されており美味しい。
つゆは、口に含むと旨みがひろがるサラっとしたタイプ。深みと言うよりはキリッとした軽めの辛汁寄り。蕎麦をつゆに
半分浸けて、風味良く味わえる。薬味も繊細、やまわさびが添えられる。蕎麦湯は白濁サラっと系、つゆと割って旨い。
やはり今年の新そばも出来栄え良し!
和服姿の女将・・・と言うと、重厚なイメージを持たれがちだが、柔らかくどこか安心感のある家庭的雰囲気で心地よし。
達筆・・と言うよりは女性らしい優しさのある筆文字のPOPと合わせて、この店にとても良い効果を与えている。
ご主人が打つ、しっかりとした本格蕎麦の艶めいた褐色のイメージ、そして女将が醸し出す、柔らかくて優しい桃色の
イメージが混ざり合い、独特の綺麗な淡色を放つような・・・この店はトータルバランスに優れた割と珍しいタイプの
蕎麦屋と言えるだろう。
今回はご主人の丁寧な接客スタイルも印象的で、満足して店を後にする事が出来た。
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【2011/09】
西区の人気店「翠明庵」。到着すると店頭には「出たよ新そばおいしいよ」の文字が・・・期待が持てる。
和服姿の女将が迎えてくれた。割と若く、穏やかで表情豊か・・洗練・・に近いが、どこかまだ初々しさもあり
大変感じが良い。
「つけ鴨せいろ」
黒松内産奈川在来種にこだわった蕎麦粉・・・今年はいっそう出来が良いらしい。十割細切りで粗挽き感があり、
しっとりと・・そしてザクリとした食感の後には、新そばらしい風味が口の中に淡く広がる。鴨汁は柔らかな味わいで
バランスが良いタイプ。青森産鴨肉も脂身が少なくヘルシーな感じで柔らかい・・が故につゆは鴨出汁感は控えめで、
私としてはこの辺にやや物足りなさを感じた。
薬味は繊細上品、見た目も美しい。添えられた「京都一休」と表示された「一味」「七味」「山椒」、私は辛いものが
苦手なので山椒のみを使用したが、それらも雰囲気やこだわり感もあり良い感じ。蕎麦湯はサラっと茹で汁系、
これも自分好みだった。
皆様のレビューやメニュー構成からも解る通り、この店は蕎麦屋酒を楽しむのが一番魅力的なのだと思う・・・
それが出来る近郊の方が羨ましい。
そして何より印象的なのは「蕎麦」もさることながら、きっと女将が書いているのであろう、雰囲気のある手書きの
メニューやチラシ。これらは見て楽しく、読んで楽しい。蕎麦に・・そしてこの店にとても好印象を与えていると思う。
「接客と雰囲気・アイデア」でお客を呼べる女将・・そしてしっかりと本格的な蕎麦・・・高い人気にも頷けるような
気がした蕎麦屋だ。
【2014春】
【2014/04】 野菜天せいろ1000円
しっとり細切り蕎麦
春らしさが良いね
【2014/04】
【2014/04】
【2102/10】もり
【2012/10】もり
【2012/10】
つけ鴨せいろ
【2011/09】蕎麦のアップ(新そば)
雰囲気良し!
読んで楽しい!
【2011/09】
【2013/05/03】黒松内道の駅
【2013/05/03】寒い中頑張ってました
2014/05/31 更新
完全無農薬の黒松内産奈川在来種を十割で打つ。奈川在来種単一での十割は意外と珍しい。
翠明庵ならではのザラリとした粗挽きの細打ちはしっかりと繋がる。一般的に粗挽粉、そして十割は繋ぐ事が難しいとされるので、ご主人の技量の高さが垣間見れる。
■せいろ 700円
しっとりとした麺線、細打ちならではの喉越し、そしてザラつきによる汁絡みの良さ、やはり翠明庵ならではの個性が豊かだ。噛めば奈川在来種らしい力強い味香がフィードバックするように優しく響く。
つゆにもまた個性。甘さを排除したムッチリとした旨味の出汁感に返しがキリリと主張する中口は、蕎麦の個性と鮮やかにマッチング。これで700円での提供も凄い。
蕎麦に色を添えるは着物姿の女将のはんなりとした接客と、その達筆による標語や楽しい便り。
様々な個性感が上手に噛み合っている店…そう、強いはずだ。