5回
2019/10 訪問
伊達な遊び場
ツレと一緒に一階のGUZZLE。
ロングカクテル中心でノーチャージ。
外から中の混み具合が見える事もあって、バーとしては大変入り易い雰囲気。
タイミングにもよるだろうけれど、お客様の7割くらいは外国の方々で。
トーンを落とした明かりの中で飛び交う異国の言葉に、まるでロールプレイングゲームの中の何処かの町の酒場に来てしまったようだ…
なんて思ったりもする。
注文したのは
◆コールドブリューマティーニ
◆パルミジャーノサワー
◆リースリングみたいなマルゲリータ
◆ラムアンドコーラ ウィズアウトコーラ
前回伺った時から半分くらいメニューが入れ替わっている。
また新たなる気持ちで、一杯と向き合える時間が楽しい。
へぇ!こんな表現あったんだ! とか
おー!こう来たか… とか
あー!コレ好き! とか
様々な感嘆の想いが重なる。
隣のテーブル席に座っていた何度もココには来ているのだろう男性グループの会話が、なんとはなしに耳に入る。
「ココに連れて来たいと思う女の子、いないんだよね〜」
「この価値観を共有出来ると思わないからさぁ」
ほう、なるほどね〜
つまり彼らはココを大変に気に入っていて、つるんでたまに飲みに来ている訳だけれど。
そこには男同士の「ココ、カッコよくて最高!」という価値観が暗黙のうちに共有されていると。
自分の周りの女の子は、コイツらと同じ様にはココを最高だとは思ってくれないだろうな…
自分が良いと思って連れて来たのに、つまんなそうにされたり、気に入ってるポイントをスルーされたらテンション下がる。
だから女の子なんか連れて来ないで、いつものメンバーで楽しもうよ♪
ってな感じかなぁ
男性三、四人のグループにココで遭遇する率が高いのは、そういう事だったのか(笑)
男同士の伊達な遊び場として、かなり重宝がられてるみたいです。
2019/10/31 更新
2019/08 訪問
メニューが変わる前に
この楽しさは、ディズニーランドに求めるものと同じかもしれない。
エンターテイメントとして、バーを楽しむということ。
伊達やダンディな格好良さ…って、本来は自分の生き方から滲み出てくるもの。
でもセンスは一朝一夕には磨かれないし、そんな生き方を貫くにはお金もかかる。
でもここに来れば、誰もがカッコいい世界観に浸れちゃう。
もちろんコレは良い意味でね。
ヤクザ映画を見た後は、みんな肩で風切って歩く…
と言ったのは誰だったか…
小説にせよ映画にせよ、漫画だってそうだけど、ほんの束の間、自分では無い誰かになる時間があっても良い。
もちろんそれが、バーであっても良い訳で。
ここは究極カッコ良く作られた世界観に身を委ねる、劇場といったところ。
さて、9月にメニューが変わると聞いたので、その前にツレとやって来た。
注文したのは
◆黒しゑり酒
◆アップル成ルモノ
◆ウヰスキーのシャルドネ
◆カフェフォー芸者
◆シャンペン アンド アイスクリーム
好み…という意味では、ハマるものもハマらないものも当然ある。
でも、どれもカクテルとしてのクオリティは素晴らしく完成されている。
この日の中では、シャンペン アンド アイスクリームが1番気持ちにピタリと来た。
バカルディのカクテルコンペのワールドチャンピオンである後閑氏らしく、バカルディを使い、洋梨とアイスクリームとシャンパーニュ。
夜の締めくくりとして、香り高くクリーミーな極上のデザート代わりの一杯となった。
新しいメニューは、9月4日からとのこと。
次に来た時には、一体どんな驚きと出会えるだろうか。
2019/09/19 更新
2019/08 訪問
魔窟の地下には
渋谷の魔窟の下には、更に魅力的な空間が広がっている。
階段を降り、透かし扉を開けるという行為1つで、見事に違う世界へといざなわれる。
幸運な事に、この日は後閑氏本人がいらっしゃった。
注文したのは
◆ベルガモット足ス珈琲ハ マルデ香水ノヨウ
◆白珈琲フィズ
◆自然派不自然派ワイン
◆カシスウーロンロワイヤル
世界中を飛び回っている氏が、このバーに居るタイミングは、正直多くは無いのだろう。
そんな中で、クオリティをどうやって保つのか…
これまでバーに通ってきた経験からすると、カクテルはバーテンダーの力量、センスが如実に出るもの。
ほんのちょっとした事でもバランスを崩して、無残な物になる。
複雑なレシピのカクテル、かなりの大箱、バーテンダーの人数も多い、かなりハードルが高いんじゃないのか?
最初こそそんな気持ちを持ったものの、実はこのバー、驚くほどストレスが少ない。
バーでストレスが溜まる2大要素は、
◆味が好みではない。
しかも何度修正しようとしてもハマらない時のストレスったら。
◆待つ。
オーナーバーテンダーおひとりでやってるお店では、他にお客様がいらっしゃる場合は、注文のタイミングを見計らいつつ、それでも出てくるのは遅くなるのが常だしね。
どんなバーであっても多かれ少なかれあるハズの、これらのストレスが無いとはどういう事なのか?
その訳は、後閑氏にある質問をした事で明らかになった。
「これだけ魅力的なオリジナルカクテルが揃っているお店で、スタンダードカクテルを頼まれるお客様なんて、いらっしゃらないでしょうね?」
それに対する答えは
「たまにはスタンダードを頼まれる方もいらっしゃいますが、ハッキリ言ってあまり おススメしません。」
「バーテンダーによって味のバラツキが出ますし、お待たせする事にもなるので。」
「アメリカのバーって、物凄く出てくるのが早いんです。そういうのを見ていると、バーでカクテルが出てくるのに時間がかかるのってどうなのかと思って。待たせないように、事前にしっかりと仕込みをするんです。」
なるほど、明確な解だ。
レシピに沿った仕込みをしっかりと行い、バーテンダーは最後の仕上げをする。
これによって味のブレを無くし、提供までの時間を短縮させる。
オーナーバーテンダーが居なくても、クオリティを保ち、顧客の満足度を維持させるという訳か…
普段、オーナーバーテンダーが一人でやってるお店にばかり行っている。
それは、クオリティや待たせるという事に対する考え方が、よりシビアだろうと思うから。
もちろん、一杯のカクテルが出来上がってくる課程を見て楽しみたいという理由もある。
バーに求めるものは人それぞれ。
であるのと同じように、バーによって求めるものが違う。
普段なら、オーナーバーテンダーがほとんどお店に居ないバーへは、まず行かない。
そこに私の求める物は無いから…
でもこのバーは別だ。
他の何処にもない突き抜けたこのバーに、行かない理由が見当たらない。
さて、9月4日にカクテルメニューが変わると言うから、その前にもう一度くらいは、訪れないとな…
2019/09/09 更新
2019/08 訪問
渋谷の魔窟
「あの」後閑氏の日本のお店。
ワタクシがバー 巡りをする際のバイブル、雑誌BRUTUSの2017年9月発行「20年通えるバー」。
そこに4ページに渡って特集されている、世界的なバーテンダーである後閑氏。
上海に際立ったコンセプトのお店を構え、世界中を飛び回って活躍をしているという記事の中には「東京でバーを作る計画」と確かにあった。
オープンは2018年。
情報はキャッチしていたのに、結局訪問まで1年以上かかってしまったな。
今夜は満を持して、そのバーへと繰り出すことに。
しかし、渋谷の魅力的なバーはどうして揃いも揃って駅から遠いんだろ…
このお店があるのは、公園通りの坂の上。
信号を渡れば、もうそこはNHKという所に位置しているから、駅から歩くと、たっぷり15分はかかる。
1階はロングカクテル中心で昼間からノーチャージで営業。
地下はショートカクテル中心。
2階は会員制になっているらしい。
まずは順当に1階から攻めよう…
そう思って扉を開け、店内に一歩踏み入れた瞬間、独特の世界観にココロが吸い取られてしまった…
あ…やばい…
ここは魔窟だ…ハマる予感しかしない…
まだ夜浅い時刻。
街明かりより、一段と暗い店内。
金属製のカウンターは、ほの暗い中にも光りを集めてキラキラとした輝きを放っているのに、そこにはどこかダーティな鈍さを内包している。
明るいけれど、闇がある…
相反する魅力が混在する、不思議な空間。
魅入られたまま、ふらふらとカウンターに座り、注文したのは
◆ナンバーワンカップ
◆澄ましミックスジュース
◆ラムラム水餃子
「独創的」という言葉が、陳腐に感じてしまうほどの、尖ったオリジナルカクテルがメニューに並ぶ。
これまで経験してきた、どのバーとも違う。
ミクソロジー…と言うのもしっくり来なくて。
あまり好きな言葉では無いけれど、イノベーティブ…が感覚的には近いかな。
一杯ごとに驚きがあって…味ももちろん美味しくて。
どこにも凸凹が無く、最初から1つの液体であったかのようなスムーズな飲みくちと、最後のひと口まで崩れないバランスに、技術の高さが伺える。
ラムラム水餃子は、かなり美味しかった。
叩いたラム肉を包んだ紅油水餃。
上に乗ったミントとラム肉の組み合わせが抜群で、しっかりとした中華ではあるけれど、中東のエッセンスも感じる。
これだけを食べに来ても良いな、と思えるほどの完成度。
このバーは、凄いな…と唸る。
けれど、まだココは入り口に過ぎない。
地下にはまた異なる出会いが待っているのだから。
2019/09/03 更新
例の蟻がどうなったのか…
気になってしょうがない…
まだメニューが変わる前。
「蟻を使ったカクテルを考えているんです」
とおっしゃっていて、そこからひとしきり蟻の味わいについての会話を交わした。
その蟻は、一体どんなカクテルになったのだろうか?
ここは、バーテンダー毎の味の違いが極力生じないようなシステムがとられているけれど、まあせっかくなら後閑氏本人がいらっしゃる時に…と思って、狙ってやって来た。
注文したのは
◆エーゲ海でギムレット
◆speak low
◆蟻地獄
なんと言っても、お目当ての「蟻地獄」。
ウホホホホ
思わず一瞬仰け反るビジュアル。
思った以上に カクテルの上にわんさかっ!
蟻…いっぱいだね…
幸いな事に完全体はあまり多くないから、一見すると蟻とは分からないかもしれない。
でもよく見れば、脚やお腹の部分、触角なんかのパーツが見える。(笑)
「バナナにたかった蟻」をイメージしたカクテルとの説明。
いや〜インパクトありますわ。
フリーズドライにしたものなのか、クリスピーなシャクシャクとした食感の上に、シャープな酸味が乗っている。
おお!これが蟻酸か‼︎
聞けば、いくつかの産地の蟻を試して、酸味の質でコレを採用したとの事。
やはり蟻も種類や産地によって味が異なるのだな…
蟻単体で食べると、昆虫特有のたんぱく質の香りがして余り好きでは無いのだけれど、カクテルと一緒だと、そのクセが上手いことマスキングされて気にならない。
絶妙に忍ばせたフロムダンベールの香りとコクが、その役割を果たしているのかもしれない。
イノベーティブな料理の世界では、蟻を使うのが流行っているらしいけれど、カクテルに使うとこうなるのか…
美味しい というベースがしっかりしているからこその、楽しいお遊び。
知的好奇心を刺激された…なんて尤もらしいコトバじゃなくて、もっと子供っぽい「蟻食べちゃったもんね〜」みたいな感覚が湧き上がる。
話のネタとしては、かなりイケルね。
さぁ、貴方も今夜、蟻地獄。
皆んなで飲もうよ、蟻地獄。