こぐまの森さんが投稿した農口尚彦研究所 杜庵(石川/小松)の口コミ詳細

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こぐまの森 (埼玉県) 認証済

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1

  • 昼の点数:5.0

      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2019/02 訪問

  • 昼の点数:5.0

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-

ラグジュアリーな酒体験

確かに音を聴いた気がするのだ…
こぽこぽと、こぽこぽと…
タンクの底からたちのぼる、発酵の証し。
ガラスで隔てられた見学通路に、そんな微かな音が漏れ出るはずもないのに。

小松駅からタクシーで30分ほど。
山があって田んぼがあって川が流れる山里の、空の広い風景。

2017年。
日本で最も高名な杜氏である農口氏が、御歳84歳にして新たに作った酒蔵。
82歳の時に引退したと目されていた日本酒界の神様。レジェンドと呼ばれる氏が、何故に新しい蔵を開いたのか。
その想いは、研究室の名前に集約されている。
氏の技術、想いに触れ、共に成長しようとする若い蔵人を募り、次世代へと日本酒作りを伝承する。
その視線は真っ直ぐ遥か先の未来を捉えている。

そんな氏の想いに触れることの出来る酒ツーリズムとしての実験場が、この場所なのである。

完全予約制、ネット予約からの先払い。
一回12名1時間半のツアー。
それは2つのパートで構成される。

まず最初は氏の足跡を辿りながらの蔵見学。
ガラスで隔てられた見学通路からではあるけれど、蔵人が作業する様子や発酵しているタンクの状態を眺めることでの満足感は、思った以上に大きい。
今まさにここで酒が出来上がりつつある。
その場に居合わせているという、静かなる高揚感に満たされる空間。

次は、場所を杜庵に移しての酒事と言う名のテイスティングコース。
小松は裏千家に所縁のあるという土地柄。
お茶事になぞらえた酒事とはいったい…

片側壁面一面ガラスばり。
田んぼの奥になだらかな小山が広がる。
その四季折々の借景を映す、明るく開放的な広間。
その中央を、茶室と同じサイズのカウンターが切り取る。

カウンターの中の槽には、清浄な水が湧き出したかのようにこんこんと満たされていて、いかにしてこの地が選ばれたのか、酒造りにおける水の重要性についてのレクチャーが、行われる。

その後、ここでしか飲めない火入れしていないお酒や、ある温度に達するまでの時間を変えることでどのように燗酒の味が変化するのか、といったコンテンツ。
酒米を炊いたものを食べてみるということ、季節酒として日本酒で作った梅酒と続く。
コース自体は、干菓子を日本酒に浸して食べるという雅な試みでもって仕舞いとなるのだが、その途中で農口氏が酒造りについての質問に答えてくださる時間があって、これがもう何物にも変えられない経験となるのだ。

この風景のなかでこそ伝わることもある。
時間をかけてここに来なければ、得られない唯一無二の体験。
語弊を恐れずに言えば、この1時間半の体験が人生を変えるかもしれない。

日本酒を愛するフーディ達よ、急げ。
86歳の農口氏と逢って話す事で見える世界が、そこにあるのだから。
これは間違いなく、日本を代表するラグジュアリーな食の体験となる。

2019/11/15 更新

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