2回
2020/07 訪問
薄切りなのにレア。存在感のある薄切りステーキ
銀座でお昼。肉が食べたいなぁ…、と思う。
しかも牛肉。
しかもおいしいご飯と一緒に味わう牛肉料理。できれば箸で気軽に食べたい。けれど肉そのものは上等なもの。
…、と頭の中で条件検索をかけてくと、でてくる答えは「吉澤」になる。
肉屋さんが経営している日本料理のお店です。ビルの一階に精肉店があり、飲食部のメインはすき焼き、あるいはしゃぶしゃぶ。ランチは気軽な定食がある。
中でも「薄切りステーキ」というのが好きで、たまに無性に食べたくなって今日がまさにそういう気持ち。入り口入って靴を脱ぎ、和服姿のおねぇさんに案内されつつ緋毛氈の敷かれた階段をトントン降りる。大きな座敷があって等間隔で几帳面に座布団が並べられてる。ひとつに座ってまず注文。
「薄切りステーキ」というのがオキニイリ。
たのむと食事がやってくるまでのおしのぎとしての三つ葉のおひたし。いとがきにした鰹節がたっぷりのっかり、出汁まで飲めるやさしい味わい。漬物3点、熱々のお茶。黄色のプラスティックの札は、入り口で預けた靴の下足札。
ステージ付きの大広間で、温泉旅館の朝ご飯…、みたいな感じがするのがまた乙なもの。
大きな座卓の要所要所にステンレスの保温ポットが置かれてて中にお茶が入ってる。最初のお茶は出されるけれど「あとは気軽にご自由に」ってほったらかしにされるところが気軽でよい。
しばらく待ってメインが到着。
すき焼き用の肉よりちょっと厚めに切られた大判の肉。
自分の脂なんでしょう…、表面つやつや。
箸で食べるようあらかじめ切り分けられてやってくる。
感心するのがその断面。
この薄さにして芯の部分はロゼ色で、見た目なんとも肉感的。
塩と胡椒がほどこされていて、そのまま食べても十分味が整っている。唇ひんやり濡らすと同時に、焼けた脂の香りがフワリ。ザクッと歯切れて口に広がる肉の旨みにウットリします。ワサビを乗せると辛味が甘みにかわっていくのにまたウットリ。
醤油にワサビ、大根おろしにポン酢が用意されていて調味料で脂の風味が変化するのがオモシロイ。
醤油に軽くくぐらせてご飯にのせてワサビをちょこん。ご飯を巻いて食べると肉のざっくり歯切れる感じが一層際立ち、肉を食べてる…、って実感が盛り上がる。
ポン酢まみれの大根おろしをくるんで食べると、肉のしっとり感がふくらんでいく。キリッと酸っぱいポン酢と一緒にたべてなお、肉の脂の旨味、風味が損なわれないというのもスゴい。
サイドにトマトやきゅうりに水菜。実は水菜はあんまり好きじゃないのだけれど、オリーブオイルとレモンをもみこんだおひたしみたいなここの水菜は、口をシャキッと洗ってさっぱりしてくれる。軽いに苦味もオゴチソウ。
おいしいご飯になめこの赤出汁。グレープフルーツでお腹をブルッと震わせて満ち足りました。オキニイリ。
2020/07/08 更新
ひさしぶりに「スゴいお肉」を食べに行く。
タナカくんがここの肉はおいしいとかじゃなくてスゴい肉だネ…、って言って愛した銀座吉澤の薄切りステーキ。
ステーキは分厚い肉を焼くのがおいしいんだと言われるけれど、おいしい肉の厚さは肉次第で決まるもの。
サシのはいった和牛の肉。
繊維のきめがこまやかでとろけるような味わいの肉はステーキよりもしゃぶしゃぶやすき焼きにするほうが肉の魅力をより引き出せる。ステーキだって薄切りの方がおいしいんだよ…、というのがここのひとつの提案。
玄関で靴を脱いで座敷にあがる。手渡された下足札が39番。タナカくんの誕生日が3月9日で、なんだか一緒に座敷に上がったような気がした。まず小鉢と漬物。熱々のお茶が大きな湯呑に入って、まだ来ぬ主役の舞台を飾る。
薄切りの肉が2枚お皿に盛られて到着。
脂でつやつや輝いて、薄いくせして断面みるとまだ肉の色が残ってる。
この焼き加減が絶妙でわさび醤油やポン酢で洗った大根おろしで食べるのだけど、厚さ以上の存在感を口が感じる。
歯切れ、歯ごたえ、口いっぱいを満たす感覚。
どれもが上等なステーキ肉のそれそのものでウットリとなる。
噛めば肉汁。肉の繊維がほどけるようにザクザク切れて、脂がジュワッとほとばしり出る。
脂の甘み。脂のうま味。しかもスッキリ切れが良くって後味がよい。食べてもお腹を重たくしないところがステキ。あらかじめ塩と胡椒がほどこされていて、何もつけずに食べると肉の脂ってこんなに甘いものなんだ…、ってしみじみ思う。オゴチソウ。
サイドにそえた野菜も上等。きゅうりにキレイな縞模様。トマトは硬くて酸味がおいしく、葉っぱ野菜はレモンと油、そして塩。口の中をみずみずしくさせ、肉を最後までおいしくしてくれる。なめこの味噌汁もおいしく器はキレイに空っぽ。
このまま横になって昼寝したらどんなに気持ちいいだろうなぁ…、ってふと思う。
今まで何度もここにきていて、いつも座敷に案内されてそんなことを考えたのは今日がはじめて。先を急ぐ生き方をずっとしてきたからでしょう。タナカくんは多分、いつも寝転がったらシアワセだろうなぁって思っていたに違いなく、そんな気持ちもわかってあげられなくてごめんなさい…、ってちょっと泣いちゃった。