12月23日 天皇誕生日 三連休の真ん中の日。
朝いつものように次男をバスケの試合に送り出して,僕と一緒にクリスマスの食事の買い出しのためにスーパーに出かけたよね。そのあと二人で近所の回転寿司で食事をしたよね。僕は回転寿司で初めてうどんを食べて,君は少し笑っていたよね。そして自宅にもどって君は夕食の準備をしてくれたよね。
いつもは日本酒ばかり購入している僕が近所のスーパーで珍しくワインとシャンメリーを購入して自宅に戻り,僕と,次男と三人で食事をすることにしたよね。君は皆のためにピザを焼いてくれたよね。焼きあがるまでの時間があることを確認して珍しくお風呂に入ってしまった・・・。いつも30分はお風呂には入っているはずの君が10分でお風呂から上がりピザを用意してくれたよね。でもそのときは君は無言だった・・・。機嫌が悪いのだと勘違いしていた。三人でワインとシャンメリーで乾杯したときも君は無口だった。しばらくして僕が声をかけたとき君の異変に気がついた。そのまま君は倒れ込んでしまった。僕も次男も呆然としてしまった。
救急車を呼んで,救命士の方が必死で君の名前を呼びかけてくれた。なんとか君は起き上がろうとしていた。しかし近所の病院に行く間に君は意識を失ってしまった。最初は出血も少なくて,医師からも命の危険はないと言われた。その言葉に少し安心していったん自宅に戻り入院のしたくをすることにした。
真夜中に君は再出血してしまった。このままでは危ないと医師から呼び出されて,緊急手術をすることになった。いろいろな書類を手渡されて署名をした。そして手術をしても二度と起き上がることはできないだろうと医師から宣告された。
頭の中はまっ白になった。僕は祈るしかなかった。そしてなぜあのときにお風呂に入ることを許したのかと後悔ばかりしていた。ついさっきまで元気だった君は手術台の上にいる。
真夜中の手術が始まった。外は真っ暗で風がとても強かった。何もかもが悪夢だった。涙ばかり溢れてきた。君と出会い24年。いろいろな思い出が頭をよぎった。君がいない人生など想像したことがなかった。君が遠くに行きかけている。恐ろしくて震えた。
悪夢のような夜があけて手術が終わった。あまりにも変わり果てた姿の君を観てまた泣けてきた。でも泣いてばかりいられない。救命の措置は成功した。この一週間が山場だと医師から告げられた。足元から血の気が引けた。しかし,この一週間を乗り切れば君は僕たちの近くにいることが出来る。君の生命力に賭けるしかなかった。
その時間はものすごく長かった。君が倒れて三日目。この闇の波間に溺れそうになってしまった。僕は全く眠ることができなかった。気が狂いそうになっていた。死にたいと真剣に考えていた。ある方にすがるような思いを伝えてみた。すぐに返事がかえってきた。ありがたい温かいお言葉をいただいた。そのお言葉を信じることにした。
その翌々日に君は少し意識が戻った。僕の呼びかけに自由が効く左手で握り返してくれた。看護師さんがたくさんいたけど僕は声をあげて泣いてしまった。
そして君は一週間を乗り切った。まだ予断は許さないけど,君は僕らの近くにいる。君はまだ病気と闘っている最中だけど,必ず克服して,また一緒に暮らせる日がくると信じている。もとの体には戻らないかもしれない。時間もかかるかもしれない。でも僕と子供達は,君が愛しているこの城下町で待っている。