3回
2023/02 訪問
川越極上天上中華・餞(はなむけ)。
休日の川越、メインの通りは昼に近づくにつれて人が湧いてくるかのようなごちゃまぜ具合。
自前の着物に草履、人ごみを縫いながらさっさと歩く。
店の前に到着したのは予約の20分くらい前、ちょっと早いかと近所の着物屋を覗いてお古であるけど房もきれいなままの若草色の帯締めを買った。
そろそろかと、入店して待つ。
窓の下には行列、人波。
LINEに連絡が入り、客人がそろそろ到着するかという頃に高畠の嘉があるかを確かめてそれで乾杯することにした。
そうだ、今日は「乾杯」が、必要だ。
客人到着、3名で乾杯をした。
そしてテーブルに本日の食材がお目見え、飴色つやつやの北京ダック。皆で撮影会開始(笑)一気に場が和んだ。
先ずは蕗の薹の肉まん。ふわふわのひと口を含めばほんのり春の苦みと香り。
そして籠に入った前菜色々。大人数で丸テーブルでいただくような料理がこのひと籠にきゅっと詰まっている。
おつまみとして最高、辛口のスパークリングにぴったりだ。
ズワイガニ入りの蒸し物、とろとろ具合は極上のポタージュスープのようで。
そして客人のひとりの大好物、北京ダック。
この日は4本!!前回「おかわりしたいくらい」と互いに言い合った逸品。しなやかな皮目にとろっと包まれる皮目の旨い事。
鱶鰭の旨煮は気仙沼産。
濃い鱶鰭があたかも白木耳のようにたっぷり。旨味いっぱいのソースにご飯を入れてはぐるぐるリゾットにして残さずいただく幸せ。
客人とは仙台で4年過ごしたことがある。
私が運転手、客人は遊び疲れて眠っていることが多かった、そんな話を客人のもう一人にしながら宴は朗らかに進んだ。
メインのお肉は何と2種。
一品目は赤城牛と野菜のロースト。お肉は程よく柔らかく、ピリ辛のコクのあるソース、野菜とのバランスも秀逸。
二品目は東坡肉(トンポーロウ)。透明な、何てきれいな脂身。とろっとろのお肉、これ、たっぷり葱と蒸しパンにはさんで食べてみたい。
最期にデザート、小さな3品は苺の乗ったクリーミーなパンナコッタ・スパイシーなアクセントのチョコレートマカロン・下にお芋と豆を敷いたアイスクリーム。
想い出話の味わいと混じった児玉の料理、忘れられない味となった。
予約時にお伝えしたリクエストをきちんと聞いてくださったメニュー構成に感謝。
客人の一人の卒業祝いを特別なデザートプレートにしてもらったのは昨年の今頃かと目の前の二人と話した。
二人は間もなく結婚する。
「これからもよろしくお願いします」
きちんと伝わったかは分からないのだけれど、これから時間をかけてゆっくり馴染んでいけたらいい。
未だ20代半ばの爽やかな二人に安心したと共に
店を出て一人で歩く道すがら、何とも言えない寂しさとも嬉しさとも言えない想いがじわっと込み上げて来た。
携帯に繋いだイヤホンから、客人の一人の、
「娘」と過ごした幼少期の当時聴いていた音楽が流れてきたせいで気持ちのじわっと感はさらに強まった。
一杯どこかで、飲んで帰ろうか。
2023/03/02 更新
2022/03 訪問
喧騒を見下ろす、川越極上天上中華
大切な人とのイベントやお祝い事に使えるような場所として
界隈でこちら以上のところは私は果たして思いつかない。
それ程の意外さと、嬉しい感動と、発見の連続だった。
思えば「シノワ」という名称がふさわしく感じる中華料理は幾つかいただいたように思う。
六本木の「孫」
銀座の「GINZA芳園」、「楼蘭」
リニューアルする以前、所属団体の新年会はオークラの「桃花林」
赤羽の「Nomka」
松戸時代からの「私厨房 勇」(厳密にいえばここは「私厨房」か)
「シノワ」という仏語を店名に冠することの意味は、ワインやシャンパンに合わせるのが良いという解釈で過去の思い出の店を回想してみた。
紹興酒はワイングラスで頂くような店ばかりだったという事がわかる。
連休中日の川越。
歩道はまるで昭和の原宿のように人が溢れている。
店はその観光の真ん中という立地にあるにもかかわらず、奥まった細い階段を上って店にたどり着いたとたんに別世界。
成る程、ホールの男性は金色の葡萄のバッジをつけている。
しかしこの日は娘の卒業+就職祝い、その後の予定も控えていたので料理に集中することに決めていた。
華のあるノンアルコールのカクテルをお願いしてスタート。
事前にネット予約で細かなリクエストを聞いてくれていたのでお任せした。
先ずは前菜の数々。
一口サイズの冷菜が8種類も。
そのどれもがきちんと味わいを主張して、それでも行き過ぎない存在感、つまり、過度な塩気が無くとも旨味を湛えている。
楽しい、これは楽しいぞ。
スープは滋味たっぷりの燕の巣。
北京ダックは二人で唸りながらいただいた・・・食感と味わいのバランスは、じゅるっとぱりっとした絶品。
「これ、無限に行ける!」と感じるほどその①(その②がある)。
エビチリはオマール海老で。身のふくよかさはオマールならでは。甘辛のチリソース、かなり強めの辛さなのにすっと後味は爽やかに抜けていく。
中国風の可愛らしい器の中央に、気仙沼の鱶鰭姿煮。
傍らに添えられたのは小さな器につやつやぴかぴかのご飯!!
とろとろの鱶鰭をナイフで切りつつ、目一杯!!
ソースはかなり濃厚なのにどうした事かちっとも食べ飽きない、飽きる気がしない。
これを残らず、ご飯にかけていただく、二人して悶絶。「これ、無限に行ける!」と感じるほどその②に認定。
肉料理メインは赤城牛のヒレステーキ。
胡椒を効かせた見た目を裏切る、何て優しい柔らかさ。パプリカのソースとの相性も良い。
付け合わせというか、十分すぎる存在感の椎茸は川越産。弾力も風味も最高の椎茸を麻婆仕立てにした味わいは流石。
〆は黄韮の小さな塩ラーメンを。
食後の鉄観音茶をいただきつつ、デザートを待つ。
事前に祝いの席だという事を伝えてあったため、娘のお皿をお祝い仕様にデコレーションしてくれてあった・・・更に花火まで。この演出には感動。味にも感動。
行列を成す階下の観光地の喧騒を見下ろす余裕の中、感動の余韻を遊ばせつつお開きに。
これだけの内容がこのお値段でいただけるというのはもはや「川越の奇跡」。
Wakiya出身というシェフの経歴もさることながら、川越にここがある事がもはや奇跡である。
はじめは「またいつか来たいよね~」だった二人の感想が、鱶鰭あたりから「ここ、絶対また来よう!!」になっていた(笑)
サービスの距離感も質も素晴らしく、晴れの日にふさわしい思い出となった。
お店の心尽くしに、心から感謝。
次の予約は、いつにしようかなあ♫
2022/03/23 更新
川越の至宝、蓮歩。
今回は、およばれ。
先ずはグラスの白ワインで乾杯、こちらは山形産ワインが豊富。
スタートは雲丹の冷製ジュレ仕立て。
涼やかな似た目に爽やかな旨味のジュレ仕立て。ひと掬いの雲丹の美味しいこと。
そしてお馴染み、前菜の小皿9種。相も変わらずな華やかさ。
今回のお初は海月の頭のかりかりとした爽やかな辛子和え、鶏レバー。
次は、玉蜀黍の焼売。蒸したてのごろっと大きなの。
箸でぷつっと割ると浦島太郎が玉手箱を開いた後のように湯気がゆらっと立つ。
玉蜀黍の甘味の軽やかなアクセントにじゅるっとした粗びき肉のとろとろが堪らない。
旬の鮎が唐揚げ仕立てで目の前に。
からりとした歯触り、旨味、上品な苦みを辛口のワインで流す大人の贅沢。
今シーズン静岡の寿司屋で四万十の「もろこ」を味わってひと月、成長した鮎の良い所を川越でいただくという、食いしん坊の醍醐味。
メインはロブスターと鶏手羽先の唐辛子炒め。
ころっとした赤い唐辛子ごろごろの炒め、以前銀座でいただいたよねと懐かしい記憶。これを、この赤いのを口に含んではいけないことは良く知っている。
2杯目のワインはグレリパのナイアガラ。味わいの濃さに微発砲の爽やかさが織りなす絶妙なバランス。
ウーロン茶でほっとしたら
デザート三種。
紫陽花を模した青紫色のゼリーの下はブルーベリーのババロア。
スパイシーなチョコレートマカロン。
果肉たっぷりのマンゴープリンでご馳走さま。
仕事、プライベート、生きていると訪れる様々な節目が、このところいっぺんにごろごろと舞い込み
決して細くはない身一つ、もしかしたらあっぷあっぷしていたのかもしれない。
ぽちんとひとり、何とか立っていられるのは
美味しいものをおいしいと心から感じられる健やかな心身あってこそ。
感謝を込めて、ご馳走さま。
そろそろ私の人生も、後半戦かなあ。