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外観
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外観
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店内
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店内
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焼餃子
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京島2丁目の街並み
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京島2丁目の街並み
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京島2丁目の街並み
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京島2丁目の街並み
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京島2丁目の街並み
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京島2丁目の街並み
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墨田区京島2丁目。東京都都市整備局が平成20年に公表した、地震に関する地域危険度測定調査の建物倒壊危険度・都内ランキング1位、未だ貧しかった昭和の原風景が残る街並み。3月11日に発生した東北地方太平沖地震以来、関東地方でも余震が続くなか、この街の変化を確かるため、わたしは度々訪れる。先日はたまたま通りがかった、四つ目通りに面するトタン張りの商店に目が釘付けに。明らかに大きく右に傾いている。かろうじて地面にへばりつくように立っているものの、隣に駐車している乗用車に近く被害が及びそうだ。目にするところは勿論、目に見えないところでも確実にこの界隈を余震が蝕み続けている。
4月のある晴れた土曜日。京島2丁目のなかでも、特に朽廃が著しい陋巷(ろうこう)を彷徨い歩いていく。錆ついたトタン張りの陋屋が立ち並ぶ通りには、かつて賑わいをみせた商店群の痕跡を辿ることができる。東武亀戸線の亀第二号踏切道のその先には現在建設中、世界一の高さを誇る自立式電波塔、東京スカイツリー。そして陋屋の隙間から見えるのは、摩天楼のごとくそびえ立つ高層マンション、イーストコア曳舟。同じ京島の地にありながら、現実と理想との大きな落差を目の当たりにする瞬間。
そんなひっそりと支えあう京島の地にありながら、いまもしぶとく営み続ける一軒の妖しい店。初めて遭遇した時の衝撃は、脳裏に鮮明に焼き付いている。屋号は不明ながらも、餃子と描かれた赤提灯。窓ガラスには、焼餃子2人前400円の手書きの紙札。餃子を供する店というのは判断できるが、中を覗くと雑然とした店内。水色のカウンターはあるものの、私物も散らばり、中で食事が可能とも思えない。テイクアウト専用なのだろうか。時間は現在16時を少し回ったところ、一旦店を後にする。
手元の時計が17時を指した頃合いをはかって、再びこの地に舞い戻ると、店頭の赤提灯が灯る瞬間に出くわした。源氏ボタルのようにぼんやりと光を放つ。いや、この地はまるで平家の落人が細々と暮らす集落。むしろ平家ボタルと形容するべきか。すると婦人用自転車にて乗り付けた50歳近くの男性が、店内に入っていった。しばらく様子を窺っていると、数分後白いビニール袋を下げて店を離れていく。近所では、よく知られた餃子店なのではないかと直感がはたらく。
意を決してサッシの引き戸を開けると、店内すぐ左手の厨房に齢80を超えていそうなおかみがひとり。「いらっしゃいませ」と声がかかる。深く皴が刻まれた細い目元に、漫才師・内海桂子のような声音。「餃子をひとつお願いします」と注文すると、「生にしますか、焼きにしますか」と尋ねられた。「焼きでお願いします。こちらの店での食事は可能ですか?」と問い返すと、「持ち帰りだけなんですよ」とそっけない。仕方なくカウンター席に腰掛けつつ、焼き上がりを待つことに。おかみさんは、右手の冷蔵庫から、餃子の皮とすでに仕込まれた餡を取り出す。注文を受けてから、皮を包んでいくようだ。
「今日11時頃あった余震はすごかったですよね」、と話を振ってみると、「今日のは余震じゃない。茨城が震源地だからね」との応え。「本当にここ最近は地震ばかりだよね。このままだと日本列島ぼっかれちゃう」と、東北地方の方言なのかは知らないが、ぼっかれるという言葉を繰り返した。
しばらく地震の話題で空気が和んできたところで、「こちらのお店はどのぐらい営業しているんですか」と尋ねてみる。するともう40年はこの地で営業しているとのこと、ずっと焼餃子一本槍でのご商売。「餃子は好き?」と聞かれて頷くと、「わたしゃあ、焼餃子が大好きでね。ビールと餃子があれば、あとは何もいらない。毎晩のように餃子を食べてるね」と、遠くを見つめるように、細い目をさらに細めた。
その後もとりとめもない会話が続き、明日からは江東区の区議会選挙の応援で店を閉めるとのこと。いとこの娘が区議会議員に立候補するらしく、炊き出しを手伝うようだ。「江東区はどんどん発展していてすごい街だね」と独り言。「墨田区だって、スカイツリーが出来てきて発展してるじゃないですか」とフォローをすると、「ぜ~んぜん駄目、こっちは関係ない」、「こんなところに留まっていても、ビルもおったたない」とやや自嘲気味に語る。そうはいっても、おかみさん自身、この場所に愛着があるのではないのか。そうでなければ、40年以上も同じ場所に住んではいないだろう。不器用な京島人ならではの照れ隠し。
ちょうど私の頼んでいた餃子が焼き上がったようだ。透明のプラスチックパックに包まれた焼餃子をみて、思わず「美味しそうですね~!」と感嘆の声を上げると、「美味しそうではなく、美味しいの!」とたしなめる。「今日はいい色に焼けた」とつぶやく表情に、おかみさんの自信と拘りをのぞかせた。400円のお代を払い、店を後に。自宅までの道のりももどかしく、自転車のペダルを漕ぐ力も強さを増してくる。
4月に入り、少し気温も上がってきたせいか、自宅に着いてもプラスチックのパックは、まだほんのり温かくて一安心。醤油もなにもつけずにまずはひとくち、きちんと下味もついていて、なかなかの味わい。これなら醤油だれをつけなくても全然大丈夫だ。ひとくちふたくちと噛みしめるたびに、おかみさんと過ごした先ほどの情景が目に浮かぶようだった。