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昼の点数:4.2
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¥1,000~¥1,999 / 1人
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料理・味 4.3
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|サービス 4.2
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|雰囲気 4.2
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|CP 4.1
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|酒・ドリンク -
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[ 料理・味4.3
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| サービス4.2
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| 雰囲気4.2
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| CP4.1
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| 酒・ドリンク- ]
神岡にしか咲かない花
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外観
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蒸し寿司(蓋有り)
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蒸し寿司(蓋無し)
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店内
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2018/07/29 更新
何も無い場所だけれど ここにしか咲かない花がある 心にくくりつけた荷物を 静かに降ろせる場所(コブクロ『ここにしか咲かない花』)
この日訪れたのは、飛騨市神岡町。岐阜県の北東端に位置し、山岳に囲まれた河岸段丘の市街地にある。その神岡町は鉱山と共に発展してきた町といわれる。明治7年、三井組(現在の三井金属鉱業)が近代的な鉱山経営を始めたころから、めざましい発展を遂げ、華やかな昭和の時代ががつくられたとのこと。鉱山業が斜陽化した今でも往時の面影を微かに留めている。
平成14年にノーベル物理学賞を受賞した、小柴昌俊教授が自ら設計を指導・監督した観測装置カミオカンデは、この旧神岡鉱山内に設置されたことに由来する。
昭和初期には、鉱山町としての賑わいからか遊郭もつくられ、昭和40年代の鉱山最盛期には百人近い芸妓もいたという。かつての料亭・旧深山亭は、今では飛騨市の管理下に置かれて、地元観光ガイドのお勧めスポットに選ばれているようだ。
かつての遊郭跡を散策することに加えて、この日の旅の目的はもうひとつあった。それが地元の郷土料理と言われる蒸し寿司。せいろで蒸し上げた熱々のお寿司ということで、どんな味なのか想像もつかない。
事前情報によれば、山間部に位置するこの場所では、真冬は交通網が遮断することで鮮魚は入らず、試行錯誤の結果生み出された知恵の産物とのこと。店屋物として、基本は寒い時期に食すことが多いようだが、年間を通して提供される唯一の店も確認済み。色街の名残が垣間見える、船津地区に佇むお目当ての店へと向かう道中、次第に高まる胸の鼓動。
辿り着いたその店先は、暖簾も掲げておらず、人のいる気配もない。この日訪れたのは土曜日。観光サイトには、定休日は水曜日が休みと書かれてあったが、臨時休業なのだろうか。もしかして、引き戸を開けてみようと試みるも鍵が掛かったまま。仕方なく街歩きを再開し、昼食にありつける店探し。
元々昼間営業の飲食店が少ない神岡町。これはと言った店も見つからず、後ろ髪を引かれる思いで当初訪問予定だったお目当ての店、花の家に電話をしてみた。
発信音を6コールほど鳴らしただろうか。すると屋号を告げる30代らしき女性の声。本日は休業日なのか尋ねると、実は予約制のため、予約が入らない限り店を開けないという。そんな情報は、ネットサイトをいくつかチェックしたものの、どこにも記載が無かった。
無理を承知で、「近くにいるので今から食事はできませんか?」恐る恐る聞いてみると、「料理の準備があるので20分ほどお待ちいただくことになりますけど」、電話越しでも恐縮する様子がうかがえる。
多少の待ち時間はまったく問題ないことを伝えて、喜び勇んで店へと逆戻り。すると店先には暖簾が掛かり、玄関奥には仄かに明かりも灯っていた。
引き戸を開けると、待ち構えていたのは先ほどの電話の声の主だろうか。見た目30代後半らしきおかみさん。靴を脱いで奥の個室に案内される。2階もあるようだが、食事を提供する場所は全て畳敷きの、手入れの行き届いた個室。地元の会合等で重宝されているのだろうか。
お茶とおしぼりを用意してくれたおかみさん、「基本お出しできるのは蒸し寿司の定食(1400円)になりますけど」
もちろん異論はなく、座り慣れない座敷に足を崩して、暫し光がうっすらと差し込む庭をぼんやり眺めていると、大おかみらしき女性が、お盆に乗せたせいろと惣菜が盛られた小皿を運んできた。
この重厚なせいろの器は飛騨春慶塗りのようで、蓋を開けるともうもうと湯気が立ち込める。菱形に象られた玉子焼きが目にも鮮やかな蒸し寿司。でんぶ、レンコン、細かく刻んだ油揚げ、干ししいたけと一緒に蒸し上げた熱々の酢飯。ほどよい酸味で、一般的な炊き込みご飯と比べても味わいはさっぱりとしている。
肉や魚を使わずとも、海から遠く離れていても、この地ならではのお寿司をいただけたことに感嘆せずにはいられない。ここにしか咲かない花ここでしか出せない味だった。