今池界隈で平日21時30分から入店可能な店という条件でネット検索したところ、こちらがヒットしてきた。
食べログの評価そのものはあまり信用しないが、フォロワー各位のレビューを中心に拝読。
賛否両論といってもいい内容が、逆に興味をそそった。
予約の電話を入れたのは二日前。
平日とはいえ、予約希望日は金曜。
満席御礼と返されることも覚悟しつつ、スマホのダイヤルボタンを押す。
深夜25時まで営業ということはネット情報で把握していた。
時刻は11時20分。
さすがにまだ早いかと思ったが、案の定、つながらない。
また後でかけ直そうと通話終了ボタンを押す。
すると、間髪を入れず見慣れない携帯番号から着信があった。
出てみると、
「よし都です。お電話いただきましたよね」
年配と思しき女性の声だった。
「予約を入れたいのですが、大丈夫ですか」
「大丈夫ですよ」
戸外から電話しているらしく、声の背後から環境音が聞こえる。
「11日の21時半から二人なんですが」
「ちょっと待ってください」
予約帳でも開いているのか、ゴソゴソと音がして。
いわゆる、ちょっとお待ちください程度ではない時間が経過する。
「11日の21時半からですね。その時間だったら、はなれじゃなくても空くと思います」
「ん? ああ、はなれがあるんですか」
「はい。でも、その時間だったらよし都の方で大丈夫だと思います」
「じゃあ、11日の21時半に二名でお願いします」
「はい。お名前、お願いします」
「○○です」
「○○様ですね。ご連絡先は、この番号でいいですか」
着信番号が表示されているようだが、念のために告げておく。
「******です」
「そうだね。はい、わかりました」
当日、栄での仕事を終えると21時過ぎ。
地下に下り、東山線で池下へ移動。
ネット情報では"徒歩3分"となっていたが、(さすがに3分は無理じゃないか)などと思いつつ歩いていると店の前に到着。
時刻は21時27分。
禁煙になっているようで、店の前では二人の男性が煙草を吸いながら話しをしている。
感染予防対策のためか、入口は開放されている。
男性の脇を抜け、暖簾をくぐって店内へ。
調理場の一番手前に立っていた女性調理師がこちらに気づいて視線を向ける。
「○○です」
あっというように目を見開いた女性調理師は、左手、つまりは店の奥に向かって
「○○様がいらっしゃいました」
と声を張る。
すると、奥から女将と思しき年配の女性が
「あー、お電話お待ちしてたんですよ」
と言いながら近寄ってきた。
(電話? 何で電話?)
店に入ったところで立ち止まり、意味不明なことを言いながら歩いてくる相手を見る。
目の前で歩を止めた女将は、
「多分大丈夫だと思うけど、来る前にお電話してくださいねって言いましたよね」
(来る前に電話?)
何を言っているのかわけがわからず、こちらが黙っていると畳みかけるように
「こんな時間だから空くと思ったんですけど」
つまりは予約席が確保できていないということらしい。
「聞いていない」
一言だけ言って踵を返す。
ちょうど待ち合わせ相手も到着したようで、店の前に立っている。
そのまま出ようとすると、
「大丈夫ですか」
といいながら女将がついてくる。
大丈夫ですかとはどういう意味だ?
大丈夫であるわけがない。
仕事関係の待ち合わせ相手とは、年末ということでなかなか都合が合わないところ、お互いに調整に調整を重ねて時間を確保することとなり、この日の21時30分からなら…ということになった。
「ふざけた店だ」
振り向かず、背中越しに言葉を投げかける。
他の客には関係ないことなので、ボリュームは落とし、背後にだけ聞こえるように。
自分勝手なことをつらつらと口にしながらついてきていた女将の言葉が一瞬停まる。
しかし、すぐに
「そんなことはないんです…」
と意味のない言葉を連ねる。
店を出たところで、待ち合わせ相手に
「行こう」
と一言だけ告げて錦通方面に歩きです。
背後で女将が何か言っているようだが、どうでもいい。
結局、謝罪の言葉もなかった。
他人様と比べて多いのか少ないのかわからないが、それでも少ないということはないと思う。
いや、飲食店への予約電話だ。
「もしかしたら空いていないかも知れませんから、ご来店前にお電話ください」
これを予約完了とは思わない。
そして、絶対にそんなことは言われていない。
今回は時間的制約もある上に、池下というあまり馴染みがない場所。
予約が確定できないのであれば利用しない。
ましてや、ちょっと興味をもった程度で、どうしても利用したい店でもない。
来店前に状況を確認している暇があったら、とっとと別の店に行く。
通常であれば、予約時間近くに最後の2席を埋める際、
「21時30分までのご利用となりますが、よろしいですか?」
と打診するものだし、実際、そう尋ねられることはままある。
そのため、予約時間に準備が整わず、「少々お待ちください」程度だったら、こちらも待つだけの理解はあるつもりだ。
腹立ち紛れに悪意をもって考えてみれば、予約を受けるだけ受けておいて、常連や上客がやってきたら席を提供する。
そこへのこのこと予約客が到着したら、「直前に電話で確認しろと言った」などと言ってもいない言葉を投げかけて追い返せばいい。
席が埋まらなければ、そのまま予約客を入れて満員御礼、めでたし、めでたしだ。
さすがにそんなことはないと思いたいが。
人間の記憶というのは確かに曖昧なものだ。
言った言わないという舞台に引きずり出されれば、口ごもる客も多いだろう。
しかし、絶対に聞いていないと確信をもって言える客もいるのだ。
「わからないので、来る前に空いているかどうか、電話で確認してください」などと言われたら、その場で、「ああ、じゃあ、結構です」と答えることが絶対的前提の客も。
そんな状況で予約が取れたなどと思わない。
個人的には、店側が常連や乗客を重視するのは当然だと思っている。
ネットの普及で一見客が横柄かつ無礼な振る舞いをする風潮も嘆かわしいと思うし、黙って帰って、ネットで書き立てるというのもいかがなものかと思っている。
しかし、それとこれとはまったく話しが違う。
公式サイトなどでは、店主と女将の接客が売りくらいのことが書かれているが、それすら薄ら寒い気分になる。
当たり前の予約管理ができないのであれば、予約など受けなければいい。
混雑が予想されるであろう金曜日であることも、遅い時間であることも、予め断って予約を入れているのだ。
もしかして本当に悪意の対応だったのか?
それならそれで感心しなくもない。
いずれにしても、二度と利用することはないが。
この話を友人限定のSNSなどで後悔したところ、「クオリティーの割りに値段ばかり高い…それも過ぎる程度に高い」、「あの味を最高というところが名古屋人の味覚」などとネガティブなコメントも多かった。
まあ、行かなくてよかったと思うことにしよう。