ガレリア・カウフホーフをのぞいてから、
僕はツァイルをフランクフルト動物園の方面へ歩いた。
平日ということもあってか、人通りが緩やかで僕はこの方がいいなと思ったものだ。
今まで雨が降っていたのに、
人々はそれさえも忘れたようにぽつぽつと午後の喧騒へと繰り出していく。
こんな日には少し雲が晴れたら抜群の夕焼けが見えるんじゃないか、って思う。
「地図には載っていない夕焼け」
名づければ名づけるほどチープになるけど、
そういうものほど美しいんじゃないかって思う。
要は忘れなければいいんだ。
この小さくて僕の心を震わせるような小宇宙の出来事を。
そのために僕は名前を付けていく。
僕の記憶の手帳に迷わず記していく。
僕による僕のための僕だけの淡い真実を、
僕だけにわかるように書き記していく行為はとてもじゃないけど子供じみて見える。
言い換えたり、引用をしたり、ロマンティシズムに浸ったり、
僕はもうどうにかなってしまいそうだ(笑)
僕は創造主ではないけれど、僕は僕の中に僕だけの世界を作ることができる。
それが若いころには絶対的なものだと信じてやまなかったし、
今もそんな幻想の中にいるんじゃないかと思う。
いっそ、どうにかなってしまえ。
世界よ。