『自転車に乗ったクラリモンド』コッキンポンコさんの日記

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コッキンポンコ (50代前半・男性・東京都) 認証済

日記詳細

自転車にのるクラリモンドよ
目をつぶれ
自転車にのるクラリモンドの
肩にのる白い記憶よ
目をつぶれ
クラリモンドの肩のうえの
記憶のなかのクラリモンドよ
目をつぶれ

 目をつぶれ
 シャワのような
 記憶のなかの
 赤とみどりの
 とんぼがえり
 顔には耳が
 手には指が
 町には記憶が
 ママレードには愛が
 
そうして目をつぶった
ものがたりがはじまった
 
 自転車にのるクラリモンドの
 自転車のうえのクラリモンド
 幸福なクラリモンドの
 幸福のなかのクラリモンド

そうして目をつぶった
ものがたりがはじまった
町には空が
空にはリボンが
リボンの下には
クラリモンドが


  ~石原吉郎「自転車に乗ったクラリモンド」

石原吉郎の詩である。
暗喩に満ち、暗い示唆に富んだ詩である。
あるレビュアー様の日記を読みながら、
ふと、言葉として口をついてでたのはこの詩編であった。

クラリモンドは・・・この世のものであってこの世のものではない、
作者の石原吉郎のなかで生き続ける分身のようなもの。
隠そうとする過去とにじみ出てくる真実の相克から変形し、
もはや人の形さえしていない。
もう、笑うことのできないほど醜く閉じられた目と口は、
開けば、ぽっかりと空いた空洞でしかない。
手から目が、顔から腕が突き出している。
彼女が、彼が、自転車に乗って滑稽な道化師のように背後からやってくる。
ふとした辻の曲がり角や物陰に潜んでいる。明確な目的をもって。

20代に読んでいた詩の一遍である。。

僕はひり付くようなざらざらとした世界で
追憶のような日暮れを待っていた。
日暮れを待ちながら、僕は雑踏にまぎれてクラリモンドの追跡をかわそうと
一人ざらざらと靴底にまとわりつくような砂利を蹴り上げて歩く。

虹の橋、涙の川、手ぐすねをひいて僕を待つ言葉に旋律を奏でるクラリモンド
さらに忘却の泥沼に血のような華を咲かせるクラリモンド
雨上がりの空の下を駆け抜けていく美しいクラリモンド、ド、
今、でこ、そ、怖、くはな、いぞ、とク、ク、ラリ、モンド
い、いつか、バッ、ティ、ングセンターで出会いが、しらに、
コイ、ンをい、れてバッ、ターボックスに立つクラリモンド、
オ、マエ、を愛、し、ながら、憎、んでしま、うオレゆるせ、
クラリモンドよ。


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