実家の犬が鬼籍になった。
イヌに使うべき言葉なのかわからない。
17歳と11か月というからほぼ18歳の雑種の雌犬は
8月11日の午前5時ごろ添い寝していた両親が
朝の支度にたったときに亡くなっていた。
もう最後の方は目も見えず後ろ足も立たずにいたようだ。
安楽死も考えたが、最後まで面倒を見るということに両親は決めた。
これまで田舎に帰って家を建てるという両親が
番犬がいるだろうともらってきたのがこの雑種の雌犬だった。
紙袋に入った小さい白い犬を覚えている。
犬なんて飼ったことがなかったから僕は新鮮だった。
親孝行を理由に犬と遊びに実家に帰ることも多くなった。
実家に帰ると散歩をすれば2時間コースだった。
リードをつけて実家の周りのあらゆるところを散歩した。
トラックが通るとビクビクするものの通り過ぎると忘れたかのように
ワンワンと吠え立てた(笑)
臆病者ほどよく吠えるとは言ったもので、
僕たち家族以外には絶対に懐かなかった。
宅急便や郵便が来るとガルルルガルルと威嚇するものだから
ポストを外に付けるようになった(笑)
盛りが付くと父か僕がイヌニーの相手をさせられた(笑)
右足に股間を擦りつけて腰を振り立てた(笑)
しっかりしがみつくものだから爪を立てられて痛くてたまらなかったな(笑)
父が定年前に単身赴任していたことがあって、
その時は母と犬と独り半で暮らしていたのだが、
たまに犬が吠え立てるときがあったらしい。
結果、なにもなかったのだが、もし何かあった時では遅い。
こういうときにも役にも立ってくれたな。
何はともあれ人間の年齢で90歳くらいだろうか。
ほぼ、人間のようにケンタッキーフライドチキンと車が大好きで
父と母が子どものように育てた雌犬。
彼女は旅立ってしまった。
僕はその眠っているような顔を見ながら
どうしようもない感情のなかにいる。
君の
そのスイートなスイートな寝顔を
僕は当たり前のように
忘れ続けるのだろうか?
まるで眠っているようなその死の状態を
僕は息を吐くように水を飲むように
忘れ続けるのだろうか?
君がいた夏
僕は君を君の笑顔をずっと
忘れ続けるのだろうか?
もしも
君と過ごした時間を
永遠に忘れ続けることができたら
これほど愉快なことはないだろう