コッキンポンコさんが投稿したリナシメント(東京/中目黒)の口コミ詳細

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長文レビューで嫌がらせ(爆)

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コッキンポンコ (50代前半・男性・東京都) 認証済

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リナシメント目黒、不動前/イタリアン、ステーキ

1

  • 夜の点数:4.0

      • 料理・味 4.2
      • |サービス 4.2
      • |雰囲気 4.2
      • |CP -
      • |酒・ドリンク 4.2
1回目

2017/10 訪問

  • 夜の点数:4.0

    • [ 料理・味4.2
    • | サービス4.2
    • | 雰囲気4.2
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク4.2

さよなら、北綾瀬はるか。

さよならはいつだって突然やってくる。
そして僕をかき乱したまま、放置する。
突然、僕の人生から消えてしまう人たちがいる。

それまでの交情だけが残り、それが心の中でふつふつと腐敗していく。
それをつぶさに確認する作業だけが僕に残される。
そのような凝ったような感情は村上春樹がその著書
『ノルウェイの森』でよく言い当てている部分がある。

「北綾瀬はるか」から連絡があったのは10月の暖かな午後だった。

「会社をやめることにしたんです。近々に会えませんか?」
「一体どうしたの?」
「お別れを言いたかったんです、ポンコさんにはお世話になったので」
「・・・」

それで指定された目黒のイタリアンに来てみる。
目黒の駅で待ち合わせしてお店に向かう。

「桜きれいなんでしょうね」
「ん?桜?」
「…」

久しぶりに会った彼女はすっかり痩せてしまっていて、
荒れたその唇をリップクリームで重ね盛り上げていた。

初めて会った時に、確かに綾瀬はるかに似ているのでそう名付けた。
彼女自身は「北綾瀬はるか」というバッタものみたいな名前を嫌がっていたが、
綾瀬はるかに似ているというのはあの「健康的な」笑顔があったからこそのものだ。
今の彼女には笑うと何かがその笑顔を邪魔しているような妙な違和感があった。
とってつけたような…というか、仮面のような…というか、裏腹…というか。

「ずいぶん痩せたね。コートに着られているよ」
「突然、食べられなくなったんです。でも、もうだいじょうぶ(笑)」
「そんなこと言いながら、実は下半身がムキムキだったりね(笑)」
「ひどーい、っていうかお尻みてるぅ(笑)」

彼女は乾いた声で笑った。痛々しい声だった。

彼女に会ったのは3年前だった。営業でやってきたとある会社の営業部員だった。
誰の目をも惹きつける背の高い綺麗な女の子だった。
その時はまだ30手前で、彼氏と同棲中で、
結婚の心構えとか僕が結婚を決めた時の心境とかを色々訊きたがったので
ご飯に連れて行った先で色々と指南した(笑)

そんな感じだったが1年ほど前に音信不通になりその半年後にその上司が挨拶に来て、
どうやら体調を崩しているという話を訊いた。
携帯メールを知っていたが、これは下手に関わらない方がいいと判断したので
そのままにしていた。僕にはこういう冷酷なところがある(笑)

彼女の噂は色々な尾ひれがついて僕の耳に入った。
彼氏と別れて滅入ってしまったとか、お客からセクハラを受けて出社恐怖になっているとか。
僕にはどれも彼女のイメージからいって違うだろうと思った。
僕は勝手に彼女は強い人間だと思っていた。

佐賀女の真骨頂を営業で見せちゃるけん!

でも、僕のメガネはくもりがちだ(笑)
彼女が痩せてから初めて受けた感じだが、「神経の細さ」が彼女の立ち振る舞いから匂い立っていた。
僕は彼女がこれまでの営業活動において蓄積された疲労を思った。それが彼女の体を蝕んでいったのだろうか。
顎にポツッとニキビが出来ている。彼女の痩せた指がワインリストを上下する。

「赤にします」「それじゃあ僕も」
「前菜をお持ちします」
「ここの前菜は凄いんですよ! すごい種類なんです!」
「ええっ! そうなんだ!」

しばらくすると大きいプレートに何十種類もの前菜が盛られている。
正月のおせち料理がこんな感じだったらいいのにと思ったことは覚えている。
生ハムやサラミやドライフルーツ、色々なものを食べている間も
静けさが冷気のように僕の足元から身体を蝕んでくるような気配があった。
外面的には、にこやかに会話を交わしていてもそこには何も交情がない冷たい会話だった。

「ちょっと失礼します」

北綾瀬はるかは微笑んで席を外す。
彼女がナプキンを椅子に置く衣擦れの音を僕は忘れることはないだろう。
何の感情もない。乾いた無機的な行為の音。話すごとに凍り付いてしまう吐息のような言葉たち。
僕は憎悪とは種類の違う相対的な圧力を感じた。
何かに対しての恐ろしいまでの覚悟のような圧力。

会社を辞める。

彼女の行為の重厚な意味を僕は感じていた。
何かに対して下した決断としてはとても大きいストレスのかかる決断だと思った。
おそらくそうする、あるいはしなければならぬほどのきっかけがあったのだ。

僕のトっ散らかった言動に対処する北綾瀬はるか。
バレンタインデーに義理チョコを欠かさなかった北綾瀬はるか。
ワインリストをもらえないか?と店員に英語で言う、北綾瀬はるか。

僕が知っている彼女の一部分を色々とあげつらってみるが、これまで
目に見えた異変などなかったような気がする。やはり僕の眼は曇っているのだろう(笑)
彼女は人格をひとり創り出したうえで僕に対処していたのかもしれない。

メインの仔牛のグリルがやってくる。
血の通った肉料理。僕はホッとする。
僕は大きくカットした肉を頬張り、咀嚼する。
彼女はペースを変えずにもぐもぐと食べている。

食べ終わると僕はエスプレッソ、彼女はアイスティーを注文した。


「さよなら」と彼女は言った。
「さよなら」と僕も言った。

なんだかホッとしたような表情をしていた。
もう会うことはないだろう。。。ね。。。

帰りの山手線の中で、
どうしようもないくらいに
彼女のホッとしたような表情の意味を考えていた。

ポンコ。

2017/11/13 更新

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