以前に天然真鯛が常に美味いとも限らないと書いた事があるが、そういう場合は
得てして養殖逃亡者だったり、浅場に居着きの釣り餌おこぼれ主食の魚である。
アコウ(キジハタ)は食味の良い魚だが、例え24cm程度の個体でも酒蒸し風に
調理すれば上品で芳醇な旨味の料理になる。
30cmクラス以上だったら迷わず刺身にする。アラも上品な吸い物に使える。
二か月ほど前に篠島沖で釣った小型の真鯛二匹(25cmと28cm)が冷凍庫に
残っていた。そろそろ食ってしまわないと思い、さてどうしたものかと少し
逡巡。
塩焼きでもいいのだが、流石に二か月冷凍庫に入れてあるので解凍すれば身も
些かパサつくだろう、と酒蒸し風に食すことに決めた。
自分が酒蒸し風にする場合、水6:酒4くらいの割合で魚がひたひたになる程度
の量に昆布を少し、塩を少し加える。
解凍した上記の真鯛をサッと洗い、塩をまぶして少し置く。その後軽く拭き取り
蒸し煮にしていく。
タレはセロリ微塵少々、生姜おろし、魚醤、酢、砂糖、醤油、ごま油少々で
エスニック風に仕上げる。
果たして蒸し煮された真鯛を、まずそのままに口にしてみた。
・・・いやいや、まだ美味いわ。正直上記のタレ無しでもいける位だった。
海温が高いせいか、昨年の真鯛は11月でも脂が殆ど乗っていなかったのだが、
逆にそれも良かったのかも知れない。上品な旨味を堪能できた。
釣った後の処理や調理に若干気を配りさえすれば、天然釣り魚(勿論場所と
魚種にもよるが)はやはり美味い。
ある程度冷凍庫に放置しておいたものですら。
*但し、ブリ等の青物系は、冷凍して一定期間保存しておくと途端に食味が
落ちる。
少し前に養殖物の真鯛をもらう事になってしまった時があったのだが、
捌いている時の匂いと内臓、身質、不自然な大量の脂でイヤになってしまい
「申し訳ない」と魚に謝りつつ結局捨ててしまった事がある。
長年釣りをしてその魚を喰らい、魚の善し悪しだけは判るようになった。が、
それもまた善し悪し。
以前も何度か書いていたが、ちゃんとした物、余計な出来合い調味料を使用
せずに料理したものを口にし続けた結果、主に残ったのは「日常の生き難さ」
(苦笑)。
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