『ご報告までに。』ガスコーニュ青年隊さんの日記

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ガスコーニュ青年隊 (東京都) 認証済

日記詳細

最近のレビューにて長々と書いていました、療養中の私の友人に関して、
温かいコメントやメッセを下さった方々がおられましたので、
その後の状況についてのご報告までに、この日記をUPします。

先日の夕刻、
彼の嫁様から、彼が危篤状態になったとのメール。

思っていたより早すぎると思いながらも、
直ぐにかけつけたかったんですが、どうしても外せない用事を特急で済ませ、
間に合ってくれよと思いながら病院にかけつけると、
意識は無いものの、まだやつの心臓は頑張って動いていました。

すでに来ていた他の親友2名にも、
お前が来るまでは頑張るつもりだったんだろうと言われましたが、
それは違う、
残していく娘や嫁に、
最期の頑張りを見せているんだろうと思いました。

まだ中学生の娘ちゃんは泣きだしそうにも見えましたが、
しかしやけに落ち着いていて、
我々や母親に泣き顔を見せないように努力している様に見えました。

この父親にしてこの娘ありです。
どこまでも気を遣い、どこまでも負けず嫌いで、どこまでも意地っぱりです。

「こいつ、医者も驚くほど何時間も頑張って・・・さてはここから復活するつもりやな?」と言うと、
娘ちゃんも嫁さんも笑ってくれたので、
少し心が軽くなりました。

そのまま更に数時間、
止まりかけてはまた動く心臓を、
見ているこちらの方が痛々しくて仕方がなくなってきた時、
嫁様が彼の耳元に向かって、
「もう頑張らんでええよ。ゆっくりしてええんよ。」と言った直後に、
ヤツは涙を3筋ほど流して、そのまま静かに息を引き取りました。

こちらの声や会話は、
危篤状態でもしっかり聞こえているものだということは、
これまでこうして誰かの最期に立ち会った経験から知ってはいたんですが、
この悲しみには慣れる事が出来ませんね。

聞けば、彼は入院中、最後の最後まで、
嫁様にすら一切弱音を吐かなかったそうで、
そんなヤツですから、
当然ながら我々親友に対してもいつもと変らぬ態度でしたので、
悲しくはあっても、
もっと何かしてやれなかったのか?という後悔はありませんでした。

それを見越しての、あの態度だったのでしょう。
まったく、気を遣い過ぎというか“カッコつけ”にもほどがあるんですが、
しかし見上げた男ですよ。
もし私が彼の立場だったならワガママを言いまくったりしたかもしれません。

私が最後に見舞いに行った時、
その時横に居た娘ちゃんに向かって、ヤツはこんな事を言いました。
「今はごっつ悲しいやろうけどな、この先の人生で、頭がおかしなるくらい嬉しい事が絶対あるから、それを楽しみにしときや!」と。

私は彼が息を引き取った時ですら涙は流しませんでしたが、
この言葉を聴いた瞬間は発作的に涙が溢れてしまい、
すぐにトイレに逃げました。

そして何事も無かったように病室に戻ると、
ヤツは達観した表情で私を見ながら、
『こいつの事、頼むわな。』と、目で語りかけてきました。

『わかった。』と目で返事すると、ヤツは満足そうに小さくうなずきました。
娘ちゃんは、その時窓の外を眺めていましたが、
その肩は震えて見えました。

「ほな、帰るわな。」「おう。」と、
娘ちゃんが振り向いて私に挨拶しないですむ様に、
小声でそそくさと交わしたこのやりとりが、
まだ意識のある親友と交わした最後の会話でした。

思えばヤツと私は、
育った境遇が似ているせいか、昔から性格や性質に似た所が多くて、
お互い写真に撮られるのが大嫌いだったり、
バイクが好きだったり、
口の上手い奴が大嫌いだったり、
卑怯者は必要以上に攻撃して後でちょっとだけ後悔したり、
ガンコに見えて実は流されやすかったり、
掃除が好きだったり、
好きな絵や景色は何時間でも眺めていたりする所などなどなど、、、

全然違う所は猫が好きか嫌いかという事ぐらいですね。
どうしてやヤツは猫が苦手だったのか・・・あんなに可愛い生き物なのに・・・
でもまぁ娘ちゃんは猫が大好きな子だから許してやるか。

レビューにも少し書いたんですが、
彼もこうして私が書く事は、何か記録してもらってるみたいで嬉しいと言っていたので、
じゃあ顔写真も載せるか?と聞けば、
それは恥ずかしいから絶対イヤだと言っていたんですが、
この日記ではUPしてしまいました(笑)

といっても、やつは人並み外れた照れ屋さんなので、
はっきりとは分からない加工はしておきます。
(でもおばちゃんパーマにしてやった!爆)

こんなに加工しても、ハンサムなのが分かるでしょ?
まぁ入院してからは痩せてしまって、
それが気に食わないから写真は載せるなとも言っていたので、
じゃあ若い頃の写真ならOKって事ですもんね♪

でもやつの事だから、
「俺を載せるならお前も載せろや!」と、
今も背後から叫んでる気がしますので、私のもUPしておきます。

前述しました通り、
我々は写真に撮られるのが大嫌いなので、
その昔、みんなで遊びに行ったりツーリングに行ったりした時も、
我々2人だけは絶対に写真を撮らせなかったんです。
なので、昔の写真は今回UPした写真のみしかありません。

ではなぜ、この写真に限って撮らせたのか?

追憶がてらに書きますと、
この写真を撮った時の状況というのは、
いつもの様に悪友3人で滋賀の琵琶湖にあるセコイヤ並木までツーリングに行き、
3人のうち1人はバイトがあるので途中で帰ったんですが、
ヒマだった彼と私は琵琶湖沿いの道をビューンと流して遊んでいました。

季節は夏でして、
琵琶湖のほとりでは多くの人達がバーベキューなどの行楽にいそしんでいました。

やがて我々は、ちょっと休憩するためにバイクを降り、
琵琶湖の波打ち際などをぶらぶら散策していたんですが、
そこここから美味しそうな匂いが漂ってきまして、
思わず物欲しそうな顔であちらこちらのバーベキュの肉やモロコシを眺めていると、
「どこから来たん?」と、声をかけてくれたグループがありまして、
気がついたら一緒にバーベキュをしていたんですよね。

で、そろそろお暇致しますとなった時に、
「じゃあ最後に記念写真を撮ろうよ!」という展開になり、
我々2人は『マジかよ~・・・』と思ったんですが、さんざん食べ物を恵んでもらった手前、
『いや、写真は嫌いなんで遠慮します』とは口が裂けても言えず、もごもごしていると、
御親切な事に「後で送ってあげるわ!」とまで仰って下さり、
そうまで言われて断るなんてKYにもほどがある事くらいは理解できましたので、
我々も観念してフレームに収まったという次第だったんです。
(だからどことなくイヤそうな顔をしてるでしょ?笑)

この時に送ってもらった写真の中には、
ヤツと私が一緒に写っている写真もあったとは思うんですが、
今探してみたら別々に写っているものしかありませんでした。
何しろ20年ほど前の話ですので、この2枚だけでも残っていたのが奇跡です。

写真代も郵送代も払ってないのに、
約束通り本当に写真を送って下さったあの時の方々には、今更ながら感謝感謝です!
美人のお姉さん達も多かったので、
一緒にバトミントンなどが出来て本当に愉しい一時でした☆

今となっては、やつとの青春時代の思い出の写真が2枚でも残っていて良かった・・・。
(でもおばちゃんパーマは怒りよるかな?しかも俺の写真は伊達政宗チック・・・。パーマと政宗、、、えらい違いや!爆)

冗談はさておき、今回の事で、彼には色々と教えられた気がします。
死が怖くない人間なんていないでしょうが、それでもあいつは落ち着いていました。
それは、護り慈しむべき大切な家族を思っての事でしょうが、
だからといって、恐怖に背を向けたわけでも、逃げたわけでもなかったと思います。

恐れたのではなく、受け入れたのだと思います。
自分の心をごまかしたのではなく、
むしろ自分にとって1番正直になった結果、
かけがえのない者への思いやりの為に生き抜く事、
そしてみっともない姿など見せてなるものかという尊厳が第一義と気づいたんでしょう。

それがやつの人生観であり、美学であり、責任感だったに相違ありません。
最期の最後まで、誠に堂々とした死に様でした。

運命という死神は、彼の肉体や命は奪ったが、
その心意気にだけは、最後まで指1本触れる事が出来なかった。
理不尽な死神よ、これが俺たちの持つ“矜持”であり“作法”であると知れ。

ご報告は以上です。
以前のレビュー内にて温かいコメントを下さった皆様、ありがとうございました。
全て本人とその家族に一言一句違わず伝えました。
『“本当にありがとうございました”とお伝えください』との事でした。

なにぶん主観で書いている報告であり、
また、ヤツに関してはともかく、嫁様や娘ちゃんの心情などを、
手前勝手に忖度したり揣摩したりするのはいかがなものかと思わないでもなかったんですが、
私が感じたものをそのまま素直に書いてしまいました。
もし違っていても、まぁそんなに迷惑はかからんでしょうし、ね、、、。

最後に、
私が今回の事で彼から学んだ一番大きな事とは、

『さながら良く過ごした一日が安らかな眠りをもたらすように、良く生きられた一生は、安らかな死をもたらす。』
という事。

これはレオナルド・ダ・ビンチの言葉なんですが、
彼の生き様、そして死に様に触れて、本当にその通りだと思いました。

まだ生かされている身として、
ある日突然、望まざる運命がやってきやがったとしても、
倉皇とする事なく堂々と対処出来るような生き方をしよう、
そのように生きていかなければならぬ、
そう心に誓った次第です。


さてさて、とうとうお前は逝ってしもたな。
長かったのか短かかったのかよう分からん付き合いやったけど、
お前の家族が生きてる限り、ほんでお前の記憶が俺の脳にある限り、
まだ付き合いは続いてると云えるわなぁ。

ま、とにかく今はもうゆっくりしたらいいやんか。
マジで色々とサンキューでした。
ほんで、ひとまず、さようなら。
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