この口コミは、全国レストラン評価さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。
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夜の点数：5.0
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￥30,000～￥39,999 / 1人
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料理・味 5.0
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★動画あり★ 【東京都・目黒】今まで食べていた鮨はいったい何だったのだろう
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2025/11/27 更新
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目黒の住宅街に灯る看板
予約困難店という言葉が
ほのかな緊張を連れてきたのに
扉を開けた途端すぐにほどけた
若い大将のまっすぐな声と
スタッフの柔らかな所作が
カウンターの空気を整えて
ここが特別な場所だと告げていた
おまかせ3万円という
潔い道しるべの中で
ワインの落ち着いた香りが
静かにはじまりを照らす
祖父江の銀杏は
小さくて確かな秋の粒で
思いがけない温度を
そっと舌の上に残した
生イクラの炙りは
弾む光の粒がふわりとほどけて
北海道の海の冷たさが
胸の奥まで届いていった
鳥取の香箱は
冬という季節の甘さを
まるごと抱えたまま
静かな余韻だけを残す
羅臼の白子は
深い海の静けさみたいに濃厚で
言葉が追いつかないほど
すこし切なく美しかった
久遠のボタンエビは
甘さの手前にある光そのもので
噛むたびに世界がやわらかく
静かに揺れた
厚岸のつぶ貝は
ゆっくりと波を打つような歯ざわりで
遠い海の記憶が
一瞬だけよみがえった
大分のカワハギは
肝の香りがそっと寄り添い
やさしい旨味が
胸の奥に淡い灯りをともした
ホタテ磯辺焼きは
海苔の香りと甘さが手を繋ぎ
北海道の風が
すぐそばを通り抜けた
三陸のわかめは
青い余白を一口にしたようで
静かに心が
整えられていく
シジミと蛤の味噌汁は
深い出汁が身体へ静かに沁みて
夜の真ん中が
少しあたたかくなる
塩釜の中トロと赤身は
まるで二つの海の顔みたいで
柔らかさと芯の強さが
ひとつの景色になって広がった
北寄貝入りの茶碗蒸しは
湯気の奥から立ち上がる甘さが
優しい光で
目の前の空間を満たした
根室のイワシは
鋭くて柔らかい矛盾を抱え
その瑞々しさに
一瞬で心を奪われた
出水のスミイカは
静かに清らかで
噛むたびに淡い甘さが
胸の中で波を立てた
昆布森の塩水ウニは
濃厚のもっと先にある輝きで
余韻が長く残り
心の深いところを揺らした
対馬の車海老は
ひと口で夜の色を変えて
香りと甘さの輪郭だけが
しばらく消えなかった
アナゴは
ほろりとほどける優しさで
時間の流れを
すこしだけ遅くした
卵焼きは
懐かしさと穏やかさを重ね
巻物は
夜の終わりを静かに整えた
最後のジェラートは
大将の故郷の空気を連れてきて
冷たくやさしい余韻を
そっと胸に落とした
映画「99分、世界美味巡り」で
杭州の料理を前に
“今まで食べていた中華は何だったんだ”と
涙したフーディーの横顔を思い出す
わたしも同じだった
今まで食べていた鮨は
いったい何だったのだろうと
胸の奥で自問自答を繰り返す
満足、という言葉では足りなくて
もっと細くて、静かで、深い何かが
わたしの内側に
しずかに置かれていった
【全国レストラン評価について】
評価は以下の5段階評価としています。評価が4.0以上は保存をお勧めします。
5.0 - outstanding
人生の記憶に残る至高の名店。
4.5 - Brilliant
満足を通り越して感動。人生の大切な機会に使いたいとっておきのレストラン。人に自信を持って薦められる名店。
4.0 - excellent
大満足。値段以上の満足を得られる店。是非再訪したい店。
3.5 - good
悪くない。値段相応の食事・サービス。場合によっては再訪もあり。
3.0 - fair
残念。値段に見合わない食事・サービス。再訪は考えにくい。
東京を中心に星付きから立ち飲みまで年間約300軒のお店にお邪魔しています。ワインエキスパートの資格を持っており、食事にはワインを合わせるのが好きです。
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