4回
2021/05 訪問
減点すべき点が見当たらない
週末のランチに伺いました。
今回は、新緑の庭を楽しみにしていました。
3年以上前に初めて訪問した時、まだ今ほどフランス料理を知らないながら、「完成度が高い」「減点するような箇所がほぼ見当たらない」と絶賛していましたが、3年たってみてもやはり、減点すべき点が見当たらない気持ちに変わりありませんでした。
気になる点を強いて言えば、時間がゆっくり流れている、つまりお料理とお料理の間の待ち時間が少し長めかな、という程度です。
【Lunch A】季節の食材が愉しめる全7品 税サ込9,075円です。
以前よりコース金額の最低ラインが上がってしまいましたが、皿数を増やすなど内容は充実しているようです。昨年の自粛期間以降は、オンラインショップや後藤シェフの出張サービスなど新規開拓に意欲的な所も、お店に活気が感じられて楽しみです。
まだこういう時期なのでシャンパーニュはお預けで、アップルジュースを頂きました。
○アミューズ 筍掘り
お馴染みの収穫のプロセス。据え膳ばかりでなく、参加型の食体験は大人でも楽しいです。
手で取って竹皮を剥いた中身は、筍やチーズの風味と食感豊かな熱々のパイ包みです。この一口目で他のテーブルからも「美味しい!」という声が必ず上がります。
○ホタルイカ・アスパラ・山椒
みじん粉(米粉)を纏ったホタルイカに、トマトと山椒が効いていて、春の香り満開です。山椒の薫香は、このお店のコンセプト、ジャパニーズフレンチを実感させます。
○パン
ライ麦のカンパーニュ、米粉のパン、クロワッサン、フォカッチャから好きなだけ選べ、温めて提供してくれます。今回はさっぱりと油分少なめのカンパーニュと米粉のパンを。
○マカジキ・梅・うるい
しっとりと絶妙な火入れをされたマカジキに、白ワインや梅を使ったソース。うるいや菜の花が彩りを添えています。噛みしめる度にマカジキが発揮する幸せの旨味に、ドリンクやパンを忘れて貪ることに抗えないひと時。
○オマール海老・百合根・とまと
酸味のあるとまとのフランの重要な役割を、あらためて感じます。これだけ濃厚なビスクの後味を上品にまとめるのは、とまとのフランあってのことなのだと。
○紀州鴨・豆・新玉葱
これもお馴染みですが、メインの何皿か前に、切り分ける前の肉の塊を見せにきてくれます。前菜あたりから既に期待が高まりますし、歓声も上がります。
鴨の甘みを、新玉葱のピュレのソースと味わいながら、時々山椒のパウダーでアクセントを付けて頂きます。
○デザート リュバーブ・メレンゲ
オームかマインスイーパーかのようなキュートな姿のメレンゲ。リュバーブの刺激的な酸味が効いた、口直し的存在でした。
○デザート パイナップル・ココナッツ・バナナ
ココナッツケーキの上に南国フルーツのコンポートとソース、フロマージュブランのクリーム。いつもデザートがフルーツを主体にしたさっぱり系なのは嬉しいです。甘過ぎず重過ぎずが私の好みです。
○食後のお飲み物とお茶菓子 余韻…
ミニャルディーズの味の完成度にはいつも驚かされます。
このお店を思い出す時、何が最も印象的でしょうか。お庭のある一軒家。封書でご挨拶を頂くこと。アミューズを手で取ること。濃厚なオマール海老のビスク。極小サイズのミニャルディーズ。
さることながら、最後の最後まで美味しかった、と言わせるミニャルディーズの存在は、素晴らしいものがあります。
ごちそうさまでした。
アミューズ 筍掘り
アミューズ 筍掘り
ホタルイカ・アスパラ・山椒
ホタルイカ・アスパラ・山椒
米粉のパン
マカジキ・梅・うるい
オマール海老・百合根・とまと
紀州鴨・豆・新玉葱
紀州鴨・豆・新玉葱
ライ麦のカンパーニュ
デザート リュバーブ・メレンゲ
リュバーブ
デザート パイナップル・ココナッツ・バナナ
デザート パイナップル・ココナッツ・バナナ
余韻…
余韻…
余韻…
余韻…
2024/09/28 更新
2019/03 訪問
ずっと変わらずにそこにあってほしいお店
週末のランチに訪れました。
1年半前にディナーで訪れた後、再訪を望みながら、勿体ないことに時間が経ってしまいました。この度、2回目の訪問で更にファンになりました。落ち着いた居心地の良い家と手入れのされた前庭。ずっと変わらずにそこにあってほしいです。
税サ別5,000円のシェフのおまかせランチコースとハウスシャンパン Deutz Brut Classicです。
お馴染みの封筒に入ったメニューカードを渡され、コースの流れを説明頂きスタートです。
○シャンパーニュ Deutz Brut Classic
バランス良くフルーティな香りが気に入りました。
○収穫 芽キャベツ
芽キャベツ、クリームチーズ、胡桃、ベーコン等が入った小さな温かいパイ包みのアミューズです。キャベツ畑に見立てた籠から自ら収穫するという趣向を凝らした演出です。楽しいだけに終わらない、凝縮された旨味に驚き、一気にAMOURワールドに引き込まれます。
○パン
カンパーニュ、米粉のパン、クロワッサン、オリーブオイルを練り込んだパンの4種の中からいくつでも選べ、お料理に合わせて温めてから提供してくれます。
○寒月 毛蟹・いくら・山葵
カリフラワーのムース、比内地鶏のジュレ、ラディッシュ、毛蟹の身と蟹ミソを和えた物です。毛蟹にジュレを合わせるのがお得意のようです。ムースとジュレと蟹ミソの協和音にうっとりです。
○継承 オマール海老・百合根・トマト
シェフのスペシャリテです。他の甲殻類を使用せずオマール海老の全てを凝縮。今までの他のオマール海老のビスクとは別物だ、という声も聞こえてきます。前回、喉を刺激する、と感じましたが、今回も、その濃厚さが喉を刺激することを再確認しました。海老の身と百合根が食感にリズムをもたらします。
○里山 蝦夷鹿・葉玉葱・肝
藁で蒸し焼きし香りを付けた後、炭火焼きした、2歳メスの蝦夷鹿とのことです。最適な火入れを施された、仔鹿のバンビちゃん。柔らかく脂身が殆どないため、抵抗無いどころか、癖が無く豊かな美味しさで、すぐに完食しました。塩胡椒を効かせておりシンプルに旨味を楽しめますが、これに、レバーと胡桃を合わせたペースト、焦がし葱のパウダー、葉玉葱のソテーなどを添えて味の変化を楽しむことができます。
○雪溶け 甘平・金柑・はっさく
フロマージュブランのムース、甘平とタピオカ、その上に金柑のコンポートと、はっさくのジュレと凍らせた果肉を散らしたもの。お肉の後の爽やかな柑橘系デザートが嬉しいです。ひとつひとつ美味しい要素が積み上げられ、相乗効果が生まれる、組み合わせの妙です。スガハラガラス製の器にひと工夫加えられており、目でも楽しめるアートのような美しいひと皿です。
○珈琲・紅茶・エスプレッソ
○余韻
これほど凝ったミニャルディーズを他に知りません。抹茶のロールケーキ、檸檬のマシュマロ、苺のショートケーキ、薔薇の香りのクリームのマカロン、オリジナルのアムールドショコラのホワイト。全てミニサイズながら味は驚くほど本格的です。このプチデセールをお目当ての方も多いようですが、小ささもさることながら、注目すべきは味なのです。
前回訪問後、他にもいくつかの美味しいお店も知り、再び初めての時のような感動を得られるだろうかと考えていましたが、やはり期待以上でした。これからも素敵なお店の探求を続けたいので、あらためての点数は満点で無くしましたが、現在私の中では最高点を付けたいお店のひとつです。
収穫 芽キャベツ
収穫 芽キャベツ
寒月 毛蟹・いくら・山葵
継承 オマール海老・百合根・トマト
継承 オマール海老・百合根・トマト
里山 蝦夷鹿・葉玉葱・肝
里山 蝦夷鹿・葉玉葱・肝
雪溶け 甘平・金柑・はっさく
余韻
余韻
2024/09/16 更新
2017/09 訪問
五感を総動員して味わう彩と風味と時間
家族の記念日に訪問しました。
とにかく完成度が高いです。
きめ細やかなホスピタリティにも感謝です。
グルメサイトへ投稿するにあたり、不遜にも点数付けをするわけですが、減点するような箇所がほぼ見当たりませんでした。
始めは瀟洒な邸宅に閑雅な庭園という魅力的な箱に、そこで過ごす時間を楽しみにしていました。実際の空間はすっきりとシンプルで、レストラン仕様というより、普通より少し贅沢な家。でもこれは料理を味わうことに専念できると納得。
1階の厨房が見えるウェイティングコーナーでしばし息を整えお手洗いを済ませます。シェフズテーブルはその奥かなと想像しつつ。毛足の長い狭い階段を上ると2階は5卓のテーブルとソファがあるダイニング。奥にまた化粧室と個室がある模様。席は隣の会話が普通に耳に入る程度の近さです。
お料理は10,000円のコースです。
○栗拾い 栗・青リンゴ
○秋祭り 毛蟹・鮑・カリフラワー
○継承 オマール海老・百合根・とまと
○香り立つ カマス・松茸・かぼす
○桐一葉 六白豚・秋茄子・赤味噌
○収穫 ピオーネ・マスカット・ミント
○余韻
私たちには、お祝いのプレートも用意下さいました。
まず、招待状のような封筒に入ったシェフのサイン入りのメニューカードにわくわく。全体を通した説明を頂き、コーススタートです。この時、苦手な食材やアレルギーを申告できます。
組立は、しっとり、爽やか、そして濃厚、芳醇、重厚、さっぱり、最後にお楽しみ。この流れが素晴らしいです。
始めは栗満載の籠から自分で小袋を拾う演出です。秋の要素を詰め込んだアミューズの美味しさに吃驚。
家族はやはりオマール海老のビスクを絶賛でした。他の魚介類を使用せず、オマール海老だけを濃縮。噂の一杯は喉を刺激する程の旨味に溢れていました。海老の身や百合根など具材も良いアクセントになり、メイン並みの存在感に圧倒されました。
だからこそ、続いての、程良い焼き加減のカマスに茸類の出汁をかけた、和に近い一皿が効いています。
松茸が本当にビシッと香り立つ、日本人誇りの一皿。全く逆の方向からの芳醇さに感心しました。
説明を省略するのが勿体ない限りですが、最後の噂の極小スイーツ達のプレート。ショートケーキの1辺が約2cmとは信じられません。でも個々のプチデセールたちはその存在を主張。抹茶、ラベンダーなどの風味がしっかり感じられ、可愛いだけではない、完成された美味しさに感激。
ぜひ、体調万全で味わって頂きたい彩と風味と時間。全体を通して、気持ちと技術が隅々まで行き届き、これほど五感を総動員して楽しめた食も初めてです。
他のテーブルはその上のコースだったのか、他の方のお料理が運ばれる時間、私たちは随分待ったような気がします。その間満腹中枢は刺激され、メイン前に既に八分目。お店を出る頃には3時間近く経過していました。その待ち時間以外は素晴らしかったです。
後藤シェフとホールの方には私たちが角を曲がるまで見送り頂きました。
ごちそうさまでした。また訪問したいです。
2022/09/23 更新
平日のランチに伺いました。
【ランチ】Menu Saison 全8品 税込サ別11,000円です。
封書にしたためられたシェフのご挨拶とメニューカードから始まります。
○栗拾い
自らの手で栗を収穫するような愉しみあるアミューズです。
たった今オーブンから出してきたような熱々のパイ包みから、栗やチーズなどの秋の香りが立ち上り食欲を誘います。
○戻り鰹・焼き茄子・茗荷
軽く焼き目を付けた戻り鰹に、焼き茄子の煮浸しと茗荷を添えて。
食材は日本各地から。お料理の名前も日本語で、説明も日本の調理法を例にして。フレンチということを忘れそうです。花車のようなジャパニーズフレンチ。
○パン
○金目鯛・蕪・山葵
蒸し煮にした金目鯛に、蕪のピュレと山葵のオイルを添えて。
色が変わるか変わらないかの蒸し加減、絶妙な湿度と甘さ。レアな魚にはやはり山葵、という相性の良さを再確認。
○オマール海老・百合根・とまと
スペシャリテのオマール海老のビスク。
私の味覚が変わっていなければ、喉を刺激するほど濃厚だったはずの以前より、マイルドな味わいになった気がしました。とまとのフランと併せて頂くので、収穫時期による酸味や甘味の違いに左右されるのでしょうか。濃厚な質感はそのまま、とんがりが無くなったというか、まるみのある味になったような気がします。
○蝦夷鹿・安納芋・落花生
藁で蒸し焼きにされた状態で見せにきてくれます。その後炭火焼きにされた模様。どこまでも滑らかな蝦夷鹿に、対照的な落花生の食感。フルーティーな安納芋やほおずき、香りの山椒。
○ラフランス・フロマージュブラン
フロマージュブランにラフランスのジュレ、プチプチとしたシトロンキャビアを散らした、爽やかなデザート1皿目。
○栗・ヘーゼルナッツ
栗のアイスの下に、後にババとなる焼菓子。テーブル上でヘーゼルナッツシロップをかけて頂き、ババ完成です。しっとりとしたデザート2皿目。
○フレッシュハーブティー・余韻…
苺のショートケーキ、抹茶のマカロン、杏のメレンゲ、フランボワーズのクッキー、アムールドショコラ。
SNSなどでのミニチュアアートブームに火が付く前から、このクオリティのミニャルディーズを提供されていたと思われます。映える、食せる、そして一流の味。コースのうちの一皿というポジションで本当に良いの?と締め括りまで驚きが絶えません。
初めて訪問した5年前から随分値上がりしました。ランチが倍の価格になり、ディナー並みになっていました。今思えば、以前が内容に対してお値打ち過ぎたとも言えます。
お料理の完成度が高く、サービスにも満足。緑溢れる庭と瀟洒な一軒家で過ごすひと時には、他では味わえない素晴らしさがあります。
端正なシェフのお顔の見えるレストラン。ごちそうさまでした。