2回
2017/09 訪問
さいたま新都心の宝石箱
私が地元にあるこの店の存在を知ったのは恥ずかしながらJALの機内だった。
3年ほど前のヨーロッパ出張時に機内で出されたのがこの店の焼き菓子。
CAさんからやけにおいしいこの菓子がさいたま市のお店のものだと聞かされたという次第。
帰国後ほどなくお店を訪ねてみた。
さいたま新都心にあるこの店は黒が基調のオシャレだが目立たないモノトーンの店舗で、週末なのにさほどお客さんも多くないようだった。
私は機内で食べておいしかった焼き菓子以外にもケーキ数種類を購入して食べてみた。
食べてみて、他のお店のファンの人には申し訳ないけど、周辺の店とは全然レベルが違うと感じた。
以来この店は我が家の「アニバーサリー・パティスリー」になった。
実は私はスイーツはさほど好きではない。むしろ甘いものは苦手である。
たが、仕事の関係でスイーツの知識も得たいと思う中、美味しいかどうかでではなく売れるかどうかで味わうクセが付いてしまっている。
その点では「この店は名店になる」。それが私のこの店の味に対する直感だった。
(もっとも、JALビジネスクラスの機内菓子に採用された段階で既に名店だったのかもしれないが…)
実際、店は徐々に混みあうようになり、各種メディアやブログでも紹介される事も多くなった。
今では週末はいつ行っても人が出入りして、かなり早い時間に売り切れるものも多くなっている。
ただ「アングランパ」という店名に店主はどんな思いを込めているのだろうか?
埼玉で人気になった店は、得てして都内に進出するかチェーン展開するようになり、最終的にこの地を去ってゆく事も少なくない。
その店名の通り、ここを「はじめの一歩」としてより良い環境を求めて飛び出すのか、それとも「偉大なる先駆者」として例えばこの一帯がスイーツの聖地とでも呼ばれるようになる道を目指すのか。
気になっているのは私だけではないでしょう。
2018/03/14 更新
(例によって余談から始まります。お店については***以下をご覧ください)
この3年間、私は福岡の『フランス菓子16区』という店で「シュトレン」を買っていた。
『フランス菓子16区』は私にとって特別な店。
甘いものが好きではなかった若い頃、
仕事でどうしても洋菓子に向き合わなくてはならなくなり、
そんな時に知った「ダックワーズ」という焼き菓子は、
私が、アイスクリームとチョコレート以外で食べられる唯一のスイーツだった。
時が流れて30代後半で赴任した福岡で、
欧州生まれの菓子だとばかり思っていた「ダックワーズ」が、
実はフランス帰りで当時福岡にお店を出していた日本人パティシエが考案したものだと知った。
それが『フランス菓子16区』の三嶋シェフ。
福岡時代の私は「ダックワーズ」を求め、しょっちゅうお店に入り浸っていた。
時は流れ、4年ほど前。
雑誌「日経トレンディ」か何かで、
当時ようやく認知度が上がりだしたドイツの伝統菓子「シュトレン」の特集があって、
『フランス菓子16区』三嶋さんの「シュトレン」が全国第2位にランクされているのを見た。
福岡を離れて以来お店には行っていなかったのだが、私は猛烈な懐かしさを覚えて、
出張時にお店を訪ね「ダックワーズ」と共に「シュトレン」を購入した。
その時にお店のカワイイ???店員さんから、
「うちには約1年間熟成させて作る『ヴィンテージ・シュトレン』というものがあるのですよ」
と言われ、約1万円という高額ながらついつい次年度分の予約をしてしまった(汗)
私自身、「シュトレン」はドイツで2度ほどしかを食べたことが無いのだが、
三嶋さんの「シュトレン」は本格的でとても美味しかった。
ところがその「ヴィンテージ・シュトレン」の美味しいのなんの。
ただ、これはもはや「シュトレン」と括って良いのだろうか???という疑問が湧いて、
しばらくは、地元や東京の店の「シュトレン」を試してみようと思い立った。
***
という事で、今年は地元の『アングランパ』の「シュトレン」を購入した。
(日本では『シュトーレン』という表記が多いですが、ドイツ人の発音から『シュトレン』と覚えてしまったのでそのまま表記しています)
『アングランパ』は、事務所の近く「さいたま新都心」駅近くにある大人気のパティスリー。
東京・尾山台の『オーボンビュータン』出身の丸岡シェフのお店。
丸岡シェフは、
フランスで修業の後、東川口の若手パティシエの登竜門として有名だった、
今は無き伝説の店『オーベックファン』でチーフパティシエを務めた後この地で独立した。
私が初めてここの商品を口にしたのはヨーロッパから帰る時に乗ったJALの機内。
あまりの美味しさから、CAさんに「どこのお店のもの???」と尋ねたら、
ナント、地元さいたまの、しかも会社のすぐ近くの店と知った次第。
その後すぐにお店を訪ね、以来、我が家の「アニバーサリー・パティスリー」になっている。
常連なので、ログは一度しか上げていませんが、
もう何回も利用して、ほとんどすべての商品を食べたことがあると言っても過言ではない。
そのうえで、知り得る限りこのエリアではナンバーワンだと思っている。
(自宅近くに食べログ埼玉トップの店があるのですが、個人的にはレベルが違うと・・・汗)
そして、今回は初めての「シュトレン」。
元々、丸岡シェフは伝統的なものも斬新なものも実にバランよく使い分ける。
最先端の『オーボンビュータン』から、フランス修業時代に「伝統」の大切さを知って、
重厚なものから斬新・軽妙なものまでまさに「何でもござれ」。
(時々外すこともありますが???・・・汗)
これは、『オーボンビュータン』の先輩ながら、
同じようにフランスで修業後に『オーベックファン』のチーフパティシエになり、
東川口で『アルカイク』(「古風な」という意味)という店を開き、
伝統的な菓子専門になった高野シェフとはとても対照的だ。
さて、その『アングランパ』の「シュトレン」。
大量の粉糖でコーティングされたその大胆なビジュアル。
伝統菓子の風格が漂っている。
切り口には、リキュールにしっかり浸かった栗???やドライフルーツが散りばめられている。
ひと口食べてみる。
思ったよりも柔らかい。
そして甘い。
表現が当たっているかどうかは疑問ですが、
「斬新」の皮をかぶった「伝統」という感じ。
パサパサしていないさすがの逸品でした。
ただ、この店の実力は「まだまだこんなもんじゃない」と思う私もどこかにいます。
来年どれだけ進化しているか楽しみになってきました。
余談ですが・・・、
『アングランパ』は今年の夏に店を改装した。
私はかつて、
この「アングランパ(Un Grand Pas)」という店名について、
「(大いなる)はじめの一歩」なのか???
「(偉大な)先駆者」なのか???
前者なら、いずれこの地を去るかもしれない。
後者なら、ここに留まりこの地をスイーツのメッカにするつもり???
(『新しいものに挑戦する』とも解釈できる)
と記したことがある。
本当のところはわかりません(店の人にも訊けないし・・・笑)が、
今回の改装によって、まだしばらくこの地に留まるのは間違いないようです(ホッ)