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夜の点数:5.0
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¥50,000~¥59,999/ 1人
訪問時点の為替レート換算での金額になります。
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料理・味 5.0
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サービス 5.0
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雰囲気 5.0
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CP 4.5
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酒・ドリンク 5.0
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¥50,000~¥59,999
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/ 1人訪問時点の為替レート換算での金額になります。
パリで最長の3つ星レストラン それでも色褪せない堂々の5点満点
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2019/10/22 更新
私が初めて「ランブロワジー」を訪れたのは、この店がミシュランの三ツ星を獲得した翌年の事。
その半年ほど前に自称グルメの知人から紹介された、元「ランブロワジー」の共同経営者だった日本人シェフ斉須政雄さんの店「コートドール」にお邪魔をした時に、そのあまりのおいしさに是非「ランブロワジー」にも行ってみたいと、パリ行きが決まった時に然るべきルートで予約を入れてもらった。
当日、大渋滞に巻き込まれて1時間の遅刻(もちろん連絡済み)。
恐る恐る店に向かうと玄関でマダムが笑顔で出迎えてくれた。
そしてなんと、横に絢爛なフラワーオブジェが鎮座したセンターテーブルに案内された。
予約ルートが良かったのか、若造とその妻はその日マダムの付きっきりのアテンドでもてなされた。
私自身はパリの星付きレストランは初めてではない(三ツ星もロビュションの「ジャマン」で経験済み)し、この時点では、東京のフレンチの有名どころはかなりの場数をこなしていたが、こんな扱いは初めてだったので周囲の視線も含めてメチャメチャ緊張した。
9月と言ってもパリはまだ暑い。
私はカシス少なめのキールロワイヤルを飲みながらメニューを眺める。
マダムがいろいろと解説してくれるが、前菜は決まっている。
一世を風靡したこの店のスペシャリティ「赤ピーマンのムース」。
この料理は当然東京の「コートドール」でも食べていたが本家のものと「食べ比べてみたい」。
これが今回の訪問の目的のひとつだった。
普通に考えれば、元々は二人で作ってた料理なのでそんなに違いがあるわけがない。
ただ、パリの方がムース玉がひとつ多かったのとトマトのクーリの酸味が多少強かった。
おそらくはトマトの品種と胃袋の大きさの違いなのかな?
でも相変わらずに旨い。
そしてメイン。
私が選んだのはマダムおすすめの「鳩のエギュイエット」。
薄切りの鳩の下に、ニンジン、さやいんげん(みたいなもの)とベーコンなどの曲者ばかりをソテーしたものが大量に敷いてある。
そして皿の四隅にはさらににんにくを焼いたものが乗っている。
マダムが「アンサンブル」と言っているので鳩と野菜を一緒に食べた。
でも「にんにくもアンサンブルよ」と言うので、にんにくの中身を絞り出して全てを混ぜて食べたら、最初はバラバラで主張強過ぎだったそれぞれの食材が、にんにくを混ぜたとたん、確実に鳩が主役ではあるが他の食材の持ち味が鳩を支えるという絶品料理に変わった。
そういえば、東京の「コートドール」で「エイとキャベツのシェリー酢ソース」(もちろんここにもある)を食べた時にも、別々に食べるとなんてことないただの水っぽい食材が、一緒に混ぜて食べると忘れ難い名作に変貌したのを思い出した。
この店は、食材の持ち味を知り尽くし、計算され尽くした主張のある料理を出している。
ここに来る10か月ほど前、大阪の「ローズルーム」という店で「鳩」を食べた。
横田シェフの鳩はとことんやさしく、薄味で深い味わいに仕上げてあった。
でもここは曲者の食材や濃い目のソースで食べさせる。
「鳩」と言う食材に対する見方の違いがはっきり分かれている。
面白いものだ。
次にフロマージュワゴンがやってきた。
私は基本的にフロマージュはいただかないので断ったのだがなかなか引き下がらない。
おまけにこのフロマージュ担当のギャルソンは斉須さんが居たころからの人なのか、日本語で「少し」とか「おいしい」とか言ってくる。なかなかバシッとは断れない。
マダムに「私はフロマージュは食べないんだ」と訴えてやっと下がってもらった。
妻を見るともうほとんどギブアップ状態。
「デザートもやめておこうか?」と聞くと、マダムが「デザートは何にしますか?うちのシェフ(パコー氏)は元パティシエなのでとてもおいしいですよ」という。
一応妻にその旨伝えたら、ありふれた言葉だが「デザートは別腹」と彼女は急に復活。
私は「チョコレートタルト」、彼女は「ラズベリーのミルフィーユ」をいただいた。
両方とも素晴らしいのひと言。
マダムも「この二つはシェフの昔からのスペシャリティ」だと言っていた。
コーヒー(妻はミントのアンフュージョン)が出てくるとマダムといろいろと話した。
半年前に「コートドール」に行ったことを告げると「マサオは元気か?」と訊いてきた。
「タイユバン」で一緒に働いていたパコー氏と斉須氏が「ランブロワジー」を開いた時の事。
パコー氏はその前は「ヴィヴァロア」でパティシエをしていた事。
「ランブロワジー」が元々はパイプ椅子のレストランだった事・・・。
支払いはふたりで5万円ちょっと。今では考えられない金額だ。
素晴らしい時間だった。
その後私は仕事でも時々パリに行くようになり、そのたびに「ランブロワジー」に訪れるようになった。
2度目の訪問までは然るべきルートで予約をしていたが、3度目からはマダムがテーブルを用意してくれるようになった。
同行者は皆「よく予約が取れたなあ」と驚く。
予約が取れないとは聞いていたが予想以上のようだった。
ちなみにマダムは今でも私が訪れると「政雄は元気か?」と必ず訊く。
ほかにも日本人は大勢行くだろうに・・・。
しかも彼女は、フロマージュ担当に「この人は食べないわよ」といつも言ってくれる。
しかし「ランブロワジー」の前菜はとても充実している。
「手長エビのフイヤン」「エッグ&エッグ」「スズキのキャビアソース」「グリーンエッグ」「ブルーオマール」そして「赤ピーマンのムース」等々、何度行っても毎回食べたいものばかり。
セカンド・アミューズでこれらの一部が出てきたときはとてもテンションが上がる。
ただいつの頃か、一時期、メイン料理に魅力を感じなくなった時があった。
食べれば美味しいのはわかってはいるものの、前菜と違ってまたこれが食べたいと思わせるものがない。
(「手長エビ…」をメイン仕様(ジャンボサイズ)にしてもらったこともある。)
そこで私は予約を入れた段階でグランドメニューに惹かれる新作がなかった時は「牛尾の赤ワインソース」や「エイとキャベツのシェリー酢ソース」を用意してもらうこともある。
このふたつは私にとって「永遠の名作」なのだが、ここは季節によって白トリュフやセップなどで味に変化を与えてくれる(価格調整?)のも楽しい。
でも最近はそのメインも良くなってきた。
特に今ハマっているのがやはり「鳩」。
「鳩のロワイヤル」はパリッパリのキャラメル味の甘い皮が鳩の肉に合う最近ではイチ押しの逸品。
また「ロゼール産仔羊のロティ」もこれほど深い味の仔羊に会ったのは久しぶりだった。
元々、前菜もデザート(「チョコレートタルト」はいつ行っても食べたくなる傑作)も優れているので、メインが良くなればこの店は無双。
もっと言えば、過去のメニューも含めて食べたいものがいつでも食べられる。
おまかせコースの台頭にも媚びを売らずにアラカルト一本で勝負できる数少ない店たる所以だ。
初めてこの店に訪れてから28年。
この店には、いつも優しく迎えてくれる雰囲気がある。
いつも良くしてくれるマダムがいる。
何故か私の好みを知っているメートルのパスカルさんがいる。
何より食材を知り尽くしている職人・パコー氏がいる。
美味い料理と素敵な人々と変わらぬ雰囲気。
私にとって「ランブロワジー」は今も堂々たる5点満点。
この店に行かない理由はどこにも無い。
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2018年4月加筆
今回、ついにパコー氏の姿を見ることはなかった。
マダムに聞くと、もうずいぶん長くパコー氏はディナーには立ち会っていないのだという。
ランチに立ち会い、ディナーの準備を終えると帰宅するらしい。
「体調が悪いの?」かと尋ねたが、今はそうでもないらしい。
正直よくわからない。
でも、間違いなく恐れていた事態が起きている。
でも、料理には一点の曇りもなかった。
今回、実はちょっとした神様のいたずらで、私は「5夜連続三ッ星ディナー」となった。
ケルンの「ヴァンドーム」
リヨンの「ポール・ボキューズ」
パリの「ル・サンク」(←ここが予定外、本当は中華の予定だった)
パリの「アストランス」
しかも、私は2日前にメインの変更をお願いした。
予定では「ロゼール産の仔羊」だったのだが、これだけフレンチが続くなら、もう少しインパクトのあるものが食べたくて「鳩のロワイヤル」に替えたのだ。
そして、前菜は「手長エビのフイヤン」。
それは「5夜連続3つ星」を締めるにふさわしい堂々たる出来栄えのディナーだった。
「ランブロワジー」今年のミシュランでも3つ星を獲得した。
パコー氏が立ち会わなくてもこれだけの料理が提供できる。
息子さんのマシュー君が独立してからの店に充実というのはとても皮肉なことだが、まだまだマダムをはじめとするスタッフ全員で私たちを楽しませてほしいものです。
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2019年4月加筆
昨夜利用した「タイユバン」を予約していていただいた上に、シャンパーニュの差し入れまでしていただいたマダムにお礼と報告に伺った。
今回、もちろんこの店を利用するつもりだったのだが、イギリスのゴタゴタ(EU離脱)で渡英を延期したせいで出張スケジュールが大幅に変更になり、この店の予約も変更せざるを得なくなったのだが、32年間連続ミシュラン3つ星のこの店、さすがのマダムでもテーブルを用意することができなかった。
そこでマダム自らが代りに予約してくれたのが、この店のシェフ、ベルナール・パコー氏の古巣「タイユバン」だったのだ。
https://tabelog.com/rvwr/000638412/rvwdtl/B307073846/#75751453
マダムは我々をバールームに招き入れコーヒーでもてなしてくれた。
(ワインを勧められたが寒かったので丁重にお断りした)
ところで気になっていたパコー氏の状況だが、特に病気というわけではないが、歳なので相変わらず店に来てもランチタイムが終わると帰宅することが多いようだ。
それでもこの店は今年も3つ星を獲得した(32年連続はパリでは最長)。
その堂々たる料理は昨年訪れた時にも十分に堪能した。
アラカルト一本のその料理を古いという人も多いようだが、一皿をじっくり味わえ、それに耐え得る料理は私に言わせればさすがとしか言いようがない。
途中、ギャルソンがマダムに何か言いに来た。
「今夜、席が空いたようだから食事してゆきなさいよ」
我々は今夜は中華料理の予定だった。
確か前回も中華料理の予定が流れてフレンチになった。
私はそれでも良かったのだが、連れのフランス人が中華を熱望していたので、せっかくの申し出だったがやはり丁重にお断りをして次回訪問の約束をして店を後にした。
帰る時には、ディナーのお客さんがすでにちらほらと訪れていた。
私は随分長居をしてしまったことに初めて気が付いた。
ちなみに、この後我々はサン・ミッシェルにある中国料理店に向かう途中「ノートルダム寺院」の横を通った。
綺麗にライトアップされたその姿は、パリを象徴する建物のひとつだ。
ところが、この翌日この世界的に有名な寺院は火事に遭う事になる。
昔はこの屋根に上って「日向ぼっこ」もしたことがある思い出の建物。
これが私が見る最後の雄姿となってしまうのだろうか?