グールマンさんが投稿したコート ドール(東京/白金高輪)の口コミ詳細

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グールマンの勝手に備忘録(埼玉+αレストラン訪問記)

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閉店コート ドール白金高輪、田町、三田/フレンチ

1

  • 夜の点数:5.0

    • ¥20,000~¥29,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 4.0
      • |CP 5.0
      • |酒・ドリンク 5.0
1回目

2017/12 訪問

  • 夜の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気4.0
    • | CP5.0
    • | 酒・ドリンク5.0
    ¥20,000~¥29,999
    / 1人

食べたいものを食べたいときに・・・至福のレストラン


私が初めて「コートドール」を訪れたのは今からちょうど30年前。
この店が開店してまだ1年足らずの時だった。

そのころの私は、仕事上の顧客だった自称グルメの方々のグループに、和・洋・中を問わず、都内の有名レストランを連れまわされていた。
ここ「コートドール」もその定例会で初めて訪れた。

そのグループの中で唯一のゲストだった私は、こういった定例会やオフ会の時に、レストランやシェフや料理の紹介や逸話などを語るのが慣例であり私の役割であった。
従って、当時はネットなど無い時代なので、いつも事前にお店に行ってメニューを聞き出し、秘話・逸話などを教えてもらい、書籍や雑誌などあらゆる方法でネタを探していた。

この時も、場数こそ踏んでいるものの基本的には何も分かっていない若造の私に、ここのメートルの松下さんは懇切丁寧にいろいろと教えてくれた。

その日のメニューは、
「赤ピーマンのムース」
「エイとキャベツのシェリー酢バターソース」
「牛尾の赤ワイン煮込み」
「チョコレートのマルキーズ」
今も輝き続ける定番メニューである。

当日、実際に料理を食べた時は衝撃だった。
それは、六本木の「オーシュバルブラン」の「スズキのムニエル・オーシュバルブラン風」や銀座アスターで食べた「熊の掌」、またある相撲部屋で振る舞われた「ちゃんこ鍋」以来のものだった。
しかも、どれというわけでなく全ての料理が驚きの対象だった。

すごいレストランに出会ってしまったと思った。

後日、さっそく彼女を誘って再度訪れ「赤ピーマン」と「牛尾」を食べた。
半年後に結婚を予定していた我々は、食後に松下さんとお話しをして、斉須シェフが長く働いていたパリの「ランブロワジー」と共同経営者だったベルナール・パコー氏との話を詳しく聞いた。
それがきっかけで、新婚旅行時に「ランブロワジー」に行こうと決めて然るべきルートで予約した。
(それ以来「ランブロワジー」のマダムとは良い関係を続けている)

その後私は地方勤務になりなかなか来ることができなかったが、3年後に東京に帰任した直後、友人がここで結婚式を行うとのことで私が司会を仰せつかった。
私はサプライズのつもりで事前に松下さんにお願いして、当日斉須シェフに挨拶してもらうよう手配した。

ところが、当日我々を前にした斉須シェフは、何を思ったか今日の料理の作り方を延々としゃべり始めたのだ。
打ち合わせでは、「今日のメニューの見どころとそれにまつわる逸話など」とお願いしていたのだが・・・。

私は斉須さんの性格を全く誤解していた。
彼がこんなにシャイで口下手な職人気質(ある面パコー氏にとても似ている)だとは初めて知った。
それからしばらくは、訪れるたびにこの時のことを謝り続けたのは言うまでもない。

それでも、斉須さんも松下さんも私に良くしてくれた。
メニューには載っていないが、グルメな人々の中では有名な「トリュフパイ」(フォアグラをトリュフで挟んでパイ包み焼きにしたもの・・・これだけでコース料理1人分の価格になる)を、ポーションアップして連れとシェアして食べさせてくれたり、やはりメニューにはないが「ランブロワジー」で評判になった「手長エビのフイヤン」を斉須風で作ってくれたり、いつも私を楽しませてくれる。

また、季節によってメニューを変えて「旬」を提案したり、新作を発表することも忘れない。
「他に何か面白いものない?」と言えば、メニューに載っていないものでも惜しみなく提案してくれる。
予めお願いすれば過去のメニューでも作ってくれる。

実に懐の深いレストランだ。


ただ、私には心配事がある。
これは「ランブロワジー」にも言えることなのだが・・・。
斉須さんもパコー氏もそれなりに高齢になった。
この先どうなるのだろう?

パコー氏は息子さんが跡を継ぐのだろうが評判はイマイチ。
斉須さんは後継者を育てているのだろうか?

もし後継者がいたとしても、今の料理が食べられなくなるとしたらとても大きな損失だ。
特に「エイとキャベツの・・・」などは混ぜて食べて美味しい料理。
食材の持ち味を知り尽くしていることと、一緒に食した時のイメージができていないと作れない。


近年は「おまかせメニュー」の店がもてはやされている。
旬の食材を最も良い状態で提供する事が出来るからだと言う。
ワインペアリングがしたいからだと言う店もある。
食材の仕入れや在庫の処理も効率的にできるし、料理よりもシェフ個人の名や店の名を前面に出せて宣伝効果が得やすいという利点もあるのだろう。

でも、前回美味しかったものが次は食べられなかったり、美味しいものもそうでないものも複数回食べさせられる事になってしまう時もある。
ワインペアリングをしたいならそれ用のメニューを作ればよいだけだ。
ちなみにここ「コートドール」はコース料理も作ってくれるし、他店で支配人をしていたほどのベテランソムリエもいる。

この店の良いところは、食べたいときに食べたいものを作ってくれること。
メニューになくても一度出したものはまた作ってくれるところ。
旬を意識していないわけでもない。
新作も季節ごとに必ず出てくる。

後継者にもその力量を望みたいところだが、それはまた別の話。
やはり今はこの店で斉須シェフの料理が食べられる幸せを実感するとしよう。

2019/06/02 更新

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