2回
2012/09 訪問
ニューオリンズを代表するレストラン「アントワーヌ」
1840年創業にして、有名なバーボンストリートにもほど近いニューオリンズの一大繁華街・ラテンクオーターの中心に鎮座するこの老舗レストランは、クレオール料理を全米に知らしめ、ニューオリンズを一躍グルメの街に押し上げた。
ロスでも、ニューヨークでも、私がニューオリンズに行くと言うと、皆に「アントワーヌ」に行く事を勧められるほど有名なレストランだ。
クレオール料理というのは、ルイジアナのフランス・スペイン統治時代に、主にフランス料理をベースにジャンバラヤなどで有名な現地のケイジャン料理が融合して生まれた料理で、ケイジャン料理と違ってバターやクリーム、トマトなどをよく使う。
クレオール料理がフランス料理がベースだという事は「アントワーヌ」に行くとよくわかる。
例えば、フランス料理の「エスカルゴ(カタツムリ)」の代用料理として「オイスター・ロックフェラー」という牡蠣に自家製ソースをかけて加熱した料理があったり、「白アスパラ」の代用料理として「ブロッコリーのソースオランデーズ(白アスパラの定番ソース)」が有ったりする。
他にも「エビ」の代わりに「ザリガニ」や「カキ」で代用するメニューもある。
また、ここの「ガンボ」はトマトベースのスープにエビ・カキ・カニなどのシーフードがふんだんに使われている。
まさに堂々たるクレオール料理のレストランだ。
私が初めて「アントワーヌ」を訪れたのは、2012年夏「ハリケーン・アイザック」でニューオリンズ周辺が甚大な被害を受けた直後の事だった。
空港の閉鎖が解除されて直ぐの到着だったが、機内から見ても、車で120キロ程離れたバトンルージュという街に行くときも、台風の爪痕はイヤというほど見させられた。
ニューオリンズの街のスーパーからは食料品が消え、名物の路面電車は全面運休。
そんな中でも、ラテンクオーターには多くの人が訪れ、たくさんのミュージシャン達があちこちで自慢の演奏を披露していた。
そして「アントワーズ」も何事もなかったかのように賑わっていた。
今回は、アメリカで大学教授をしている日本人とその助手のアメリカ人との会食。
メニューを見ると目移りするような美味しそうな料理のラインアップ。
私が食べたものは以下の通り。
「オイスター・ロックフェラー」(メンバー共通)
先程も触れたように「エスカルゴ」の代用料理とし考案された「アントワーヌ」オリジナル。
「アントワーヌ」は、この料理で全米に名をはせたと言っても過言ではない。
エスカルゴより滋味も癖もあるカキに少しスパイシーで複雑な旨味のあるソースがよく合う。
一説によると、ほとんどの歴代大統領が食べたことがあるとかないとか。
「ワニのビスク」
ワニの肉の入ったスープとシチューの中間のような濃厚な赤ワイン風味のスープ。
ワニ肉は鶏肉より少し強い弾力があるが淡白な味わいが濃厚なスープとよく合っていた。
「白身魚のアーモンドソース」
ニューオリンズらしいと思ってオーダー。
白身魚の上にスライスしたアーモンドが乗せられ、その上から焦がしバターソースがかかっている。
アーモンドの香ばしさが淡白な魚と相俟ってとても良い後味が残る逸品。
「ベイクド・アラスカ」(メンバー共通)
これまた「アントワーヌ」の名物デザート。
スポンジケーキとアイスクリームをメレンゲで包んで表面を焼き上げたものに生クリームでデコレーションが施してある。
食べる時は目の前で各人に取り分けられて、チョコレートソースをかけて食べる。
カロリー過多のような気もするがビジュアル的インパクトがすごい。インスタ映え№1。
どれも美味しいものばかり(量もスゴいけど・・・)。
また、運ばれている料理を見ても、どれも美味しそうなソースがかかっているものばかり。
伝統的なフレンチの好きな私にとってはたまらない。
ちなみに、「アントワーヌ」知名度やドレスコードのせいで、いわゆる「高級レストラン」に分類されるが、値段は決して高くはない(HP参照)。
すごいレストランに出会ってしまった。
2018/02/22 更新
1840年創業にして、有名なバーボンストリートにもほど近いニューオリンズの一大繁華街・ラテンクオーターの中心に鎮座するこの老舗レストランは、クレオール料理を全米に知らしめ、ニューオリンズを一躍グルメの街に押し上げた。
私にとって、今回が5年ぶり2度目の訪問。
前回誘ってくれた方がまたここへ行こうと言ってくれたのだ。
ラテンクオーターは相変わらずものすごい人出。
所かまわずけたたましく鳴り響く音楽。
バーボンストリートは世界で最もうるさい通りの一つだろう。
その先にある「アントワーヌ」は昔からの佇まいをそのまま残す伝統あるレストランだ。
前回、私たちは「オイスター・ロックフェラー」や「ワニのビスク」や「ベイクド・アラスカ」などの名物料理を食べたので、今回は少し違うものを食べてみようということになった。
しかもこの店は量が多いので、一品を皆で取り分けて食べるようにお願いした。
「オイスター・フォッシュ」
前回訪れた時に隣のテーブルで食べられておいしそうだと思った料理。
トウモロコシ粉で揚げたカキにコルベールソースをかけてパンにのせて食べるカナッペ風前菜。
コルベールソースは、バターやエシャロットを入れた白ワインソースにグラスドビアンなどを混ぜた伝統的なソースで、最近はあまり見かけないが、ピエール・ガニエールが時々使っているのは知っている。
予想以上の美味しさで、この店の名物料理「オイスター・ロックフェラー」以上かもしれない。
「小エビのレムルードサラダ」
見た目が「エビチリ」に似ているこの冷たい料理。
ケイパーやマスタードやタバスコの入ったマヨネーズベースのレムルードはソースにもドレッシングにもなるマヨラー垂涎のサラダ。
「ガンボ」
やはりニューオリンズを代表するこの料理を食べなくてはいけない。
この店のガンボは、エビ・カニ・カキなどが入ったトマトベースのガンボ。
ワイルドライスも入っておりトマトスープのお茶漬けといった感じもする。
日本人好みの味。
「白身魚のザリガニソース」
大ぶりの白身魚のムニエルに「エクルビス・カーディナル」という「アントワーヌ」オリジナルで、大量のザリガニの入ったケイジャンスパイス入りベシャメルソースがかかっている。
ザリガニの香ばしさとケイジャンスパイスのピリッとした風味がソースにアクセントを与えている絶品ソース。
「鶏肉のロシェンボーソース」
ガーリックやあめ色タマネギと赤ワインを煮詰めたような「アントワーヌ」オリジナルの「ロシェンボーソース」の上にハムと網焼きした鶏肉を置き、さらにその上から「ベアルネーズソース(バターと卵黄とハーブのポピュラーなソース)」をかけた鶏料理。
香ばしい「ロシェンボーソース」と酸味のある「ベアルネーズソース」とハムの味が複雑な調和をもたらすとても奥の深い味わいの料理だった。
この店のソースは本当に旨い。
ソースが旨いのでパンもワインも進み、いつもお腹がいっぱいになってしまう。
出来るならもっといろいろなソースを味わってみたいものだ。
ちなみに、今回食べられなかったこの店の名物料理「オイスター・ロックフェラー」がどうしても食べたくなって、翌日、レストランに隣接したバー「エルメス・バー」へ行った。
この店は「オイスター・ロックフェラー」をはじめ「アントワーヌ」のいくつかの前菜が食べられる。
また、食べ比べをしたい人には、「ロックフェラー」と「ビアンビル(ケイヤン風の白ワインソース)」「テルミドール(トマトとベーコンのソース)」の3種類のカキ料理がひと盛りになった「オイスター1-1-1」がある。
このバーは、ドレスコードも無ければマナーもうるさくないので、旅行で行くならここはお勧めだ。
酒の種類も豊富で、特に、実はニューオリンズが発祥と言われていて、世界的に有名なカクテルコンペティションが開かれているこの街において、このバーは「カクテル」も古いものから新しいものまでいろいろと味わうことができる。
今回の訪問ではっきりしたのは、私のとって「アントワーヌ」は、ニューヨークの「ダニエル」やカリフォルニアの「アリス・ウォータース」系の店よりも好きだという事。
私の数少ないアメリカの訪問店の中では、少なくとも最も好きなレストランであるといっても過言ではない。
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余談ですが、ニューオリンズのルイ・アームストロング空港の案内表示板には、英語や、宗主国だったフランス語やスペイン語の他に、なんと「日本語」の表記がある。
街に居る限り、日本からの訪問客がさほどいるとは思えないし、アメリカだからODAでもないだろうし、どんな経緯でそうなっているのかは今のところ不明ですが、私にとってはちょっとした「トリビア」になっています。