レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
2位
1回
2014/06訪問 2014/07/10
(今回)
昨日昼は紀茂登さんへ。
久しぶりなのですが,玄関口も変更され,
個室がひとつ無くなっています。
最近は個室は使用してないようですね。
店内へ入ると,一枚板のすっきりとした白木カウンター8席(夜は6席)。
目の前にたくさんの美しいワイングラスが並べられていて
しかもワインセラーにもこだわりのワインもあります。
ご主人は日本酒よりもワインに精通しています。
お料理はおまかせコース形式のみ。
なお,カウンター席は写真撮影不可のため,
新しい写真はありません。
マイレビュアーのてるてる!(^^)!さまと
メニューがかぶりますので,
参照していただけたらと思います。
お酒のリストでクリュグとかボランジェが目に留まったことから,
最初に供されたのはシャンパーニュ。
ここはワインのメニューリストにあるものは,
グラス売りでも提供していただけます。
・淡路産の釣り鱧をロッソトマトソースで
鱧の身は薄いですが,ピカピカに光輝いています。
鱧包丁ではなくて,包丁で鱧切りします。
愛知県で生産者が4人しかいないロッソ究極トマトを
ベースに土佐酢を合わせたトマトソースです。
鱧にはディルをあしらっています。
これに合わせる器は陶器では無く,
イタリアのベネチアグラスの素敵な器です。
・千葉県房総産金目鯛の握り
藁で炙り,皮目を焼き霜にします。
これには自家製燻製塩を使います。
・鱧しんじょと賀茂茄子の椀
丸茄子は柔らかく,真薯はやや硬いでしょうか。
箸を入れると真薯が開くといいのですが・・・。
出汁は良いと感じました。
ただ,こういう椀は壺中庵虎屋が図抜けています。
・剣先烏賊の造り
今年はアオリイカが不漁のようです。
烏賊への包丁の入れ方がいいですね~。
魚醤(ナンプラー)と合わせて。
輪島のしょっつる的な感じです。
・鹿児島産鰹の造り
ねぎの葉,ブロッコリーの葉,みょうがをあしらっています。
・いぶりがっこ(漬物)にフロムダンベールのチーズをのせて
この相性はとても良いですし,日本酒とも抜群です。
・野菜のあんかけ
ゴーヤ,岡山産椎茸,白ねぎ,ゴボウが入っており,
トリュフオイルで。
・車海老と広島県産じゅんさい、タピオカをジュレで
・タコとオクラ
・白甘鯛と万願寺唐辛子の炊き合わせ
・宮崎雌牛とシマササゲをスリランカ産生胡椒の塩漬けと塩昆布と合わせて
この宮崎雌牛,赤身主体なのですが,熟成肉のような素晴らしい素材です。
スリランカ産生胡椒の塩漬けでばっちりと合います。
・とうもろこしとズッキーニの飯
米の味がホントにしびれます。
・鱧の骨出汁のお雑炊
・ブランマンジェ
器はベネチアンの切子です。
・小豆とクリームチーズの揚げ春巻き
薄茶と塩金平糖,
最後にお抹茶をたてて下さり、終了です。
カウンター席に座ると,
木本ワールドが広がります。
器にも凝っていて,ボヘミアングラスやら
素晴らしい器で,目にも楽しいです。
端正で斬新でオリジナリティあふれる料理,
繊細な気配りと接客。
無口なお客さんにはジョークあり,ユーモアあり。
接客サービスも秀でています。
また弟子の野々原さんの接客もいいですね。
気になるところは,やはり八寸は欲しい気がします。
あと価格設定は松川さんあたりを考えていること。
選ぶ魚とかも・・・・。
食材に制約無く,思う存分のお料理を作りたいという想いとも
違うように感じました。
(前回)
予約が取れないと評判の『紀茂登』さんへ昼に伺いました.
「ミシュランガイド京都・大阪・神戸 2012」において,初登場でいきなり二つ星を獲得された日本料理のお店です。「ミシュランガイド京都・大阪・神戸 2013」も二つ星です。
開店は2010年9月,京都の桜田出身の主人 木本泰哉氏は34歳ぐらいです。
トアロード沿いを北へ,ホテルトアロードの手前の路地を西に入った所にある山手ザ神戸タワーの1階にあります。南西の角です。
中山手通の再開発により建設された大きなマンションの1階,分厚い木とガラスで構成された独特のデザインの入り口が一際目を惹きます。まだ真新しさが残る店内は,白木で統一されています。
「紀」・「茂」・「登」と掲額された書にもセンスの良さが感じられます。お店の空間は完璧です。ところどころに日本料理店の工夫がしてあり,シンプルで且つ落ち着いた空間で,器・照明なども素晴らしいです。
席数は合計12席。カウンター席が6席,2名用の半個室,4名用の個室から構成されています。
ご主人は京都「桜田」出身の方です。桜田のご主人は、滋賀の「招福楼」出身の方なので,そういう料理が楽しめます。
昼は7500円,夜は15000円(税サ別・サービス料5%)のみの構成です。昼は12時,夜は18時に一斉にスタートします。田舎者の私は迷ってしまい,ご主人が迎えに来てくれました。すみませんでした。<(_ _)> 遅刻や前日・当日のキャンセルはくれぐれも気を付けてください。
まず瓶ビールを頼みましたが,供されるグラスがとても薄く,ビールの泡がとてもきれいです。少し力を入れて握ったら割れそうな感じです。
さて,先付にはずいきとタコのトマトのジュレです。新鮮トマトを使った程良い酸味の爽やかな一品からスタートしました。暑い夏の日にはこの酸味がとてもよく合います。
これなら日本酒が飲みたくなったので,徳島の山笑(今小町・中和商店)の燗酒,次に奈良の純米大吟醸の篠峯を冷酒でいただきます。
そして次に椀物が登場します。吸い地の味は流石招福楼さんの流れを汲む桜田さん仕込み,澄んだ出汁の感じと,いい感じに仕上げられた椀物でした。鱧も冬瓜も素材は良いし,茹で加減も抜群でした。おかひじきを添えています。ただ,塩分好きな私ですが,塩分のバランスの工夫と熱さが欲しいと思います。
カツオの八丁味噌。カツオに茗荷と生姜をのせています。カツオは初鰹的なさらっとした味で,八丁味噌ベースの,優しいですが,こんなにも相性が良いものかと思いました。
烏賊の八方地ダシのジュレ。烏賊の切り込みかたも良いですし,まとわりつくような歯応えの烏賊,八方地のダシはさすがだと感じました。
八寸はもずくとオクラ酢・インゲン胡麻和え・ウニとじゅんさいのタピオカ添え・スナップエンドウのチーズスープ・鯛のちまき・玉子のカステラなどです。
前菜や八寸は、繊細さが表れています。もずくとオクラ酢も素晴らしい出来映えですし,インゲン胡麻和えも胡麻和えがとてもいいです。スナップエンドウにチーズなども感覚が抜きんでています。玉子のカステラはカステラというよりも,しっとりとした濃厚プリンの感じです。卵の濃厚かつ上品な甘さを感じます。
そのような瀟洒な空間で供されるお料理はいずれも美しい器に盛り付けられ,季節感を重視した味も見た目も期待を裏切らない繊細な品々です。料理は日本料理に縛られず,巧みに構成されている印象を受けました。神戸や京都できっちり修行されている味です。
賀茂茄子と万願寺唐芥子を新生姜で・・・・・。これもよく考えてられています。万願寺唐芥子は全く辛さを感じません。どういう風に下ごしらえしたのか,聞くのを忘れてしまいました。
〆の食事では,ズッキーニととうもろこしのご飯でした。最近は流行なのか、こちらでも最後のご飯も,1テーブル分のお釜で炊かれたものが出ました。食事に合わせての精米したての新鮮なお米が釜炊きで供されますが,米本来の旨味を改めて実感させられます。一緒に宮崎牛フィレステーキがだされました。きんしんさい(ゆりかの蕾)が添えられています。
デザートはマンゴーとパッションフルーツとオレンジのジュース,ブルーベリーの炭酸,チーズの春巻き,メイプルシロップのブランマンジェ。どれも素晴らしいと思います。抹茶でしめくくります。
料理は全体的に優しい感はありますが,塩分など凛としたものがあり,決して薄味ではありません。勢いもありますし,緻密で繊細な料理に構成でした。
招福楼さんの系統の料理は厳選された素晴らしい食材を,その持ち味を引き出すために手を加え過ぎないのです。凛とした料理でとても好きです。ここの料理も「二流の食材なら出さない」という思いを感じます。そしてどれも美味しいのです。
お料理も去ることながら、器が素晴らしいです。若いご主人は,愛想もよく、大変よく気が利く方で,接客慣れしています。そして,美人な女将さんの着物姿がとても素敵です。接客は付かず離れずの間合いで好感がもてるものです。
また夜に必ず伺いたい,そう思わせる素敵な店でした。
3位
1回
2015/10訪問 2016/01/03
大阪近海の新鮮な魚介と浪速野菜を用いた独創的かつ柔軟な日本料理 弧柳
(再訪)
今宵は弧柳さんへ。
写真23枚追加しました。
店内は12席のカウンター席のみですが,
「浪速割烹 㐂川(きがわ)」さんも,
L字形ではありますが12席でしたね。
・徳島産あわび,ホワイトアスパラ,あわびの肝豆腐 ホワイトアスパラと鮑のすりながし
あわび肝豆腐は肝の味がダイレクトに伝わりますが,きれいな味わいです。
時期ハズレかとおもいきや,今も旬の北海道産ホワイトアスパラもシャキシャキ感があります。
・ずいきの胡麻酢浸し クコの実
蒸し暑いこの日にサラッと酸味が光りますね。
・宮津産天然生トリガイ・明石産真鯛・天然カンパチ・真鱧・ニュージーランド産生ホンマグロ 造り(魚庭)
カウンター席前では,松尾さんの包丁捌きも見る事ができて楽しめます。
宮津産天然生トリガイはかなり大きいですね~!!
時期ハズレではなく今もでているそうです。
これは少しだけ炙ります。
真鱧は生感覚をだしながら,でもフワッとさせて,
火入れの感じがとてもいいと思います。
肉厚の鱧を皮目は柔らかく身は殆ど半生で・・・・,
鱧はあちこちで食べていますが,私の知る範囲ではここの鱧の扱いは最高です。
天然カンパチは大徳寺納豆で・・・。
大徳寺納豆は納豆とは違い,お味噌やお醤油の種類に近いもので,
豆鼓というか,味としては、赤味噌を香ばしくしたような感じでしょうか・・・。
・のどぐろ・冬瓜・湯葉・ジュンサイ・おかひじきの椀
優しい口あたりですが,力強さもあわせ持っています。
コクと香りの膨らみが素晴らしい。
出しゃばらない上品なお出汁で,
なかなかハーモニーがあって美味しい一品です。
・摂津産トリガイ茄子と泉州産芝エビ 金針菜
トリガイ茄子は賀茂茄子と水ナスをかけあわせたもの
茄子に芝エビの頭を焼いてつぶした海老味噌をのせています。
金針菜はユリ科の花の蕾です。
・琵琶湖天然鮎タテ酢かけ焼き
鮎がとても素晴らしいと思います。
焼きかたもとてもいいですし,タテ酢かけ焼きの発想もさすがだと感じました。
蓮根は上に鮎の内臓,オクラの天ぷらは衣に炭酸を入れサクッと仕上げています。
一品ずつちょっとずつ味わいを変える工夫が楽しめる料理です。
・海ぶどうとフルーツトマト ウニのせ
海ぶどうってこんなにも美味しいんですね。
今まで食べていたのは何だったのでしょうか。
焼き物や油物のあとで,サッパリと頂きました。
・宮崎牛塩焼き 北海道産ヤングコーン
宮崎牛は三角バラ,一頭から5キロしかとれないサシがきれいに入って特上カルビのようです。
炭火焼きです。適度な脂の乗りで柔らかく美味しいですね。
ヤングコーンは岩塩を散らしてあり、熱々です。
・お粥
お粥って,満腹の胃にもすっとおさまるし,
なによりもおいしい米と水を同時に味わえるのが嬉しいです。
程よく米粒が残る粥は,ふわりとつるりと舌を通り過ぎます。
ハッ!とさせられるほどの,米本来の旨みや香りが口中に充満。
高槻産のキヌヒカリを生米から,箕面の湧き水で炊いたお粥です。
鯛味噌、塩昆布も自家製です。
・桃のすりながし
どれもひと手間,ふた手間と工夫がなされており,味の変化が楽しめました。
味にもお料理に変化がありますし,ひとひねりありの料理です。
接客も親しみやすいですし,いいかんじです。
派手さやパフォーマンスはありませんが,大阪の食材を活かした料理で,
リピートしたいと思う良いお店だと思います。
店主は㐂川(きがわ)で24歳で板場を任された松尾 慎太郎さんです。
今年で40歳になられましたが,浪速割烹の味とスタイルを忠実に守っています。
合わせだしは山の湧き水で一晩浸した真昆布を、翌日に3時間弱火で煮た後,
カツオ節と合わせてこしています。
カニやエビの殻や魚の骨をだしの隠し味として利用しています。
カウンター越しに客と会話しながら調理し,
ちょうど良いタイミングでできたての料理を出す。
その一方で、フランス料理などの新しい調理法も取り入れています。
新しもん好きの大阪人を喜ばす料理でしょうか。
旬な食材の組み合わせ,調理法,演出,味,盛り付け,器などの道具,
雰囲気のどれをとっても確かによく考えられています。
何といっても,その素材自体の味を最大限に
引き出しているのではないかという料理の腕が凄いですし,
このお店を出されたそもそものコンセプトというか,
ここまでやってきた心意気が半端ないように思います。
星評価に乗じて値上げされる店も多いですが,
良心的な代金で提供されています。
食材は値段ゆえに最高級ではありませんが,
常により良い素材を求められています。
料金を考えると,京都の2万円クラスより行く値打ちがあります。
そして,応援したくなるお店です。
接客に関してはとても良かったです。
帰りも忙しい中でも,ご主人に見送って頂きました。
店主の技術と経験をもとに,まだまだこれから進化されるでしょう。
(前回)
大阪北新地の「弧柳」さんに。
ANAクラウンホテルの北,すぐ近くにあります。
ミシュラン3つ星☆☆☆を獲得されていますが,
小さいカウンター12席のみのお店です。
店名は弧を描いて撓る柳ようにしっかりとした基礎と
柔軟な発想の日本料理を志されていることに由来しています。
大阪生まれの30代の店主松尾慎太郎氏は「浪花割烹㐂川」で12年修行の後,
2009年3月に北新地で柔軟な発想の日本料理店「弧柳」をOPENされました。
大阪生まれの店主はへつらうでもなく,でしゃばらず,
とても自然な立ち振る舞いです。そして築かれた独自の感性が頭抜けています。
「浪花割烹㐂川」,「太庵」,「もめん」さんと言えば当時ずっと行きたいと思っていた店でした。
店内は、明るく,広めのT字型のカウンターです。高級感もありますが,
ほどよくリラックスできる感もあり,
サラリーマンやOLでも肩肘張らずに楽しめるお店です。
夜でも1万円と1万2千円(税・サ別)という破格のお値段で提供されてます。
この違いはメインが魚or肉の選択を双方するか,
どちらかにするかの違いです。その場で変更もOKです。
ここは大阪の食材や大阪能勢から特別に運んだ水など地元大阪にこだわり,
選び抜いた日本酒や焼酎,またソムリエを呼び選んだワインを取り揃えるところなど,
細部にきめ細やかに食中酒として考えています。
器も素晴らしく,輪島塗の折敷で供される「魚庭(なにわ)」も素敵です。
店主は浪速は「菜庭」の字もあてはめ,河内平野の伝統野菜も多く取り入れて,
季節の花「りんどう」が添えられて,折敷がその季節の庭のようです。
徳島産あわびの毛ガニ黄身酢かけ 毛馬胡瓜 おかひじき・穂紫蘇を添えて。
あわびは蒸しあわびで柔らかいながら食感も良いですね。
毛蟹の黄身酢が上手く調和しています。大阪市都島の毛馬胡瓜の味も歯ごたえも良いです。
ささげ豆いんげん泉州べにずいきの胡麻びたし。
暑い夏に合うすっきりとした一品です。浪速野菜の力を感じます。
花はりんどう・石鎚の冷酒。
ホンマグロトロと赤身を卵黄黄身漬け・マゴチの造りとカマスの炙り造り・スズキのあおさ蒸し・
泉州泉タコタスマニアマスタードを北海道がごめ昆布で。
何とも言えない口どけの黄身醤油。
料理に合わせて,村祐をお猪口で飲む日本酒がとても合います。
大阪で関西では,ここのホンマグロが良いなあと感じました。
仕込みしているマゴチもかますも大きくてびっくりしました。
鱧落としと鱧の身のすり流し。
鱧は提供してくれる前に骨切りします。
太めでとても上質な鱧で,すり流しも冷たいです。
目の前で鱧切りの音を聞きながら,包丁さばきを見るのは,
やはり板前割烹ならではの良さです。これは,さすがの一品でした。
椀はスズキの頭をしんじょにして,ゆばで包んで。
万願寺唐芥子を4か月漬け込んだいかなご醤油で炭火焼きにします。
フレンチではメインの前にお口直しのソルベがありますが,
弧柳さんはデラウエア白和え 新生姜のかき氷で表現します。
島根江津産鮎 たで酢のピューレ素麺 茗荷 ツルマンネングサ。
鮎がとても素晴らしいと思います。高知県安田川や郡上の鮎よりも感銘しました。
焼きかたもとてもいいですし,タテ酢を素麺に併せる発想もさすがだと感じました。
宮崎牛 プレミアエリンギ ひめとうもろこし ユリの蕾を。
宮崎牛の炭火焼に味噌を塗ったのも,文句のつけようがありません。
長居オクラを米粉揚げで。これも良い出来映えです。
高槻産米のお粥・鯛味噌・泉州茄子・昆布を。
お店で使われている水は大阪箕面の天然水,お米は高槻のキヌヒカリです。
白米とか炊き込みとかよりも,これが一番米の味が出るのだそうです。
確かに米の香り高さを感じました。
デザートは桃の生姜煮 きなこの胡麻豆腐 クランベリー・ラズベリー・ブルーベリー入りでした。
発想が良いと思います。
大阪とその近海の新鮮な魚介や浪速野菜を用いた独創的かつ柔軟で繊細な料理です。
土地に根ざした食材,食文化を日本料理で感じることが出来ます。
地元魚の良いモノや地野菜に慣れている田舎者の私でも,
驚くような大阪の地野菜と大阪湾近海の魚が出てきます。
素材を生かした美しい地産地消です。
高級素材ばかりでウケることを狙っている寿司屋や日本料理店よりも良いと思いますし,潔いと感じました。
この地で,この店でしか味わえないものがいただけますし,
旬の「大阪」を感じることができる日本料理店です。
コースの流れは緩急があって良かったと思います。
北新地でも高過ぎて旨いモンは受け入れられないらしく,
この立地でこれは確かにコストパフォーマンスが良いと思います。
最後はご主人と若い方がお見送りして下さいます。
ミシュランが大阪のキタで唯一☆☆☆を付けたのも何となく分かる気がします。
4位
1回
2013/09訪問 2013/09/23
ここでしか過ごせない時間とサービス,どんなシチュエーションでもお任せできる質の高さ ラ・ベ(La Baie)
金曜日のランチは,ザ・リッツ・カールトン大阪 メインダイニングの ラ・ベ さんへ。
Baie とは入り江や湾という意味がありますが,この梅田と言う立地では不思議に思ってしまいます。
「ミシュランガイド」で毎年一つ星と,快適さやサービスを評価するフォークとスプーンのマークを5クヴェールを獲得されているフレンチレストランです。
ザ・リッツ・カールトン大阪と言えば日本一の接客で有名です。入口にいるベルボーイ,フロント・・・・・・。
そして,ラ・ベ (La Baie)と言えば大阪で一番評判なフレンチです。お値段も一流ですが,それだけ価値のあるフレンチレストランだと思います。
ホテルに足を踏み入れ,店内に入ると,ザ・リッツ・カールトン大阪は,「18世紀英国の伝統的なジョージアンスタイル」であり,18世紀の貴族の邸宅のような重厚感のある雰囲気なのです。
メインダイニングであるラ・ベも,絵画が飾られ,暖炉もあるゴージャスで上質なしつらえの店内は,まさに貴族の邸宅でのエレガントでゴージャスな雰囲気があります。入店した感想は,客席数やその雰囲気が昔の大阪全日空ホテル(現ANAクラウンホテル)のローズルームに似ていると思いました。
リッツ・カールトン大阪の5階と云うロケーションに,相応しい重厚さを醸し出すレストランで,サービスも折り目正しく丁寧です。
外資系のホテルでは,少し見下したり,距離感が遠いスタッフを想像していましたが,意外とリラックスできて,温かみがある空間でした。それでいて高級感は保たれています。
シェフのクリストフ・ジベール氏は,ニースのネグレスコホテルでシェフとして活躍され,新鮮な魚介を使った数々の皿を提供していただけます。2002年にスーシェフとして着任して,2006年から料理長です。
日本料理を研究し,クラッシクな正統派フレンチですが,フレンチの流行を取り入れつつ,和食感覚もとりいれた,季節感を感じるメニュー構成でした。
グラスシャンパンで乾杯して,アミューズは茄子のムースとカキノキ茸です。なめらかな舌触りの茄子ののムースの下には,エシャロットやシャンピニオンやカキノキ茸が入っています。ムースとの絶妙なマリアージュで,スプーンで口に運ぶたびに,う~んと唸ってしまいます
海藻入りバターと無塩バター,試験管のようなビンに入っているのは、唐辛子のパウダーとローズマリーの塩です。パンはミルクバターロール・オートミールをまぶしたパン・海草の入ったフランスパン・ライ麦を使ったフランスパン。海藻入りのバターや塩をパンにつけると,パンがとっても美味しくなりました。
ワインは2008年のサヴィニーレボーヌをチョイスしました。このワインもサヴィニーレボーヌとしては素晴らしいものです。
前菜はオマールブルー 柚子の香る三種盛りです。写真を見ていただければわかりますが,フレッシュタルタル アンディーブのクラッカン オマールのベニエ フヌイユのブランマンジェとコンソメです。オマールのベニエ フヌイユのブランマンジェとコンソメがとても秀逸なできです。
ベニエ とは,小麦粉を卵黄・牛乳でとき,泡立てた卵白を加えた軽い衣をつけて魚貝類・野菜などを揚げたものです。
もうひとつは,フレッシュフォアグラのテリーヌのミキュイ ポルト酒とバニュルスのレデュクション 柑橘と野菜のマリネです。ミキュイとはフランス語で,調理方法で半生にしたのものです。バニュルスというのはラングドックの甘口ワイン,レデュクションとは煮詰めることです。
フレッシュフォアグラのテリーヌは下にサブレを合わせています。このテリーヌがきれい味で濃厚で,更に奥深い味わいにです。
甘鯛のうろこ焼き セロリのモアロー 海老ブイヨン,モアローとはフランス語で「ふわふわ」という意味です。 甘鯛のうろこや焼きは甘鯛の素材が良く,うろこがパリッとして合わせた食感が見事でした。海老のブイヨンをサービスのかたが投入してくれます。甘鯛の下部には人参とセロリのみじん切りを敷き詰めていました。
フランス産ペルドロー 藁の香る胸肉と葡萄の葉で焼いた腿肉,サトイモのエクラゼ トリュフ風味 シャトーシャロンのソースクレムーズ。ペルドローはヤマウズラ,このジビエを藁で炙った胸肉と葡萄の葉で焼いた腿肉は味わいがあり,繊細です。
エクラゼとは,潰すとか砕く事です。シャトー・シャロンは数世紀以来,世界で最も偉大とされる辛口白ワインのなかで,その力強く複雑な味わい,そして比肩するもののない香りで高く評価されています。
デゼールは,洋梨の薫り高いポッシェ キャラメルのプラリネクリーム レモンのソルベ ポワールウイリアムのムース,もう一品はスクエアクリームのチョコレート オレンジのコンフィチェーレです。
知人のスクエアクリームのチョコレート オレンジのコンフィチェーレには,「ハッピーバースデー」のメッセージが書かれたデザートのプレートとキャンドルが運ばれてきました。ホテルにはパテシェがいますので,デゼールもしっかりしています。
最後に ピスタチオのフィナンシェとすだちのマカロンとエスプレッソコーヒーで締めくくります。
クラッシクな伝統的なフレンチに日本料理のエッセンス,シェフのオリジナリティ溢れる料理は見た目にも美しく,楽しいお料理に五感を刺激されました。
魚料理が得意なクリストフ・ジベール氏ですが,甘鯛もフォアグラのテリーヌもジビエも,料理も繊細で美味しいと思います。
接客は最近の外資系ホテルの接してくるサービスとは真逆で,斬新でとても折り目の正しい上質なものです。各テーブルに着く接客係が多いため,少しせかせかした感はありますが,グランメゾンの中でもここまできちんとしたサービスは,ハッと目が覚めますし,斬新だと思えてしまうほどの一流さを感じました。ここでしか過ごせない時間とサービスは格別だと思います。どんなシチュエーションでも、心から安心してお任せできる質の高さがあります。
大阪では,やはり素敵なグランメゾンのフレンチです。
5位
1回
2013/07訪問 2014/04/27
香川から大阪にやってきました。
天満2丁目にある 鮨 美菜月 さん。
天満といっても北新地のすぐ近くです。
場所は東梅田駅から南へ徒歩10分程度です。アメリカ総領事館の南斜め裏で,少し分かりにくい場所です。
店主﨑貴之さんは香川県高松市出身です。16歳から堺や阿倍野の寿司屋や割烹で修業して,2005年6月堺市のメゾンドール堺に同名の寿司店をオープンさせ,その後2010年6月に天満に移転しました。店名は店主の娘さん二人の名前に由来します。
どの席にも目が行き届くようにとカウンター席6席,小上がり一室4人程度の寿司屋さんです。
大阪においては,鮨原正さんとともに,堺時代から行きたかった店でした。ちなみにミシュランガイド一つ星を獲得されています。
店内は凛とした美意識を感じさせる空間で,思わず心洗われる美しさです。
店主は研究熱心で季節ごとの旬の素材を違った味わいに昇華させています。穏やかな酢飯がネタの存在を引き立てる,若き店主の熱意あふれる店といいましょうか・・・・・・・・・。
座ると飲み物を聞かれましたので,ハートランドのビール,次に大倉(金鼓)の濁酒のハイボール。これは店主のオススメです。
つきだしは長芋豆腐のじゅんさい添え。長芋を丁寧に豆腐仕立てにしています。スープ仕立てになっていてじゅんさいが入っています。暑い夏にはぴったりの一品でした。
カツオのヅケ・鰆のタタキ・甘海老。カツオはマグロのように醤油漬けにしています。味付けがいいのはもちろん,色もきれいに仕上がっています。鰆は炭で炙ってタタキにしています。甘海老は頭の味噌と子をそれぞれにのせています。酒の肴として,とても相性がいいと思います。
日本酒は店主の地元香川県の川鶴の燗酒にしました。
黄パプリカの茶碗蒸し。パプリカの風味・味をうまく表しています。うなぎ・そら豆・えんどう豆が入っています。
稚鮎と加賀胡瓜。稚鮎の味付けも抜群ですし,加賀胡瓜は歯ごたえの良さが光ります。
握りは鱚(きす)から始まります。身を編み込んで握ります。
ヨコワマグロはヅケで。
伊勢海老は生を海老の味噌で合わせて
ここで日本酒は福島の花泉にします。
ウニは北海道・青森・徳島の3種を入れています。
今が旬の北海道の鮭 ときしらずも握りで
小肌はこはだ・このしろ・シンコと。それぞれ米酢・赤酢・スダチ酢のシャリを使います。酸味の違いで全く風味が異なるのはサプライズです。
握り寿司は足赤海老,トリガイのひも,稚鮎,トリガイ,煮はまぐり,金目鯛と続きます。金目鯛も良いモノですが,トリガイのひもがなかなか良かったです。
別途はまぐりはさらに小鉢に煮汁とともにだしてくれます。吸い物的な感覚です。
煮あなごは白焼きみたいに薄い味付けです。東京の江戸前寿司的に醤油を強くしてもいいように思います。
玉子は厚焼きと関東的な玉を揃ってだしてくれます。
最後は宮城の綿屋の蔵元さん保管の非売品の山田錦を冷酒で。
ここの寿司は江戸前寿司というよりも,それをベースに,﨑店主の工夫した無数のオリジナル・新レシピの寿司と申しましょうか・・・・・・・。
いただけばどれもひと口で口の中がパッと明るくなるような旨さです。
穏やかな酢飯が食べるほどにネタの存在を引き上げます。ただシャリはパサッとして粘り気が強い感じです。もう少ししっとりした方が好みです。ネタはもう少し白身魚や鯵や鰯や鯖も欲しいと思います。
魚は締めたてと熟成も考え抜きます。
若い主人の熱意あふれる,粋を極めた仕事ぶりを感じます。
さらに肴や一品料理や寿司に合う日本酒を食中酒としてよく考え抜いています。魚も酒も鋭い目利きを感じます。
値段は15000円を少しオーバーしました。この素材・立地で考えてみると,他有名店と比べ良心的価格だと感じました。
大阪では素晴らしい寿司店でした。
6位
1回
2016/12訪問 2016/12/16
四季おりおりの風情と料理 京都吉兆の技が冴える 日本料理 ” 富田町 東條 ”
(再訪)
日本料理 ” 富田町 東條 ” さんへ伺います。
1年ぶりのが更新アップで失礼いたします。
写真12枚追加しました。
・柚子釜(鱈真子,合鴨ロース,なまこ,醤油漬けイクラ)
・クラスズキ造り
・セリと真鯛かぶらの小鍋
この店に関する特徴などは,
前回までにアップしている文章を参照させていただければ幸いです。
八方地のダシや料理の組み立て,盛り付け,
料理の季節感や器の使い方がとてもいいと思います。
過去伺った京都の未在のような料理を感じます。
ここのすり流し椀,のりあんかけは
是非とも食べていただきたいし,素晴らしいと思います。
ごちそうさまでした。
(再訪)
日本料理 富田町東條さんへ伺います。
6ヶ月ですが更新アップで失礼いたします。
写真19枚追加しました。
・まるはげの肝和え,牡蠣の有馬煮,たらこ甘煮,青柳酢味噌
最初からビシッときれいなヴィジュアルですね~!!
紅葉の終わりと雪の季節を感じさせるあしらい。
こういう季節感と器の演出は,やはり東條さんらしさを感じます。
・阿波牛A5すき焼きを味噌鍋で
八丁味噌を使っていますが,愛知によく行くことがあるのですが,
「カクキュー」と「まるや八丁味噌」,この二蔵が八丁味噌蔵です。
八丁味噌と名乗れるところはあまりないのです。
八丁味噌は他と比較して,複雑味と旨みがあり,
日本人の記憶の奥深いところに訴えるかけるこの匂いがあります。
ここはさらに酒粕と甘酒で味を深めています。
・まながつお杉板焼き,かます幽庵焼き,タラ白子柚子釜
しょう油・ミリン・酒を同じ量混ぜ合わせ幽庵地で,
幽庵地に柚子の輪切りか,絞り汁を入れています。
この幽庵地は,ピタリと決まっていて,
あらゆる味付けのベースとさえ言えるほどです。
これなら,白身系の魚ならば種類を問わず,非常に美味しい焼き物になるでしょう。
まながつお杉板焼き,かます幽庵焼きの杉板の香りが
まながつおにほのかに香りますし,
味付けや焼き加減はさすがですね。
・タラ白子の茶わん蒸しのりあんかけ
雲子と牡蠣の茶わん蒸し のりあんかけ,
鱈白子(雲子)を茶わん蒸しにのりを餡かけにしていますが,
これは食感といい,見た目も味も素晴らしいと思います。
徳島においていえば,店主が真摯に料理に向き合い,
こういうきちんとした日本料理の技術をだせているのは
ほとんどないのではないかと思っています。
ここは値段も他の和食店よりも手頃で高くありませんので,
京都など税サ込みでお一人さまがトータル2万円程度以上もかかる,
有名な日本料理店とは素材的には違いがあります。
東條さんにおいては,値段を含めたコストパフォーマンスを考えると,
それでも味わいや器や季節感を考えると納得するでしょう。
そして店主は食材や素材や調理法にアツい思いがあります。
毎日欠かさずに沖洲市場に通い,自然の草木を集めて,演出に深みを持たせていますし,
徳島市内の他の日本料理店や和食店よりは,きちんとされていると感じます。
ごちそうさまでした。
(再訪)
日本料理 富田町東條さんへ伺います。
写真14枚追加しました。
最初の一品は七夕飾りを意識したあしらいになています。
内容は鯛手毬寿司,青柳,合鴨ロース粒マスタード和え,
いちじくの胡麻みそ煮,サツキマスです。
これは八寸的なものでしょうか?
次は鱧と玉子豆腐の椀です。
昆布や鰹の八方地のダシがとてもいいと思います。
昔から日本料理では,吸い物の “あたり(味)” と
造里の “包丁さばき” が 板前の真骨頂とされてきました。
「椀もの」は日本料理の特徴とそのおいしさを
もっとも表現した料理といえます。
「吸い物」はどんなに旨くても,
季節の表現ができていなければ,
よい吸い物とはいえないのです。
3品めは,
「蘇民将来子孫家門(そみんしょうらいしそん かもん)」と書かれてあります。
伊勢の町を歩くと,家の軒先に
「蘇民将来子孫家門と書いた札がしめなわに
吊り下がっているのを見たことがあります。
その昔,この地を訪れたスサノオノミコトに,
貧しいながらも慈悲深い蘇民将来が一夜の宿を貸しました。
ミコトは旅立つ時,「今後は門符を門口にかけておけば,
子孫代々疫病から免れると言い残した」というそうです。
蘇民の子孫である証拠として門符を掲げ,
無病息災を願うようになったそうです。
つまり,家内安全の祈りを込めた「厄除け」の門符です。
ちなみに「笑門」とは,後に「蘇民将来子孫家門」を縮めた「将門」であり,
さらにこれが平将門に通じるのを嫌って,「笑門」になったと言われています。
災厄を払い,疫病を除いて,福を招く神として信仰されています。
これは,鰆,カツオ,マコガレイ造りですが,
まずは,茅の輪をくぐるようにして,一口お料理を頂き,厄除けをします。
その後,「蘇民将来子孫」の札のついた籠を外して食べるのです。
金目鯛とじゅんさいの鍋
じゅんさいとは水質の良い池沼にのみ自生する水草ですが,
食物繊維を多く含む透明のゼリーに包まれていて,
そのプルンとした食感が絶妙です。
その熱したじゅんさいに上質な金目鯛とあわせた鍋は絶品でした。
今回も日本料理について,いろいろと感じさせられました。
あらゆることがやり尽くされたようでいて,
「料理は固定観念から抜けさえすれば無限」だと思います。
客を喜ばせることを本気で考えていらっしゃることが,
出されるお皿から,言葉のすみずみから,ひしひしと伝わってきます。
いや,今回も楽しかったです。
これから学んでいきたいと思います。
(前回)
今回は久しぶりに東條さんに伺います。
1年3ヶ月ぶりの更新アップになります。
店内には桜が飾ってあり,春モードになっていますね。
写真14枚追加しました。
徳島において,季節感があり,和の技術を感じる,
美味しい日本料理を感じられる店といえば,
壺中庵,東條,夏見さんになるのではないかと思います。
そんななかでも,東條さんの季節感の表現の仕方と見合った器などの高級感がしっくりときます。
また,他は佐那河内や川内の辺鄙な場所であり,
ここは徳島市富田町にあるので利用しやすいのもいいですね。
・ヒラメの昆布〆と糸もずくのすだちジュレ
糸モズクの上に,昆布締めにした天然寒ヒラメと菜の花をのせ,
すだちジュレでミックスして楽しみます。
すだちジュレは酸味はそれほどきつくはありませんし,この相性はいいですね。
・胡麻豆腐と鯛の真子 おろしのりあんかけ
こういうの久しぶりですね。胡麻豆腐と天然真鯛の真子にのりを餡かけにしていますが,
これは食感といい,見た目も味も素晴らしいと思います。
・春野菜(うるい・こごみ・せり・新筍)と阿波牛のすき焼き
日本料理店らしい優しい八方地のダシがいいですね。
山菜や春野菜のウマさと,和牛である阿波牛の良さを堪能してきました。
ここに来ると,日本料理の技術を感じますし,日本料理の伝統に感動してしまいます。
伺うと毎回感じるのですが,日本料理ってやっぱり好きですね。
ただ,京都など税サ込みでお一人さまがトータル2万円程度以上もかかる,
有名な日本料理店とは素材的には違いがあります。
それでも味わいや器や季節感を考えると納得するでしょう。
そして店主は食材や素材や調理法にアツい思いがあります。
昨年,一昨年と京阪神のしのはらや和ごころ泉,弧柳,紀茂登さんも
伺ってみると,やはりいいと思いましたし,リピートしていきたいと思いますが,
ここにも伺って,いろいろな季節感のある旬のものを食べてみたいと思います。
(再訪∞)
年があけて,東條さんへ伺います。
店内はしだれ柳に紅白をあしらっています。
紅白でお祝い事,謹賀新年らしさといいましょうか・・・・・・・・・・。
最初の一品は,「蘇民将来子孫家門(そみんしょうらいしそん かもん)」と書かれてあります。
伊勢の町を歩くと,家の軒先に「蘇民将来子孫家門と書いた札が
しめなわに吊り下がっているのを見たことがあります。
「蘇民将来」と記した護符は,日本各地の国津神系の神
(おもにスサノオ)を祀る神社で授与されており,
災厄を払い,疫病を除いて,福を招く神として信仰されています。
また,除災のため,住居の門口に「蘇民将来子孫」と
書いた札を貼っている家も少なくないようです。
さて,一品目は正月料理ですね~。
金箔をあしらった黒豆・橙に入れた
ヒラメ昆布〆・いくら・からすみ・かずのこ・くわい芋とおせち料理が並びます。
花びらしんじょのお椀,ごぼうと金時人参を海老しんじょで挟み,
餅を上に載せて,菜の花と柚子をあしらい,金箔を添えています。
椀の熱さもしっかりとしており,舌がさっぱりとして,次の料理につながります。
厨房を見ていましたが,八方地の出汁は昆布も鰹節もたっぷりと使っています。
小鯛の宝恵籠,宝衛籠の上は杠葉(ゆずりは)を載せています。
子孫繁栄を意味するそうです。
雲子と牡蠣の茶わん蒸し のりあんかけ,こういうのは初めてです。
鱈白子(雲子)と牡蠣フライの茶わん蒸しにのりを餡かけにしていますが,
これは食感といい,見た目も味も素晴らしいと思います。
県外レビュアーさんにおいては,
徳島では何回か思わぬ支払いが発生した事もあることが多いと指摘されています。
私も他和食店で,ビール1杯・日本酒1合と高級食材ではない単品を2~3品くらい注文して,
びっくりしたことが多くあります。
都市圏と比べて客が少ないゆえもありましょうが,
大阪などの割烹へ食べ歩いて欲しいと思うことがあります。
しかしながら,ここは極めて支払い対価が良いと感じます。
(再訪∞)
柚子の香りがうれしい季節です。 冬至の柚子湯も、近づいてきています。
本格的な冬が到来する前,紅葉の最後になる時期,今宵は東條へ行きましょう。
まずは,かぼす釜で
イクラ・真子・なめこおろし・貝柱ガーリックオイル・カワハギもって菊昆布〆。
ここの生ビールはグラスが薄いですね~。
その後は那賀町鷲敷の日本酒「旭若松」を錫ちろりで。
ふろふきかぶら柚子味噌,かぶらの美味しい時期になりましたが,
中をくり抜いて牡蠣を2個入れています。
柚子味噌などこういう味付けがひと味違います。
牡蠣にも美味くしみこんでいます。
吹寄せ カマス杉板・鰆幽庵焼き・銀ふぐ唐揚げ・蓮根揚げ。
紅葉をあしらい,湯気が立ち上がる演出が素晴らしいと思います。
カマス杉板・鰆幽庵焼きの焼き加減はさすがですね。
銀ふぐ唐揚げは生姜を隠し味に,
蓮根揚げは甘さがあります。これは煮てから揚げています。
「柚子釜」は、柚子の上部を切って中身をくり抜き、
柚子を器に見立てて、中にいろいろな食材を詰め込む料理のことをいいます。
独特の清々しい芳香,さっぱりとしたほどよい酸味。
香り高い柚子は、日本料理に欠かせない存在です。
古くから,私たちの暮らしの中に深く溶け込んできました。
特に高知県の柚子は、特産として知られていますが,
次いで徳島県であり,那賀町木頭の柚子は有名です。
四国で全体の約3/4が生産されています。
柚子には抗酸化作用があり,免疫力を高めて風邪をひきにくくしたり,
肌の若さを保ったり,コレステロール値を正常に保ったりするそうです。
地元の神山産松茸ととらふぐと雲子の柚子釜です。
口の中に,国産松茸の香りと柚子のよい香りと風味が広がります。
柚子好きにはたまりません。柚子釜の黄色が鮮やかで,目でも楽しめる料理です。
柚子の香りは加熱しても消えないということでしたが、
柚子釜の匂いをかいでみると、確かにちゃんといい香りがします。
壺中庵 虎屋さんも,東條さんも吉兆(京都)出身ではありますが,
味わいや盛り付けが全く異なることも面白いものだと思います。
(再訪∞・水無月の東條)
まずは蛍かごででてきました。
蛍の季節ですね~。
そういえば,美郷では美郷ほたるまつりが開催していました。
新緑のもみじをあしらい,鴨ロース煮と真子煮柚子風味,
いちじくの胡麻味噌,さらにはハモをさらっとした梅肉スープで。
日本酒は地元井川町の芳水14号ですが,九谷焼のとっくりです。
椀物は冷製のつくね芋と汲みあげ湯葉のすり流しです。
店主はこういうのはとても得意です。
次にワタリガニとズワイガニの蟹みそ和え。
これも蟹の身と蟹みそと上手に上品に和えています。
日本酒の肴にも良いかなと感じます。
焼き物・油物は甘鯛油焼き,真竹のきんぴらを葉山椒・実山椒などの3種の山椒で,
もろこし岩石揚げ。脂ののっている甘鯛をさらに油をぬってきれいな脂を強調させて,
ふわっと,ふっくらと焼き上げます。
最後はあなご賀茂茄子柚子おろし揚げ浸しをオーダーしました。
視覚的にも味覚も四季を感じる料理,
今右衛門などの貴重な器を楽しめるのも良いと思う。
徳島では虎屋壺中庵もそうですが,
お客さんも上品なかたが多く,雰囲気が違います。
(再訪・3月の東條)
春の訪れを感じる3月,男3人で東條に・・・・・・・・・・・。
最初の料理は貝合わせ。
平安時代に男と女の上の句、下の句のやりとりの道具として盛んに用いた。
その後、蛤(はまぐり)が必ず一対であることから,
貴族や武士のい間で現在のトランプゲームの「神経衰弱」に似た,
出し貝と地貝の合わせるゲームが行なわれました。
江戸時代になり,貝の内側に金拍を貼り,金泥を塗り,
江戸文化とともに芸術的に上達。
さらに一夫一婦の貞節和合の意味から嫁入り道具として使われ,発達し,
360個を一組として蒔絵を施した立派な貝桶に納めた。
当時,女子が誕生すると貝を注文し,
仕上げるまでに約20年の歳月をかけたという話もあるそうです。
はまぐりの貝殻は,貝合わせという遊びに使われるように,
一対になっている相手以外とはぴったりと合いません。
こうしたことから,一人の人と生涯連れ添うように・・・という願いが込められています。
店内にはしだれ柳,貝合わせの皿には梅を添えています。
料理は貝合わせ,これは先ほど説明した女の子の誕生祝いと潮干狩りのイメージもあるようです。
貝を入れる網をイメージさせ,茶ぶりなまこ・もずくと牡蠣有馬煮・いいだこ山椒煮,貝は酢味噌で味付けています。
酢味噌は絶品です。
造里は赤貝・アオリイカ・かわはぎ焼き霜・ホンヨコ腹・甘海老。添えてあるネコヤナギも風流で,
徳島の日本酒(旭若松と芳水14号)も食事もがすすみます。赤貝は久しぶりに良いモノに出逢いました。
ふかひれとズワイガニの茶わん蒸しは絶妙な味付けをしています。
卵のフワッとした感触にズワイガニとふかひれのマッチングは素晴らしいと思います。
新たけのこは下茹でして,みりん・日本酒・醤油で味付けしながら,
焼き上げます。筍の味・香りもいいですね~。
下茹でしていますが,シャキシャキ感もあります。
日本料理の技術を感じますし,日本料理の伝統に感動してしまいます。
まだまだ通っていろいろな旬のものなどを食べてみたいと思います。
固い雰囲気はありますが,店主の気配り・接客も素晴らしいと思います。
(冬の追記)
12月の東條。
柚子窯3種類を。 添えられた葉に雪がのっています。季節感がありますね〜。
なまこを茶ぶりし、柚子に一日漬けたもの,柚子ポン酢で、真子煮、牡蠣は
山椒で煮た有馬煮,菜の花・貝柱・胡瓜はガーリックの効いたフレンチドレッシングとジュレで合わせています。
鴨鍋はシンプルに白ネギと鴨のみ。ダシが素晴らしく良いのですが,
ネギを包んでの鴨ロースは白ネギのしゃきしゃき感と鴨がとてもマッチします。
造里は紅葉をあしらっています。
あおりいか・本ヨコ・カマス・鯛・ブリですが,糸南京(糸瓜)を細かく刻んで添えていました。
イカは仕込みが難しいと思いますが丁寧な仕込みをしています。
ぼうぜ(エボ鯛)は徳島では酢〆が多いのですが,
この一夜干しは,焼き加減がとても絶妙で外は固め,
中はフワッと焼き上げています。
また,ぼうぜの小骨まで全て取り除くという丁寧な仕込みをしています。
徳島で食べたなかでは,一番かな・・・・と感じました。
11月の東條。
剣山スーパー林道の紅葉は終わりかけ,街中の紅葉には少し早い時期でしたが,
紅葉を見立てて,たらの真子煮・牡蠣の有馬煮・ふぐのオイル漬けでした。
ズワイガニのすりおろし椀は冬瓜・焼きうに・柚子が入っています。
こういう椀は他の和食店を凌いでいます。
ほうば味噌は松茸・牛ロース・玉ねぎ・なす・生姜でした。
松茸には意外にほうば味噌・牛ロースとは相性がいいのです。
料理の変化あり、肉ものもあり,素材の固体差を見抜く力量、
素材の合わせかたの巧さ、きれいで高級感のある器、凛とした雰囲気……。
相変わらず 東條はいい店だなぁ……と感じます。
壺中庵虎屋さんも,東條さんも吉兆(京都)出身ではありますが,
味わいや盛り付けが全く異なることも面白いものだと思います。
(秋始まりの追記)
9月初旬に 日本料理 富田町 東條に行って来ました。
今回はまだまだ蒸し暑い夏という気候でしたが、秋を感じようと……。
まずは花屏風で出された前菜はズワイガニ酢と鴨ロースでした。
花屏風もなかなか素晴らしいと思います。
鴨ロースはマスタードに隠れていますが、隠し味にケチャップを使っています。
2品目は蓮で包んだ料理です。徳島名産のレンコンですが、
鳴門あたりでレンコン畑をあちこちで見ることができます。
ハスが終わりの時期ということで、
ハスで包んだ旬の新秋刀魚の刺身と炙り刺身を二種だしていただきました。
次に新秋刀魚の塩竃。塩竃も丁寧に作っていますね〜。
ハスしかりでこういう見て、
四季折々の旬を楽しむことができるのも東條の良さだと思います。
次に松茸があったので、牛ロース肉のすき焼きをお願いしました。
松茸といえば土瓶蒸しや焼き松茸が主流なのですが、
意外に肉鍋とは相性がいいのです。
素材の固体差を見抜く力量、素材の合わせかたの巧さ、
きれいで高級感のある器、凛とした雰囲気……。
相変わらず 東條はいい店だなぁ……と感じます。
(前回、前々回のレビュー)
最近特にお気に入りで食べてみたい割烹はどこでしょうか?
季節感があり美味しい日本料理の店はどこですか?と尋ねられたら
迷わず日本料理 富田町 東條さんをオススメしたいと思います。
今回も水曜日の夜でしたが,個室2室,カウンター席5人が座れる小さな日本料理店です。
まず座ってみると,店内カウンターや器とか高級感が佇む雰囲気です。
店主 東條裕之さんは吉兆京都嵐山店など京都吉兆系の5店舗を経験され,
富田町の しまだ で料理長をされていたかたです。
そのときから器とかもこだわったものを少しずつ買っていたそうです。
確かに器が高級感があり,とてもきれいです。
例えばテーブル席にある ほたるかご は吉兆本店で使用していたのを買うほどのこだわりぶりです。
今回の付きだしはワタリガニとヒラメの昆布締めの土佐酢ジュレでした。
ワタリガニはこれから和食店でメニューにでてくる素材ですが、
香住や舞鶴・越前のタグ付き有名活ズワイガニよりは濃厚感があり
わかりやすい味で親しまれやすい味だと思います。
ヒラメ昆布締めは良いと思うのですが、
今の時期にヒラメは季節ハズレではないかと店主にお聞きすると、
『魚には個体差があります。』ということでした。
確かに素材は良いものです。
そういえば岡山市の鮨縁さんでもヒラメのもろみ醤油でだされましたが、良い食材でした。
真鱧湯びきとタコの梅肉和え。
真鱧は湯びきがとても上手くほど好い食感で、梅肉ソースが他和食店と格段に違います。
しらさ海老とヤングコーンの柚子もろみ和え、こういう合わせかたも脱帽してしまいました。
焼き物は徳島県木屋平の天然鮎。器というかカゴにいれられた盛り付けも目をひきますし、
その天然鮎は季節感を感じます。
今の時期の有名な高知県安田川の天然鮎より良いのではないかと思います。
これ以降は前回ですが、
つきだしは蒸しあわびとミョウガの土佐酢ジュレと自家製フレンチドレッシングで和えたものです。
この組み合わせは3人ともびっくりしたというか,土佐酢ジュレにドレッシングとは,初めてです。
こういう一工夫には脱帽です。6月からの蒸し暑くなる日にはとても合いますし,
酸味がアクセントに、またきれいに効いてきます。
メニューから鰺の刺身を注文しましたが,
刺身皿の上にカゴを置き,ぶどうを絡ませています。
鯵刺身やなめろうなどは、ここ二年間ほど徳島市の割烹では、
どういう訳かあまり見ません。脂のノリもきれいですね。
そして、これからぶどうの季節を迎えますが,
鰺といい,季節感がある料理です。
賀茂茄子と牛の田楽。正確には茄子は京都ではなく,
奈良なのでまる茄子と言うことになります。
私はあまり茄子を美味しいと思うことがなかなかありませんが,
茄子はとても素材が良くて,牛肉と八丁味噌で上手に合わせています。
八丁味噌のなかでも良いのを選んでいます。
里芋揚げの揚げ方もいいですし,
太刀魚の焼きも焼き加減がとても絶妙で外は固め,
中はフワッと焼き上げています。
また太刀魚は難しい小骨まで全て取り除くという丁寧な仕込みをしています。
虎屋壺中庵もそうですが,ここも日本料理の技術を感じますし,
日本料理の伝統に感動してしまいます。
まだまだ通っていろいろな旬のものなどを食べてみたいと思います。
芸者さんが来る しまだ さん出身ですから、客層も品の良いかたばかりです。
店主の気配り・接客も素晴らしいと思います。
7位
1回
2013/12訪問 2013/12/19
塩や香草の扱い,料理のハーモニーが素晴らしく,誠実な料理 エテルニテ
(再訪)
前回良かったので,夜にエテルニテさんへ再訪します。
少し早めの入店ですが,気持ちよく入れていただきました。
お手ふき,お湯をかけるとにょきにょきと大きくなっていきます。
白ワインはグラスでペルナン・ヴェルジュレス2008,アロース・コルトンの北側にある村で,格付け特級(Grand Cru)のコルトン,コルトン・シャルルマーニュの一部と,8つの1級(Premier Cru)クリマがあります。
アミューズは丸型のスティック状ですが,意外にもこれはフォアグラのムース パンドエビスのパウダーをまぶしています。パンドエビスはハッカク・丁子・はちみつ・クミンを合わせています。
あとは低温でじっくり焼き上げたメレンゲ,南イタリア産のオリーブをフランス産鴨のムネ肉の燻製で包んだものでした。
この3品はどれも素晴らしいと思います。
前菜はオマール海老と帆立をりんごのムース・りんごのキャラメリーゼ・りんごのチップを合わせています。さらにプラウド(カイワレ)とポワロー葱を添えています。りんごがさらっとした味を醸し出し,オマールと帆立にとてもマッチしています。発想といい,こういう組み合わせ方は面白いし,素晴らしい出来映えでした。
玄海灘の天然ヒラメのナージュ,タラの白子もありますね。素材は良いですね。ナージュにはサフランを入れています。あとはセロリのムース・ちぢみほうれんそう・黄カブ・白カブを添えています。穏やかな優しいナージュです。
ジビエは新潟産の青首鴨サルミソース。鴨のササミ・パースニップ(人参)・下仁田葱・鴨レバーのコロッケを添えています。
フレンチでよく扱われる青首の鴨です。フランスで言うコルベールと言います。これは上品なお味です。熟成を過度にかけてしまうとかなり強烈なものになります。天然鴨の匂いやクセが無く,真鴨の旨みがとても感じられます。熟成が良いと思います。胸はそれほどのクセもなく柔らかく美味しい部分です。
サルミソースは腸を除いた骨やクズ肉を焼いたあとに赤ワイン,フォンドヴォー,ブイヨンで煮出してから煮詰めてバターをしっかりと入れて仕上げています。こういうソースで食べる野生の動物類は美味しいと思います。
赤ワインはボトルでジュヴレシャンベルタン2004にしましたが,とても合います。力強く,男性的で豊満でエレガント,十分なコクと複雑さがあります。このワインはコルクを抜いて,空気に触れると力強く変身します。ジュヴレ・シャンベルタン は、ブルゴーニュ地方のコート・ド・ニュイ地区における北の出発点,ディジョン市から15km南下した地点にあるジュヴレ・シャンベルタン村とブロション村にまたがります。
パースニップ(白人参),都会のスーパーに行くと,にんじんの近くに,白いにんじんのような野菜が置いてあるのをよく見かけます。この白にんじん,実は単なる色素のないにんじん(キャロット)ではありません。欧米では,かなり普及した野菜です。日本ではまだ殆ど見かけないし,値段も1本 500円ほどとかなり高価です。また,にんじんと違ってとても硬いのです。
デゼールのエテルニテのショコラショー,ショコラ・ショーとは,かつてチョコレートが飲み物だった頃の姿を残したメニューで,温かいチョコレートドリンクのことです。和栗ののった栗のクリームブリュレの出来もいいと思います。特にデザートは一品一品が超一流のパティスリーでも食べれないほどの感性があります。
夜のコースも魚料理までは,全体的に穏やかで優しい味付けですが,全てが素晴らしい料理でした。使われている野菜や果物が図抜けています。メインの肉料理のソースはあいかわらずしっかりとしています。またグラスワインを含めて,ワインも洗練されています。
全てにお値段以上の感動と印象が残ります。シェフの誠実な料理を感じます。サーヴィス料が10%加算されても,また伺いたいと思います。
(主レビュー)
靭公園にあるフレンチレストラン エテルニテ さんへ。
ミシェラン ☆をずっと獲得されています。場所は阿波座駅1番出口から本町通りを突っ切って靭公園沿い南側の通りを進むと右手の角に在ります。
サービスのかたが玄関で全員でお出迎えされており,びっくりしましたが,嬉しくなりますね。
お手ふき,お湯をかけるとにょきにょきと大きくなっていきます。おもしろい趣向ですね~。
料理がくるとレストランに対する印象はガラっと変わります。オーナーシェフ永野良太さんは,フランス☆☆☆~☆までのレストランを修業して,カランドリエのスーシェフまで勤められています。
まずは前菜,自家製のフランス産真鴨の塩漬け(生ハム)とフォアグラのムース。生ハムは添えられた塩・胡椒でいただきます。フォアグラのムースは添えられたラスク的なフランスパンでいただきます。いきなりの美味しさに脱帽です。フォアグラのムースはフレッシュ感がありますし,鴨のハムは初めてですが,個性的な旨みがあります。これは素晴らしい。
毛ガニと毛ガニみそをじゃがいものピューレを帆立貝で包み北海道産すじこをのせたもの。マヨネーズが隠し味になっています。柚子のブランマンジェを下に敷きつめでバジルソースを少し。はっかくとクミンシードのサブレを添えています。すじこがたっぷりでプツプツした食感にたまらなく官能を揺すぶられます。食べた時に,この3種のハーモニーが素晴らしいと思いました。
パンにつける無塩バターとフランス産塩,この塩がしょっぱ過ぎず,苦過ぎず,とてもいいと感じました。
魚料理は玄界灘の甘鯛,ブールブランソースとタップナードソースです。甘鯛の下にはトランペット(茸)が敷き詰められています。ブラックオリーブの粉末と添えられている野菜は芽キャベツと安納芋です。甘鯛は皮がパリッとしていますし,ひと味違う本物の味ですね~。
ハンガリー産マンガリッツァ(豚)のロティ,Mangalica(マンガリッツァ)はハンガリー原産の豚です。そして19世紀には、この豚の産出国として、ハンガリーはヨーロッパ中で最も良く知られていました。
豚舎ではなく広々とした森や草地といった自然環境の中で,かぼちゃ,テンサイなど新鮮な自然食のみを食べて育ちます。マンガリッツァは豚舎ではなく広々とした森や草地といった自然環境の中で新鮮な自然食のみで飼育されます。
マンガリッツァを初めて見る方は,そのかわいらしい毛むくじゃらの姿を羊と間違えるかもしれません。今ではミシュランガイドに掲載されている世界のレストランで饗されるまでになりました。霜降りでジューシーな肉質は,他の豚肉とは一線を画す味わいで,イベリコ豚や神戸牛に似ていてたいへん美味です。普通の豚肉より濃く,牛肉のような色をしたその豚肉は,美味しいだけでなく,他の豚肉に比べて消化がよく健康にいいのです。
マンガリッツァ豚肉は霜降りの多い肉質にも関わらず,コレステロールの原因となる飽和脂肪酸が少ないため健康にも良く,ビタミンやミネラルを豊富に含むため栄養面でも優れています。また,老化を防止すると言われる酸化防止の酵素も含んでいます。
エゾ鹿のポワレ,ポルト酒やねずの実を入れた赤ワインソースです。この赤ワインソースはクラシカルですが,とてもいいと思います。山口のはなっこりー・加賀蓮根・丹波黒豆を添えています。広大な自然の中でたっぷりと草を食べて健やかに育った蝦夷鹿は, 肉付きがよく赤身質の素晴らしく,クセも無く,そして雌鹿なので肉のキメが細かく柔らかな肉質です。高タンパク・低脂肪でミネラルが豊富というヘルシーさもあります。
お口直しのデゼールはグレープフルーツとそのジュレにバニラを載せています。グラニテ・ソルベ以外が出てきたのは初めてで,新鮮な感動がありました。
柿のラビオリ スターアニス,柿の風味と香草の相性も良いですね。和栗ののった栗のクリームブリュレの出来もいいと思います。特にデザートは一品一品が超一流のパティスリーでも食べれないほどの感性があります。
料理は,お肉やお魚の旨味や,野菜の素材そのものの食感と味が十分に活かされていて,新鮮な感動がありました。デザートも小菓子もレベルは高かったです。料理は、センスと技術が光っています。シェフは真面目で向上心がある方なのでしょう。どの料理も誠実な料理で,間違いなく美味しく満足できました。
各皿のメインといえる食材は,シンプルに良い高級素材を活かした調理,それを引き立てながら調和していく脇役的食材にアレンジが加えられています。ソースもしっかりとしており,非常にレベルが高く,脇役的食材のアレンジへの拘りも強く感じます。メイン食材もソースも丁寧に調理されています。また,全体的には優しい味付けで上品に仕上げています。
特に印象に残ったのは,きめの細かいサービスです。料理が運ばれると同時に,珍しい野菜は生のものをトレーに載せて,特徴や味・食べ方の説明をしてもらえます。また,白い手袋をはめて食器を並べるのも,清潔感があり女性ウケするのでは・・・・・・・・・。
私たちの席以外は,女性ばかりというのも頷けます。また,昼にもかかわらず,女性のかたのほとんどがグラスシャンパンや発泡ミネラルなどを飲んでいます。
お値段以上の感動と印象が残りました。この内容でランチコース¥4500です。別途サーヴィス10%加算されても,コストパフォーマンスが素晴らしすぎです。デートはもちろん,家族や友人ともゆったりとした時間が過ごせます。窓から靭公園の木々の動きが体感できるロケーションも最高ですね。
あと要望とすれば,昼の料理4500円~・夜の料理が7500円~なので,5000円~6000円代の手頃なワインを揃えて欲しいと思います。
「エテルニテ」とは,フランス語で永遠という意味です。 永遠にあり続けて欲しいレストランだと思いました。
帰り際に店主とマダムが深々と頭を下げて下さっての丁寧なお見送りです。大阪・兵庫・京都のフレンチの中でも,大阪の「エテルニテ」と紹介したくなる,そんなお店でした 。
8位
1回
2013/09訪問 2013/11/20
土の香りと野菜の素材の香りをひきだす Fujiya 1935
大阪のビジネス街の鑓屋町,谷町四丁目近くのビジネス街にある「Fujiya1935」さん。
予約は店舗のWebから。open tabeleのシステムを利用されていますが,眈々とした自動受付メールだけなので不安になるシステムです。
少しわかりにくいですが,見つけました。高層ビルに囲まれた3階建ての小さなお店です。
大阪でミシュラン☆☆☆は「弧柳」と「Fujiya1935」など4店のみなので,どういう店でどんな料理なのか楽しみがあります。
店主藤原哲也さんは,専門学校にてフランス料理・製菓を勉強した後,イタリアで修行後,勉強の為に訪れたスペインにて、先進的な現代スペイン料理に刺激をうけ,「L'Esguard(レスグアルド)」にて経験を重ねられました。2003年に帰国後「Fujiya1935」をスタートさせます。
当時は,エスプーマや液体窒素を駆使した技,注射器や試験管で供される演出などの強烈なインパクトをもつ料理で話題を集めました。「香りをかいだり,五感で味わうことで,脳を刺激し,新しい味覚体験へ導きたいのです」ということでした。
店内入ると,すぐウエイティングルームで,しばし待ちます。レモングラスのハーブティーをいただきました。
ウエイティングルームを抜けると,調理場を横に上へ上がります。レストランは2階となります。空間が素晴らしいですね。決して広くないスペースですが,1Fはウエイティングと厨房のみ,3Fはトイレのみで,2Fの客席も5~6テーブルのみの贅沢さです。店内は意外なくらいウッディーです。雰囲気は一本筋のあるこだわりがあっていいですね。
席に着くとソムリエがドリンクの注文を取りにきます。3000円のワインセットを注文しました。内容はカバ,白2種,赤1種,最後は数種類のリキュールから選べます。これは良心的で破格な値段です。水も滋賀県の石山寺・本願寺の地下水とのことでした。
さて,コースのスタートです。
チーズボール・お茶で茹でた落花生・気泡をたくさん含ませたトマトのパン。ほぼ一口サイズの料理が同時に出されてきました。チーズボールはチーズの濃厚な香りです。気泡をたくさん含ませたトマトのパンは,蒸しパンみたいな生地ですが,トマトの薫りが鮮烈です。クリームが結構強めに感じました。
子持ち鮎と万願寺唐芥子,琵琶湖の子持ち稚鮎はサクッとした食感です。万願寺唐芥子にはオスの稚鮎の内臓のムースを上にのせています。鮎の風味はたっぷりです。ソースはクレソンとグリーンマスタードの濃厚ソースです。
パンは,木箱に入って出てきました。中には熱く焼かれた石が敷いてあり,必要なだけちぎって食べればパンがなかなか冷めないです。バターは金胡麻と無塩の高山のバターと二種類で食べられます。
富山産白エビ 数種類の豆,茹でたしまささげ・モロッコ豆・インゲンと白エビを混ぜ合わせ,上下に揚げたカダイフで挟んでいます。薄えんどう豆の粒子をソース代わりに使用しています。
渡りガニ とダダ茶豆とミモレットのスパゲッティ,カニの風味が濃厚に伝わってくるパスタです。ダダ茶豆とミモレットがうまく調和しています。
シャラン鴨胸肉 天然の茸 ザクロ,長時間かけて火入れをし,外側をカリッと焼いた仕上がりです。火を通した肉は実にジューシーで柔らかいですね。つけあわせは,ビーツとフォアグラのムース,鴨のブイヨンとマッシュルームのソースです。天然茸は信州産舞茸と岩茸でした。
デザートは,1品目は温かい葡萄と冷たい葡萄,2品目は焼き栗と栗のプリン ラム酒風味のコーヒーゼリー。こういうのはさすがだと思いました。
秋の味覚を感じます。エスプレッソも抜かりがありません。
全体的にシンプルに美味しく,素材の味・香りを強烈にひきだす構成の料理という感じでしょうか。品数も多いし驚きやワクワク感がありました。
皿は指定した物を作ってもらうとの事で料理にぴったりです。和の心を感じる器に惹かれました。店主は京都のお店にもよく食べに行かれるそうで,素材などもその影響があるようです。
ウォールナッツの木のテーブル,アカシヤの木の皿,桜の木のパン取り皿など、空間全体を上手に活用しています。
料理の味と値段と接客サービスの良さ,そして空間が上手くバランスがとれていると感じました。
9位
1回
2016/03訪問 2016/03/30
(再訪)
今宵はユウヤーさまのリクエストで美食忍者さまと
男3人で " やま下 " さんへ 伺います。
3ヶ月わずかの更新アップで失礼いたします。
写真25枚追加しました。
・ごま豆腐
・タコ小豆煮
・北海道産毛ガニのカニ味噌和え
・鰆タタキ
・真鯵タタキ
・長崎産のどくろ塩焼き
・スミイカ
・赤貝
・本ミル貝
・あこう
・こはだ
・ホタルイカ塩辛の軍艦巻き
・〆真鯖
・煮ハマグリ
・厚焼き玉子
・胡瓜巻き
" やま下 " さんに関して,私が感じたことは,
前回までに述べていますので,
参照していただければ幸いです。
タコの小豆煮や蒸しアワビ,長崎産のどくろ,
極上のあこう,徳島産ミル貝や赤貝,こはだ,煮ハマグリ
などを仕入れていることにも評価したいと思います。
キュウリ巻きは,ここのオリジナルというか,
細切りにしたキュウリをすりごま,本わさびで巻いています。
これもオススメでした。
徳島においては,
江戸前寿司の捨六さんもかなり良かったので,
後日アップする予定ですが,
寿司屋としての肴や一品料理,握り寿司などに関しては,
やはり, " やま下 " さんだと思います。
北新地の さえ喜さんなどの高級な有名寿司屋さんは
現在は客単価3万円ですから,同じようにはいきませんが,
素材選びは真剣にしていますし,全てがおススメなのはわかります。
店主はお客さんに提供する前に必ず味を確かめます。
仕事ぶりを含めて,お客さんにウマいもんを
食べて貰おうという心意気は感じますし,
そういうことを含めた気配りは実にいいのですが,
客あしらいというか,お客さんに対して注文したいような,
柔らかい雰囲気作りがもっとできれば・・・と思うのです。
目先や見た目だけの接客だけでは無い,
徳島で食べることができる江戸前寿司として,
経験していただければ嬉しく思います。
ユウヤーさま,美食忍者さま,
楽しい時間を過ごすことができました。
たいへんお世話になりました。
ありがとうございました。
そして,ごちそうさまでした。
(今回)
今宵は やま下さんへ
先日は鮨たけがみさんで,江戸前寿司の刺激をうけたものですから,
食べ比べというか,旬の肴をつまんで,
江戸前寿司を食べに行きましょう。
1年以上になりますが,更新アップいたします。
写真30枚追加しました。
・菜の花・タコの柔らか煮・しらさ海老・合鴨ロース煮
・烏賊の塩辛6日目
・酒肴ワタリガニ
・握り寿司
スミイカ
あこう(アズキハタ)
鰆
サヨリ
鯵
〆鱚
〆鯖
由岐産黒ウニ
北海道産イクラ醤油漬け
煮ハマグリ
厚焼き玉子
タコの柔らか煮や蒸しアワビ,合鴨ロース煮などのつきだしの一品や
烏賊の塩辛やワタリガニが酒肴として,とてもいいので日本酒が進みます。
ワタリガニも焼いたり,蒸したりして,そのまま提供するのではなく,
食べやすく,かつヴィジュアルもいいのがいいですね~!!
つまみをいただきながら、握りに移行する楽しみがありますね。
握り寿司は小ぶりではありますが,酢飯は適温。
口の中でほろりとほぐれるおいしい鮨ですし,
ここは繊細な握りだったと思いました。
ネタが新鮮だけではなく、光りものや煮もの、蒸しもののネタ、
要するに「仕事をしたネタ」をきちんと真っ当に提供していることもそうですし,
気の利いた酒肴と江戸前寿司を貫く姿勢に評価したいと思います。
そもそもは冷凍技術も流通手段も発達していない時代に,
魚介類が新鮮なうちに,加熱して「煮る」,酢や塩で「締める」,
醤油やたれなどに「漬け込む」というものだが,
現在に至っては,いわゆる「仕事」を施し,
生よりもその魚介類の旨味を凝縮させる工夫の結果,
素材の旨味を最大限に引き出されているとは思う。
徳島において言えば,いつも安定して旨い江戸前を喰わせてくれる。
私なら店に認められる,店に選ばれた客になりたいとは常に思っている。
少し飲み過ぎたかな・・・・。
ごちそうさまでした。
(前回)
今宵は やま下さんへ
旬の肴をつまんで,寿司を食べに行きましょう。
今年2月にリニューアルオープンしています。
さて、この店に関してはさまざまな意見もありますので,
若干,私なりの意見を述べさせていただきます。
それは,主人の接客ということに尽きると思うのですが,
バブル以前の30年前の寿司屋の親方と客との応対だと感じています。
それは東京などで,昔に江戸前寿司を食べ慣れたかた,
ネタの旬がわかるかたにこそにわかる接客といいましょうか・・・。
だから,上質の接客を求めたり,言葉ぶりに気になるようかたは,
行くべきではありません。
ただし,食べ終えた後の支払い対価を考えると,
とても満足されると思います。
徳島で本当に美味しい寿司という観点だけで考えると,
今回とりあげたやま下,鳴門の寿し勝さん,
次は栄町のほら鮨さんというところでしょうか。
確かに寿司屋として,あなたが現代的な接客サービスを望むのなら,
東京や大阪や金沢の高級寿司店に伺うか,
徳島内で接客という観点で寿司屋を探すかたならば,
むしろ接客マニュアルがしっかりしている,
大手回転寿司チェーン ○シローのほうが
満足することでしょう。
彼の接客というのは,カップルで来店して年輩のかたが,
日本酒を互いに飲んでいて,女性が飲めなくなる頃を感じとると,
さっと「お茶でも入れましょうか?」という感性なのです。
最近は不景気ゆえに,過度で必要以上の接客サービスの店が多い気がします。
確かにここは接客そのものが上手ではありません。
でも,そういう接客の仕方がとても新鮮な経験だったり,
これが店と客の本来あるべき姿なのかと感じたりします。
さて,主人の山下広明さんは東京で長く修業を積んでいます。
女性スタッフはいるときもありますが,基本ひとりでやっています。
店主は,「特別なものは何もないんです。
ただ,ひとつひとつの仕事は手を抜かない。
それがウリといえばウリ。」と謙虚に話します。
玉子の握りは厚焼きのカステラ風だが,
徳島には小エビがたくさん揚がるし,和三盆もある。
だからそれを活かして海老のすり身と玉子を厚焼き玉子にする。
海老の鮮度が難しいと思うが,ふんわりとさせている。
どのネタに対しても手間を惜しまず,
存分に美味しさを引きだしている姿勢に敬意を表したい。
徳島県において唯一真っ当な江戸前寿司を味わえる。
店主もあと少し気さくさがあればと思う。
つきだしは蒸しあわび・たこ小豆煮・菜の花でした。
蒸しあわびも味付けが良いですし,
タコの小豆煮とは発想といい,なかなかいいと思います。
こういう,たこの柔らか煮は、江戸前では春などは桜煮なんかもありますが、
これは柔らかさの中に芯を感じる、江戸前の仕事を感じさせるものでした。
最初の一品から気合いが入っています。
最初の一品は残り物を上手く使う店が多いのですが,
こういうのって次に何を頼もうか・・・・・と楽しくなってきます。
最後にですが、ここの店主は日々魚を見て、
嫌がられても魚屋任せにせずにきちんと選びます。
徳島の有名な和食店はだいたい魚屋まかせで、
たまに素晴らしく良いのは入りますが全体的ではどうでしょうか?
全体的には上手くあしらわれているように思います。
和食の料理人さんなら,
毎日河岸に通いつめて,市場や魚屋に怖がられる、
嫌がらる料理人になって欲しいと感じているところです。
大阪・北新地などでおまかせ2万円前後の高級店と比較すると見劣りします。
でも,高級寿司店を食べ慣れたかたであれば,
この値段でこの仕込みや素材なら,味も含めて満足するでしょう。
支払い対価と素材と仕込みの努力,江戸前の技術を考えて4.6としました。
次回は氷見などの寒ブリ,タラ白子,天然トラフグやクエを楽しみにしましょう。
(前々回まで)
秋田町の『やま下』はオープンしてからのつき合いだ。最近は行く回数が減っているが……。
気を抜かず、手を抜かず。どのネタにもまたビールや日本酒にも真摯な仕事ぶり。
気難しく繊細なる店主であるのだが、美味いものを食べさせてくれる店主と向き合うことは、
素人の私にとっても緊張感を感じながら、
食することが若い時代の食べることに目覚めた、
遥か昔の割烹や寿司屋に行ったときのことをいろいろ思い出させる。
昔は高松でも割烹はフリで入ったら入店を断られたりした。
また寿司屋のオヤジは気難しいので、
どうやったら好かれて美味い肴や寿司を食べさせてもらおうか考えてたりした。
私的には客が店を選ぶのでは無く、店に選ばれたい客になりたいと常々思っている。
『やました』の店主は生ビールを毎日真面目にサーバーや配管を丁寧に洗う。
ここで飲む生ビールはホントに美味しい
私は馴染み以外の飲食店は、だいたいはビールなら瓶ビールにする。
また日本酒の燗酒も湯煎で出してくれる。
日本酒も純米吟醸あたりまでなら値段は安い。
芋焼酎もきれいな和陶器の器にたっぷり入れてくれ、
だいたい一杯五百円。
また湯割りのポイントをきっちりと掴んでいる。
ここは酒代は極めて良心的である。
店主は穴吹出身で東京四ツ谷の寿司屋、
当時高松でJCもよく使う繁盛店だった寿司屋にいた。
高松時代から丁寧なる仕事ぶりには感動したものだった。
当時の親方は口八丁・手八丁の仕事は早い、
応対は上手いかただったから正反対ではあった。
つきだし は貝柱・とこぶし・菜の花・新豆と早春を感じさせます。
とこぶしは煮付けたり、アワビも蒸したりすると一層美味しくなる。
アワビもそうですが、コリコリ感だけが美味しいと感じるのではなく、
火をいれての美味しさというか、
塩蒸しなどの蒸しアワビの感覚がいいなぁと感じます。
富山県氷見の天然寒ブリ。やっぱり脂がきれい。
天然ものは当たり外れはある。でもこういう寒ブリをいつも食べたいなぁ……。
氷見の寒ブリ、やっぱり旨いですね〜。
徳島の養殖ブリ、さらには天然ブリとは全く違います。
北陸では年末年始にかけて、
親戚・身内の贈答用にバカ高い値段になりますが、仕方ないかも知れません。
スルスルと大七きもとひやおろしの燗酒の日本酒もすすみます。
握りはまず、アオリイカ
握りはアオリイカは隠し包丁でねっとりとしています。
ヒラメは旨味十分,そして甘鯛昆布〆とどれも申し分ありません。
こはだは酢と塩のバランスが良いですね~。
イワシ炙り葱ごまはカタクチイワシの味をを上手く引き出しています。
煮はまぐりも江戸前の味です。
イクラ醤油も塩漬けとは全く違います。
鰆の握り・脂が白く光り、特上馬刺しみたいな雰囲気。
これはビックリした。
鯵の握り。
マグロヅケの握り。
柵取りした赤身を醤油に漬けることで、
水分が抜け、ねっとりとした歯ざわりになります。
個人的にはトロより良いなぁと思います。
鯖の握り。
鯖も年明けしてから、やっぱり良い
魚の質も年末より年明けが良くなっています。
鰆をサッと炙ってポン酢で。
鰆をもう一貫注文したら出してくれた。
こういうアウンのやりとりがたまらない。
活車海老。ここのクルマエビはいつも大きい良いものを仕入れる。
寿司屋のクルマエビはやっぱりボイルで頂く。
厚焼き玉子。カステラ風と言ったほうがわかりやすいかな……。
芝海老のすり身に山芋を入れ、卵を合わせて、
砂糖・塩・味醂を加えて丁寧にすり粉木であたる。
キメ細かく仕上がり、しっとりと良い色に焼けた焦げ目の厚焼き玉子、
ほのかに甘く、口の中でほどけていく。
シラウオはシロウオ(ハゼ科)とは違う。
これからが旬なのだが、こういうのがメニューにあると嬉しくなる。
寒ブリは16㌔物で脂のノリがとてもきれい。
カツオも10㌔物とのことだが、
戻りカツオよりサラっとノッた脂と香りが好きだ。
〆鯖・こはだ… と江戸前で酢〆も握りかたも優しく感じるし、上手である。
煮はまぐりも江戸前寿司の仕事だなぁ…と感じる。
煮はまぐりはきちんとした下ごしらえをして、煮ツメも良いですね。
徳島県由岐産の黒うに、最高級で、うにの一粒がすごく大きいのです。
新イクラ醤油漬けは久々に旨い!と感じました。
こういうのは、徳島市の行きつけの和食店などでいただきますが全然味が違います。
あなごはふわっとしています。
野島や羽田沖の江戸前のあなごに近い気がします。
今日は蒸しあわび、本ミル貝、赤貝、とり貝、青柳、たいら貝……と貝も充実している。
真っ当に殻つきから仕込みをする。
貝ネタもパックを使ってる寿司屋が多いのだ。
タラ白子は白雪という最高級モノで,
タラ白子の味が全然違います。
日本酒はあとは新潟の北翔、あと芋焼酎の湯割りを頂いた。
接客やサービスを追求したり、カウンター席で店主と会話のやりとりを求めるかたには向かない。
真摯に旨い肴や美味しい寿司を食べたいというかたに向いている。
徳島・鳴門にも高級店など名店と呼ばれる寿司屋があるが、
握り・ヅケ・酢〆・昆布〆・煮はまぐり・厚焼き玉子(カステラ的な玉子)など、
江戸前の真っ当な仕事といい、実力はやま下が抜きん出ている。
10位
1回
2013/02訪問 2013/02/18
神戸三宮駅から北へ,にしむら珈琲店本店の西角のハンター坂にあるレストラン新月さん。
マイレビュアーの となりのにゃん♪ さまのレビューを拝見して伺いました。
名店、新店が競い合う北野・ハンター坂にオープンして以来,グルメな女性・御婦人がたのお気に入りの名店であり,なかなか予約のとれない「レストラン新月」さんです。
店主の横山晋也さんは京都「祇園おくむら」で修業しています。日本料理で8年,また京都のフレンチレストランでも4年修業したといいます。
店内は木目のすっきりしたカウンター席10席と4人がけのテーブル席がひとつ。飾りっ気のないしつらえだからこそ,一品一品の料理がが際立ってきます。
故郷・淡路島の食材を積極的に取り入れ,器へのこだわりも人一倍だ。斬新な山中塗器などを使ったものや生花も趣を添えたりします。
客の反応が直に伝わるカウンターは「成長をぶつけられる」と,若き店主の意気込みがあります。
料理はフレンチの技法を取り入れた割烹的な料理と洋風的一皿というかフレンチ料理的な皿が運ばれてきます。
料理は税サ別で5000円,7500円,9000円,12000円とありましたが,5000円のおまかせコースを頼みました。
まずは生ビール,そのあとは,日本酒は奥丹波の燗酒で。ワインリストがあり,日本酒や焼酎より,ワインが揃えられています。
アミューズはスミイカ(ハリイカ)とゆりねのムースにジュレをかけ,カラスミとディルをのせたもの。
フレンチのアミューズを和食に取り入れた感覚であり,見た目はフレンチのアミューズ思えます。
この後の料理に期待が膨らみますし,食べ慣れた女性に喜ばれるように感じます。
前菜は白子の有馬煮・小松菜おひたし・湯葉といくら・生麩の田楽・鯖握り寿司の4品盛り。生麩の田楽味噌はカワハギの肝をあえて作っています。ネコヤナギとアオモジを添えています。これも風流ですね〜。
カツオとヒラメのカルパッチョ。ボンタンのソースですが,すだち・レモン・オレンジを併せています。
タコと足赤海老のサラダ仕立てのチョコレートソースと苺ソース。ロマネスクなどの野菜も使っています。
お椀は海老しんじょをふきのとうみそ・ひら湯葉でみぞれ椀ですが,これは京都の割烹料理らしく,素晴らしいと思います。
ニベ(魚)のパートブリックはジャガイモとごぼうのクーリを添えて,パプリカのソースでいただきます。ソースが残ったので,自家製パンをいただきましたが,かなり美味しいパンです。
和牛ステーキはレアでいただきます。
ご飯は土鍋ご飯でお味噌汁・香物が付きます。土鍋で炊きあげられたご飯はピカピカのつやつやです。もちろんおかわりOK。ご飯が無くなってしまってたら,佃煮海苔を入れていただき,お替わりしました。
アミューズからデザートまで全てバランス良くて,美味しいと思います。
全体的に穏やかで優しい味付けですが,その中に凛とした主張や骨格を感じます。
また店主の繊細な気配りやこたやりもあります。
神戸北野の立地条件にも関わらず,5000円(税サ別)でもコストパフォーマンスが素晴らしく,満足できます。
店主の程良い接客やコミニュケーションもあり,器のセンスも,お料理のタイミングも良くて,楽しくお食事をすることが出来ました。
(再訪)
徳島市内から神山方面に車で40分,
佐那河内村にある 虎屋 壺中庵 さん。
1日2組限定の完全予約制の日本料理店です。
神山温泉で泊まって,ここで食するのもいいのかもしれません。
写真25枚追加しました。
吉兆嵐山店出身の女将さんが玄関でお待ちしてくれています。
通された1階のお部屋は修繕されて,きれいになっていました。
前回以前と比べ,女将さんの雰囲気と接客がかなり柔らかく感じました。
・どてぼり,キクナのおろし和え
・鯖寿司と銀杏餅
・地物国産松茸と鱧の椀
・天然鯛,アオリイカ,車海老の造り
・焼き白アマダイ
・鮎と栗蒸しのあんかけ
・茄子とうるか
・柿とえごまのなます
・松茸と鯛と黄身ご飯
今回はメインとなるような食材,
天然鮎や天然うなぎという時期ではなかったのですが,
こういう時期こそが本領を発揮していたような気がしました。
どてぼり,キクナのおろし和え,
どてほりガニ(ノコギリガザミ)は,漁獲量が少ないのでめったにお目にかかれない1品です。
味はかなり濃厚で独特な磯の香りと甘い香りがします。
温暖な気候の徳島,吉野川の淡水と海水が混ざりあう汽水域で獲れます。
味は,甘味があってめちゃくちゃ濃厚なカニでなのです。
食通の間では,カニの中でも一番カニらしい蟹として好まれているんです。
これこそが,店主のご馳走の心意気なんでしょう。
「国産地物松茸と鱧の椀」は,
地産松茸の味と香りが弱い気もしますが,
吸い地に,店主岩本さんの料理の本質を見るというか,
塩分を極力抑えて出汁の薄味を極限に持ってくるお手本のようなお椀です。
薄味のぎりぎりの線引きが本当に微妙です。
椀の熱さのバランスの良さ,そして口の中をさっぱりさせてくれます。
やはり焼きものと椀の達人らしく,主張をだしながら,
上品に仕上げてまとめています。
「鮎と栗蒸しのあんかけ」は気に入りました。
餡は強すぎる気はしますが,鮎の蒸した感じと栗蒸しの相性がいいですし,
この時期の鮎をうまく表現していました。
「柿とえごまのなます」は,柿がやや固めなのですが,
柿の熟す前の糖度と硬さを感じますし,
えごまの香りがよくて,全てがいい塩梅でした。
茄子とうるか,
「うるか」を味わう鮎は,良質のコケを食べていなければなりません。
鮎の内臓は人為の及ばないところなのです。
あとは〆の「松茸と鯛と黄身ご飯」。
松茸のダシを使って,黄身で合わせていました。
あくまでも品よく,素材を生かして,隠し味を添えています。
そもそも店主岩本光治さんの料理というのは,
店主自らが山菜を採り,うなぎや鮎を釣って,
馳走として,お客さまにもてなしているのが主体なのです。
店主自らが素材を探し求めて,そのご馳走でもてなす。
例えば,鮎は車で3時間もかけて,
高知県安田川まで出かけて,ご自分で釣ったものを使われていました。
この発想の原点が京阪神の有名日本料理店の提供とは違っているのです。
自然への畏敬の念があり,
自然の恵みや素材そのものを大切にし,
無駄をそぎ落として,余計な調理をしないこと。
しかし,それには最高の素材が必要になっていきます。
そこに難しさがあると感じました。
食材は,自ら採取した天然のもの中心で,それらを創意工夫し,
手間暇かけて、伝統の京料理の技で調理するのですから,
素材において京阪神や全国から選りすぐった店にはかなわないとしても,
他では食べられない究極の美味しさを感じるのも当たり前かも知れません。
岩本さんの料理はインパクトよりも食べたあとの味の深味や
奥行きや余韻を重視してるように思います。
最後に店主 岩本光治さんが挨拶に来られました。
料理や素材の話をいろいろ聞かせていただきましたが,
料理人の想いや素材のこだわりがひしひしと伝わりました。
壺中庵は素晴らしい名店であることには間違いはありません。
ただ,同じ値段かその前後価格帯の京阪神の有名日本料理店を
かなり食べ歩かれている都会のレビュアーさんには評価が低いのが実情でしょう。
そして,京阪神の日本料理店でしか味わえぬ「悦びや醍醐味」をここで感じることはできません。
臨機応変にもてなすことができない不器用な店ですし、
この店が北新地や祇園に移転したならば,
皆さんの絶賛の評価も大いに変わるのではないかと思います。
確かにここの焼き物や椀は図抜けているとは思います。
しかしながら,例えば,造りなどやその他の一品料理などを比較すると,
その言わんとする気持ちもわかる気がするのです。
京阪神の有名日本料理店では,その市場でも卓越したのが徳島よりも揃いますし,
個人のこだわり農家やとびきりの漁師などと直接取引しているところもあります。
もうひとつは京都や大阪の激戦区の場所にある日本料理店というのは,
30~40代の店主のかたであれは,料理に勢いがありますし,伸びる要素も感じるのです。
そして,各地の日本料理店を食べ歩きして研究を重ねたり,情報等をいち早く察知して,
切磋琢磨しながら,自店のオリジナリティーや優位性を提供するのですから・・・。
さて,今回食したときに,いろいろな面で,
岩本さんの集大成に近づいてきたように感じました。
こういう時期にこそ,岩本さんのことをより知ることができると思いました。
奥さまにお聞きすると,「あと何年できるか・・・・」とおっしゃていましたが,
店主も62歳ですから,もうそろそろ引退を考えているのかもしれません。
最後に初めてでしたが,岩本さんもお見送りしていただきました。
ごちそうさまでした。
(再訪)
お昼に6人で伺いました。
今回は,胡麻豆腐,白ずいき・鱧の子・鮎寿司,あわびしんじょの椀,
鯛・鱧・車海老の造り,安田川の天然鮎塩焼き,いちじくの白ワイン煮,
ずいきあんかけ,鮎の炊き込みご飯でした。
白ずいきの胡麻和え,鱧の卵は特に良かったと思います。
あわびしんじょの椀,すっきりと鮑の風味を生かすギリギリの塩加減です。
最初の一口から旨みが追いかけてきます。
あわびのしんじょが箸を通すとフワッと広がっていきます。
吸い地に,店主岩本さんの料理の本質を見るというか,
塩分を極力抑えて出汁の薄味を極限に持ってくるお手本のようなお椀です。
薄味のぎりぎりの線引きが本当に微妙です。
椀の熱さのバランスの良さ,そして口の中をさっぱりさせてくれます。
安田川の天然鮎塩焼き,骨も硬くないし,香りもいい,
腹ワタの味も言うことありません。
蓼酢の酸が蒸し暑い夏にピッタリと合います。
安田川の天然鮎の炊き込みご飯も絶品でした。
最後に店主 岩本光治さんが挨拶に来られました。
今回もいろいろ聞かせていただきましたが,
料理への情熱や想いを感じました。
(主レビュー)
佐那河内村にある 虎屋 壺中庵 さんに、
男四人で伺ってまいりました。
行くまでの途中、今後の食事会の打ち合わせも含め、
久しぶりの壺中庵への高揚感もあり、大盛り上がりでした。
虎屋壺中庵さんについては、
徳島のかたでは アクセル全開さん、アワッコさん、せれんさん、
阿波の若い士さんの4人がレビューされています。
私も会とかで、昔に行ったきりで飲んだくれて料理内容も忘れてしまい、
私の性質上、酒を飲むという関係上、秋田町界隈に集中してしまっていました。
徳島県では壺中庵虎屋をレビューすることは大事なことだと思っていました。
やはり地元徳島人のかたの名店ですので、
食べログ徳島でレビューされている方々もハレの日とかでも、
是非とも一度は行って頂きたく思っています。
店主の岩本光治さんは吉兆の亡湯木貞一さんの薫陶を受けており、
吉兆京都嵐山本店の焼き場の板長だったかたです。
さて料理についてです。
まずはおしぼりと湯呑みが配されます。
この暑い白湯で舌をきちんと整えます。
まずはアスパラ白胡麻和え、うどの梅風味、ごぼうの穴子巻き、あまご寿司でした。
アスパラの白胡麻のダシの合わせかたなどとても良いと思います。
穴子は焼きあげかたもさすがです。
あまご寿司のあまごもできる限り処理をして生に近い酢締めしてあります。
ここで日本酒は三好市池田の中和商店・今小町の おでんでん です。
天皇献上米の佐那河内米を使用した純米無濾過生原酒です。
香り系では無く、米の旨みを感じます。
岩本さんの料理にとても合います。
次は煮アワビと肝、山菜のシズを炊き合わせています。
この煮アワビですが、和食店の酒蒸しとか塩蒸しとかとはひと味ちがいます。
わずかにやや個性のある味わいがあります。
お吸い物は車海老のしんじょ・うるい(山菜)・椎茸・しろばらのり です。
車海老の真丈(しんじょ)はフワフワとしており、
こういう素晴らしいしんじょは初めてです。
箸を入れるとお椀の中で溶けていく絶品でした。
真丈(しんじょ)の出汁など、
塩味に関しては、塩分の使い方が、美味しいのと味が無いと感じる感覚が、
ギリギリの境と言いますか、店主が食材本来の味を引き出すために、
ここまで薄味にした理由が伝わってくるだけに、文句のつけようがないものです。
刺身は鳴門のカリスマ漁師 村公一さんのスズキ
(http://www.mbs.jp/jounetsu/2007/09_02.shtml)と車海老の刺身です。
村公一さんのスズキに関してはここで述べる必要もなく、
わかっていただけるものと思います。
天然車海老のサイズもやや大きくて、味があります。
焼き物は地元の徳島産白甘鯛でたで酢をソース代わりに使用しています。
この白甘鯛の焼きかたが、表明はカリッと、中身はフワッとしています。
また、たで酢が蒸し暑い日にさわやかな酸がバシッと決まります。
蒸し物は はちく(筍の小さいもの)・そら豆・伊勢海老で、
つけてある伊勢海老のみそソースが海老のみそをダイレクトに、
濃厚に感じます。高級フレンチやイタリアンのアメリケーヌソースもそうですが、
フレンチやイタリアンでもこういう味わいに出会ったことがありません。
最後に甘鯛の炊き込みご飯、甘夏柑のゼリー寄せ、グリーンピースの和デザート抹茶と続きます。
グリーンピースの和菓子も和スイーツと思っていただけると良いと思います。
つぶつぶ感と裏ごししたグリーンピースが非常に上手くマッチしています。
これが後に出される抹茶と相性がすこぶる良いのです。
基本的に薄味ばかりだと思っていましたが、
料理はところどころに濃厚さも感じさせます。
その力強い素材の力量を充分に引き出しています。
また、その一品、一品の料理の出し方と合わせかた、
全体の料理の出す流れがとても考え尽くされています。
素材を見れば、店主が獲りに行く地元の天然うなぎ、天然すっぽん、
高知県安田川の天然鮎、地元の山菜、佐那河内・神山の露地ものすだち・・・
露地ものすだちはともかくも、
これだけ手に入りにくい天然の食材を揃えています。
鮎は店主本人が高知県安田川まで
自ら釣りに出るだけあってこだわりがあります。
最後に店主 岩本光治さんが挨拶に来られました。
料理や素材の話をいろいろ聞かせていただきましたが、
料理人の想いや素材のこだわりがひしひしと伝わりました。
店主 岩本さんはただ一人、
昔の京料理の椀の当たりつけができる人で、
京都でも現在はこのような味を出せる料理人はいないようです。
食材は、自ら採取した天然のもの中心で、それらを創意工夫し、
手間暇かけて、伝統の京料理の技で調理するのですから、
他では食べられない究極の美味しさを感じるのも当たり前かも知れません。
岩本さんの料理はインパクトよりも食べたあとの
味の深味や奥行きや余韻を重視してるように思います。
サービスに関しては店主の奥様は吉兆本店の接客出身だけに、
やや固い感じがあります。しかし、もうひとりの接客の女性のかたは対応良くて、
丁寧に料理の説明もしていただきました。
サービス料が要らないわけですし、想像していたより、かなり良かったと感じました。
壺中とは俗世界と異なった別世界の意味をもちます。
転じて酒を飲んで、この世を忘れる楽しみです。
俗世界を忘れ、頑張ってでも春夏秋冬、定期的に楽しみたい 虎屋 壺中庵さんです。