1回
2014/10 訪問
リラックスできる雰囲気とエンターテイメント感 鮨 さえ㐂
大間のまぐろ
大間のまぐろ
日本酒 澤屋まつもと
加賀野菜の金時草(きんじそう)と戻りカツオと自然薯
加賀野菜の金時草(きんじそう)と戻りカツオと自然薯
長崎くえ,鳴門天然鯛
サバのスモーク
岡山産松茸
岡山産松茸の茶わん蒸し
日本酒 加賀鳶
鮟肝
鮟肝
北海道産ボタンエビのしゃぶしゃぶと青森産天然マイタケ
北海道産ボタンエビのしゃぶしゃぶと青森産天然マイタケ
鹿児島産白甘鯛のお椀
大間のまぐろ
大間ホンマグロヅケ
大間ホンマグロトロ
剣先イカ
北海道産エゾムラサキウニとすじこ
北海道産エゾムラサキウニとすじこ
あなご
2014/10/19 更新
北新地の鮨 さえ㐂 さんへ。
どうも大阪の高級店の寿司は期待外れが多かったのと,
北新地の有名店は敷居が高いと感じていて,足が遠のいていました。
お店には看板も無ければ、暖簾も出てません。
初めて行くには,分かりづらいので,
ビルまで来て中の通路を一往復してしまいました。
お店に入って、まず目に留まるのが板場を囲む形のL字型のカウンター席。
そこに座れる席は11席のみです。
高級感のある無垢の桧の一枚板です。
さすが北新地の高級寿司店って感じですね。
お客のお腹の具合や好みに合わせて一品と寿司の量を変えてくれます。
桧のカウンターに平行につけ台で包丁さばきや調理の仕上げが見れます。
もちろんメニューはなく,店主のおまかせのみ。
料理を提供する前に,好きなものや苦手なものを聞いていただけます。
紹介もない一見でしたが,席は親方の前です。
店主佐伯裕史さんがまず笑顔で挨拶してくれました。
説明も非常に丁寧で好感が持てます。
丸刈りのスタッフの板前さんもキビキビとした動きです。
扱う素材のレベルはすべて超一級品。
店主が現地まで通い,口説いた生産者直送の素材が並びます。
まずは,サッポロ瓶ビールをいただきます。
グラスの「うすはり」に感動してしまいます。
厚さ0.9mmの名人が作ったこの通常のグラスの半分以下の極限の薄さで,
しなやかで衝撃には強いそうです。
軽さ,口当たりの良さ、繊細さを感じます。
このグラスでいただくお酒の旨さはやみつきになります。
燗どおこもちゃんとあります。
ちろりはどっしりとした錫製。
日本酒は京都の澤屋まつもと,石川の加賀鳶。
・加賀野菜の金時草(きんじそう)と戻りカツオに自然薯を一緒に。
珍しい食材に心惹かれます。
加賀野菜の金時草は粘りがある食感です。
まずは,この一品が素晴らしい。
・岡山産松茸の茶わん蒸し
キロ9万円の朝採れの香り高い松茸です。
茶わん蒸しでもすこぶる相性が良いのです。
・長崎産クエ,鳴門産天然鯛,鯖
有田焼の皿で提供されます。
クエも鯛も熟成されているかの味わいです。
鯖は〆てスモークで。
とても大きい天然鯛は疲労骨折した明石鯛のコブなど,
説明してくれる演出など,目にも舌にも満足度は高いでしょう。
・鮟肝
こんなに柔らかくふわっとした鮟肝は初めてです。
・北海道産ボタンエビと青森産天然マイタケ
これもかなり大きいボタンエビを佐伯店主が目の前で調理するしゃぶしゃぶです。
青森産天然マイタケは味も香りがいいですね。
ダシはいいのですが,あんが強い気がしました。
・鹿児島産白甘鯛のお椀
これも大きい鹿児島産白甘鯛。
箸を通すとフワッと広がります。
寿司屋のレベルを抜く八方地のダシの良さ。
つまみの多彩さが最も印象に残りました。
寿司屋らしからぬ,非常にバリエーション豊かな料理の内容です。
相当な努力をして仕入れた上質のネタに,
センスあるアレンジを効かせたレベルの高い肴が繰り出されるます。
寿司屋のツマミというより、割烹・日本料理のレベルを感じました。
つまみはお酒に合う,手のかかった面白いものが提供されます。
お酒をいただく私には,肴(アテ)の質が高いのも嬉しい。
江戸前寿司というイメージからは逸脱するものかもしれません。
関西の高級江戸前寿司代表として,これが正解かと思います。
無理に東京の正統な江戸前寿司を真似るよりも,
大阪人らしさや北新地の場所柄,接待や同伴も考えると,
酒をいろいろと飲みながらなら,なにわ割烹系のほうが潔いと感じました。
握りは大間のシビのホンマグロで210キロモノです。
見せていただいたブロック塊の大きさにもビックリ。
本マグロの赤身は浅ヅケに。
香り,旨味ともしっかりした美味いマグロです。
中トロも繊維のきめ細やかさが素晴らしく,口どけも良い。
剣先イカは隠し包丁で柔らかく,
あなごは煮たものを炙っています。
シャリは熟成され角のとれた赤酢と,
ミネラル塩を使用しています。
米は天日干しされた奈良の古米が使われています。
素材はどれも図抜けていました。
口の中でホロリとほどけるシャリ。
何よりシャリが美味いですし,酸味がとがっていません。
ただ,握りそのものは空気が入りすぎでしょうか。
自家製のガリがとても魅力的でした。
ガリは甘みを排したシャッキリとした味付けです。
最後の茶も妙に美味しいと思います。
握りは真っ当な江戸前寿司です。
握り寿司だけなら,ここよりも最高の店があるでしょう。
接客,酒,肴(つまみ)の良さと,ここの面白さがあります。
だから,総合的にはとても満足します。
時価の寿司屋さんで,価格と味わいと質のバランスがいい数少ないお店です。
店主に職人的なクセが全くありません。
気さくなかたで,真摯に取り組み,
質問すると的確にそれぞれの食材の背景や器の選択など話してくださいます。
どれだけの努力をすれば,どれだけの対話をすれば,
よりお客様に喜んで貰えるのか・・・を追求しています。
銀座の寿司屋と対比すると,
鮨 さえ㐂さんは,パフォーマンスというか,
エンターテイメントのある寿司屋です。
仕込み時間にも準備しておくのですが,
極力,お客様の目の前で料理を作りはじめようという姿勢。
お客さんにとっては、そういう技を見ることができ,ライブ感を味わえます。
そして,お客さんは喜ぶのでしょう。
そして,この店の良さは,
肩ひじ張らずに食事できる雰囲気と,
店主たちの気さくさとパフォーマンス。
敷居は低く,客を上下で選ばないですし,
常連でも一見客でも平等に扱っていただけます。
それこそが,リピート客を掴んで離さない理由なのだと思います。
満席の繁忙時にも関わらず退店時には,
店主自ら玄関まで見送りしてもらいました。
入店から最後まで「客」をおもてなしする気持ちが伝わりました。