kamuraさんのマイ★ベストレストラン 2013

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マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

マイ★ベストレストラン

1位

グランド・セントラル・オイスターバー&レストラン 品川店 (品川、高輪ゲートウェイ、北品川 / オイスターバー、シーフード、ダイニングバー)

1回

  • 夜の点数: 3.6

    • [ 料理・味 3.7
    • | サービス 3.7
    • | 雰囲気 3.4
    • | CP 2.6
    • | 酒・ドリンク 3.1 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2013/10訪問 2013/11/30

たゆたう波間で

乾杯

ボトルの泡をひとくち
そして
てゅるりと大ぶりの牡蠣を

牡蠣にはやさしく歯をあてて
ゆっくりと歯をたてて
甘噛みしよう
昨夜
あなたの耳たぶにしたように

優しく
強く
この海にふたり身をなげて
しばし
漂っていよう

ひいてはかえす波が私のなかに

あふれる磯の香りを
いっぱいに抱きしめて

もっと強く
もっと優しく・・・

まだ駄目

もっと私のなかにいて

とけてなくなってしまうあなたを
きゅっと引き止める

もう少し
このままで・・・

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2位

産直屋 たか (神泉、渋谷、駒場東大前 / 居酒屋、海鮮)

1回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.2
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 3.7
    • | CP 4.1
    • | 酒・ドリンク 4.3 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥6,000~¥7,999 -

2014/03訪問 2014/06/03

地下におりれば…

2014/03

地下に降りればそこに確かにある静かで豊かな時間

三度目にして迷わずにこちらまで来られるようになった
いつもとても方向音痴な私なのだけど


4人での宴

而今八反錦で乾杯

はまぐりとかきのあぶり
牡蠣  
うに
のれそれ
怒りさば
いくら
大根煮
鮪の脳天と白子の鍋物

お酒は
影虎

風香・・・

まだ浅い春の夜
おだやかであたたかな時間はほろほろと過ぎていく

この夜も木々の芽はふくらみはじめている

駅までをゆらゆら揺れて歩きながら
私たちは美味しく
楽しい時間を4人で共有できた奇跡に
感謝していた


::::::::::::


2013年11月

再訪。

初回ほどの緊張がなく、時間はゆるり流れた。

とろけるようなうに
マグロの脳天
ハマグリの炙り穴子焼
関鯵のお造り
大根煮
白子と若芽の煮物

合わされたお酒・・・
鍋島からの数種。

どれもがお料理を優しくつつみ、添うお酒である。


堪能。


レビューとしては不完全で申し訳ないが、
伺ってみて、
実際に味わっていただきたいと思ってやまない。


2013年8月

やっと訪れることが出来た、
渋谷の隠れ家。

ビールで乾杯。


はまぐりは、ほんのりと薄桃色。
ふくよかな6個が大きな帆立の貝殻におさまって、あたためられる。
ふるふるとふるえながらだんだん乳白色に変わるころ、
バーナーであぶられるのだった。
口に運べば、いっぱいに広がる磯の香り。
かみしめて美味しいねと笑いあう。


飲み干したビールの次にいただく貴濃純辛口純米。
貴は好きなお酒だ。
貴の仕込み水と交互に。
店主おひとりでされているため、次の仕事をされている間は、
お酒と和らぎ水をいただきながら、会話を楽しめる時間…


てのひらほどもある牡蠣。
何度も書いているが、私は牡蠣には目がない。
だからしばらく躊躇する。
食べてしまうのがもったいないのだ。
先に友人が食べて、ミルキー!と小さく叫ぶ。
私は静かにかんでみる。
あふれだす磯の香りと、文字通り海のミルクというのにふさわしいと思う、たっぷりのうまみと甘みを楽しんだ。


次のお酒、賀茂の金秀特別純米。
華やかなお酒である。
運ばれてきた雲丹。
雲丹はたった今殻からのさばきたてで、
ほわりと揺れた。
慎重に箸でつまんで口にいれると、なんというあまみ。

すでに私の中にさざ波が押し寄せている。
感動という名の…


姫さざえの焼き物。
磯の香りが凝縮された香ばしさ。


お酒は川鶴無濾過生原酒。
川鶴!
もう叫びだしたいほど好きなお酒だ。


あなごのお造り。
しこしこした食感はえんがわに似ている。


寝かせた関鯵。

おろしたての関鯵。

旨味は寝かせたものが強く感じられる。


大根と穴子の煮もの。
穴子の身はしらじらとうねって、まるで絹糸の束のようだ。
一方の大根はこっくりした飴色。
優しいやわらかさになるまで、煮付けられている。


貴 最初のものと違うかわいらしい絵の描かれたブルーのラベル。


あての最後は、鮟肝とわかめの鍋。
鮟肝の濃厚な旨みをしっとりわかめが受け止める。


最後にいただいた而今特別純米九号酵母が、
お料理の〆をさらに彩るがごとく美味。


そのお鍋のお出汁の中のおうどんに、
玉子の黄身をからめていただいて…しばし無言…

………


皆様のレビュー通りの素晴らしさでした。
ゆったりと味わう海の幸の数々。
気のおけない友人と、半年ぶりに会い、良い時間をいただきました。

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3位

うさぎ (新橋、汐留、内幸町 / 日本酒バー、焼酎バー)

1回

  • 夜の点数: 3.2

    • [ 料理・味 3.2
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク 3.3 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥3,000~¥3,999 -

2013/11訪問 2013/11/18

月の夜のうさぎ

ねえ、知っている?
うさぎは寂しいと死んじゃうんだって

あなたが言う

違うって
ほっておいてお世話をおこたると
病気になって死んじゃうってことみたいよ


へえ、そうなんだ


うさぎへの急な階段をのぼる


美人で素敵な店主のファンのお客さんで
いつもにぎわっているお店


日本酒がたくさんあって
どうしようか
ふたりで迷う


鳳凰美田
雨後の月
村祐


少しづつ
いろいろ飲んだ


うさぎ

美味し

イカの山


だと思ってたんだ、こどものころ、俺

あなたが笑う


やめて
吹き出しちゃう

私もそう思ってたの


涙がでるほど笑った
お馬鹿なふたり…


最後に熱いお味噌汁をいただくと
お腹がぽわっとあたたまった


ねえ
あなた
うさぎだけじゃないわね


どんな人もそれぞれ寂しいの

それぞれの
寂しさをかかえて生きている


半年ぶりに会った夜

ふたりでいれば
今夜は寂しくなんかないじゃない?


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4位

和光 本店 (築地、新富町、築地市場 / 海鮮、居酒屋)

1回

  • 夜の点数: 3.0

    • [ 料理・味 3.0
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク 3.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2013/10訪問 2013/10/12

和やかな光

暗い夜道
暗い店内
あやしい光

貝だけがあって
店主が弾丸のようにしゃべり
客を笑わせる

ビールは自分で注ぎ
お酒は冷蔵庫から好きなものを出してきて
飲んだぶん
正の字を書きとめていく

常連さんが貝を焼いてくれる
店主は貝をさばき終えると
ピアノを弾き
歌い始める

酔いがひたひたとやってきて
客が
暗い店内が
ひとつになる

歌い
笑う

不思議な暗さの中で
あたたかな何かが生まれ始める
和やかな光

貝焼きの店 和光

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5位

肴や味泉 (月島、勝どき、築地 / 居酒屋)

1回

  • 夜の点数: 3.4

    • [ 料理・味 3.5
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥5,000~¥5,999 -

2013/10訪問 2013/10/26

月のように

夜の月島。
通りにはもんじゃ焼き屋さんがたくさん…

予約の時間にまだ少し時間があって、少し通りをふたりで歩いてみる。
楽しそうなお店がいっぱい。


通りから外れたところに、ひっそりとあるお店、味泉。
店内はそう広くないけれど、もうほとんど満席だ。


良いお酒と新鮮なお魚、気の利いたお料理が揃っている。
お造り盛り合わせと、玉子焼き、グラタン。

お酒もずいぶんいろいろ飲んだ。

おなかが満ちてきて、こころも満ちてくる。

ゆらゆらと満ちてきた、
今夜の月のように。


つきしま、っていう言葉の響きがいいわね。


あなたが前を向いたまま答える。

kamuraの
そういうところがいいんだよな。

照れているみたいなあなたの横顔をみつめてみる・・・


外に出れば、青々とした月がふたりを見下ろしていた。

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6位

葡萄舎 (神田、新日本橋、三越前 / インドカレー、居酒屋)

2回

  • 夜の点数: 3.5

    • [ 料理・味 3.0
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 3.0 ]
  • 昼の点数: 3.5

    • [ 料理・味 3.5
    • | サービス 3.4
    • | 雰囲気 3.7
    • | CP 3.4
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥2,000~¥2,999 ~¥999

2019/02訪問 2019/02/07

山小屋のような葡萄舎

その危険なエレベーターは、名前を変えながらもまだそこで働いていた。
一瞬、あなたとこのエレベーターに乗った夜のことを懐かしく思い出した。
あの夜のように、エレベーターは5階でその扉をのろのろと開いた。

12時25分、店内はほぼ満席である。
ひとりです、というと、相席だが向かい合わなくてすむような端っこの席を案内してくれた。

女将さんはもともと足がお悪かったようだが、なお辛そうな歩き方だった。
この数年のときの重さを感じる。

厨房の店主は相変わらずひょうひょうとしている。

バイトさんなのか若い女性がいらした。
たぶん、ご夫婦二人でまわすには限界だったのだろうと想像する。

壁のメニューから、チキンカレーとキャベツのココナツ炒めカレーをダブルでお願いする。

店主は12時半を過ぎると、もうお客さんを断りはじめた。
ぎりぎり間にあってよかった…

たっぷり15分ほど待って、カレーが届けられた。
左に濃いブラウンのチキンカレー、真ん中にごはんとぶどうのピクルス、右にキャベツとココナツの白いカレー。
細かく刻まれたパクチーが入っている。

いただきます。
キャベツは甘くて、それだけで食べて美味しかった。
ごはんはさらっとした盛り具合なので、キャベツだけでいただく。
ココナツの風味とキャベツの甘み、時々鼻をかすめるパクチーの香りでスプーンがとまらない。
こんなカレーを作ってみたいな、と思う。

チキンカレーにはころんと胸肉が三つ。
こちらはごはんと一緒にいただこう。
少しだけとろみがあってスパイシーで、日本米にあう。
この味、懐かしいなあ…

山小屋のような店内に、女将さんの優しい声、店主のはりのある声。
なんとなしにあたたかな空気感が漂う。


帰りにはもうエレベーターは5階で止まったままで、皆お客は階段を下りて帰るのだった。

私はしばし止まったままのエレベーターを見つめた。

エレベーターはうんともすんとも言わず、仕事をやめてしまっていた。
エレベーターも、ずいぶん年をとったのだ…

2013年2月


あなたとふたりで
危険なエレヴェーターに乗った

密室
という言葉が頭に浮かんだ

私の胸は急に早鐘のように鳴りはじめ
私はあなたの横顔を盗むように見る

あなたは階数が表示されるモニターを見あげているだけで
こちらを見ようとはしない…

そのうちエレヴェーターは5階に着いてしまった…


ドアを開けると、
ああ、なんかいい雰囲気だねえとあなたは言った。

私たちは小舟町の蕎麦屋で、いいだけ日本酒を飲んだあとだったけれど、
まだ話したかった。
いや、もっと一緒にいたかったのは私だけだったのかもしれないけれど。


ハイテーブルではお客さんと店主が楽しそうに談笑していた。

私たちは窓際の席に着いて、
白ワインをボトルでたのんだ。


あてのお勧めを尋ねると、壁のボードを指さしてあそこから選んでと言う。

店主がおなかすいてるの?と聞いてくれる。
いえ、あんまりと答えると、
じゃあ、お通しがわりとたっぷり出るから、それからつまみは考えたら?と良心的である。


〆鯖だけをたのむ。

陶器のグラス。
白ワインはよく冷えている。


お通しには、大きめの小鉢にたっぷりのマカロニサラダと、
スライスされた出来あいのたまご焼きが二片。
マカロニサラダが美味しい。

〆鯖もよくあぶらがのっていた。
冷えた白ワインともあう。


隣のテーブルには団体さんがにぎやかにやってきて、カレーとパンをつまんでいる。


あなたは、いいね、山小屋風だね、ここね…と言ってくれる。
私はそんなことが嬉しい。


あなたに会うのは9カ月ぶりくらいだったし、
あなた、という人に会えること自体が私には夢のようなことなのだった。


あなたの話に耳を傾ける。

そして、あなたの紡ぎだすものを懸命に手繰ろうとする。

一言も聞きのがさず覚えていたいと思う。


けれども、
こんなに近くにいるのにあなたはとても遠く、
これ以上近づくことは決して許されない。


あなたは、雲の上のひと。

私には計り知れない異能の人なのだった…


::::::::::::::::::


2013年1月

その危険なエレヴェーターに乗ると、
既にスパイスの香りがした。
5階で降りて、ドアを開けると・・・

店内はお店でありながら、
なんとなく親戚のおうちに来たかのような、
不思議な懐かしさにあふれていた。
木のぬくもりのあるテーブルのせいだったのだろうか。

ふんわりと優しい感じの奥さんが、そちらへどうぞと窓際の大きなテーブルをさした。
私は椅子にかけて、奥さんの説明を聞いた後、
チキン、オクラとレンズ豆、トマトと茄子の3種を選んだ。

お水はどんとおかれたペットボトルに入って、
セルフでおかわりするようになっている。
このおおざっぱさがまたよいではないか。

店主はいかにも若かりし頃インドを旅行した人らしき風貌の方だった。
カレーはその店主が運んできてくれた。


トマトと茄子は酸味がきいていながらも、
深みのある味わい。

オクラとレンズ豆はよく煮込まれているせいか、
あまりもう豆の感覚がないくらいだった。
もう少し豆豆しさがあってもいいかなと思ったが、
すぐにこれはこれでいいのだと思いなおした。
カレーとしての渾然一体感がある。

チキンは一番辛いのだと言われたが、
辛いというよりは、かなりスパイスがきいているというのがあっているようだった。
これ以上スパイシーだと嫌味になる一歩手前で止めている感じ。

そしてどれもナンではなくごはんにあうように、とろっとしたカレーである。


次々とお客さんが入ってくる。
常連さんらしき人のほとんどが、
「こんにちは」と言って入ってくるのだった。

やはり、皆さん、なんだか親戚のうちにでも来たような感覚になるのではないかしらんと、
私は勝手に想像していた。

時折、ご夫婦の会話が聞こえてくるがとても仲がよさそう。
このあたたかい空気はご夫婦でつくりあげてきたものなのだな・・・と私は考える。

あたたかくて
やさしくて
野菜のカレーがたくさんあって。

またきっと来ようと、
私はスプーンを口に運びながら考える・・・


  • (説明なし)
  • (説明なし)
  • (説明なし)
  • (説明なし)

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7位

知花 (神泉、駒場東大前、渋谷 / そば、薬膳)

1回

  • 夜の点数: -

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 -

2015/02訪問 2015/02/26

知花

2015/02

この夜は、店主が先週沖縄で仕入れて来たという食材を多く取り入れたコースをいただいた。

・最初の盛り合わせ
 とうふよう、ミミガー、豚足、焼いた沖縄人参、焼き〆鯖、自家製辛子明太子

・ぴりりとした山海月

・牡蠣とあおさのチーズ焼き

・さわら味噌漬焼き

・牡蠣味噌豆腐

・蕎麦屋のかに玉

・からしな豆腐イリチー

・ひと口白子飯

・ソーキ蕎麦

・おろし蕎麦

・蕎麦フィナンシェ、蕎麦茶

どれもお酒をすすませる味わいで、とくに牡蠣好きの私は牡蠣のチーズ焼き、
牡蠣味噌豆腐、白子飯にうっとり。


築地にバイクで仕入れにいき、ひとりで仕込んでこれだけのお料理を出す。
研究熱心でどんなときも笑顔を絶やさない素敵な店主。


その夜、いろんな方とここで飲んだことや過ごした時間を思い出した。
レビューは書いていないけれど、小さなオフ会もさせていただいた。
産直屋たかに行く前のゼロで、ビールだけ飲ませてもらったことも…


今月末でお店を閉める知花。

松濤の一角できりりと咲いた花。
今度は店主の故郷・沖縄で、大輪の花を咲かせることを心から願ってやまない。


お店が出来たら、沖縄まで食べに行くからねっ!!


*3月は2週目まで、お蕎麦だけいただくことができるそうです*


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2013/10

知花は神泉の駅を超えて少し歩いた、松濤のレストランバカールのすぐ隣だ。
8月の末に開店したばかり。

日本橋のひとつ星の蕎麦屋「仁行」で修業された女性が出した、お蕎麦と薬膳、沖縄料理のお店である。

看板のない隠れ家のようなお店は、マンションの一階の角にあり、
風にそよぐ柳の木が目印だ。

ドアを開けるとき、ちょっと皆さん悩むようだ。
私も悩んだが、どのように開けるかは、ここでは書かないでおこう。

行かれた時の皆さんのお楽しみということで。

カウンターとテーブルが二卓の店内は、
落ち着いたしつらえでところどころに琉球の布をあしらい、沖縄の雰囲気も少し感じられるよう。

店主は作務衣のようないでたちで、厨房に立つ。
アルバイトの男性がひとり。

お酒の品書から、まずは而今を頼んだ。
添えられるたっぷりのお水には丸い氷。

まずはつぶ貝。
楊枝でくるりと抜いていただく。
出汁のききすぎない上品な味わい。

数の子が具にひそんでいるポテトサラダには、手作りのいくらがかかっている。

一口の鯖寿司。
鯖のあまみとうまみが濃厚。
これは而今にぴたりと添う。

鰹と揚げ茄子の和え物。
あしらわれたはなびらたけがポン酢にもよくあった。

お酒は羽根屋を。

すっぽんのスープ。
こくがありながらすっきりと、身体にしみるような琥珀の色のスープだ。

すっぽんを扱える女性はあまりいないのではないかと思う。

身は別途味噌に練りこまれてだされる。
こっくりした味噌はお酒によくあった。

鴨ロースのサラダ。
のせられた少しマリネされたトマトが甘くとろける。
鴨はしっとり柔らかく、ワインがほしくなる。

乾杯。

蕎麦粉をつかった大根餅。
ふわりとやわらかい。
お年を召した方にもよさそう。

蕎麦刺しはオリーブオイルと塩でいただくのだが、これはワインにもよかった。

あての最後は柳川。
たまごの閉じ具合がほどよくて、おなかもあたたまるひと品だ。


〆のお蕎麦は仁行仕込みの妙なる細打ち。
香れば胸の奥にまで、穀物のあたたかな香りが届くのだった。
繊細な喉越しのお蕎麦は汁とのバランスもよい。


夢をかなえた大変な努力家の女性のお店。
知花…という店名にこめられた様々な彼女の思いが、花開くようにと祈ってやまない。


<自分としては応援の気持ちでいっぱいなので採点は控えます。
そしてこれからも通い続けると思います。>

  • 松濤バカールのお隣です
  • 而今から
  • つぶ貝

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8位

鍵屋 (鶯谷、入谷、上野 / 居酒屋)

1回

  • 夜の点数: 3.5

    • [ 料理・味 3.4
    • | サービス 3.4
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.2
    • | 酒・ドリンク 3.0 ]
  • 昼の点数: -

    • [ 料理・味 -
    • | サービス -
    • | 雰囲気 -
    • | CP -
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ¥3,000~¥3,999 -

2015/07訪問 2015/07/14

雨音はショパンの調べ

2015/7

温い雨がしのしのと降っている
久しぶりの鍵屋

先客はカウンターにひとり
並んでふたり座った

そこから鍵屋だけの時間がはじまる
燗つけ器の前で

ふるふる崩れるような煮奴
ほろほろ解きほぐされるこころ
きざまれた葱をとりわけながら

お通しのしょうゆ豆をひとつぶずつつまめば
私たちの小さな日々の積み重ねのように
まるくまるくつながっていく思いのように


もう一本
つけてもらいましょうか
あたたかな雨のようにやさしいお燗を

::::::::::::::::::

2014/5

白いお銚子は
どこかなまめかしい

いつかどこかで飲んだとき
あなたが白いお銚子をついっとあけたあと
テーブルにそっと倒したしぐさを思い出す

なぜだかどきん、としたことを

ふたりがゆきつくところを
はるか遠くに
みた気がして

セピアいろに時が流れた

何もかわらぬふたり

この店の空気もきっとかわらない
煮豆腐のやさしい味
ふっくら焼き上がった串

れんげの底にしのんだ花びら

…ひらひら散ってしまわぬうちに


:::::::::::::::::::::::::::::


2013/5

ひとりでどんなところでも平気だけれど、
ここだけはあなたと一緒でなければ行かれなかった。
女人のみは禁制のお店だからだ。


鶯谷の駅前はキラキラのホテルが立ち並んでいる。
あなたはちゃんと前だけを見つめていて、
私はそんなあなたをこのましいとおもう。


鍵屋の店につづく路地には猫がいた。
思わず手をのばしてみるが、
猫はキラリとした目で私を見つめかえしただけだ。


鍵屋の店内には
古いふるい時間がそのまま漂っている。

カウンターに座って、ぬる燗をお願いする。
あてにはたたみいわし、田楽、やきとり、煮奴を。
酒飲みのあてである。

燗の付け具合はほどよく、独特のひょろりと長いお銚子が美しい。
田楽の味噌はこってりと甘辛くてお酒がすすんだ。

カウンターにも壁にも天井にも、
すみずみに染み付いた時間が私たちを包んでいた。

このまま、ここでいつまでも飲んでいたい。
現実には帰りたくない。
ずっと・・・

店主は意外にも気さくな方で、一緒に3人でポーズをとって写真にうつってくださった。

たった一枚、
携帯の中にあなたと私が一緒に写っている写真。
時々、私はその写真を眺めてみる。
あなたと店主と私が、にこにこと笑っている写真・・・


あの夜、店を出てあなたはやはりまっすぐに歩いた。


私は駅まで、はぐれ猫を探していた。

猫にはもう会うこともなく、
そしてふたりはネオンに惑うことも、はぐれることもなく駅に着いたのだった。


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9位

ヴェルジュ (沼津 / フレンチ)

1回

  • 夜の点数: 4.1

    • [ 料理・味 4.4
    • | サービス 4.1
    • | 雰囲気 4.1
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク 4.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥15,000~¥19,999 -

2013/05訪問 2013/05/29

いつか今度は温泉付きで

沼津駅から少し歩き、
隠れ家のような白壁のレストラン、ヴェルジュへ。

秘密の国の扉のような不思議なドアを開けると、
そこは別世界。

お店の女性に、二階のウェイティングバーに案内され、
まずはシャンパンで乾杯を。


「こだま」で沼津にやってきた。

フレンチはラ・ブランシュであなたを含めた数人で頂いて以来。
あなたも私も着なれないドレスで、ハイヒールを履いてきた。


シャンパンにあわせてだされた岩牡蠣。
さわやかなジュレが、磯の香りをきわだたせる。

シャンパンの気泡を眺めていると、
‘遠く’まで来た実感が、胸の底から立ちのぼってくるようだ・・・


しばらくしてお料理の準備も整い、
私たちはシェフの仕事がすべて見える特等席の二人掛けのカウンターへ。


シェフにえらんでいただいた白をグラスで。

フォアグラのスモーク・蜂蜜のソース

トマトの冷たいスープ

赤ワインをいただく。

イベリコ豚の生ハム・白トリフ

駿河湾のしらすのオリーブオイル漬

イベリコ豚をぶどうの葉でつつんだもの

あわび

キノコノマリネ

アスパラソバージュ

ホワイトアスパラ

鱒の子をアレンジした魚のポワレ

子牛


お料理ひとつひとつのポーションは上品ではあるが、
贅沢な食材を、ふんだんに使ったもの。

素材をいかすように味付けは控えめになされている。

ともすればパンチを失ってしまうかとも思えるが、
食材ひとつひとつの味がくっきりしているため、
濃い味のものがダメだったり、
フレンチがたとえ苦手な方でも、抵抗なくいただけるお料理だと思う。
食材のよさを最大限に引き出す、シェフの繊細な腕を感じる。


こちらは、食材の輸入販売を行っているため、
レストランでいただいた食材を、宅配してもらうこともできるそうだ。


シェフの説明を受けながら、お料理をいただいたにも関わらず、
お料理の名前も素材も失念してしまったものが多かったが、
メモをとるのも無粋な気がしたのだった・・・


私たちはこの夜、
すべてをシェフにまかせて美味しく、
ただ楽しく、
良いワインと、お料理に酔っていった。


帰らないでよければいいのに。

女同士いつまでもあなたと話していたいし、飲んでいたい。

今度は温泉とセットで来たいね…


パンもおかわりしていただき、私たちは満足した。
そして、足に食い込んだガラスの靴を脱ぎ捨てたくなる前に、
三島までタクシーを急がせた。


最終の新幹線で東京に戻る。
まだ私たちはドレスも来ているし、ヒールも落としてはいない。


まだ0時前。


お互いの夢を明日まで、そしてそのずっと先まで持って行こうね…私たち女同士…


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10位

仁行 (三越前、人形町、新日本橋 / 日本料理、そば)

1回

  • 夜の点数: 4.2

    • [ 料理・味 4.3
    • | サービス 4.3
    • | 雰囲気 4.1
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 昼の点数: 4.3

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク 3.5 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥8,000~¥9,999 ¥1,000~¥1,999

2014/12訪問 2015/01/04

さよなら 仁行

2014/12

この年内でお店を閉めてしまわれる仁行さん。
この年も☆をいただきながらの閉店…

私はお店をとても愛していたし、僭越ながらお店からもよくしていただいたと思います。
店主のこともお弟子さんも大好きでした。

今宵最後の 繊細なお料理と、妙なる細打ちのお蕎麦。
お酒は三千盛、七本槍。
たったひとりで楽しむ夜のコースに、何かとお心遣いをいただきました。
前菜盛り合わせ、すっぽんのゆばあんかけ、てんぷら、蕎麦寿司、たこの酢の物、ひらめのおつくり、ぶりのてりやき。
お蕎麦はもり、からすみ蕎麦、おろし蕎麦、花巻とぜいたくな四種。

とても寂しくて、でもこれからの店主の未来を応援したい気持ちでいっぱいになり、胸が熱くなります。

人間はいつまでも同じ場所にとどまって澱んではいけないのだと、無言で教えてくださった素敵な店主でした。
愛したお店仁行さん・・・

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2013年5月

連休明けのランチタイム。
お昼休みが早番の日で、いつものように私が口開けの客。
玄関先のお香が涼やかな香りを流している。

カウンターに通されてメニューをみると、
ああ、もうひやかけが。

迷わずに女性の店員さんに、ひやかけをお願いする。
しばらく彼女とお話をしていた。

最初の汁そばは、今日はうるいと揚げ玉があしらわれている。
彼女が、これは私の実家の畑で採れたものなのです、とにっこり笑う。
北国育ちらしく、雪のように肌の白い彼女の美しい笑顔に微笑み返して、
早速いただいた。
いつものように、汁そば用の蕎麦は少し平たい目に打たれており、
よく出汁がからんだ。
うるいのしゃっきりとした歯ごたえがよい。
仁行さんのこの汁そばが、毎回私の楽しみだった。


続いてひやかけは、
冷たい出汁の中に見事な細打ちの蕎麦。
上にかいわれがあしらわれており、
別皿に梅おろしが添えられる。

出汁をひとくち。
澄んだ出汁は、ひんやりと鮮やかな美味しさ。
蕎麦はほっそりとしながら、
きりりと出汁の中で力強くて、
これから来る季節へのささやかな期待を、
こんな私にも失わせないのだった。


次々と女性客がみえはじめた。

デザートはりんごのさわやかなゼリー。

さあ、午後からはたまった仕事を片付けなくちゃ。


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2012年 12月

この年、一番通った蕎麦屋は仁行さんだった。
お昼休みには月に一度はお世話になっていたと思う。

夜も何度かコースをいただいた。

お弟子さんが変わったり、
そのうちランチが隔日になったり、
ランチ自体がしばらくお休みになったり。

以前はお酒が欲しくなるような小皿のあてが出て、
次にあたたかい少しのお蕎麦、
そしてメインのお蕎麦だったのが、
お値段が安くなり、そのぶん小皿はなくなった。
ランチは現在あたたかいお蕎麦と、メインとデザートの構成。


今はお弟子さんと二人で営業のため、
店主が無理せずに、仕事ができるのが一番だと思う。

お茶目な店主に惚れて通うようになったような気もするし、
ランチの、少しのあたたかいお蕎麦が好きで通っているような気もする。

あたたかいお蕎麦はその量がよいのか、
しっかりとした江戸風の味がよいのか、
いただくといつもおなかが芯からあたたまって、
身体全部の細胞に好きなお蕎麦が染みわたるような気持ちになる。

その12月の最後のあたたかいお蕎麦は花巻。
出汁の豊かな香りとわさびと海苔の香り。
私は思い切り胸いっぱいに香る。


きっと来年も仁行さんのあたたかいお蕎麦に会いたくて、
店主に会いたくて、
またここに来るんだろうなと思いながら。

一時間の昼休み・・・


2011年 12月

お昼にひた走る。
信号以外はひたすら走る。
私の昼休みは早い時間からはじまる。
「仁行」の開店時間ちょうどくらいに店に到着する。


迎えてくれる若いお弟子さんはとても感じがよい。
きびきびと立ち働いているが、物腰がやわらかい。
2回目だったけど、こちらの顔を覚えていてくださった。
もうひとりの女性の方は厨房ではきりりとした姿が伺えるが、
お話ししてみるとあたたかな笑顔が素敵な方だった。

女の人の笑顔を見ると嬉しいのは、
誰でもきっとそうなんだろうけど、
特に女性客にとってはほっとする瞬間でもある。
食事の前に話しかけてよかったななんて思う。

もりをお願いする。

香ばしい蕎麦茶に続き、あてのお皿。
おひたし、おあげのたいたん、なすの煮もの、ポテトサラダ、うの花、たまご焼き。
一口ずつ寄せられて盛られてくる。
これだけで夜なら二合くらい飲めそうだ。

うの花がこっくりとして、実に美味しい。

味はひとつひとつがくっきりしているから、合間に飲む蕎麦茶も美味しい。
お酒がなお欲しくなる。

次に少しのあたたかい汁そばが運ばれてくる。
今日は自然薯のとろろがのったお蕎麦。
きりりとわさびがきいている。
冷えていた身体にあたたかい甘汁がしみわたり、ほおーっと思わず小さく息がもれた。


そしてもり。

まずはその極細の蕎麦のたたずまいと香りと、何もつけないでの味を楽しんだら、間髪入れずに啜ろう。

細い蕎麦はどうしてもくっつきやすいから、ゆっくりいただいていてはいけない。
一気に、一気にだ。

蕎麦を啜る快感で脳内が満たされた頃、蕎麦湯が運ばれてくる。


熱くとろりとした蕎麦湯で、ちょっとゆらんとする。
ゆらんゆらん。
ああ、いい気持ち。


最後の甘味は洋梨のムースだった。
蕎麦湯であたたまった舌をふわりと包んで冷やし、喉を滑り落ちる。
もっと感じていたいような心地よさと洋梨の官能的な香り・・・


お会計をしたら、小走りで帰ろう。
一時間の昼休み。


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