2回
2017/02 訪問
日本酒の精
激しい雨の夜。
看板のないお店は地下にあり、インターホンを鳴らして扉を開けてもらう。
こちらの前身であった「酒徒庵」に初めて伺った時の、ドキドキ感を思い出す。
19時ちょうど、あなたはカウンターですでに待っていた。
乾杯はいつものflight of wharf
酒徒庵時代からかわらない、しゅわしゅわとはじけるお酒。
お料理はあさつきのぬたからのスタート。
厨房もよくのぞめる席で、昔からいらっしゃる料理人さんがにこっと挨拶してくれたのが嬉しかった。
考えてみればちょうど1年ぶり。
その時は写真を撮ってはいけなくて、レビューも書くことができなかった。
最近、書くことを許可いただいたのでこうして書けるように。
店主は相変わらずお客さんの間を、身軽にひらりと舞った。
酒徒庵時代と違い、こちら「鎮守の森」はその日のあてに、店主がお酒をあわせて出してくれるスタイルである。
好みのものを選ぶのもよいが、全く飲んだことのないお酒をお料理にあわせていただけるのは新鮮な出会いがあって楽しい。
その日のお料理とペアリングのお酒
あんきも
・播磨灘純米吟醸
筑前煮
・鯵ヶ澤純米吟醸
牡蠣のしぐれ煮
・天穏特別純米
生牡蠣(別注)
・龍勢
フロマージュ 雪やこんこん
・鍋島
・若駒愛山
麻婆豆腐(別注)
・㐂多の華古酒
あんきものこってりした食感を播磨灘がすっきりと受け止め流す。
鯵ヶ澤は一部ではポスト田酒と言われる好みのお酒だ。
青森のお酒だと「八仙」も好きだが、こちらもよいと思う。
牡蠣のしぐれ煮。
牡蠣好きには、これだけでもしみじみ飲めそうだった。
フロマージュはこの時季だけ入ってくるものだと思うが、
三良坂の山で育ったブラウンスイスのミルクから作ったフレッシュチーズに、
ドライフルーツやナッツをふんだんに入れたというもの。
ワインにも合いそうがだが、鍋島の美しくふくよかでキレのある旨みにもよくあう。
〆の麻婆豆腐はぴりりときいた山椒がほどよく、紹興酒にも似た古酒との相性が抜群である。
お水もずいぶん頂いたが、ゼロをしてきてしまったため、この夜はそうとうに酔いがまわった。
しかし、ここではどうしても思い切り飲みたくなるのだ…
店主が選んでくれるお酒が、あまりにも魅力的なのである。
店主は酒に選ばれた「酒の精」なのではないかと、酔った頭で私は考える。
できれば、この一年季節ごとに伺いたいものだ。
2017/02/22 更新
うららかな春の宵。
オフィスからお濠端を歩いて、四谷まで桜見をしながら歩いて行こう。
千鳥ヶ淵はほぼ満開で、多くの外人観光客や、シートの上ですでに花見の宴をはじめている方たちも多くあった。
その夜はずいぶん前から一度お目にかかりたいと願っていたマイレビュアさまと、何度かご一緒していただいている素敵な方、そして私の友人と四人の宴。
ほぼ全員定刻にお店に着き、ご挨拶をすれば、大変可愛らしいレビュアさまでお目にかかれた嬉しさでいっぱいになる。
いつものラベルの乾杯酒「flight of wharf」が入らなかったとのことで、替わりの大吟醸にて乾杯。
桜海老と小松菜の煮びたし…彩りが桜色で美しい
ふろふき大根…味噌のこっくりした風味が美味
お酒・海風土(シーフード)
バジルポテトサラダ…酒徒庵時代からテッパンの味
・純青
あさり酒蒸し…春は貝
・酔楽天
生牡蠣…この夜は体調のよい友人と私だけがたのんだ
・龍勢
煮豚…どこまでもやわらかくほろほろのお肉、旨い
・華鳩
桜餅グラタン…桜餅の風味がするのに、お酒にもあう不思議なグラタン
・小左衛門
麻婆豆腐…辛すぎないが山椒もきいた鎮守の森ならではの味
・花陽浴
もろきゅう
・鎮守の森食後酒(an Invitation to animism bar)富久錦
このお酒はひらりと口でふくらむのだが、喉に落ちるとすっきりとした余韻が残り、まさに食後酒にふさわしい。
この夜も店主がお料理にあわせて出していただくお酒に、そして楽しい会話に、彼女の可愛らしさに酔いに酔った。
店主が酒徒庵をやめて、このペアリングのスタイルのお店にされたのは、一部の有名なお酒ばかりを飲みたいという方ばかりが多くなってしまったことが要因のひとつであるらしい。
名は知られていなくても美味しいお酒、料理とあわせることで味が広がるお酒、また料理をひきたたせるお酒があるということをお客さんに知ってもらいたかったためであるという。
そしてグラスによっても味が変わって感じられるということも伝えたかったと。
さていつものように酔い過ぎて後半の記憶がないのであるが、
失態をおかしマイレビュアさまにご迷惑をおかけしていないといいのだが…
桜のころは酔いがよくまわるのかもしれない。
いただいた素敵なご縁に、酒縁にお店に感謝を。