2回
2025/10 訪問
念願の再訪 本当は言いたかったこと
2025/11/06 更新
2022/12 訪問
【忘れじのたこ焼き Unforgettable takoyaki】
学生時代重病を患い、厳寒の京都で数ヶ月間寝たきりになった。今から考えると入院すべきだったと思うが。当時そんな余裕もなく、考えすら頭に浮かばなかった。
最初のうち、どの病院に行っても原因がわからない。病状は悪化するばかりである。そんな私の窮状を見かねた畏友東山さんが神経の専門医へ連れて行ってくれた。先生曰く、あなたの病気は町医者には判断できない。私だからわかるのだ、と仰った。私は命拾いをしたのである。
病状が安定してからは朦朧とした状態で、よろよろと壁伝いに歩き、北大路堀川にあったその病院へ市バスで通った。
待合室で流れるインストゥルメンタルの"You can have me anytime"(トワイライトハイウェイ)。毎回かならず顔面神経に薬液を注射される。何十箇所も。そしていつ終わるともしれない感じ。深く差し込まれる針、その痛いこと。...
その後、いつも近辺にあった店でジャンボたこ焼きを買った。その味。あの鰹節。ほとんどのものを受け付けない体調だった(外食すると、きまって大抵のものは吐いた)が、本当に美味しかった。朦朧とした状態であり店名までは覚えていなかったが、まだ営まれている由。死ぬまでにもう一度、行きたい。
2023/08/03 更新
もはや、37年ぶりの再訪である。
このお店は始められて何年ですか?と尋ねると、37年です、との答え。いや、間違いない。北大路堀川のジャンボたこ焼きはここしかない。しかし疲れているうえ、店長と思しき方に怪訝な表情をされ、37年前の個人的なエピソードを言う気は失せてしまった。
いや、37年前、重病を患い何を食べても受け付けず、吐いていた私が唯一食べられたのが、ここのたこ焼きなんです、と言いたかった。
食べてみる。美味い。しかし以前の方が鰹節は大きかった。昔は、大きな鰹節が踊っていた。そして食感がカリフワ調になっているのが個人的には少し残念。やはりたこ焼きは、外も中もふわふわであって欲しい。東京のカリフワなんて、邪道だ。
でも本当は、ありがとうございます、と言いたかった。今度はいつ来れるかな?