2回
2016/01 訪問
喜太八|解答ルパンな日々
美味しい料理はサイエンスであり、いい料理人はサイエン
ティストである。年末にこの事を実感させてくれたのが
ミシェラン2つ星、フグ料理喜太八であった。
年末恒例の同期会で6名で店は貸切。今年1月から予約
という幹事の熱意もすごかった。南海岸和田駅から迷い
ながら到着。しばらくフグ博物館を見学させてもらった。
現当主2代目北濱喜一氏は現在88歳でありながら毎日
調理場に立っている。その完璧な調理は全く年齢を感じ
させない素晴らしいもの。当主の親戚の店長も83歳。
いつ何があってもおかしくない状態だ。何とか間に合って
ラッキーだった。写真はフグ博物館内にある。
喜多八に戻って2階に案内される。
店長は83歳なので階段昇降できず。故に3代目就任予定
の北濱氏のお孫さん(38歳)が給仕。
骨煎餅、昆布、銀杏。骨は素焼きされている。
パリパリとした食感をフグの骨で味わうのは珍しい。
皮、胃、腹壁。
皮。梅肉和え。
腹壁の博多和え。腹壁を明太子で和えてある。
胃梅マヨ和え。
ヒレ酒。
私は普段お酒は飲まないが、私同様飲まない常連のU氏
が注文しているのを見て、急遽注文。濃厚ヒレスープ。
琥珀流し。フグ由来の煮凝りの中に皮、身、オクラ、金箔等
を入れたもの。具財が宙に浮いた状態になっている。
83歳店長の力作。3Dプリンターの要領で作るらしい。
福錦。白子の含め煮。炊けば溶けてしまう白子にどのように
味を付けるのか。一子相伝の手法らしいが、最近17年勤続
の3代目が制作過程を見ることを許されたらしい。良かった。
さえずり。フグの口から食道の部分。
わけぎとともに酢味噌和え。
てっさ。尾の近くの繊維と並行に引いた身。これはトロの
はがしと通じるものがある。すっと口の中で溶けて美味い。
堺で別注した包丁で身を引くらしい。身の湯引き。
背と腹の針を取った表皮。体側線上の表皮。
フグの皮は5層に分けて調理するらしい。包丁は役に立
たず、爪で剥すことも。3代目が担当しているらしい。
てっちりが運ばれてくる。
新鮮な泉州の野菜と。
たっぷりな身とあら。テンション上がるなあ。
調理のポイントはこの鍋。70年以上使われており、湯を
いれて炊くだけでフグ出汁がリアルにできるらしい。2代目
当主がこの店を継いだ時には、もう既に店にあったという
伝統のあるもの。夏季の休業中もこの鍋の手入れは欠か
さないらしい。京都のすっぽんの店、大市を連想させる。
3代目が丁寧に鍋に具財を入れていき、てっちりが完成。
この時のポイントは決して鍋を沸騰させない事。沸騰させ
るとアクが出るが、これが旨味たっぷりのコラーゲン。
従って火加減には細心の注意を払う。
ポン酢は日本マルテン醤油の醤油で作ったポン酢。
あまりに美味しいのであっと言う間に完食。
残った出汁で雑炊を作る。米は炊きたてのユメピリカ。
とてつもなく美味しい雑炊。
ここで冷たいお茶が出て火照った体を冷ます。
気が利くなあ。
デザートその1。イチゴは甘さだけでなく酸っぱさもないと
駄目と言うのが2代目当主の考え。
デザートその2。アイスクリームのリキュール掛け。
温かいほうじ茶で終了。
決まりきったコースメニューでは無く、フグ料理をゼロ
ベースで見直し、鯨料理で見られるさえずりや内臓。
おこぜ料理で見られる骨煎餅。鱧料理での煮凝り。
さらには鍋から出汁が出る大市の手法を取り入れ、
極めつけは、フグ白子の含め煮という一子相伝の
独自料理。
次元の違う料理の数々にただ感動。多古安や今は亡き
幸鶴にも何度か行ったが、ここが一番美味しいと思う。
新種のフグ4種を発見したサイエンティスト北濱氏の
フグ創作料理の数々。まさに今のうちに味わうべき料理。
最高に美味しかった。ごちそうさま。
2016/01/04 更新
岸和田にあるふぐの名店喜多八。6年ぶりの再訪だ。常連客で無ければ、予約は約1年前からが必須。今回も喜多八予約専門家が1年前から予約。参加者も全員気合入りまくりで、午後5時半のスタートだったのに、3人が午後5時にはフライング入店。常連客でもなかなか予約できない状況になったので、ミシェランは卒業となった。
描かれたふぐの絵が懐かしい。店主のふぐ博士北濱氏は94歳。今もお孫さんと一緒に元気に厨房に立たれている。料理は門外不出。祖父から孫への直系相伝となっている。
お手拭き、お茶、おひがしでほっと一息。
ボトル入りのお茶で乾杯。
この店のふぐは遠州灘産。だが御多分に漏れず地球温暖化の影響で、遠州灘の船が静岡位まで北上することがあるらしい。銀杏と骨せんべい。右側はふぐの針の根元を揚げたもの。お客からの要望で出来たメニューだという。
左から時計回りにふぐの皮の梅肉和え。ふぐの胃。ふぐの腹壁の和え物。なかなか他店では味わえない珍味。
ふぐの白子の刺身。独特のつるっとした食感を楽しむ。白子の味付も素晴らしい。
ふぐの白子のふくめ煮。白子に火を入れて煮る時に、出汁を白子全体にいきわたらせて、しかも煮過ぎないように調理するのは至難の技。この料理は現在でも北原氏が担当しているらしい。世界中どこにもない美味しい白子。あまりの美味しさにうっとりとなる。
ふぐのべっこう煮凝り。ふぐの身と皮がふぐ由来の煮凝りの中央に入っている。これは3Dプリンターの要領で気の遠くなる作業で作られる一品。
ふぐのさえずり。ふぐの口から食道の部分だ。大阪トラフグの会ではオプションで焼いていたが、この店では酢味噌あえで提供。やはりコラーゲンたっぷりの独特の食感。
ヒレ酒。一部の店でふぐのヒレを店先で乾燥させている店があるが、お孫さんによるとそれではヒレのうらのぬめりが取れないので
この店では、ヒレを串に刺してヒレの裏表を両方乾燥させているという。澄み切ったお酒なのにちゃんとふぐのヒレの味がするという稀有なヒレ酒。
てっさと湯引き。ふぐの尾の身の部分を堺の特注の包丁で繊維の方向に大きめに切ったてっさ。食べ応えがある。ふぐの皮5層を巧みに切り分けた湯引き。ミニ白子付き。美味さの極み。
そしてメインイベントのてっちりが始まる。
調理のポイントはこの鍋。70年以上使われており、湯をいれて炊くだけでフグ出汁がリアルにできるらしい。2代目当主がこの店を継いだ時には、もう既に店にあったという伝統のあるもの。夏季の休業中もこの鍋の手入れは欠かさないらしい。京都のすっぽんの店、大市を連想させる。そして昆布出汁のなかに脂が。ふぐには脂肪がほとんどない。従ってこれはふぐの肝から採った脂。てっちりに味の深みを与えている。
3代目が丁寧に鍋に具財を入れていき、てっちりが完成。この時のポイントは決して鍋を沸騰させない事。沸騰させるとアクが出るが、これが旨味たっぷりのコラーゲン。従って火加減には細心の注意を払う。鍋白子もイン。
ふぐの身もイン。
鍋白子。白子とは何であるか。火入れした後の変化を熟知して調理された鍋白子は一般のふぐ料理店とは一線を画す美味しさ。ポン酢は日本マルテン醤油の醤油で作ったポン酢。
ふぐのアラ。骨に付いた身は美味い。
とうとうみ。半端ないプリプリ感。
ふぐのアラその2。滋味深い味。
ふぐ皮。コラーゲンたっぷりで半端ないプリプリ感。野菜も美味しく何だかんだであっという間に完食。
そして〆はもちろんふぐ雑炊。
カブラ漬けも美味い。
雑炊のお茶は冷たいお茶。
そして〆の雑炊が完成。
美味い!美味すぎる。私的ふぐ雑炊生涯ナンバーワン。ベストの状態で調理されたふぐからのエキスと野菜からのエキスが、ふぐの肝臓から抽出された脂ががコーティングされた固めに炊いたつやひめと混然一体となって口腔粘膜に怒涛のアミノ酸攻撃。たまりません。
箸が止まらずおかわりの連続。
讃岐姫という酸味と甘みのバランスの取れたイチゴ。
リキュールをかけたアイスクリーム。
お茶で終了。
まさにパーフエクト。一生に何度しかない贅沢。ふぐを研究し尽くし基本からふぐ料理を見直し、どこにもないふぐ料理を再構築した北濱ワールドが炸裂。フグ料理をゼロベースで見直し、鯨料理で見られるさえずりや内臓。おこぜ料理で見られる骨煎餅。鱧料理での煮凝り。さらには鍋から出汁が出る大市の手法を取り入れ、極めつけは、フグ白子の含め煮という一子相伝の独自料理。次回は6年後になる予定。それまで生きて何とか次回もふぐ料理を心から楽しんでやると固く心に誓った。
美味しかった。ごちそうさま。