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昼の点数:4.3
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涙のキッス。
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2016/05/15 更新
「ちゃんとした仕事を見つけるまでキスはおあずけよ・・」
昔、それが口癖の女の子がいた。
明るくて、リスみたいな顔立ちがキュートで、グラマラスだった。デビュー前のいきものががりのファンで、よくビナウォークの路上ライブを見に行った。Tシャツが好きな娘で、よく僕の持っているTシャツを着たがった。
お気に入りはジミ・ヘンドリックスのTシャツで、僕達は週末ごとにそれを交換してた。まるで、想いを綴った日記をそっと教室の机に忍ばせるように。
僕たちはつかず離れずの関係だった。
もちろんすることはしたし、ほぼシューイチのペースで会っていた。あぁ、片瀬那奈かわいい。
だが、キッスはいつもお預けだった。
アヒルみたいにぷっくりとした唇は彼女の最後の防波堤だったわけだ。
その頃の僕は定職にもつかずふらふらと遊び暮らし、悪戯に毎日を過ごしていた。
美容師だった彼女はそんな僕を心配し、しょっちゅう求人広告の切り抜きをくれた。
もし仮に、石原さとみと椎名林檎に同時に求愛されたらどうだろう?
少なくとも僕はどちらかなんて選べないだろう。
どっちにもいい顔をしてハッキリしないまま、そのうちどちらからにも愛想を尽かされてしまうだろう。
当時の僕はそんな状況で、いい加減に働いて日銭を稼いでは適当に遊び暮らしていたわけだ。
「彼女はどれだけ僕に苛立っていたのだろう・・」
長谷の路地裏、ふと思った昼下がりだった。
あれからもう十年近くが経っていた。
五月半ばの晴れ模様。
気持ちばかりが高ぶって。
思い出を探すように江ノ電に乗り、長谷の情緒に身を委ねて歩いている時に見つけたお店だった。
靴を脱いでごめんください。
古民家カフェはメロウなボサノバが流れていた。
障子と襖。
古と今のマッシュアップは心を穏やかにしてくれた。
僕はひとり窓辺のちゃぶ台に座ってコーヒーをお代わりした。
晩春の陽射しは穏やかに草木を照らし、遠くからはホトトギスの歌声が聞こえた。
こんな時間があることを昔はちっとも知らなかった。
衝動のまま駆け抜けた青い春の終わりは一瞬だった。
「もう、私達はどこにも行けないの・・」
真っ暗な部屋で彼女は言った。
明日と今度に逃げ込んだ僕に愛想を尽かしたのだ。
海に程近い、ラジカセしかないワンルーム。
悲しい音色がやけに大きく響いた。
それ以来、彼女は音信不通になった。
僕達のファーストキスは、別れを告げる涙のキッスだった・・
「いま、幸せでやってるかい?」
永遠に続くような穏やかな空気のカフェで、僕は彼女への手紙を書いた。
いくつものごめんねと、たくさんのありがとう。
だが、いつまでも感傷に浸ってはいられない。
この手紙は由比ヶ浜に流そうと思った。
宛先住所のない手紙はこう締め括った。
あの頃は本当にすまなかった。
きみはサイコーにイカしてた。
どうか、幸せになってくれ・・
P.S でもお前さ、ジミヘンのTシャツ借りパクしっぱなしだよね(笑)