abtabetaiさんが投稿した珈琲山(神奈川/黄金町)の口コミ詳細

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珈琲山黄金町、阪東橋、吉野町/喫茶店

1

  • 昼の点数:4.3

      • 料理・味 -
      • |サービス -
      • |雰囲気 -
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2023/04 訪問

  • 昼の点数:4.3

    • [ 料理・味-
    • | サービス-
    • | 雰囲気-
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-

横浜が聴こえた夕暮れ。

横浜だけが理由を欲しなかった。
いてもいいし、行ってもいい。

誰も私を気にしてないし、私も誰の視線も気にしない。

だけれども、ここにいる間はちょっぴり冷たい潮風と煌めくような解放感に溢れる横浜がありのままの私を受け入れてくれた気がした。

黄金町。昔、少しだけ働いていた街の駅前でレトロポップな純喫茶を見つける。出会いに胸が高鳴る。
中2階には好きなものが溢れている。暖色のランプ。サイケデリックなBGM。映画のアートワーク。デビッド・ボウイの向こうに広がる横浜の交通。

マンハッタンを思い出す。背筋を正し、コートの襟を立てて歩くブロードウェイ。カールしたブロンドが微笑み掛ける。ここは自由の国。アリシアは歌った、夢を叶えるコンクリートジャングル。

ベレー帽のおねいさん、凛とした銀髪の美しいご婦人、トレンチコートを着たおじいさん、見るからにクリエイター系のやたらかっこいいおにいさん。

マンデリンは程よく深入り。カップは大きい。チャーハン、サンドイッチ。どれも見るからにぼくとつなおいしい。

心に響くのは心から生まれたものだけだ。マーケティングに涙は流れない。わからない人は笑うかもしれない。だけれども、本当の気持ちから生まれたものはある一定数の人には確実に届く。

横浜外れのコーヒー。一見の私が啜ると、思い出したのはいつまで経っても馴染めない香水と消毒液と路地裏の中華料理屋から漂う古いラードの匂い。

それは、人間のモロな匂いと欲とが混ざりあった夜のファンタジー。

夜の世界で育った僕はあの頃を思い出しつつ、汚れた人間を浄化するカフェイン。
それは、たまたま身を寄せた空間込みのファンタジー。

道を歩けば変な人と指差され、飲み屋では遊び人とからかわれる。
人と同じが嫌なだけだったのに、今を忘れるために耳をふさいだケミカルブラザーズ。

笑いたければ笑えばいいさ。
居場所は見つけた。
今もここで、空っ風吹き抜ける波止場の先で、自分の足でひとり立っているんだ。

夕暮れどきにひとり、穏やかな照明の下、温かいコーヒーを啜っていると、クラフトワークの隙間から(君は頑張ってるから大丈夫だよと。)横浜の優しい囁きが聴こえたような気がした午後のひとときだった。

2024/11/13 更新

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