キドカラーさんが投稿したレーヌ デ プレ(京都/神宮丸太町)の口コミ詳細

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キドカラー (60代前半・男性・富山県) 認証済

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レーヌ デ プレ神宮丸太町、京都市役所前、三条/フレンチ、創作料理、イノベーティブ

1

  • 昼の点数:4.3

    • ¥8,000~¥9,999 / 1人
      • 料理・味 4.4
      • |サービス 4.4
      • |雰囲気 4.3
      • |CP 4.1
      • |酒・ドリンク -
1回目

2020/03 訪問

  • 昼の点数:4.3

    • [ 料理・味4.4
    • | サービス4.4
    • | 雰囲気4.3
    • | CP4.1
    • | 酒・ドリンク-
    ¥8,000~¥9,999
    / 1人

鹿肉にノックアウトされました

京都に行く機会に美味しいランチをいただこうと、レーヌ・デ・プレさんに予約を入れたのが10日ほど前でした。そして今日、急に降りしきる雪の中を突っ切って予約の時間までに京都に到着。そこは、2人がけテーブル三つの本当に小さなフランス料理店でした。

予備のテーブルも2つありましたから、それらを組み合わせて4人がけにも対応できるようですが、それでも最大10席でしょう。一度に料理を提供できる数がこれぐらい、ということなのかもしれません。期待が膨らみます。

我々がテーブルにつくのをじっくり待って下さった、シェフの奥さんと思われる、給仕担当の方のメニューの説明があります。「うーん、早くてついていけない。」と口にすると「もちろん、お料理をお出しするときに一つ一つ詳しくご説明しますから。今は全体を通して食べられない食材などないか確認していただくだけなので。」というお気遣い。

メニュー表にはない一品目は、ウェルカムスープとして出された鮮やかな緑色のスープ。「抹茶の茶碗を使ってますから、そのまま口をつけてお召し上がりください」とのこと。確かに見た目はほとんど抹茶です。スープの正体はホウレン草とハマグリの旨味を煮詰めたものでした。見た目と全く違って、まず感じる味は塩味、そして強烈なハマグリの香りでした。最初にこの旨味でグッと食欲を高められます。

メニュー表の一品目「師へのオマージュ」は、玉子でした。温泉卵の卵黄の上にナツメグやジンジャーを加えたクリームとメープルシロップがかかったもので、卵の殻を容器にしてあります。卵黄の甘みに、ジンジャーのピリッとした辛さや苦味、ナツメグの香り、メープルの甘さや塩味も混ざった不思議な味わい。グラタンの焦げた部分を食べた時の味がしたかと思うと、酸っぱい味もする。今まで食べたことのない、この料理の名前を質問すると、シェフのパリで修行をした師匠のオリジナル料理で、師匠のお店アルページョでは「小宇宙」と呼んでいる、人が感じる5味を一度に味わえる一品、とのこと。(てことは、師匠のお名前はアラン・パッサールですね。)お弟子さんたちはそれぞれに料理の名前をつけて提供されているとのことです。私たちは一言、美味しかった!

続いてメニュー表では「シェフの、遊びゴコロ・・・」となっています。出て来たのは、これも抹茶の茶碗にウニ、その上にエビのジュレをかけ、スィートアリッサムという小さな甘い花が散らしてある物です。当然ながら消毒臭さのないサクッとした歯応えのウニを噛み締めると甘さと潮の香り、それをエビの香りが包み込む。日本料理店で出ても不思議ではない一品に驚きが重なります。ウニは北海道産だそうです。

このタイミングでパンが出て来ます。おひつのような木箱の底に熱い焼き石が置いてあり、パンが冷めないようになっている。木箱の蓋を開けるとパン屋さんの前を通った時の香りがふわっと立ち上って来ます。パン自体は特に味のある感じはしないシンプルなものでした。

続いて「青森産本鱒」。ここまでの小さな一品とは異なり、鱒やホワイトアスパラ、セリ、食べられる花が大皿に絵のように盛り付けられているカラフルで華やかな一皿です。鱒は低温でコンフィされており、生のようですがしっかりと火が通っていると言う不思議な食感。ぶ厚い生の鱒切り身を食べているかのような味と香りは初めての体験です。火を通したホワイトアスパラの上には薄く削いで白髪葱のような見た目の生のホワイトアスパラがあしらわれています。味付けのアクセントに、フキノトウと黒オリーブ、アンチョビで作ったタプナードが添えられていて、フキノトウのほろ苦さが春の訪れを感じさせてくれます。

いよいよ中原シェフの低温調理の真骨頂が現れて来ました。次の「真鯛」は、皮カリカリ、中の身はレアという見事な火入れ。付け合わせは、やはり春の野菜の西洋菜の花とワサビの葉っぱ。緑のハーブオイルがソースとして散らしてあるのですが、更に仕上げにホタテとバターの温かい白いソースをかけていただきます。真鯛の強い甘味をレアの中の身が伝えてくれます。真鯛を食べ終わって残ったソースに色々なエキスが溶け込んでますから、パンにしみ込ませて食べてしまいましょう。おっ、このパン、料理と合わせるとすごいおいしい。

そして今日のメイン「美作産鹿の低温ロースト」です。もうメニュー表にはっきりと低温ローストと表示されている、鹿のロースのローストです。表面はこんがり焼かれていますが、中の真っ赤なレアの肉も赤ワインソースの向こうに見えてます。付け合わせはカボロネロ(黒キャベツ)、ピリッと辛味を刻んだチョリソで付け加え、ペリゴール産トリュフ(今シーズンはこれが最後、ということでした)をとろろ昆布状にスライスしてたっぷりかけてある。このお皿が運ばれたときにこのトリュフの香りが私の鼻を引きつけてしまいました。

さあ、鹿肉を実食、おっ柔らかい。そして肉の味がじゅわっと口に広がる。脂身もなく牛肉のような臭みのない赤身主体の肉が、噛む幸せを堪能させてくれます。妻はこの鹿肉にノックアウトされてしまいました。改めて鹿肉について質問すると、美作の産地では普通に山の産物を食べて生活した鹿を、そのまま大きなオリで囲んで捉え、1〜2時間のうちにその場所で絞めて血抜きをしたので、銃で打った鹿のようなストレスを受けていないのが味に反映しているのだと説明されました。後で中原シェフがご挨拶に来られた時も、鹿の取り方や絞め方を詳しく説明していただき、シェフ自身がその味に強い自信を感じておられるのがよくわかりました。これは大満足の一皿でした!

続いてデザートは、まず「焼きリンゴ」。焼いた「クレープ」のようなものの間に焼きリンゴのシャーベットが挟んであります。パイ生地のように層をなしてパリッパリの「クレープ」とシャーベットについたシナモンの味の組み合わせに、妻が思わず「八橋をイメージされたのですか?」と奥さんに質問をぶつけると、「実は、、ぶっちゃけ、、、「クレープ」じゃなくて春巻きの皮なんですよ。春巻きの皮を何枚も層にして薄くして、焼いたものなんです」という種明かしが聞けてしまいました。片手でつまんで食べ終わってしまうお菓子に、シェフの創意工夫や試行錯誤が詰まっていたことに我々はさらにびっくり。ヒンヤリとして香りも良く、とても美味しかったです。

デザート二品目は「天使の苺」。愛媛産「レッドパール」というブランド苺を極薄にスライスしたものとフレッシュな半分を一皿に、クレームダンジュがつけられてます。あまおうほど甘くはないけれど、全方位にバランスが取れた大きな粒の苺です。奥さんから「生産されている農家さんが1軒だけなので、なかなか出回らないと思います」という説明も加わります。もちろんクレームダンジュもとても美味しい。

最後にお茶。理科実験で使う試験管立てに試験管に入った6種のお茶のサンプルを並べて持ってこられて一つ一つの説明を受けた後、実際に葉っぱの香りを自分で確かめて、どのお茶にするかを決めます。私はグリーンルイボス、妻はこのお店の名前の元である西洋雪見草(レーヌ・デ・プレ)のハーブティーにしました。お茶請け「ミニャルディーズ」として一緒に出されたのは、生チョコレート。小さな卵形の器の底まで詰まった生チョコをスプーンでかき出して食べます。トロトロでいて濃厚。

お茶を飲み終えた頃、中原シェフが出てこられ、ご挨拶をしていかれました。シェフの火入れに対する情熱がひしひしと伝わり、鹿の説明では食材に対する真摯な姿勢をしっかりと感じ取れました。

ただ、新型コロナウィルス流行の影響から、我々と同時にランチを食べるはずだったシンガポールからのお客さまが今朝キャンセルされるなど、色々な影響が京都でも広がっています。帰国されたお客さまの事情は仕方がないとはいえ、食材の準備など様々なことに影響が出てくるので、深刻な問題だなと感じました。流行に負けず頑張っていただきたいです。

お会計は、税・サービス料込みで7,800円に、飲み物代(私はジンジャエール、妻はブラッドオレンジジュース)を加えて、2人で17,520円でした。シェフもおられましたので、今回も並んで写真を撮っていただきました。

美味しいものでお腹がいっぱいになって、満腹になって店を後にすると、シェフと奥さんは、我々が曲がり角を曲がるまでずっとお見送りして下さいました。ご馳走様でした。またいつか食べに来ます。

2021/02/24 更新

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