2回
2024/01 訪問
店内撮影禁止 場所が場所なら百名店間違いなし 築150年の蔵を移築した超隠れ家カフェ
昨年の大晦日、二子新地に初日の出見物スポットの下見に行ったついでに立ち寄ってみたものの、年末年始休みでフラれてしまった「珈琲 甍」(いらか)さん。
ホームページやSNSも無く営業情報が掴めないお店ですが、大晦日に見た貼り紙に「12/28〜1/8まで休業」とあったので、その翌日なら営業しているだろうということで、仕事帰りのこの日の夕刻にお邪魔しました。
東急田園都市線二子新地駅東口を出て、目の前の二子新地駅前松栄会の商店街を右へ。商店街を抜けて更に進むと、右側に「高田梨場」という梨園があり、その先の十字路を右折。すると、突き当たりの手前右にお店があります。
後で調べたところによると、この建物は150年前に宮城県岩沼市で建てられた蔵で、古い建物を探していたこちらのご店主が譲り受けて3カ月かけて現在地に移築し、2007年に「珈琲 甍」としてオープンしたのだそうです。
移築の4年後に起きた東日本大震災により、岩沼市に残っていた古い建物は殆ど失われてしまったそうなので、この建物が遠く離れた二子新地で現存しているのはある意味奇跡と言ってもいいかもしれません。
参考:https://morinooto.jp/2017/04/13/iraka/
16時40分頃に着き、店内に一歩足を踏み入れると、建物だけでなくインテリアも和風感満点。ご店主が趣味で集めたという天平甍や仏像などの骨董品が其処彼処に飾られています。家具類も全て年代物です。
店内にはジャズピアノの音楽が流れ、7席あるカウンター席の右端には常連客と思しき初老の男性が1人。コーヒーカップを前に置きながらスポーツ新聞を広げています。
ご店主に案内された右側の窓際に並ぶテーブル3卓(5人掛け、2人掛け、4人掛け)のうち中央の2人掛けテーブルに、窓を背にして腰を下ろします。
ご店主が持って来てくれたメニューブックを見ると、コーヒーは甍ブレンドとケア・ブレンドの2種類。メニューの説明書きに「ビターで深煎り かなり強目のコーヒー」とあるケア・ブレンド 700円(税込)に決めました。
ご店主「かなり味が濃いですけど、大丈夫ですか?」
私「はい、私、濃いコーヒーが好きなので大丈夫です」
期待が高まります。
スイーツは、ラストオーダーの17時直前だったこともあり、チーズケーキなど生菓子の幾つかは品切れ。
ただ、夕食間近の時間帯でもあり、元々ケーキ類を注文する気は更々無かったので、アーモンドのガレットを注文しました。1枚100円(税込)ですが、3枚からの注文とのことですので、3枚お願いしました。
こちらのコーヒーは、青豆を1年以上熟成させたオールドビーンズを焙煎し、ご店主がネルドリップでゆっくり丁寧に淹れた後、火で短時間温めてから提供しています。
私の席から見て真正面のカウンターの向こうで寡黙なご店主がコーヒーを淹れる様子を眺めながら、待つこと10分程でケア・コーヒーとアーモンドのガレットが相次いで運ばれて来ました。
ケア・コーヒーは、深煎りらしい香ばしさ、コクと苦味をしっかり感じられる期待通りのコーヒー。酸味系のコーヒーが好まれる昨今、中々お目にかかれない昔ながらの「ザ・深煎り」といった印象のブレンドです。
アーモンドのガレットは、サクッとした食感で適度な甘さ。アーモンドは粉状ではなく欠片が生地に練り込まれていて、噛むとその食感も楽しめます。
添えてある果肉たっぷりで甘酸っぱい自家製あんずジャムを付けると、更に美味しさがアップ。ケア・コーヒーのお供にぴったりでした。
結局、滞在時間は25分程でしたが、もっと長くいたように感じるくらい濃密なひとときを過ごすことができました。
このお店、二子新地というややマイナーな地域の、しかも商店街から外れた住宅地の中にあるからか、オープン17年目にして口コミ投稿は45件、評価点は3.35(2024年1月10日現在)に留まっています。
でも、私がこれまで訪れた幾つもの百名店と比べても全く遜色の無い素晴らしいお店で、もっと人が集まるエリアにあれば百名店に選ばれることは間違いないと思います。
ただ、下手に百名店に名を連ねて沢山の一見客が押し寄せ、お店の隠れ家的雰囲気が損なわれるよりは、今のままの方が良いのかも知れません。
なお、食べログの店舗ページに投稿された写真の中には店内で撮影したものも散見されますが、過去の口コミを見ると遅くとも2021年6月以降は店内撮影禁止になっていたようです。
ご店主が大切にされているお店の雰囲気を守るためのルールですので、他の注意事項も含め、これから訪れる方は要注意です。
2023年大晦日の二子新地駅前松栄会の商店街
途中にある高田梨場
此処を右折
2023年大晦日 店舗外観
残念ながら12/28〜1/8お休みでした
2024年初営業日の店舗外観
入口付近
注意事項
2024年1月からの定休日のお知らせ
ショップカード 表面
ショップカード 裏面
2024/01/10 更新
この日は、仕事帰りに二子新地へ。
主たる目的は、行きつけの壽煎餅さんで米菓を買うことでしたが、時間に余裕があったのでその前に駅近辺のカフェで一服することにしました。
駅改札脇にある珈琲館 二子新地店さんが未訪でしたが、チェーン店で面白くないので候補から除外。過去に訪れたことのあるカフェ5店のうち、壽煎餅さんと同じ方向にあるのがカフェ レストさん、シェルシューズさん、そして甍さん。この中で私の評価点が最も高い甍さんを第一候補とし、万が一不定休だった場合にはシェルシューズさんを再訪することに決めました。
梨園の先を右折し遠目に見ると、甍さんのお店の前に営業中であることを示すお店の立て看板が出ていたので一安心。
15時半過ぎに店内に入ると、先客が3組6人。手前の
テーブル席に女性2人、奥のテーブル席に男女3人、そしてカウンター席に年配の男性1人が居ました。カウンター席の客はテーブルの上に新聞を広げて読んでいて、はっきりとは覚えていないのですが、もしかしたら今年正月に訪れた際にカウンター席で新聞を読んでいた客と同じ方かも知れません。
ご店主の案内に従い、カウンター席の奥から2番目に腰を下ろしました。
ご店主が持って来てくれたメニューを見て、ドリンクメニューの中で目に留まったのが1日3杯限定のダッチコーヒー 900円。ダメ元でご店主に尋ねてみたら、まだ残っているとのことだったので、これをオーダーしました。
また、前回はラストオーダーの17時直前だったのでケーキ類は全て売り切れていましたが、この日はメニューに載っているチーズケーキとショコラフランボワーズのどちらもまだ残っていたので、ショコラフランボワーズ 800円(いずれも税込)をいただくことにしました。
先ずダッチコーヒーが出され、それを飲み始めていると程なくショコラフランボワーズも運ばれて来ました。
ダッチコーヒーは、冷酒を飲むときに使うぐい呑みのようなガラス容器に入っていて、量は多くありません。でも、とても濃厚で、まるでコーヒー豆のエッセンスを飲んでいるよう。少しずつちびちびといただくので、この位の容量でも十分楽しめます。
ショコラフランボワーズは、柔らかくて滑らかな口当たりのガトーショコラの上に、ココアパウダーと細かく砕いたドライフランボワーズが振りかけてあり、生クリームもたっぷり添えてあります。
これもとても美味しくいただきました。
築150年の蔵を移築・改装した天井の高い店内は、純和風に飾り付けられ、静かなクラシックピアノの音楽が流れていて、とても落ち着いた雰囲気。
そんな中でダッチコーヒーとショコラフランボワーズをゆっくり楽しみ、30分程で退店。会計の際、「このダッチコーヒー美味しいですね。とても気に入りました」と申し上げたところ、ご店主がとても嬉しそうに「ありがとうございます。半日以上かけても2杯くらいしか作れないんですよ」と仰っていました。
なお、先客のうち、女性客2人が私より少し前に退店したのですが、その前にご店主やカウンター席の男性とにこやかに話し込んでいました。皆さん、近隣にお住まいの常連客のようです。
こういうお客さんばかりなので、店内撮影禁止、利用時間1時間以内など一見ルールは厳しそうですが、張り詰めた感じは全く無く、店内は和気藹々とした雰囲気なんですね。
私も、別にSNSに写真をアップしたり、何か作業したりするためにカフェ巡りをしている訳ではないので、こうしたルールも全く苦になりません。
素敵な雰囲気の中で美味しいコーヒーとスイーツをいただきに、来年もまたお邪魔したいと思います。