レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
2位
1回
2018/02訪問 2018/02/15
北海道スキーはニセコが初めてだった。98年からは東山を定宿にしてほぼ毎年訪れている。若い頃はナイターまで貪るように滑っていたものだが、タクシーの運転手さんに聞いてこのお店を知って以来、アフタースキーは舌鼓を打つことに変わった。
JR倶知安駅を背にメインストリートを進み、都通りの次の路地を左折すれば、右手に見える『成吉思汗』の黄色い看板が目印。
一見こわもての親父さんと優しい女将さんが二人三脚で、先代から創業60年近くになる老舗を切り盛りしている。1階はカウンターと小上りで、2階の広い座敷は宴会用だ。
作り方を一度しか教えてもらえない鍋は、まずジンギスカン。①特製鍋の淵に野菜と自家製コンニャクを入れる。②鍋の丸い丘部分に脂を敷き、熱くなったら一枚ずつではなくザッと肉をのせる。③やがて肉が焼け、周りの野菜に肉汁が滴り落ちる。④もやしが焦げないうちに、いただきます。
もつ鍋は、①独自に考案された平たく丸い鍋の、ややへこんだ中心に油。②火をつけたら、油の温度が上がる前にホルモンを入れる。③ホルモンの周りを野菜で囲む。④特製味噌を野菜の上にのせてグツグツ煮込む。④野菜から出る水分が吹きこぼれないようにお皿にすくう。⑤玉ねぎが柔らかくなったら、いただきます。⑥後作りのおじやがまたピリ辛絶品で締めに最高。
いつも三泊四日のスキー・ツアーだが、ここ数年は必ず二晩訪れるほど病みつきになった。このお店でジンギスカンともつ鍋を堪能すれば、雪深い街にいることを忘れ、ひたすら温かく幸せを感じる。しかも両方食べても1500円(12年3月現在)の安さ。ビールはもちろん[サッポロクラシック]で、「寛松」オリジナル・ラベルを貼った芋焼酎もある。
色白美人の女将さんは常に笑顔明るく若々しいが、それでも実は日本レコード大賞2連覇歌手と同級生。大柄で丈夫そうなご主人も最近やや体調イマイチと伺った。どうか末長く健やかにお元気でと祈らずにはいられない。
※2017年10月31日をもって、63年の歴史を閉じられるそうです。親父さん女将さん、ありがとうございました。お世話になりました。
3位
1回
2021/08訪問 2021/08/25
子供時代に慣れ親しんだ味は記憶に深く刻まれ、郷愁導く懐かしさが点数を高くする。
一杯400円(12年9月現在)のラーメンは、とんこつでも味噌でも醤油でもない、この店でしか味わえない透明なスープに、柔らかいチャーシュー2枚ともやし、刻み青ネギが散らされただけのシンプルな細麺。炒飯(500円)かオムライス(550円)と一緒に食べれば、お腹も心も常に満足をいただける。
40年近くのお付き合いになるが、ご夫婦が営む小さな中華屋さんは味も雰囲気も全然変わらない。軒に下がった赤ちょうちんが迎えてくれる店内はカウンターとテーブルで15人も入ればいっぱいになる。周辺は住宅街だけに出前注文も多く、鳴り響くのは昔ながらのダイヤル電話。たまに訪れれば、『仕事で帰って来たとね』などと声をかけてくれる女将さんがまた嬉しい。
店前に広がる田んぼは今、頭をたれる前の稲穂が緑の香りを漂わせ、赤とんぼがその上を飛び交っている。そんな風景を眺めながら食べるラーメンはやっぱり最高。自分にとっては愛おしいお店だ。
ジャンルは「中華料理」でしょう。
4位
1回
2019/02訪問 2019/10/11
完璧な人間はいないが、完璧なスープカレーはある…気がする。
98年からほぼ毎年スキーを楽しんでいる北海道。当初は定山渓や留寿都、トマムにも足を運んだが、ここ10年余りはニセコに落ち着いた。アンヌプリ、東山、ひらふを擁して、広く、長く、雪質は最高。スキーの醍醐味を存分に堪能できる。そして、ニセコから離れられないもうひとつの理由が、倶知安町のジンギスカンとこのお店のスープカリーだ。
プリンスがヒルトンに替わった東山から山頂経由でひらふに滑り下り、板を置いてタクシー。ひらふ坂から十字路を左折して、道道343号を倶知安方面に進み、山田の交差点信号を左折すれば、左手に幟と『カリー小屋』の看板が見える。一軒家のコテージが四つ集まる「アルバータロッジ」のひと棟。やや急な階段を上がって2階の店内に入れば、木の温もりと窓から差し込む明るい陽射しが気分を盛り上げる。カウンター席が4つにテーブルふたつ。繁忙期の昼時は満席必至だが、状況次第でロッジ本棟のダイニング・スペースに案内されたりもする。
ブームになる前から自慢のスープカリーは、スパイシーとタイ風の2種類。鶏や豚や海老、時には駝鳥や鹿などが野菜と絡む。辛さは10段階に加えて超辛3段階からの選択。片手土鍋で供されるルーからは、ぐつぐつと煮立つ音が聞こえてスパイスの香りが漂い、食欲を一気にそそる。あっつ熱!を一口すすれば、辛さの中に深みのある極上の味わい。サフランライスを浸した“チキン野菜・超辛3”1150円+100円(14年2月現在)は、体内温度を急上昇させる。汗と涙と鼻水の洪水。
トッピング・メニューにある伊予名物の“じゃこ天”や“じゃこカツ”が[サッポロ黒ラベル]に嬉しい。今回は季節限定の“小河豚のフライ”も注文。あっさりパリパリの衣をまとう白身魚の淡白さがルーの辛さと旨味をさらに引き立てていた。満足この上ない。
朝から爆走の疲れを癒して午後いっぱいシュプールを描くエネルギーをいただける、これぞ北海道発祥の元祖スープカレー。手作りレトルトも販売している。
5位
1回
2021/01訪問 2021/01/15
下北沢には低価格で美味しい海鮮居酒屋が数多あるが、なかでもひときわ輝く一軒。
雲丹、いくら、鮑、穴子、蟹、小肌、鰹、海老、鮪、イカ、鯖、干ぴょう、玉子焼きなどなど、その日の仕入れによって変わる旬のネタが雲丹箱に10種類余りてんこ盛りの“箱ずし”1350円(14年12月現在)が凄い。安い。旨い。目にも舌にも絢爛豪華な新鮮魚貝のアンソロジーに、歌って踊り出したくなるような幸せ気分をいただける。
下北沢駅の南口から正面を進み、「下北沢駅入口」信号を右折。スーパーや消防署を右に過ぎながら、左手にレンタカーの看板が見えたら右角のビル1階にある。
今回は、まずザーサイと揚げじゃこがのった冷奴に七味たっぷりのあら煮大根で[サッポロ黒ラベル]の生。三陸で獲れた大ぶりの生牡蠣ふたつが2杯目の中ジョッキをすぐ空にする。きちんと殻から身をほぐして供される蟹は、この時季に漁解禁となるズワイガニの雌、セイコ蟹だった。味噌と卵が珍味で絶品。芋焼酎の水割りから、入り口脇のセラーに並ぶ種類豊富な日本酒へと移行する。[鶴齢]が嬉しい。ワインもある。温かいねぎまの小鍋仕立てはシンプルながら出汁がしっかり。体がほんのり温まり、心地よく酔ったところで、待ってました!と件の〆メニューを注文する。独り占めの贅沢も堪らないが、仲間との宴でワイワイ騒ぎながらのシェアも楽しい。『取るなぁ、鮑は俺のやけんね!』
店内はテーブル席に掘りごたつの小上がりが三つと禁煙のカウンターで、いつも遅くまで老若男女の賑わいが途切れない。海の幸だけでなく、野菜や肉をそのままに、または焼いて煮て揚げて蒸してと、様々に披露してくれる味覚の娯楽劇場。まだ開店して4年ほどと聞く。これからますます精進して50年くらい頑張って欲しい。
6位
1回
2019/05訪問 2019/10/11
西新の脇山口信号から北へと行く道。いつのまにか『サザエさん通り』と呼ばれている。戦中戦後に原作者の住まいがあり、近くの海辺で漫画のキャラクター名を考えついたと言われているからだろう。その百道浜は埋め立てられて久しい。昭和40年代後半には遊泳禁止で夏でも閑古鳥の海の家が、九州場所のシーズンになると二子山や花籠の巡業部屋となって賑わった。人気はもちろん貴ノ花と輪島。西南のグラウンドで関取や力士衆とソフトボールに興じたことが懐かしい。運動会の応援練習では浜から海に向かって大声を出し、喉を鍛えたりもした。今は波の音も潮の香りも届かないほど遠くに海がある。初期サザエさんの大看板が角に立つ修猷館高校から、西南学院大学、西新小学校と学び舎が並ぶこの通りを進んで、かつての海岸線になる『よかトピア通り』とぶつかる交差点手前で右を見れば、ダイニング・バーのような佇まい。広島風のお好み焼きが食べられる。「八昌」「あいざわ」「順平」「TABO」「らぼ」「ゆうちゃん」など、なぜかお好み焼き店が多い西新界隈にあって、個人的にはその『領主』的存在。ダントツで美味しい。
“おつまみのイカ天”、“すじポン”、もやしと炒めた丸腸にキャベツと炒めたホルモンの鉄板焼きが、まずは注文必須メニュー。[サッポロ生]をさらなる極上の味わいにしてくれる。メインの専らは、そばを入れたイカ海老豚バラ肉のミックスお好み焼きで、ときどきねぎトッピング。アッと言う間に平らげて締めの焼きそばに突入する。満腹で満足。そして安い。通学や周辺に住む子供たちを意識してのことだろう。ソフトドリンクは150円(15年2月現在)だ。今回も、サッカーかラグビーの部活終わりで高校生がカウンター席を占めていた。小上りには子供連れで二組の若いファミリー。あとは女性客とカップル中心の客層で、おやじ二人ではチト寂しかったかな。
オープンしてまだ1年余りだけに、これからますますの精進を楽しみにしている。
7位
1回
2019/02訪問 2019/10/11
飯田橋駅を背にして神楽坂。右に甘味処や肉まんの人気店を過ぎ、左に毘沙門天を見ながら真っ直ぐ進んで『神楽坂上』の信号を渡ると、すぐ左手に焼肉屋がある。かなり年季が入った木造の建物。見上げれば2階に窓があり、仕事に勤しむインド人のシェフたちが時々顔をのぞかせる。そう、ここは何を食べても美味しい印度レストラン。最高。
店頭の看板は目立たず、木製スタンドが控えめに立っている。目印は風にそよぐ縦長の白い暖簾。記されているのは漢詩だろうか。それをくぐると狭くて高く薄暗い階段が迎えてくれる。一歩一歩前傾姿勢でしっかり踏みしめないと後ろ向きのまま倒れ落ちそうな気分。マーティン・バルサムを思い出して、ちょっと怖い。上りきると木の扉。開けたとたん、奥行きのある空間に穏やかで落ち着いた和テイストが漂う。壁には剥製ではなく額装された書が掛けられ、テーブルには一輪挿し。スパイスの香りもつつましい。カウンター3席にテーブルが五つほどしかないため、昼も夜もウォークインは避けて予約が賢明だろう。5年ほど前に東銀座の映画館裏から今の場所に移転オープンした。不思議な店名に惹かれ一人で急な階段を上って以来、大切な友人との特別な宴に利用している。
スタートはサモサやタンドーリチキンといった定番をつまみにアジアン・ビール。ほど良い辛さが瞬く間にグラスを空にする。ホタテのにんにくソテー、羊でなく鶏のシーシカバブ、青唐辛子と炒めたプラウンを注文すれば、今度は“ラッシーサワー”780円(2015年8月現在)が止まらない。時間をかけて炊き込む宮廷料理のビリヤニやじゃがいもをクレープで包んで焼いたドーサなど、これまでなじみのなかったメニューが印度料理の奥深さも教えてくれる。メインのカレーは南北インドそれぞれの味わいを揃えて種類豊富。備長炭で焼いたナンは切ないほどに旨い。とろとろのチーズ入りがまた泣ける。
時には目を見張る価格設定がないわけではないが、十分に納得の内容。面差しに優しさを湛えたご主人の接客も丁寧で、絶妙な距離感が心地良い。ご両親が福岡県の筑後平野で育てた有機野菜やお米などを食材として使っているとのこと。素晴らしい料理とサービスに加えて安心と安全の満足も、別に持てる。やっぱり、最高。
8位
1回
2015/05訪問 2015/06/26
おそらくはご夫婦が営む小さな居酒屋。九州沖縄八県の名物名産料理と名酒の数々がいただける。
脇山口から早良街道を南下して、祖原の信号を左折すると、やがて右手に見える格子塀が目印。団地や住宅に囲まれてひっそりと佇んでいる。履物を脱いで上がる店内も同様。華美な装いはなく、やや暗めの照明に、板間と竹でしつらえた天井が穏やかな雰囲気を醸し出す。掘りごたつ式のカウンター席と囲炉裏テーブルがふたつ。20人も入ればいっぱいで、なぜか姿見がある。
今回味わったのは、福岡佐賀長崎熊本大分に鹿児島の芋焼酎。沖縄の泡盛と宮崎の冷や汁はまたのお楽しみだ。
冷奴の付き出しの後に、日田産の“みょうがときゅうりのサラダ”と壱岐の塩ウニが新じゃがとバターの上にのった“ウニジャガ”で[サッポロ生]のグラスがすぐ空になる。[島美人]の水割りに変えて、佐賀の“トロトロ温トウフ”。温かい豆乳に浸された豆腐にゴマとネギを散らして胃にも優しい甘みがたまらない。丼サイズでもさらにおかわりが欲しくなる。『多くの声をいただいて復活』のコピーも宜なるかな。
そして極めつけは、鍋料理800円(13年5月現在)。一度は絶滅した幻の軍鶏[天草大王]の博多水炊きと、有害菌がほとんどないため魚より刺身でも安心と言う南島原産[芳寿豚]のしゃぶしゃぶは、どちらも高級な肉本来の旨味に加えて、体の隅々にまでその滋養が染み渡るよう。一人客にかぎり、一人仕立てOKのサービスも嬉しい。
帰省した時に一度は足を運ぶ近所の隠れた名店。
9位
1回
2020/04訪問 2021/01/15
東急百貨店の渋谷本店から文化村を右に見ながらゆるい坂を上って、山手通りに突き当たるひとつ手前の路地。右折すれば松濤美術館となるその入口で、通り側の角に小さな雪洞看板がちょこんと座った短い階段がある。とんとんとんと下りて格子戸を引き開ければ、そこはどこか懐かしさも漂う小料理屋。若いご夫婦が昨冬のクリスマスにオープンした。
メニューは決して多くない。が、それぞれに工夫を凝らして手間暇を惜しまない真摯な姿勢が感じられる。今回はお通しの枝豆がんもどきに始まって、昆布〆にした真鯛、胡麻醤油に漬けた伊佐木、生姜がのった〆小肌、卵の味わいが効いた黄身酢添えの槍いかと、4種のお刺身をいただいた。新鮮な素材本来の美味しさを生かしつつ手を加えた紫いらず。一人だと案分して適量にしてくれる気遣いがまた嬉しい。赤星[サッポロラガー]が一気に空となって、女将厳選の日本酒へと移る。『私にお任せあれ』と出てきたのは、福岡久留米の筑後[男山]に秋田の[ゆきの美人]だった。ベーコンがのったポテトサラダとちくわの磯辺揚げでちびり、ちびり。“ハムカツ”や“出汁巻玉子”、“サバふぐの唐揚おろしポン酢”も悩ましいが、小さな甕で供される白みそ仕立ての牛すじ煮込みが甘露にピッタリの逸品でいつもオーダーしてしまう。そして忘れてはいけないのが、腹八分目。お店の雰囲気とは不釣り合いな“キーマカレー”が待っている。お腹いっぱいでにっちもサッチモいかなくなるのは避けたい。小サイズはお椀一杯。女将が丁寧に握ってくれる塩むすびもある。
L字カウンターにテーブル席ひとつの決して広くはない店内。それがまた身の丈で接客を心掛けるお店の矜持を伝えている。値段もリーズナブルで逃げ出すほどではない。賑やかで華やかな夕べを楽しむのではなく、しみじみと料理に向き合い、のんびりと杯を傾けて静謐を味わう、齢重ねたカップルには特にありがたい渋谷の隠れ家だ。
10位
1回
2021/01訪問 2021/01/14
昔の下北沢にはなぜかお好み焼きがあふれていた。とりわけ南の界隈に多く、何軒も足を運んだことが懐かしい。おかげで関西のそれよりも『広島風』が自分好みと知る。あれから30余年。カレーやラーメン、居酒屋の濫立に圧倒されたのか、ずいぶんと姿を消してしまった。今や4、5軒だろう。その中で一番お気に入りのお好み焼き屋さん。『広島風』ではないが、四角い形に気分が盛り上がる。
まずは個人的に残念なことをひとくさり。換気とエアコンが弱い。しばしば紫煙が漂う。テーブルや小上りの床がベタベタ。ビールの銘柄が好きじゃない。しかし、それらをあっさり凌駕する美味しさ珍しさ。しかも、土日祝日は明るいうちでも楽しめる。窓側の席に胡坐をかいて太陽の光を浴びながらいただく鉄板焼きは格別この上ない。
今回は同窓4人で訪店。まずは定番の“塩キャベツ”と“梅みそきゅうり”に神戸名物の牛すじ煮“ぼっかけ”を頼んで、超達人が注ぐ生ビールからスタートする。豚、イカ、タコ、小エビが入ったミックスもんじゃの甘い香ばしさと、太くて柔らかいミズタコの鉄板焼きが酒量を一気に加速。キンキンに冷やした角で作る“とろ角ハイボール”は熱く焼けた鉄板のそばでこそグビグビいける。焼酎も勢揃い。10年ほど前に復活した天草の芋[池の露]が希少で嬉しい。お好み焼きは“豚かす焼”と“スタミナ焼”を選択する。前者は豚バラ、豚もも、肉かす入りで、後者は豚バラ、ニンニク、キムチ、ニラ、餅入り。どちらにも欠かせない豚には死んでもらうしかない。きちんとコテ修行した店員さんが目の前で小気味よくフワフワに仕上げてくれる。接客も無理なく無駄なく心地良く、価格もリーズナブル。ありがたい。
下北沢駅から南口商店街を進み、携帯電話二社の販売店にはさまれた路地へと左折する。やがて左手に看板が見えるビルの2階。店舗や屋号はそのままにお好み焼きの老舗を引き継いでレシピとメニューは一新したと聞く。『欲望の街』下北沢でこれからも元気に四角い不思議なお好み焼きを作り続けて欲しい。
ちなみに立川に支店と、西荻窪に「ラスカル」、東小金井には六甲商事ならぬ「六甲山」と言う姉妹店がある。
大学進学で上京した時に、福岡焼き鳥ではスタンダードの“(豚)バラ”とサービスの“(ざく切り)キャベツ”が東京にはないと知って驚いた。望郷の念が余計に募り、帰省するたびに実家近くの焼鳥屋をハシゴしていたが、やがてこの店の美味しさに出逢う。以来優に四半世紀を超えるお付き合いとなった。
「家康」「信長」「副将軍」「初陣」「風林火山」…福岡の焼鳥屋はなぜか時代劇にちなんだ店名が多いが、この店も以前は「忠臣蔵」だった。09年春に代替わりして屋号を「ICHI」に。これも時代劇つながりで『座頭市』からだろうか。それとも一番を目指しての『一』なのか、焼き方を担う姉さん店長の愛称からか。いずれにしても、それまでと何の変わりもなく若いスタッフが明るく気持ちの良い接客で迎えてくれる。大きなカウンターと小上りにテーブル席で30人前後入る店内は厨房がまた広く、ホッと落ち着ける居心地が嬉しい。
肉厚加減がちょうど良く臭みのないバラとカリカリに焼いて香ばしい皮がまずはおススメ。酢ベースのさっぱりしたタレがかかったサービス・キャベツと一緒に食べれば絶妙な味わいが秀逸だ。そして、鳥豚牛肉、魚介類、野菜の串焼きはもちろん、“豆腐サラダ”や“牛ホルモン鉄板”といったメニューまで、どれもが満足この上ない。具が日替わりになる味噌汁は注文されてから作る丁寧な仕事ぶりで、疲れた胃に優しい締めとなってくれる。
しかも安い。
今回は芋焼酎[黒島美人]のキープ・ボトルがあったが、[キリン一番搾り]中瓶を一本飲んで、冷奴と串9本に鯖を焼いてもらい、ご飯(添えられた沢庵と梅干までもが美味しい)と味噌汁で2600円(12年9月現在)。久しぶりに先代のご主人が顔を出されお話ができたが、お元気そうで何よりだった。
昔はあったマカロニサラダと[サッポロビール]がなくなったことだけ残念だが、自分にとっておそらくはいつまでも福岡で一番好きな焼鳥屋さん。