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飲食店経営者に忌み嫌われてる食べログへの投稿を飲食店の真似事をしている身なのに、恥ずかしながらやってるんですけどね。
口コミ投稿につき、ルーレットが回って高確率で10円、ごく稀に100円、ほとんど無い確率で¥1,000。
あと、食べログ経由で予約をすると人数に応じてポイントがもらえるんですよ。
古事記みたいにそれで稼いだ一年分のポイントが¥8,000くらいあって、その有効期限が差し迫ってきたから、何か美味しいものを食べようと最初はわかりやすく、寿司か焼肉にしようと思ったのだが、ただ「美味しかった」で終わっちゃいそうで、どうせなら勉強が出来ればとイタリアン、フレンチなどのコース料理を探したのだけど、コースって2名からが多いのね。
そんな中、
日本のイタリアンを創世記から支えてきた片岡護シェフの「アルポルト」が条件に当てはまってた。
一人暮らしを始めた大学生の時。
井荻の線路沿いの家賃¥65,000のワンルームで
最低限の調理器具を買ってパスタ作りにハマった。
携帯でレシピを検索って時代じゃなかったから、ブックオフで「ラ ベットラン ダ オチアイ」の落合務シェフ、そして、片岡護シェフのレシピ本を買って、トライ&エラーを繰り返したものだ
(茹で湯に塩って基本中の基本もこの二人の本から学んだ。
当日。
まずは服装だ。
あまりカチっとした格好では自分が楽しめないし、崩し過ぎては店の雰囲気にそぐわない。
キャップは当然封印し、
髪をセット。
何度か襟付きのシャツを取り替えては鏡と睨めっこ。
まるで意中の子と初デートに臨む日のようだ。
六本木から10分少し歩き広尾へ。
通り過ぎてしまいそうなほど、住宅街の中にすっかり馴染んでいる。
お店の入り口は地下だった。
一呼吸整えて、階段を降りた。
扉を開けると真っ白なシャツに黒のベスト、
サロンをビシッとキメたウェイターに迎えられ、席に着いた。
シミ、シワひとつない真っ白なテーブルクロスには綺麗に折り畳まれたナプキンとカトラリーと小さな花。
これから始まる料理への期待が高まる。
メニューは
【冷前菜】 毛蟹のサラダ仕立て グレープフルーツ添え 木苺 ソース
【冷前菜】 人参のムース 生雲丹とコンソメゼリー
【温前菜】 蛤のガーリックバター焼き
【温前菜】 フォアグラのソテー サフランの焼きリゾット
【パスタ】 海の幸の煮込みソース フェデリーニ
【メイン】 米沢牛ランプ肉のタリアータ
【追加パスタ】アーリオ オイリオ ペペロンチーノ
【プレドルチェ】 何かのシャーベット
【ドルチェ】 桃のコンポート
【カフェ】 エスプレッソ
一流店なので明らかな対応の差はなかったけど、お店側に最初はやはり「ポイントで全額支払いしている客」というマインドはあった筈だ。
それを払拭するためにも、一万円くらいは酒に全振りしようと一皿に一杯のペースでベテランソムリエールにオススメの一杯を頂いた。
結果的に相手の表情はとても和かになり、
明らかに楽しそうにサーヴしてくれるようになった。
そりゃそうだ、ランチでそこまで飲む人はいないからソムリエールとしては腕の見せどころがないところに来て、オススメを全部呑むわけだから。
自分の緊張もほぐれてきたところで、
思い切って給仕の人にコースにパスタを追加できないかお願いしてみた。
どうしても、基本であるオイルベースが食べたかったのだ。
こちらの意図を汲んでくれて、具材のないアーリオオーリオペペロンチーノをメインの後に、締めパスタ的に40g提供する事を提案してくれた。
素晴らしかった。
料理はさることながら、「良い店」のサービスというか、空間そのものを楽しむというか。
ワインの温度管理、料理の提供タイミング、
感動ポイントは多数。
2品目の「人参のムースと生ウニのコンソメジュレ」の奥底にスパイスの存在があるような気がして、給仕の人に聞いてみたら、人参を茹でる時にグローブを使っていると教えてくれた。
人参を茹でるってこの料理の相当初期の仕込みの話なのにそれを把握して説明できることに衝撃を覚えた
(そして、それを感じ取る俺の味覚の鋭さね)。
結果的に自腹総額は約¥19,000となって膝から崩れ落ちそうになったが悔いはない。
経験出来てよかった。
飲食店の方ですかって、
変わる代わり聞かれたのもおもしろかった。
ただのサラリーマンなのに。
尚、シェフはおらず、息子さんが腕を振るっていた模様。
良いお店だった。
また来たい。