4回
2016/10 訪問
八重洲はし本 ~祝 回帰仕立て~ | うなぎ大好き
うなぎ断ち『断ち物』という自分が好きな物を断つことで願いを成就しようとする願掛けの方法をご存知でしょうか?
願いが実現するまで、もしくは自分が決めた期間内まで好きな物を断つのです。
諸般の事情で内容は詳しく書けませんが、お盆休みが明けたころに自分の力ではどうにもならないことが起きてしまいました。
出来ることといえば、ただただ事態が好転するようにいのるだけ…。
そんなときにたまた『断ち物』を知りました。
特別、信心深いわけでもないのですが、いたたまれない気持ちから2か月と期間を区切って始めることにしました。
うなぎ大好きなので、もちろん断ち物は【うなぎ】です。
断ち物の問題点を上げるとすれば挫折しやすいところでしょうか。
特に好きな物であればあるほど、もしくは習慣になっていればなっているほど、断ち物は失敗しやすくなります。
元来、意志の弱さから逃れるためにこのサイトの更新やうなぎ関連のSNSも中断することにしました。
すると多くの方からご心配のメッセージを頂戴しました。
メッセージをいただいた方に事情を記して返信をすると今度は励ましのメッセージをいただきました。
感謝してもしきれない有り難さです。
メッセージをいただいた方や事情を伝え聞き、ご心配、応援をしてくださった方々にこの場を借りて、厚く御礼申し上げます。
~祝回帰仕立て~八重洲『はし本』四代目の橋本正平さんからは、いち早くご心配のメッセージをいただいたのと1時間ほどで帰宅できる利便性から再開する際は最初に伺いたいと思っていた。
伺う1週間ほど前に私に付き合って2か月間うなぎを食べずにいてくれたカミさんと2人で「特別誂え」の予約が可能か?問い合わせると快く予約を受けてくださった。
ワクワクした1週間が経ち、いよいよ当日。
予約時間の少し前に東京メトロ・日本橋駅A7出口から地上へ出て、何度か通った『はし本』さへんの道を進む。
街のネオンまでも煌めいて見える。
うなぎだけでなく、この2か月は仕事場と自宅の往復がほとんどで、都内へ来るのも2か月ぶりだからだろうか?
ファミリーマートの角を曲がって『はし本』さんの店前へ。
”うなぎ”の文字までも懐かしく感じられる。
お店に入ると、用意してくださっていた2階の個室へ案内される。
部屋の卓の上には
ーうなぎ大好き様 祝回帰仕立てー
と記された特別のおしながきが用意されていた。
橋本さんの心遣いがとても嬉しい!
橋本さんがいつものようにこれから割くうなぎを持って来てくださった。
特別誂えでもこの日限りの献立を用意してくださったことにお礼を言って、うなぎの説明をしていただく。
この日のうなぎは『宮崎佐土原和匠うなぎ』
佐土原和匠うなぎは宮崎県宮崎市佐土原町の養殖場、高木養鰻場・齋藤養鰻場、高須水産が鰻本来の美味しさ、天然うなぎ以上の栄養価を目指し品質改良を行い養殖した鰻です。
和匠うなぎは「安全な水」、「安全な飼育」、「安全な商品」3つの安全によって養殖しています。
(宮崎砂土原和匠うなぎHPより要約引用)
とても可愛い顔をしているうなぎです。
こんな可愛いうなぎをいただくのは残酷と思う方もいるかも知れません。
しかし、私たち人間は他の生物の生命をいただいて、生きていく存在なのです。
多くの方が「いただきます。」と手を合わせるのは、感謝と慎みの証ではないでしょうか?
私の知っている養鰻家の皆さん、鰻専門店の皆さんは、より安全でより美味しくを目指しています。
それは人間の欲望を満たすためにしているのでしょうか?
私の答えは”否”です。
大切な生命をいただくのですから生命を粗末にしないために愛情を以て育て、愛情を以て調理する結果だと思うのです。
鰻供養や放生会が各地で催されているのはその証拠のひとつだと感じています。
うなぎが絶滅危惧種に指定されて以降、絶滅危惧種を食べるのはいかがなものか?という意見を耳にします。
では、絶滅危惧種に指定されていない生物は貪り食べて良いのでしょうか?
もちろん、そんなことは許されざる行為です。
他の生物も住みやすい環境にすることや種を守るために制限を設けることは必要だと思います。
一方で食べるために育てられた生物は、貪ることなく、感謝と慎みの心を以ていただくことが生命を粗末にしないことだと私は思います。
賛否両論あると思いますが、これがうなぎ断ちをしている最中に私が思った今のところの考えです。
先付 わかさぎ酢橘南蛮漬
わかさぎの美味しさにシャキシャキした食感のセロリと人参が酢橘の酸味に融合しています。
まず、お願いしたお酒はサッポロビールの”無濾過”プレミアム樽生ビール「白穂乃香」
「白穂乃香」は、、活きた酵母をそのまま残しているので徹底した品質管理が必要なため、こだわりをもった厳選店でしか飲めない。
自宅近くでは提供しているところがないのでビール好きのカミさんに飲んでほしかったのだ。
心臓酒http://unagi-daisuki.com/wp-content/uploads/2016/10/hashimoto01.mp4割き立てのうなぎの心臓はピクピク動いています。
そこに日本酒を注ぎ、一気に飲み干す。
うなぎの血には毒があるので、噛んではいけません。
肝わさ
肝わさが来たところで日本酒をお願いすることにする。
『はし本』さんでは、日本酒のチャート表が用意されていて好みや料理に合わせたお酒が選べるようになっているが、日本酒愛好家である橋本さんに聞くのが一番である。
お勧めは、島根・王禄酒造の「超王禄」
辛口でキレがあり、芳醇な味わいの美味しい酒だ。
王禄酒造・石原丈径社長の「超王禄のお知らせ」の文章に感銘深い言葉があるので、転載させていただく。
「王祿 今を超えてゆく為に」
酒は単なる嗜好品ではなく人と人を繋ぎ心を和らげ慰めるそして時には大きな支えとなり力を与える
その役割は非常に重いものだと考えます
科学の進歩と共に日本酒醸造技術もめざましい進歩を遂げ続けています
だが常に普遍であり続けなければならないものがあるとすれば
それは造り手の志のみであると言えるでしょう
この言葉は、酒のみならず、どんな仕事にも共通の理念ではだろうか?
橋本さんの料理をいただいていても心が和らぎ、エネルギーをもらえるのは同じ理念があるからだと感じる。
お酒をいただいていて、カミさんがふと「酒器はどうしてガラス製なのかしら?」と言う。
橋本さんにお聞きすると、冷酒の酒器は友人でもある東京・湯島の『木村硝子店』のものを使っているそうだ。
ひとつひとつ丁寧に職人さんが作った極薄のガラス酒器は、唇が触れた時の違和感が全くなく、シンプルにお酒の味を楽しむことができる。
酒器にしても縁を大切にして、共通の理念を求める橋本さんのこだわりが垣間見えた。
鯉こくhttp://unagi-daisuki.com/wp-content/uploads/2016/10/hashimoto02.mp4信州出身のカミさんには、鯉こくが出るのは嬉しいサプライズだったようだ。
信州では、鯉は馴染み深い魚でお祝いの席などには必ず供される。
特に江戸時代から養殖が始まったといわれる佐久鯉は現在も信州・佐久の名産品である。
丁寧に育て、調理された鯉料理は、臭みもなく、脂肪が適度に乗って美味しい。
今回、はし本さんで初めて鯉こくをいただいたが、鯉の滋味を残しつつ洗練された仕上がりは川魚にこだわったはし本さん自慢の逸品だと思った。
うなぎ骨せんべい
意外に手間のかかる骨せんべいの割き立て揚げ立ては格別だ。
くりから焼
「くりから焼の塩って珍しいわね。」とカミさん。
くりからはある意味、うなぎの美味しいところをギュッとまとめて串に刺したもの。
「今日のうなぎの旨さを楽しんでください」というひと品だと自分は思う。
顔を出してくれた橋本さんにカミさんが「塩がなくてもいいくらい美味しいですね。」
「塩なしでも充分美味しいと思いますが、塩をして焼くと旨味が引き出せます。後から塩をするのとはまた違います。」と橋本さん。
正に塩梅だのだろう。
肝焼
「肝焼だけはお見せしたうなぎ以外の同じ和匠うなぎの肝を使用しております。」と丁寧に説明してくださる。
うざく
酢の物好きのカミさんは
「あ~この酸っぱさが、肝焼のほろ苦さをリセットしてくれる。」と微笑む。
肝焼の余韻を十分に楽しんだ頃合いに〆のお食事の前に出されたうざく。
カミさんと同じく、献立の配慮を感じる。
有機野菜のお漬もの
はし本さんの有機野菜のお漬ものは、いついただいても美味いっ!
こと、人参は人参嫌いも治るのではないか?という甘さと旨味を感じる。
美味しい有機野菜を仕入れ、橋本さん自ら正に手塩にかけて漬けている。
さらに奈良漬も無農薬の瓜を使用した奈良漬を千葉・香取の「寺田本家」から”自然づくりの奈良漬”を取り寄せるというオーガニックへのこだわりが、食べる側の心を打つ。
鰻重 肝吸 宮崎佐土原・和匠うなぎ
http://unagi-daisuki.com/wp-content/uploads/2016/10/hashimoto03.mp4はし本さん秘伝の江戸前のキリリとしたタレが天然鰻よりも脂質、旨味成分が豊富な飼料で育てられた和匠うなぎにとてもマッチしている仕上がり!
素材を活かした調理に感謝!
2か月ぶりの鰻重ということもあって、鰻面の笑みがこぼれる。
はし本さんでは、どこの養鰻場で育てられたうなぎかを知らせている。
今回は「宮崎佐土原和匠うなぎ」だったが、来週1週間は鹿児島大隅「泰正オーガニック鰻」の提供だという。
ブランド志向によって付加価値を設ける訳ではなく、生産者の顔の見える関係を食べる側にも知ってほしいとの思いからだということが話していて伝わる。
米や野菜も以前は生産者はもちろん産地すらわからなかった時代がある。
現在は、生産者を写真付きで紹介している店舗をよく見かけるようになった。
私の知っている養鰻家は、安全はもちろん、水や飼料に工夫を凝らして美味しいうなぎを育てようとしている。
私は、養鰻家の鰻愛を受け止めるためにもはし本さんのように養鰻家が見えるようにするのは大歓迎である。
果もの 柿(奈良)
食事の後、橋本さんにはうなぎ談義にたくさんお付き合いいただいた。
鰻愛あふれるお料理にお気遣いに心より感謝申し上げます。
うなぎ断ち明けにお腹も気持ちも鰻福になって家路についた。
2017/01/07 更新
2016/04 訪問
八重洲 はし本 ~朋あり遠方より来る、また楽しからずや~ | うなぎ大好き
名古屋でうなぎ・日本料理店を展開するしら河グループの社長の弟さんで『しら河今池ガスビル店』店長を務める森田恵次さんから
上京するので、うなぎ屋さんか東京下町のディープな居酒屋さんへ行きましょうとお誘いを受けた(^-^)
3月に名古屋でお会いした時に、東京か名古屋でまたお会いしましょう!という約束を守ってくださった。嬉しい限りである!
森田さんの行きたいことろをお聞きすると、いろいろ行きたいけれど今回は『はし本』さんへ行きたいとおっしゃるので即決まり!
森田さん自ら『はし本』さんの「特別誂え」を予約してくださった。
当日、約束の時間少し前に着くと
森田さんから「中に入っています。」とのメッセージがあり、店内へ。
橋本さんにご挨拶をすると2階の奥の部屋だというので2階へ上がる。
設えが和ませてくれる。
森田さんに再会のご挨拶をしていると、橋本さんがこれから「特別誂え」で割くうな様を持ってきてくれた。
本日のうな様は、鹿児島大隅の『大和水産』で育てられたそうだ。
橋本さんも好きな養鰻場のひとつだそうで、好きな養鰻場のうな様は同じ飼料会社という共通点があるそうだ。
橋本さんと話している最中に何度も容器から飛び出そうとする元気印のうな様である。
まず、サッポロビールが東京都、横浜市、川崎市のエリアの厳選したお店でのみの限定販売している「白穂乃香」で乾杯。
川魚に力を入れている先付も美味!
鰻の心臓酒
噛まずにゴクリ
お料理の合間に森田さんとうなぎ談義。
東京近郊で本場の名古屋うなぎが食べられるお店を『しら河』さんで出店してほしいとお願いする。
実は以前、東京駅近くに出店依頼があったそうだ。
しかし、東日本大震災の影響で計画が中止になってしまったという。
そのような事実を知らずにお願いをしてしまい申し訳なく思う。
鰻の小肝わさ
どじょうと菜の花のお椀
「どじょうと菜の花のお椀」と聞いて、蓋をとるまでは、丸のどじょうが入っているものとばかり思っていいた。
割かれたどうじょうに出会ってサプライズ!
川魚が苦手な人にも受け入れられる上品なお椀に仕上がっている。
『はし本』さんで特出しているのは日本酒。
どの料理にどの日本酒が合うか、日本酒の味わいの特徴とともにチャートにまとめてあり選びやすい工夫がなされている。
4代目の橋本正平さんが日本酒愛好家を名乗っている面目躍如だ。
数ある日本酒のラインナップからこの日、自分が選んだのは香川県地酒「川鶴」
爽やかな飲み口だがしっかりとした旨味が感じられる。
地焼くりから焼串
くりから焼にするとうなぎの味がよくわかる誤魔化しのきかない品。
日本酒に合いますなぁ(^-^)
鰻骨煎餅
有機香の物
お待ちかねの「鰻重」
http://unagi-daisuki.com/wp-content/uploads/2016/04/hashimoto01.mp4鰻重が来ると今までのうなぎ談義が嘘のように無口に(笑)
橋本さんの話では〆の鰻重を持ち帰りにする方が多いとか?
割き立て、焼き立ての鰻重は滅多にお目にかかれない。それだけで価値がある。
2人で「もったいないなぁ」とハモってしまった(笑)
デザート
「他にも行きたい東京のうなぎ屋さんがあったけれど、はし本さんへ来て良かった。」と森田さんも大鰻足の様子だった♪
自分は「特別誂え」は昨年11月以来だが、前回よりも素材の質が上がっていると感じた。
『はし本』さんは、5月から川魚にこだわったメニューにリニューアルすると聞く。
ますます進化することに期待したい。
森田さんと『はし本』さんで「特別誂え」を堪能して、うなぎ談義に花を咲かせた翌日。
しら河グループの基幹店『料亭大森』が名古屋城正門前の名古屋能楽堂レストランに移転して『しら河別邸日本料理大森』としてオープンする。
『しら河別邸日本料理大森』さんのますますの発展を心からお祈りしたい。
森田さんはまた秋に上京する予定だそうだ。また、ご一緒で来たら嬉しい。
『はし本』さんへは、近々別の遠方からの友人と伺う予定だ。さらなる進化が楽しみである。
森田さん、橋本さんに心から感謝してこの項を閉じる。
2017/01/07 更新
2015/11 訪問
日本橋 はし本
==2015年11月17日 再訪=
日本橋 はし本 ~特別誂え鰻重~
東京駅八重洲北口、日本橋駅高島屋口からも徒歩5分ほどに昭和の雰囲気が残る一角がある。その小路に創業から四代続く老舗のうなぎ店『日本橋 はし本』がある。
『日本橋 はし本』の四代目・橋本正平さんの名刺には、ハイパー鰻クリエーターという肩書が書いてあり、鰻に対する情熱は並々ならぬものがある。詳しくはホームページの「こだわり」に譲るが、老舗の伝統を守りながら斬新なアイディアでうなぎ好きの心を揺さぶるのだ。
最近も産地や育成期間の違う地焼きの白焼きの食べ比べや焼きおにぎりの上にタレ焼きの鰻をのせた鰻茶漬けなどありそうでなかった裏メニューも試みている。
それとは別に伝統に忠実に美味しい鰻を食べさせてくるメニューがある。
それが、今回いただいた夜の部10名限定の「特別誂え鰻重(蒲焼)」である。
説明をホームページから引用させていただく。
こちらは1月~5月、9月~11月限定のメニューです。お客様が御来店されてから、これより召し上がる活鰻を見ていただき、店主直々に産地や餌、鰻の歴史や生態等の説明をさせていただきます。その後に割いて白焼、蒸し焼きして仕上げますので1時間前後のお時間を要します。お時間に制限のあるお客様のご利用はお断り致します。関東の鰻文化を源流とした忠実な手仕込みで、一本の鰻が織りなす最高級の物語をお届けする当店最高峰の鰻重となります。
今月を逃すと1月まで食べられないので、予約をして伺った次第である。
こちらが「特別誂え鰻重(蒲焼)」のおしながき。
橋本さんがこれから裂く活鰻を持ってきてくれた。
宮崎産の新仔ということだ。
「先付」は旬の牡蠣
「お飲み物は?」と聞かれたのでお勧めの辛口純米酒をお願いする。橋本さんは日本酒愛好家でもあるのだ。
〆張鶴の純米吟醸をいただく。
隣の席の方も〆張鶴を飲まれていて「今日のお料理に合いますよ。」と話しかけてくださった。
「鰻の心臓酒」
裂きたての鰻だからこそ出せるのだ。
うなぎ好きなことを知っているので特別に「肝焼」も出してくれた(^.^)
美味しい料理に酒の追加をお願いしていると、隣の席の方に〆の鰻重が運ばれてきた。
「お重の蓋をとるときは感動ものだよね。」
「人生最後の食事は鰻だな。」という会話が耳に入る。
気分が良くなって来たところでこの会話。お隣さんも相当なうなぎ好きのようで、しばしうなぎ談議に花を咲かせて、名刺交換までさせていただいた。楽しいひと時をさらに楽しくなりました。お付き合いいただいたYさんに感謝申し上げますm(__)m
「小肝わさ」
さっきまで活きていた鰻の肝はやはり新鮮で美味い!
「骨せんべい」
自家製というだけで美味いのに揚げたてはまた格別!
「地焼くりから焼串」
裂きたて鰻の地焼は、皮目のコラーゲン感がハンパない!かりふわ(^○^)
「お漬物四点盛」は盛りつけも綺麗で美味。さらに酒が進んでしまう(^^ゞ
さあ、真打の「鰻重」登場!
焦らしが多いとのご指摘を受けているのでさらっと #うなパカ 動画を
正統派江戸前鰻を堪能致します♪
活鰻は4Pサイズだが、くりから焼の部分を引いているので5Pサイズほどになって江戸前蒲焼としてはちょうど良い大きさである。
当たり前のことだが、裂いてからの時間が少ないほど味が来る。
鰻面の笑みがこぼれる♪
皮目の焼き加減も良い塩梅。
蒸し時間は15分ほどだという。このサイズなら蒸しと焼きとのバランスが良く、ふわとろなのに濃い旨みも感じられる。
「デザート」の柚子シャーベットでお口もさっぱり。
すっかり、お料理を堪能した後、橋本さんとたっぷりうなぎ談議をさせていただいた。
橋本さんの鰻愛1000%の言葉に偽りなし!
お腹も心も鰻福、鰻足の二の酉の夜♪ 自分的には丑の日ですが(笑)
次回は、橋本さんの工夫を凝らしたアラカルトをいただきに行こうと思う。
==2011年9月12日 訪問==
はし本 八重洲
『開高健が喰った!!』という本を読んでから行ってみたかったうなぎ屋さんが東京駅から徒歩5分の「はし本」です。
東京国際フォーラムで行われた「自然エネルギー財団」の設立イベントの帰りに行ってきました。
開高健さんは
「鰻重は、はみ出るほど大きなものを食べるべし。鰻っちゅうのは、豊かな気分で食わないとあかんのや。」「いい鰻かどうか判断しようと思ったら、少し冷えてから食うてみい。」「天然でも養殖でも、うまいものはうまい、まずいものはまずいのよ。」と言っていますが、うなぎ好きとしてはお説ごもっともです。
うな重 い
開高健さんのお説に従えば、最上級の「うな重・に(5670円)」を注文すべきでしょうが、白焼きも食べたかったのと懐の関係で「うな重」は一番小さな「い(2205円)」になってしまいました。
白焼き い
白焼きも小さい方の「い(3150円)」ですが、せめて画面いっぱいに写してみました(笑)
2015/11/18 更新
【土用の丑の日の行事食】
夏の土用の丑の日に食べるものというと、うなぎが好物でない方も一番に浮かんでくるのは「うなぎ」であろう。
夏の土用の丑の日に鰻を食べる習慣についての由来には諸説あるが、平賀源内が発案したという説がよく知られている。
最も一般的な話としては、夏にうなぎの売れ行きが悪いうなぎ屋が、平賀源内の元に相談に赴いた。源内は「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると、そのうなぎ屋は大変繁盛した。その後、他のうなぎ屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日にうなぎを食べる風習が定着した、というものである。
一説によれば「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という風習があったとされ、うなぎ以外には瓜、梅干、うどん、うさぎ、馬肉(うま)、牛肉(うし)などを食する習慣もあったようだ。
【鰻専門店の鰻と牛】
『鰻はし本』四代目・橋本正平さんは、次々と画期的な試みにチャレンジしている方である。
店で使う活鰻は、同店のフラッグシップブランド「泰正オーガニック鰻」を鹿児島大隅の泰正養鰻から直引きしている。
泰正オーガニック鰻が入荷しない時は取引先の鰻問屋から好みの養鰻場を指名して買い付けるというこだわりようだ。
使う魚は鰻をはじめ川魚に特化しているのも特筆すべき点である。
また、川魚以外の食材もオーガニックにこだわり、極力自家調理にこだわりを見せる。
その橋本正平さんが、江戸から続く「土用期間には“う”のつくものを食し滋養を得よ。」の考えに基づき、〈うとうの丼〉を土用の間だけ限定で提供するという。
『鰻はし本』こだわりの鰻の蒲焼に神戸で3代続く『ゆさか精肉店』がこの丼だけのために〈ミスジ・サンカク・バラ〉を特別にブレンドした牛肉と有機玉葱で作る究極の〈鰻と牛の丼〉
これは食べに行かねばならない。
【川の滋味】
昼、夜限定5食のみの〈土用丼〉
すでに夜は予約で満席とのことで昼の部を目指して出陣する。店の前に10時半に到着。一番乗りだ。
開店準備をしていた橋本さんに「早っ!」と言われながら11時の開店を待つ。
待つのもうなぎ屋を訪れる醍醐味のひとつなのだ。
席に案内されて、まず出されたのが〈鯉のお椀〉
橋本さんが、再び鯉と向き合う時間を作り「鯉と塩」で仕立てたお椀ということだ。
鯉は泥臭いというイメージを覆す逸品。
鯉の旨みだけを凝縮し、川の香りだけをほんのり残す。
そして、牛蒡とオクラの風味が良いアクセントになっている。
川の滋味が溢れている。
土用蜆があるのだから鯉を土用に使うのも有だ。
〈鯉する土用椀〉というネーミングは如何だろうか。
カミさんと2人で行って、〈土用丼〉限定5食のうち2つをいただくのはさすがに気が引ける。
もう一つは〈鰻重〉をお願した。
お椀は〈赤だし〉
〈鰻重〉に使用の鰻は宮崎佐土原「和匠うなぎ」の新仔ということだ。
すっきりした脂にねっとり感は新仔らしい新仔である。
『鰻はし本』さんへ伺うたびにタレが美味くなっているように感じる。
ベテラン職人さんの
「タレは年数でなく、どれだけ良い鰻をくぐらせたかだ。」
という言葉を思い出す。
【〈土用丼〉を食す】
有機野菜が美味しい〈サラダ〉
器の模様が鰻のようでニッコリ。
ついに登場 〈土用丼〉
橋本さんが教えてくれた、この日の〈土用丼〉のスペックは以下の通り
鰻:宮崎青木養鰻場新仔3.5P牛:熊本県菊池市産「和王」共励会最優秀賞ミスジ/サンカク/バラ/ヤリをゆさか精肉店が独自ブレンド玉葱:北海道産有機マスタード:大分県香々地産(自家漬)紅生姜:有機梅酢(自家漬)
これだけの食材を使い、手間をかけて、税別3,700円。
素人ながら原価率が心配になる。
さまざまな部位の牛肉の食感を楽しめて、牛本来の旨みに有機玉葱の旨さのデュエット。
そこに太物の新仔鰻のボリューミーでふわとろな食感と爽やかな脂の旨みとタレの旨みも加わり、ひとつの丼の中で旨みのカルテットを奏でる。
自家製のマスタード、紅生姜は味の変化や箸休めにもってこい。
高スペックの〈土用丼〉は、ポールポジションから一気にゴールへ駆け抜けた。
鰻専門店の本気度を余すところなく、鰻喫させていただいた。
〈土用丼〉は、秋の土用に再会できるのか、はたまた来年か。
橋本さんの斬新な企画に今後も期待したい。