3回
2024/11 訪問
京都が誇るレストランへ
サンペレグリノ ヤングシェフで日本人初の優勝を勝ち取った藤尾シェフ。世界一にもなったレストランミラズールにいたと思えば、京都の日本料理の代表格、木山にもいらっしゃった経歴。
初訪問の時、きっと京都を代表するようなレストランになると思っていた。
一年ぶりの訪問は、料理もボリュームも予想以上に上回っていた。
今回は一人で訪問したのだが、鴨川沿いの夜景を見ながらの食事は時間を忘れてしまう。あっという間の3時間の滞在だった。
今回はメニューにないが、料理に合わせたノンアルコールのペアリングができるとの事でお願いした。
ドリンクは8種類で料理ごとに合わせている。
*奈良の秋番茶
カフェイン少なめ、タンニンが多いお茶。柔らかい甘さと香りがいい。
・米粉のシュー
アミューズである。甘くはない。シューの中は、鮒寿司の米だけをクリーム状にしたもの。シューの上に道明寺をのせて揚げたもの。米粉のシューはほんのり甘い。このクリームがいい酸味。鮒寿司の独特の香りはそれほどなく、むしろ爽やかな酸味で食べやすい。
*白茶 静岡産
白茶と言えば中国茶であるが、これは静岡産の白茶である。香りは白茶そのもの。
・甘エビの刺身(写真撮り忘れ)と甘エビのフラン
最初に刺身を頂いてからフランを頂く。刺身は当然甘い。その後、甘エビのミソとトンブリのソースのフランを頂くと甘エビの美味しさが一気に広がる。ミソのソースとフランが合う。さらに、トンブリのプチプチとした食感が楽しい。これは二つ合わせて一つの料理だろうか。
*黄金柑のモヒート
黄金柑のジュースで作ったモヒート。黄金柑の爽やかな酸味と甘さ、ミントの香り、とても美味しいドリンク。
・石垣鯛の生ハム巻き
生ハムは長野で作られたもので、肉の表面に麹菌をぬって熟成させてできた生ハム。これが、醤油のような風味を醸し出す。脂の乗った石垣鯛を生ハムで巻いて頂くと、鯛の旨さに生ハムの旨さが加わり、豊かな味わい。そして醤油のような風味が鯛によく合う。実はわさびも入っているので、味わい豊かな石垣鯛の刺身を食べているようである。
・ここで自家製のフォカッチャが出てくる。実は、前回の訪問ではパンがなかった。今回はパンが出てきた。このフォカッチャが美味しい。小麦の香りがよくまわりは香ばしく中は甘い。少し塩をきかせているので、パンの甘さがよくわかる。おそらく、オイルが控えめなので、手がオイルでベタベタしない。
*木と玄米のお茶
何種類かの木の枝(木の名前は失念)と玄米で作ったお茶。お茶であるが茶葉は使ってない、、笑
木の香りのみで味はほぼ玄米。
・柳田蓮根の炭火焼き
蓮根をまずオーブンで火を入れてから炭火で焼く。表面に大徳寺納豆をぬり、玉ねぎにしっかり火をいれて甘味を出したソースをかける。蓮根が甘い、香ばしい。大徳寺納豆の醤油のような風味や渋味や香り、玉ねぎの甘さが蓮根にぴったり。木のお茶がとても合う。
*発酵昆布茶
発酵させた昆布のお茶。少し甘味と酸味がある。
・月日貝と香茸
月日貝は二枚貝で赤黒の貝と白い貝。この色合いを月と太陽になぞって名づけられた。貝の身は帆立に似ているが、帆立よりあっさりしている。ただ帆立より繊維質がたっている。香茸は3日ほど干して、それを戻したら、戻し汁でさらに煮たもの。香茸の香りがすごく際立っている。月日貝の甘さが後からくる。昆布茶との相性はぴったりである。
・ヤギ肉のシェーブルソース
静岡の横井牧場(漢字があってないかも)という、ネット検索しても出てこない所だが、ここで飼育されたヤギの肉を使ったもの。焼いたヤギの肉にシェーブルチーズとバイマックルーのソース(スープに近い)、それに様々なハーブが添えてある。
まず、ヤギの肉が美味い。あのヤギの独特の香りはほとんど感じられなく、歯ごたえのある美味しい赤身肉である。こんなヤギは初めて食べた。やや強めの風味のソースとハーブで頂くので、おそらくヤギ肉と言われないとわからない。
・自家製パンドカンパーニュ
ライ麦の酸味をきかせたパンドカンパーニュ。これも小麦の香りがよく、これだけ頂いても十分に美味しい。
*煎茶とレモンバーム
そのまんまである。煎茶にレモンの爽やかな香り。
・マナガツオのポワレにカブ
マナガツオの下にカブをソテーしたもの。その下に出汁とすりおろしたカブを発酵させたもので炊いた玄米のお粥。お粥がソース代わりになる。
マナガツオの火入れが完璧である。中がミキュイに近く、うっすらと火が入っている。玄米のお粥が風味豊かでマナガツオのソースとして食べても、そのまま食べてもいい。カブのソテーはカブが甘い。
レモンバーム風味の煎茶とも合う。
*ノンアルコールジントニック
これはジントニックの味わいそのもの。
・鰻の蒲焼のタコス
実は、この組み合わせが、私にとって今日一番であった。一気に食べてしまった。
鰻の蒲焼の上に紫の万願寺とうがらし、下にはパプリカのソースに大葉、それらをタコスに巻いて食べる。一緒にかぶりつくと鰻の味に大葉の香り、パプリカの甘味、万願寺とうがらしの風味が一気にくる。これがジントニックに凄くあう。しっかりと味わう前に食べ終えてしまった、、、笑
*スパイスを効かせたプーアル茶
クローブやシナモンなどのスパイスの香りのプーアル茶。実は次がメインの肉料理なのでスパイスは肉料理に合わせた。
・北海道の短角牛のステーキ
前回はタルタルステーキだったが今回は直球である。ソースも肉汁を使ったクリームソース。じゃがいもの小芋を添えてある。赤身の肉で焼き加減は完璧。肉汁もしっかりある。まさしく赤身の肉を食べるためのもの。プーアル茶と一緒に頂くとプーアル茶のスパイスが肉に合うので、口の中で料理が完成しているように感じる。プーアル茶も肉料理にはぴったり合うので、とてもいい組み合わせ。
*ラムのカツカレー
こちらのお店は最後に米料理が出るのだが、今回はカツカレー。カツはラム肉のカツ。カレーは先程の短角牛のブイヨンに発酵トマトとスパイスで作ったカレー。揚げたてのカツに香りと風味豊かなカレー。辛さは控えめであるが、最後に結構ボリューミー、、笑
私はあまり羊肉は頂かないのだが、カツにすると好みになる。
*松茸のアイスクリームと栗の蜂蜜のスープ
松茸の香りをミルクに移して作ったアイスクリーム。上に味と香りのアクセントで塩松茸のスライス。栗の蜂蜜のスープは栗の蜂蜜とお酢を使って、甘味と酸味、栗の香りがしっかりとしたスープ。
お腹いっぱいの後なので、このくらいが丁度いい。しかし、どちらも今の季節の香りをしっかりと出しているのが素晴らしい。それでいて後味はさっぱり。
*マカンボのフィナンシェとエスプレッソソーダ
アイスエスプレッソがシェフのこだわりだが、今回はソーダと割ったものを頂く。エスプレッソの香りと苦味がソーダによって爽やかに頂ける。
マカンボはカカオの親戚でカカオの香りや苦味はなく、むしろナッツのような香ばしさとか甘さがある。フィナンシェはアーモンドの粉を使うが、それをマカンボで焼いたとの事。
今回は前回より品数が多く、また、パンが2種類出た事もありボリュームが凄かった。パンはおかわりもできる。(私はとても食べられない、、笑)
まず、素材の組み合わせと調理法が素晴らしい。また、魚や肉の火の通し方も文句なく、クラシックな皿も塩をきかせて味わいを増している。
イノベーティブカテゴリーで、和の皿も出るのだが、気を衒って和の技法を使うのではなく、その日の食材を見ながら調理法を決めているようである。むろんコースなので、コースに合わせて調理法を考えているのだろう。
どれも、素材の味重視というより、しっかりと調理して、味わい、香りとも引き出している。
なかなか、このようなコースはない。今回から出されたパンも含めて、調味料なども自家製だったり、藤尾シェフの味をしっかりと味わえる。
一人で3時間滞在したが、退屈さもなく、サービスも素晴らしい。
まだ、目立たない事もあり、予約はすんなり取れるが、そのうちに予約が取りづらいレストランになるかもしれない。少なくともそうなるべきレストランと思う。
次回は季節を変えて訪問したい。
秋番茶
米粉のシュー
白茶
甘エビのフラン
黄金かん(黄蜜柑)のモヒート
石垣鯛の生ハム巻き
オリーブオイル
フォカッチャ
木のお茶
柳田蓮根
月日貝と香茸
発酵昆布茶
ヤギ肉のシェーブルソース
マナガツオのソテー
煎茶とレモンバーム
ノンアルコールジントニック
鰻の蒲焼のタコス
スパイスプーアル茶
北海道産短角牛
ラムのカツカレー
松茸のアイスクリームと栗の蜂蜜とお酢のスープ
松茸のアイスクリーム
栗の蜂蜜のスープ
エスプレッソソーダ
マカンボのフィナンシェ
2024/11/15 更新
2023/11 訪問
誇るべきレストラン
元イタリア領事館をリノベーションしたお店。地下鉄北大路駅から歩いて6,7分くらいの鴨川沿いに佇むレストラン。
シェフの藤尾さんの作り出す皿は、和を感じつつフレンチのエッセンスを盛り込んだ、イノベーティブに近いコース。ただ、ソースの味わいがしっかりとしており、また、和を感じるところが独創的。
藤尾さんのキャリアも素晴らしい。ミシュランパリ二つ星だった佐藤伸一シェフのパッサージュ53、世界一の称号を与えられたMirazur、大阪のラシームで経験を積んだ。さらに和食の和久傳という経歴。そう言えば、神楽坂こJfreeのシェフも最後は和食だった。そして2016年のRED U35のgoldeggを受賞。ちなみに予約困難な京都の日本料理研野の酒井研野さんも同じ年に同じ賞をとっている。
訪問した日は私達を含め3組6名のお客様。中は広く、昼間や暖かい季節はテラスで鴨川眺めながらデザートというのもある。
昼夜とも税込24,200円のコースのみである。サービス料というのはない。
ワイン飲まれる方は、グラスワインに結構、種類がある。また、ノンアルコールも数種類ある。なお、水はガス入り、ガスなしともサービス。
*秋刀魚のフラン
秋刀魚をフランしたのは私にとって初。出汁も秋刀魚からとっている。さらに、上には大根おろしをのせている。この大根おろしが秋刀魚と卵をうまく繋げている。このスタートでこの店がただものではない、と感じた。
*魚3種
カルパッチョではなく刺身と言った方が正しい。
・アオリイカにソブラサーダ
ソブラサーダはソフトサラミに近いが、香りや塩味が弱め。その分アオリイカの甘さをしっかり感じる。また、脂身も少なめなのでアオリイカとうまく合っている。
・カンパチに万願寺とうがらし、パクチー、玉ねぎのソース
脂ののったカンパチにこの強いソースは合う。パクチーの香り、玉ねぎの甘さ、万願寺とうがらしの風味とビネガーの酸味が意外とよく合う。
・白カジキ 山葡萄と自家製塩麹のソース
白カジキはまわりにパン粉をつけて焼いている。ただ、まわりだけなので中は生である。山葡萄と塩麹のソースだが、さらにクミンやコリアンダーをいれてエスニックな香り。しかし、控えめなのか、後からじんわりと香りが来る感じである。ソースの味もカジキの味を損なわないように、塩味も控えめ、山葡萄の爽やかな香りがカジキの味を引き出している。
*かぼちゃの煮物
その通りの料理である、、、笑
ただ、豚と鶏のブイヨンで煮ている。かぼちゃと肉のイノシン酸の味わいはよく合う。このブイヨンはかぼちゃの煮汁になるため、少し塩をきかせている。かぼちゃの甘みを引き出すためである。ただ、スープのように飲めるくらいの濃さなので飲み干した。
*松茸と熊肉の取り合わせ
熊肉は別にして煮込んでいる。味付けは自家製のキノコを発酵させてできた酢。これが熊肉と松茸の繋ぎ役になっている。熊肉の歯ごたえと脂の美味しさに松茸の香りと歯ごたえ。松茸は、どうやらこの異常気象のおかげで今頃になって出てきたらしい。
この料理は今日一番かも。
*魚料理 ハタのポワレ 春菊のソース
脂ののったハタに春菊とフュメドポワソンを合わせたソース。ハタの下には茹でた春菊。脂ののったハタはさすがに美味しい。ソースは春菊の香りや味わいがしっかりしており、ハタとよく合う。ここに来て純粋なフランス料理の皿、、笑
*肉料理 岩手短角牛のタルタル
タルタルはまわりを焼いて、ちょっとハンバーグ風になる。キノコのソテーがソースがわり。わさびがのっている。キノコの味つけに山椒をきかせており、わさびの辛さと山椒の痺れが面白い。さすがに肉そのものが美味しく、キノコにしっかり味付けをしているので、これで十分な味付けだろう。
*紅はるかの焼き芋のお粥
〆のお粥となる。塩味のお粥に甘い紅はるかの焼き芋を混ぜている。焼き芋の甘さと香ばしい風味、お粥の塩味とお米の美味しさがしっかり出ている。
*チーズ
デザート前にチーズはいかが、というお話だったので折角だから頂くことに。6種類食べ頃のものが揃っており、ブリとウォッシュタイプのモンテールを頂いた。
*デゼール
下にウイスキーマックの風味の柔らかいカスタード。その上にジンジャーと白ワインのゼリー。最後にシャインマスカットをのせたもの。
まず、このクリームが香り豊かで美味しく、ジンジャー風味のゼリーがさっぱりとしている。
*アイスエスプレッソとフィナンシェ
アイスエスプレッソはシェフお気に入りの豆との事。エスプレッソと水を半々に割ってアイスエスプレッソを作っている。アイスアメリカーノよりもコーヒー感は強い。焼きたてのフィナンシェと一緒に。
コースの流れは基本的に和食を意識した、イノベーティブなんだろうか。ただ、一皿一皿、味わいがしっかりしており、コース全体の流れで頂くのではなく、一皿の料理をしっかり味わえ、印象にのこる。私の好みである。
あえて言うなら、パンが出ないのでやはりパンはあったほうがいい。というのはハタの料理の春菊のソースがとても美味しかったので、やはり、パンにつけて食べたかった。ソースは料理人の命、せっかくならパンにつけて綺麗に頂きたい。
ワインペアリングはないが、グラスワインの種類が多く、また、チーズやデザートに合わせるソーテルヌのグラスワインも揃っている。単価もリーズナブルである。
LUCAに伺った時にも思ったが、こちらも料理やサービスも素晴らしいのに集客が弱い。前日のオルトさんは満席だったが、こちらは席に余裕がある。
SNS全盛期の中で、単純な料理サイトの得点だけで良し悪しを決めるのはいかがなものだろうか。また、こちらのお店は食べログの投稿数及び著名なレビューアー様のレビューも少ないので低く見えるが、投稿されたレビューアー様はほとんどが高得点をつけている。
お店の良し悪しは個人の好みである。でも、こちらのお店も予算が合えば、是非伺ってほしいと思う。イノベーティブに疑問視する私も、こちらのお店なら定期的に伺いたいと思う。サービスも気持ちいい。一緒に同席した女性には室温や膝掛けなど気遣って頂き、また、お料理などのお話も楽しく、皆さんお若いのに、そつなく優しいサービスは立派なものである。きっと京都で誇るべきレストランとなるだろう。期待しながら、また、再訪させて頂くつもりだ。
秋刀魚のフラン
アオリイカ
カンパチ
白カジキ
白カジキのソース
かぼちゃの煮物
松茸と熊肉
ハタの春菊ソース
岩手短角牛のタルタル 山椒風味
紅はるかの焼き芋のお粥
チーズ
チーズにつくパン
デザート
アイスエスプレッソ
フィナンシェ
2024/09/13 更新
過去2回は晩秋の11月に伺ったが、今回は9月初旬、しかも猛暑。どんなメニューになるのか、楽しみで、、
鴨川沿いにあるお店。鴨川を正面に見えるような席はいつもと同じだったが、今回は日が沈む前、ちょうど日が沈むところが見えた。この景色はとても気持ちがいい。
暑い日だからと、まずは、冷たい菊の花茶を頂く。香りがよく、すっきりする。
前回は、とにかくボリュームありすぎだったので、今回はノンアルコールペアリングにせず、量もコントロールしてもらった。
ドリンクはお酢の微炭酸割り。このお酢が酒造で作られたどぶろくから再発酵してお酢にしたもの。
このドリンクが暑く、疲れ気味の身体にいい。しかも、思いの外、ほとんどの料理に合う。
・葉唐辛子と万願寺とうがらしのタルト
生ハムのシュー
タルトは上から葉唐辛子、万願寺とうがらし、万願寺とうがらしのクリームの順でタルトに入れたもの。万願寺とうがらしの甘さや風味の後にピリッと辛い葉唐辛子。
シューは長野産の生ハム。塩で熟成し、途中で麹菌をつけて、さらに熟成発酵したもの。これが、麹の香りがして、"和"の風味の生ハム。
・タマゴダケ、雲丹のフラン
タマゴダケはなかなか食べる機会がない。何でも名前からではないが、卵との相性がいいらしい。雲丹も卵との相性がいいのでフランに。タマゴダケは歯ごたえがシャキシャキしており、甘みがある。見かけとは違う。酢橘が添えてあり、途中からかけて頂くと、フランというより"茶碗蒸し"。酢橘で、和の風味に変わるのが面白い。
・秋刀魚のマリネ(写真は一切れ食べた後です)
秋刀魚を軽くマリネにして炙ったもの。下にきたあかり、エシャロット、そして秋刀魚の内臓を少し入れたもの。
今年は秋刀魚が豊漁で型も大きいと聞く。脂ののった美味しい秋刀魚である。きたあかりの甘さとエシャロットの酸味、そして秋刀魚の内臓のほろ苦さと甘さがまた、きたあかりとぴったり合う。
・甘鯛の鱗焼きとイチジク
面白いとりあわせだが、これを繋ぐソースが素晴らしい。鮒寿司の発酵した米に枝豆を潰したものを合わせたソース。この酸味と塩味が甘鯛、イチジクどちらにも合う。何となく甘みのないタルタルソースというか、、、。これは、意外と揚げ物にも合うのではないか、なんてお話をさせて頂いた、、笑
・なすと鮑
小茄子、秋茄子を素揚げして焼いたものの上に蒸した鮑、鮑の肝とバジルそして落花生を合わせたソース、最後にオリーブオイルで和えた生のなす。
3種類のなすがどれも甘く、みずみずしく、香りもよく美味しい。鮑は柔らかく仕上がっている。秀逸なのはソース。落花生を使ったのが素晴らしい。甘さと香ばしさが加わって鮑にもなすにも合う。鮑の肝の独特の香りは抑えられ、例えば肝を食べ慣れてない方にもこのソースは美味しいと思うのでは。
・鰻のタコス
前回も出た鰻の蒲焼きタコス。これは私のお気に入り、、笑。今回は、タコスの生地に蕎麦粉を使い、合わせるソースがピーマンとトマトのソース。最後に木の芽をのせたもの。巻いて手で頂くが、やっぱり美味しい。ピーマンのちょっとしたクセや苦味とトマトの酸味がいい。鰻ゆえ木の芽は当然、相性はいい。やっぱり、これ、好きだなぁ、、笑
・ズッキーニ
ズッキーニ一本を1時間ローストしたもの。真ん中を切って盛り付けて頂いた。
ズッキーニを置いたあと、スープを注いでくれる。
このスープ、ズッキーニから出たジュース、玉ねぎ、パプリカのみで作られたもの。別皿にアリッサ、フェンネルのピクルスを添えてある。
まず、ズッキーニが美味しい。食感が変わる。そしてズッキーニの水分もたっぷりある。そして、このスープ、ズッキーニ、玉ねぎ、パプリカと香辛料だけとは思えないくらい、しっかりとした味。甘みのあるコンソメのような風味。ここにアリッサをつけて食べるとピリッとした味わいで味変。また、最後にスープにアリッサとフェンネルを入れると、風味が中東の料理に変わる。なかなか楽しめる皿だ。
・鮎
藤尾シェフはサンペレグリノヤングシェフで日本人唯一の優勝者だが、その時の料理がこの鮎の料理である。かなり手間がかかっている。
まず、鮎の身と皮を分ける。皮は破らないように身を剥がすのが大変。鮎の骨で出汁をとり米を炊く。
炊いたご飯に鮎の身、肝を混ぜたご飯を作る。そして、そのご飯を鮎の皮に入れて焼く。ソースは蓼酢、きゅうり、そしてスイカの皮の方の部分を発酵させたものを微塵切りにしたもの。
とにかく、鮎を丸ごと食べた、という満足感。ご飯なので見かけ以上にボリュームある。そしてこのソース、材料が全て鮎の風味に合ったものばかり。
これは、ただただ素晴らしい。
・サーロインと蓮根、きのこ
埼玉県東松山にある国分牧場のホルスタイン種のサーロインを使ったもの。ステーキを薄切りにして、蓮根の薄切り、香茸、やまどりたけをのせたもの。
梅と梅酢を使ったソース。
まず、肉が美味しい。脂は少ない赤身だが、噛み締めると肉の旨さがしっかりと滲み出る。やはり、肉は多少でもかみごたえがあった方がいい。肉の味がしっかりとわかる。また、きのこの香り高いこと。そして蓮根の歯ごたえと甘さ、ソースもこの肉にあっている。柔らかい酸味と梅の爽やかな香り、暑い日の肉料理にはぴったりだろう。
・デザート
桃のキャラメリーゼに桃のアイスクリーム
桃のアイスクリームにはマーガオを入れて香り高く仕上がっている。桃のキャラメリーゼは桃の甘さにアクセント程度のほろ苦さと香ばしさがある。実は、肉料理までかなりのボリュームで、最後に桃のデザートを香り高く仕上げたものは、お腹にも優しい。
・エチオピア産コーヒー
フレンチと和の融合は他のレストランでもある。ただ、藤尾シェフは最後の修行先が京都の木山というところから、和の調理をしっかりと身につけているのだろう。
特別、変わったことをやっている訳でもなく、食材を美味しく仕上げるための引き出しが多い、だから、和と洋を混在ことが重要なのではなく、食材を美味しく仕上げるための調理法が、和だったり、フレンチだったりしているだけである。
また、食材も自ら探して、自分が気に入ったものを仕入れている。実質本位なのである。だからこそ、新しい味の発見があったりして楽しい。
季節ごとに行きたくなる、そんなレストランになってきている。最も京都ゆえ、季節ごとに訪問するのは、まあ、厳しいが、、、笑